情報誌タートル 第58号

本文へ移動
主要メニュー一覧へ移動

ここから本文

目次

表紙写真

カメのイラストです。春が訪れました。新年度もファイト!!

目次へ戻る

巻頭言

『支援する、される立場から、協力し合う関係への挑戦』

副理事長 大橋正彦(おおはしまさひこ)

皆様、この度副理事長の大役を拝命いたしました、大橋正彦でございます。 まずは、この大役、若輩者の私には、皆様のお力添え無くして勤め続けることはできません。今後、より一層のお力添えを賜れますよう、平にお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきたく思います。

思い起こせば、約10年前、タートルの門をたたいたことを昨日のように思い出します。私は、視覚障害を抱え、前職を辞め、パソコンの訓練をへて、現在の職場に再就職しました。何もかもが初めての経験に振り回される日々を送っているさなかでした。そんな時、タートルの皆さんの明るい声や、前向きな姿勢に驚愕し、自身が視覚障害当事者である立場でありつつも、今苦しんでいる後輩達に、どのようにアドバイスをし、勇気を与えることができるかを真剣に考えている姿に、ただ敬服し、少しずつでも自分ができることを始めるべきだと決心する状況であったと思います。

この10年、少しずつかもしれませんが、先輩方々のご尽力もあり、間違いなく社会は変わりつつあると感じます。街中で優しく声をかけていただく方は確実に増えたと実感していますし、職場も同様に、私たちに手を差し伸べる意識を持たれる方々も着実に増えていると思います。法律や制度の整備が進み、テクノロジーの進歩が我々を後押ししていることも確かです。もちろん、そのはざまで今も悩み、苦労を重ねていらっしゃる方々の存在は無くなる事はありませんが、きっと、今の時代に即した、アドバイスも努力手段も存在するはずです。

『恩送り』という言葉がタートルではよくつかわれます。お世話になった方に、恩返しをするのではなく、今、ご苦労のさなかにある、タートルの門をたたく、もしくはそれすらに迷われている方々にその分寄り添い、元気を取り戻していただけるよう力を注いで移行という考え方です。これこそ、タートルの伝統だと思いますし、脈々と伝えていくべきものかもしれません。

さて、変えてはいけないものがある反面、時代に合わせて進化させていかなくてはならない物もあります。『働き方改革』の波は私たちに少なからず影響を与え、ここ数年のコロナウィルス蔓延の影響で大きな変化の局面を迎えています。

私は、数十年に一度の大変化が押し寄せていると感じています。先に、『テクノロジーの進歩が我々を後押ししている』と書きましたが、この言葉に違和感をもっていらっしゃるかたもいるはずです。事務職の方々には少々強引なテレワークの導入が、按摩針灸やヘルスキーパーの方々にも多大なる環境の変化が押し寄せているはずです。

こんな時だからこそ、今回、タイトルを「支援する、される立場から、協力し合う関係への挑戦」と掲げました。この言葉の意味には、実は私の個人的な思惑もふくんでいまして、もちろん、私たち視覚障害当事者同士がもっと協力し合うことも大事ですが、今回の大きな就労環境の変化の波を乗り越えるためには、さらなる次のステップに私たちが踏み出さなくてはならないのではというメッセージなんです! それは、私たちをとりまく、晴眼者の方々との関係づくりです。

実は、この大きな社会構造の変化は、当然、我々視覚障害当事者だけを襲っているわけではありません。雇用側の担当者や、ICTの開発や、管理を担当されている方々にも、少なからずのご苦労が押し寄せていることは確実です。 そんな中、私たちが助けてください(支援してください)のメッセージを単純に発信し続けることは得策といえるでしょうか? 今こそ、協力し合うメッセージを発することが、真の共生社会を実現するために必要だと思っています。

もちろん、私たちにできないこと(苦手なこと)は山ほどあります。でも、まだまだできることもあるはずです。ご一緒に視覚障碍者の可能性を信じ、そのためのスキルアップを続けてみませんか?! 頼りながらも信頼され、社会や企業・団体に貢献する視覚障害者をめざして…!

皆さんの知恵と力をタートルに結集することができれば、必ずや実現すると信じています。ぜひ、引き続き、ご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします。

目次へ戻る

11月交流会講演

『白杖歩行の基本的考え方について〜技術と社会との関わり〜』

社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会 理事長
東京視覚障害者生活支援センター 所長
長岡 雄一(ながおかゆういち) 氏

先日、10月末にも臨床眼科学会が福岡で行われました。そこでも少しお話ということで、特に就労の話をさせていただきました。私は就労の話をする時には、必ずタートルのことを話題に出して、タートルを持ち上げるようにしています。やはり、就労について考えた時に、タートルの存在は私たちにとっても非常に大きいからです。当然、当事者の方にとっても、大きい存在であると思っています。

今、国立リハビリテーションセンターでは、眼科医に対して補装具認定医の研修会というものをずっと実施しています。そういうところでも、必ず「タートルがある」ということを言っています。それは、私が言うだけではなくて、他のお医者さんからもタートルの存在については語られる状態になっていますから、さらにタートルそのものが先に進んでいけるのではないかと考えています。私たちが仕事をする際も、タートルの存在というのは非常にありがたいというか、私たちが見習わなければいけないことがたくさんあると思います。

今日は、「白杖歩行の基本的考え方について」というテーマを出させていただきました。技術と社会との関わりということになります。ここ数年、やはり視覚障害で白杖や盲導犬を使っている方が、いろいろと事故に遭われている状況があったりします。当然、その事故に対し、各方面でそれに対応する動きを結構するようになってきたことは、私たちにとっては非常にありがたいことだと思っています。

最近では、NHKのニュース9でも「東武鉄道が視覚障害の方の転落事故の経験から、当事者も招いて社員教育を始めた」という話が取り上げられました。他の鉄道事業者さんも、今は一生懸命にそういった社員教育をしていこうと努力されています。

私もメトロなどでは、必ず新人教育の時に「視覚障害はどういう障害であるのか」「支援として何が必要なのか」というお話をします。そういった鉄道事業者さんの取り組み以外にも、当然ながら国土交通省も含めて様々な取り組みがあると思いますが、世の中が少しでもそういった方向で興味を持って、もっと注意を払ってくれることが必要ではないかと思っています。

では、今日のテーマということで、今の白杖歩行のやり方における経緯について、まずはお話をしたいと思います。これは数年前に、今の重田理事長がタートルの機関誌に少し書かれていたかと思いますので、重複する部分もあるかもしれません。

現在、私たちが提供している白杖を使った歩行というものは、たかだか数十年の歴史しかないと思っていただいて良いのではないかと思います。白杖の歴史そのものとしては、第一次世界大戦中や第一次世界大戦後に「白い杖」として使われてきたわけですが、今の使い方という点で言えば、第二次世界大戦や第二次世界大戦後に、アメリカから始まったと考えて良いと思います。

それが日本に来て、実際に日本でもこういう技術を使って白杖を利用しよう、使用しようということになったのは1970年ですから、今から50年前のことになります。その時に、大阪の日本ライトハウスで「指導者を養成しよう」ということになって、その養成が始まりました。ですから、今訓練を受けて白い杖を使い単独で歩かれている人たちは、50年前にスタートした人たちの指導を受けていることになると思います。

ただし、今から30年ほど前でしょうか。所沢の国立障害者リハビリテーションセンターが「視覚障害学科」という学科を作って、そこでも指導者の養成を始めました。ですから、その視覚障害学科を卒業された方たちが、歩行訓練をしているという状況もあります。ただ、指導者の養成コースは、全国でたった2か所だけということです。これは非常に寂しいことですし、国リハの視覚障害学科の受講生も非常に少ないために、なかなか全国の視覚障害の方に対する歩行訓練が、特に白杖を使用した歩行訓練が行き渡らないという非常に残念な現状があります。

今、私たちが皆さんにお教えしている訓練技術は、フーバー・ケインテクニックと言われているものです。先ほど第二次世界大戦という言葉を出しましたが、そこでフーバーさんが考えてきた技術というようにご理解いただいても良いと思います。その結果、何がそこから出てきたのかというと、その技術を使うため「白い杖をどう使うのか」「白い杖をどういうものにするのか」ということで、当然それが大きな問題になってきたわけです。

今、白い杖をお使いの方たちは、基本的には左右に振る「スライドテクニック」と言われる方法、ないしは「タッチテクニック」と言って左右に揺らすか両側をつく方法、このどちらかを使用する方が圧倒的に多いと思います。当然ですが、そういう技術を使うには、やはり白い杖は強くなければ意味がありません。そこでサイズや材質といったものが、非常に大きな影響を受けてきます。

一言で言うと「重過ぎず、短過ぎず、長過ぎず、また強い」ということで、簡単に折れてしまっては困ることになります。そうした考えを基本として、現在の白杖が処方されていると理解いただいて良いと思います。材質の問題についても先ほどから出ていますが、かつてはアルミやグラスファイバーといったものが、比較的に幅をきかせていました。

私がこういった訓練を行うようになったのは、今から40年ぐらい前でしょうか。先ほど「歩行訓練士の養成研修」というようにご紹介いただきましたが、その時は私自身も白い杖を自分で作りました。その時はグラスファイバーの本体を使って、今皆さんが石突きと呼ぶ杖の先には比較的ノーマルなものを自分でつけました。さらに、グリップ部分にはゴルフのパターグリップのようなものを自分でつけて、中央となるシャフトの部分を自分の身長に合わせて切りました。そういうような白い杖を自分で作ってみました。

その当時は、グラスファイバーが圧倒的に多かったのですが、かなり重かったと思います。二百数十グラムが大体の重さでしたが、最近はカーボンやアラミドといった繊維面が使われるようになっています。グラスファイバーに比べると比較的軽いため、二百グラムを少し超えるぐらいです。

この二百数十グラムと二百グラムの差は、比較的大きいと思います。「百グラムの違いはない」と言っても、杖を振る場合にこの違いは結構大きいのです。当時、私たちも杖を振りながら実際に街を歩く練習をしましたが、腕が太くなったという経験があるくらいですから、やはりそれなりの重さがあることは間違いがないと思います。

また、杖の長さとしては、実は「2歩前を」という形でずっと教わってきています。歩く時に2歩前を知るために、その長さは処方されるものだと教わっていますが、具体的な数字を出せば、身長から43センチを引いた長さになるということがずっと言われています。 では、実際にそれが妥当かというと、ある研究ではもう少し短くても良いのではないかとも言われています。「なかなか2歩先のことを、それでカバーできるわけではない」という研究も実際にはありますが、今のところは身長から約43センチ引いた長さで、杖を立てた時にわきの下にピッタリ入る長さという考え方が、現在でも継続して使われています。

ただ、この考え方についてはアメリカの大学で実施され、私たちもいろいろ教わってきているのですが、実際にアメリカでは州により長さが少し違っているようです。以前、私どものセンターを訪ねられたモンゴルの方は、アメリカで訓練を受けられたそうですが、その時に処方されたという杖の長さは鼻の下ぐらいまでありました。 また、以前来訪されたアメリカの方の場合でも、やはり鼻の下ぐらいまでの非常に長い杖をお持ちでした。やはり、アメリカなどでは州により訓練の考え方が少し違うということで、そういった長さの杖を処方しているところもあるようです。

ですから、長さで一番大事なところはと言うと、とにかく自分の前をきっちり探ることができるかどうかという点になります。前に足を出した時に、その部分をしっかりと杖で確認できているかどうかということが、非常に大きな問題になってきます。 日本の場合には、先ほどから言うように「大体、わきの下にピッタリ入るように」という方法が訓練の中で使われていることです。しかし、現実にそういった訓練を受けていない方が多いということは間違いありません。そのため、白い杖を求める時に、その長さについてはあまり知らない状況で購入される方もいるということです。

そうなると、例えば腰くらいまでの長さしかない白杖をお持ちになったり、材質面で言うと少し重すぎるようなものを購入されることもあります。この辺は、白杖を扱う業者さんに「どれだけの知識があるか」というのが、非常に大きな問題になってくるだろうとは思います。

最近では、アメリカ製のほかに日本製もだいぶ普及してきましたが、もう少しコスト的に安くなればと思います。もちろん、補装具としての扱いにはなりますが、楽に求めることができれば良いのではないかと思っています。白杖ということにはまだこだわっていますが、ここで少し話を変えてみます。

実は、私たちが提供する歩行訓練というものは、何も白杖の使い方だけを訓練するわけではありません。実際、アメリカでは「歩行訓練」という言い方はしないと言われています。それならば何という言い方をしているかというと、「オリエンテーション&モビリティ」という言い方をしています。つまり、O&Mということです。 なぜかというと、今私が話してきた白杖操作、白杖がどうであるかということについては、モビリティの部分であるというわけです。つまり、移動ができるために、移動の能力を増すための白杖の使用ということですが、実際の歩行訓練というのはそれだけではなくて、実はオリエンテーションの部分が非常に大事だという話になります。

つまり、「自分のいる位置を、自分の環境との関係で把握する」ということです。それも聴覚や触覚といったものを上手く利用し、入ってきた情報を今までとは違った方法で解釈することで、自分のいる位置を把握するということが、つまり定位をすることが必要なのです。そこで、そのための訓練もすることが、歩行訓練の全体像であるという話になります。 ですから、白い杖のことだけを歩行訓練の中でずっと言い続けるのは、実はあまり良いことではないと思います。ただ、このモビリティの部分はやはり白い杖であって、これは非常に大切な扱いになりますから、まずはお話をしなければいけないと考えてお伝えしています。

実は、このモビリティの部分については、盲導犬も同じ存在だという考え方ができます。オリエンテーションについては盲導犬も定位はできませんから、当然、ユーザーが盲導犬に対し命令をすることになります。結局、O&Mは盲導犬でも白い杖でも実は同じであって、モビリティの部分が「白い杖か犬か」という違いであると、そう理解いただいて良いのではないかと思います。ここまで、いったん先ほどの話から抜けましたが、また元に戻ります。

白い杖は、一番使っている方が多いためにお話をしますが、大きくわけると3つの役割があると言われています。1つ目は「情報収集」ということです。つまり、路面の状況ないしは自分の身体の前部に「どんなものがあるのか」を知るためのものです。そして、2つ目が「障害物から身を守る」という役割です。まず、杖が先にぶつかりますから、あえてそこに身体を持っていかないことで、ぶつからずに身を守ることができます。そして、3つ目は「シンボルとしての存在」で、これが3つの役割と言われています。

ですから、この「情報収集」に加え、特に「障害物から身を守る」という役割のために、先ほどお話をした白杖の材質というものは、ある程度は規定されることになります。例えばアンケートをとると、情報収集などがすごくしやすい材質のもの、つまり路面の状況が非常にわかって、振動で手に上手く伝わってくるものがあるといいます。いくつか挙げると、例えば「カーボンが良い」とか、「アラミドが良い」ということで、そういう方はやはり出てきます。

他にも、白い杖には、直杖と言われる折りたためないものと、折りたたみのできるものがありますが、情報収集という意味では「直杖の方が良い」という方もいれば、「あえてこだわらない」という方もいらっしゃいます。とにかく「情報収集に白杖をどう役立てるか」ということが、まず1つのポイントになります。

次に「障害物から身を守る」という役割です。これは白い杖がぶつかるため、当然ながら自分はぶつからないということで、先ほどお話をしたとおりです。ただし、皆さんもご存じのとおり、これは絶対ではありません。杖が全部のものをカバーしてくれるというわけではありませんから、どうしても身体がぶつかってしまう場合なども出てきます。それを単純に、「それは白杖の操作が悪いんだ」という形でお話をすることも、実はなかなか難しいのです。

それはなぜかというと、白杖の操作をきっちりとしていても、どうしても避けられないもの、避けられない衝突、そして段差の検知が難しいという問題が、実際に起きてくるからです。ですから、障害物や段差などから身を守るのは、完璧ではありませんが、かなりの部分でならできます。さらに、白杖から話がちょっと外れますが、白杖のカバーできる範囲というのは、おのずから決まってきます。杖を構える場合には、手首の位置はどうしてもお腹の前です。中には身体の横につけている方もいますが、高い所のカバーというのはできません。つまり、お腹から上の位置については白杖でのカバーは難しいということですから、白杖の限界というものも当然知らなくてはいけません。

そして、一番大事なのは「白い杖はものにぶつかる」ということで、それを前提に考えなければいけないということです。以前、何かの本で「ものにぶつからないために」「何かにぶつからないために白い杖を持つ」というような記述がありましたが、実は白い杖の場合はものにぶつかることを前提に考えた方が良いと思います。特に、「ぶつからなければ障害物の存在はわからない」ということは、絶対に考えておかなければいけないと感じています。「白杖は障害物にぶつかる存在だ」ということは、はっきりした方が良いだろうと思います。

ただし、この「ぶつかる」ということですが、特に訓練の最初の頃は、ぶつかったことで非常にショックを受けます。ぶつかってドキッとして止まってしまったり、ぶつかった瞬間に向きを変えてしまうなど、様々なことがあります。なかなか慣れないことではありますが、あくまでも「ぶつかる」ということを前提として考えておいた方が良いだろうと思います。

この辺が、同じモビリティでも盲導犬との大きな違いであり、「盲導犬がものにぶつかる」ということはありません。以前になりますが、盲導犬をお持ちの奥様と、白杖をお使いのご主人がいて、そのご夫婦のお話を聞いたことがあります。 例えば、白い杖で電柱の位置を知っているご主人に対し、そこをスルーしてしまう盲導犬の場合、「ものの位置」「ものの存在」というものは、ご夫婦の間で認識が違ってくるということです。実際に、そういうことが話の中で出てきていました。その辺のところが、やはり盲導犬と白杖の「モビリティ上の問題での違い」ということになるかと思います。

さらに、もう一つの意味の「シンボル」ということです。多分、これが一番良くも悪くも白杖の印象を形作っているのではないかと考えています。最近、こういう話をするためいろいろと調べものをしたのですが、実は晴眼者の中でも「視覚障害者が白杖を持っている」ということを理解している人は、例えば100%かというと全くそうではないのです。ある調査では7割くらいです。つまり、3割は「視覚障害の方が白杖を持っていることを知らない」ということで、そういう調査結果が出ている場合もあります。

実は、調査なので対象者がいろいろと違います。いくつかの調査を見ると、対象者が全然違っていて、若い方を中心に調査しているところもあれば、そういったことにこだわらずに調査している場合もあります。しかし7割という数字は、比較的に共通して出ている数字になります。このことは、私自身もつい最近ですが体験しました。この調査に関してですが。

それは何かと言うと、私どもの施設は東京都にありますので、実は都立高校で「視覚障害の方への支援」についてのお話をさせていただく機会を得たのです。その時の相手というのは高校2年生だったと思います。240人ぐらいを対象にお話をした時に、「視覚障害の方は白い杖を持っていることを知っていますか」という質問を投げかけたところ、やはり3割の人は「知らない」というように答えたのです。

つまり、「今の若い方たちは、以前の私たちの世代に比べてそういうことを知っている」と思っていたのですが、それはとんでもない思い違いであって、全く知らないというのです。「3割は知らない」というような現実にぶつかってしまいました。その時には、学校の先生たちもショックを受けていて、「これで良いのか」というようなお話をされていました。

今、テレビでも「白杖ガール」というようなドラマが展開されています。比較的、若者向けのドラマですが、そういうドラマか出ていても、「視覚障害の方が白杖を持っている」ということを知らない方がいて、あまり増えないのが事実なのかと思っています。

時々、視覚障害の方が白杖を振って歩いていると、人にぶつかることも生じます。そして、その時ぶつけられた人から「一体どこ見て歩いているんだ」と言われることも、少なからずあるとは思います。ただ、そういったアンケート上の問題や、私が実際に体験したことから考えると、そういった発言が出てくるのは当然と言ったらいけませんが、あり得ることなのだと思います。私たちも、ちょっと認識を変えなければいけないのかと考えています。

そういう意味では、もう少しいろいろな面での啓発運動を、もっとしなければいけないかと思います。特に、盲導犬の場合にはいろいろと盲導犬についての啓発運動をしていますが、例えば「白い杖の啓発運動はしているか」というと、東京近辺ではポスター等に一時期そういったものがありましたが、最近そういったものはありません。 一方で私たち自身はというと、そういった活動をあまりしてきた経験もありません。今後、積極的に取り組まなくてはいけない問題ではないかと、最近は特に感じています。ある意味、高校生の7割しか知らなかったということは、私たちにも全部はね返ってくるということです。「私たちは一体何をしていたんだ」ということを、私たち自身もその場で反省させられた出来事でした。

ここまで白い杖のことを話してきました。「非常に手に入れやすいものではあるけれど、一般の方にはあまり知られていない」という事実があって、その事実をまずは受けとめなければいけないかと思っています。

さらに、今度は白い杖から少し離れます。先ほど歩行訓練としては、白い杖の操作である「モビリティ」という部分と「定位」という部分を、併せて訓練するという話をしました。その定位という部分は何かというと、「自分の置かれた環境で、自分と他のものとの関係性で自分の位置を知っていく」ということです。

それから、自分の行く方向を定めることに関しては、最近はいろいろと科学技術の進歩により、チップを組み込んで「今いる位置を知る」というものが、結構たくさん出てきました。AIを使用し、例えばカメラで撮って環境を知るとこともできるようにはなっています。 この定位の問題というのは、やはりずっと難しい問題であって、簡単な解決はないと思いますが、そういったものが科学技術の中で出てきたのは、非常に喜ばしいことだと思います。しかし、実はこの定位の問題において「しっかりと自分の位置を定めていける」ということは、やはり安全に直結していることなのです。それを、私たちは意識しなければいけないと思います。

自分がどこにいるのかわかれば、次の行動についての対応がしっかりと取れます。でも、自分のいる位置がわかっていなければ、それに対する対応は取れません。そういったことが、やはり考えられるだろうと思います。 この辺がとても大事な部分ですが、どうしても定位だけに目が行くのではなくて、定位がもたらしてくれる安全性の確保というものを、私たちももう少し考えなくてはいけないかと思っています。この辺は、今後さらに進めていかなくてはいけない課題であろうと考えています。

それから、歩行訓練において何をもっと大事にするかというと、理想的な形態で言えば「行きたい時に行きたい所に行ける」ということで、これがある意味で歩行訓練の究極的な目的・目標になっていくはずです。しかし、その中でどうしても出てくるのが「単独歩行」という言葉遣いになります。

単独歩行ということで、つまり「一人で行ける」と言った時に、その「一人」というのをどう捉えるかというところが、実は非常に難しいのです。中には、「人に聞いてはいけない」とか、「人から援助を申し出られた時に、あえてそれに対応しない」というように、「一人で行かなければいけない」といった捉え方をされる方も、時にはいらっしゃいます。 しかし、実際に私たちが訓練の中でやっていくのは、その援助依頼についても「人に援助を求めることも非常に大切だ」ということで、これには積極的な推進をしています。さらに、周囲からの援助の申し出に対しても、「申し出に対していかに対応するか」ということを、訓練の中で取り組んでいくことがあります。

つまり、単独歩行を「ただ本当に一人で歩く」という捉え方をするのではなくて、「社会との関係の中で、いかに周りの人に支援してもらうか」と捉え、それを自分の技術として身につけることが非常に大切だというお話はしています。そして、実際に訓練でもやっていくことになります。 ある人が言ったのは、その方自身は視覚障害ではなくて肢体不自由の方でしたが、「実は、依存を増やしていくことが自立なんだ」ということでした。ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。つまり、ここで言う「依存」というのは、歩行の中で言えば「いかに援助依頼できる先を増やすか」ということで、そのように理解いただいても良いのではないかと思います。ただ、単独に家族や自分の周囲の人だけの支援を求めるのではなく、外に出て行って援助を求める先を増やしていくということなのです。

ここでは「依存」という言葉に置き換えているわけですが、そうではなくて、「支援先」「支援を求める先」という言い方をすれば、そういった支援を求める先を増やせることは、やはり一歩でも外に出ることにつながっていきます。ですから、「支援先を増やすことが、自立につながる」という考え方をしても、問題はないのではないかと思います。

白杖操作の問題に少し戻りますが、実はロービジョンの問題についても、少し考えなければいけないと思います。当然、ロービジョンでも白杖をお持ちの人は少なからずいらっしゃいますが、どうしてもロービジョンの場合には、白杖よりも視覚に依存するケースが多いということも考えられます。 例えば、ホームからの転落事故時によく言われるのは、「見間違い」や「勘違い」ということですが、私自身としては「見間違い」や「勘違い」で済ますことは納得できていません。つまり、何を言いたいかと言うと「白い杖から得る情報を、自分の行動や感覚とマッチングするのは非常に難しい」ということなのです。ですから、どうしても視覚に依存しますし、ロービジョンの方が視覚に依存するのは、私は当然のことであると理解しています。

例えば、白杖で下り階段の第一段目の端を探り、そこに段差のあるのがわかっても、そこに足を持っていくのはかなり難しいのです。相当慣れないと、そこに足を持っていくことはできません。それに対し、視覚であれば「あの辺にある」ということで、そこに足を持っていきやすいのです。そこで、見間違い等が起きやすいということはあるでしょうが、白杖の操作性というよりも、白杖から伝わる触覚の問題と視覚の問題があって、その関係性が非常に問われるかと思います。

私が私なりに考えるのは、例えば触覚というのはデジタル的で、「あるかないか」という感じです。それに対し、視覚はかなりアナログ的で、アバウトでありファジーな感じです。そういう考え方をしています。触覚の場合、今まで私たちが感じたのは「特に中途視覚障害の人は不慣れな感覚の情報処理をしなければいけない」ということです。そのため視覚優位になるのは致し方ないことで、ある程度これは理解できると思います。 さらに、視覚障害の方が持つ「触れることへの安心感」「触れることで非常に大きな安心感を得られる」というのは、よく言われていることです。それはある意味では当然であって、「ある」ということがわかればそれだけ安心感は増えますし、そういうことは当然あるのだと思います。

さて、訓練のことばかり話してきましたが、あくまでも歩行訓練は、社会との関係の中で考えなくてはいけないものです。歩行訓練で完璧な歩行ができても、それで社会が歩けるか、社会の中を歩けるかと言うと、そういったものではありません。つまり、社会の方がどこまで対応できるかということが、非常に大事ではないかと思います。先ほどの白杖の認知度が7割であるというのは、そういう意味からすると、かなり危機感を感じざるを得ないことだと思っています。

例えば点字ブロックに関しては、今ある誘導ブロックの敷き方の問題もかなり大きいと思います。誘導ブロックがどう敷かれているのかを考えた時に、「これで良いのか」と思うような敷き方はやはり多いのです。最近は、ホームの転落事故を受けて、いろいろな議論になっています。「誘導ブロックをホーム中央に設置すべきではないか」など、様々な議論が出ています。それに対し、当然ながら反対意見もありますし、同意する意見も出ています。

ただ、これはホーム上の問題だけではないのです。社会的な問題としては、歩道上の点字ブロックが突然途切れてしまったり、急に曲がってしまったりすることがあります。それはなぜかと言うと、歩道を作ってから点字ブロックを作るからです。そこで、先に都市計画を作って、その後に「最終的に点字ブロックをどう敷けば良いか」という話になってきます。 もし、最初から誘導ブロックなり点字ブロック等が必要だとわかれば、都市の設計の中でそれを当初から組み込むように設計することが、本当は良いのではないかと思います。それこそ、ユニバーサルやバリアフリーの在り方なのではないかと考えています。確かにコスト的な問題は大きいでしょうが、それがあって初めて外出しやすくなると考えています。

そういう意味で言うと、もう少し都市工学的な観点から都市を作るということであって、視覚障害の方が歩行訓練をして、結果として外に行く時はさらにそれが促進できるような、まずはそういう環境づくりをしなければいけないのではないでしょうか。 今まで比較的に、歩行訓練では「環境に合わせる」というのが非常に多かったと思います。「こういう環境だからこういう形でやろうね」ということが、非常に多かったと思います。今後は、できればそういった社会環境を、「いかに歩きやすい環境」として作り上げていくのか、それをまず考えなければいけないかと感じています。

そういう意味で言うと、例えば歩行訓練をしていて「ここをどう安全にクリアすべきか」と考えることは比較的に多いのですが、まずそういったものを外して、比較的安全な環境を作ったうえでそこをクリアできるようにすれば、視覚障害の方が外出するようなチャンスも増えるのではないかと思っています。 実は、都市工学的とまで言わないまでも、今の点字ブロックなり警告ブロックの在り方について考えると、これには議論があると思いますが、例えば警告ブロックは「危険なところに行かなければ、危険なことがわからない」という状況にあります。実は、「自分が安全なところを本当に歩いているのか」ということが、非常にわかりづらいのです。逆に言えば、「安全なところを歩いている」とわかれば安心して歩けますし、外出もしやすくなるだろうと思います。そういうふうに私自身は考えています。

つまり、安全であることがわかれば、歩くことに躊躇はなくなるわけです。しかし、今は「いつ危険なものが来るのか」「いつ危険なところが来るのか」というような、非常に曖昧な方法で歩いていることが多いと思います。そういったことが、やはり「安心して歩けない」ということにつながり、時として事故を起こすということも、当然出てくると感じています。そこをどう直していくかというのは、実はコスト面もあって非常に難しいのですが、社会の考え方を少しでも変えていくことが大切だと思います。

実は、「安全である」というところを歩くのは、環境全体をしっかり把握できるかということだと思います。視覚障害の場合、そこが一番難しいことが視覚障害の特性になります。その部分を少しでもわかるような方向にするため、環境を少しでも変えていくということです。そのことを十分に考える必要があるのではないかと思います。

先ほどもお話ししたように、白い杖は使用についての限界もあります。必ずしもそれに絶対的な信頼を置いてはいけませんが、私自身のスタンスとしては、そういった使い方の失敗であったり、ロービジョンによる勘違いが発生したとしても、そういう状況でも事故が起きないような環境づくりをしてほしいと考えます。それが私の持論になります。 「ホームドア」と言われるホーム上の安全装置は、まさしくそういう存在であろうと思います。見間違いだろうが勘違いだろうが、例えそういうことが起きても、ホームから落ちることはないのです。そういうものが、さらに普及してくれたらありがたいと思います。

実は、ここでお話をするために少し以前を振り返ってみたのですが、今から20年以上も前の歩行訓練の教科書にも、ホームドアというのはしっかりと載っています。20数年前に作られたものに載っていながら、20年経っても未だに道半ばで、普及を図らなくてはいけないというのは、ある意味で非常に残念なことだと感じています。

さらに、皆さんが歩くうえでお困りの場合に、「歩行訓練を受けてください」と私たちがなかなか気軽に言えない実情もあります。そこにはやはり制度的な問題もあります。例えば東京都ですと、東京都盲人福祉協会というところが、単発でも訓練は可能です。 ただ、もう少し制度的に進んでいき、例えば「ここがわからないから教えてほしい」とか、「ここをより安全にクリアするには、どうしたら良いか教えてほしい」といったお申し出があれば、すぐそれに対応できるような体制づくりがあったら良いのになと思っています。

何年か前ですが、実は私も提案したことがあります。自治体が、例えば切符のようなものを白杖交付の際に渡して、「最低5回か10回、この券で訓練を受けてください」というような取り組みをしたらどうかというお話をしたこともあります。 なかなか実現はされませんが、そういった歩行訓練を受けられるような券や、そういった点をクリアするにはどうしたら良いかと考えるためのチケット等を出して、いつでも訓練が受けられるような体制や、安全を確保できるような体制を作りあげていくことが、私たちにとっても皆さんにとっても必要ではないかと考えています。これは、できれば本当に実現したいと考えています。

白杖を提供しても、結局は「使い方がわからないので使わない」ということもあります。実際に胸までの高さがある杖は、非常に扱いづらいものであることは間違いないです。もし、それをきっちりと使えなければ。きっちりと使うことができれば、その長さは適切であると感じてもらえると思いますが、そこに至るまでには、難しい部分も多分あるとは思います。ですから、きっちりとした使い方ができる状況がすぐ身近にあるような、そういう制度的な部分をしっかりと確保していくことが、今後の課題ではないかと思っています。

今日は、「白杖歩行の考え方」というテーマでお話をしています。今回はタートルということで仕事が中心の団体ではありますが、私たちのように訓練を提供していると、特に歩行訓練というのは非常に花形的な訓練になります。ただ、これはある意味で日本の独特な進み具合なのかなと思っています。

というのは、もうだいぶ前になりますが、アメリカに行きました。アメリカで同様な訓練を提供する施設を伺った時に、掲示物に何と書いてあったかと言うと、「O&Mだけが視覚障害のリハではない」という言葉でした。それが何か所にもベッタリと貼られていました。 つまり、「歩く」ということ、歩行訓練というものだけが、リハの花形やリハの中心課題ではなく、もっと大事なことはいくらでもあるということなのです。やはり、私たちもその辺りのことを頭にきっちり置いておかないと、視覚障害の方の訓練は上手くいかないことが多いのではないかと考えています。

視覚障害の方の移動に関しては「白杖歩行」だけがすべてではありません。当然「盲導犬」もあれば、「歩行補助具」もあれば、さらに「人による移動」というものも、現在では存在しています。特に同行援護は、このコロナ禍によりガイドさんもなかなか難しかったりして、かなり厳しい状況にあるかと思います。しかし、今言った「支援を受けられる歩行」というのは、少なくとも4種類あるわけです。この4種類のうち何を当事者が選んでいけるのか、私たちはそのことをもっと知っていかなければならないと思います。 白い杖だけではなく、可能であれば盲導犬も使えますし、電子機器の操作もできるということです。電子機器についてはいろいろと開発いただいているようですが、まだまだ単独での移動は難しい状況にあります。そういった開発のお手伝いができるようにしたいですし、人との移動ということで同行援護による移動にも、私たちが少しでもお手伝いできるなら取り組んでいきたいと思います。皆さんの移動について、少しでも支援ができるような形を今後も作りあげていくことは必要だと思います。

つまり、皆さんの選択肢をいかに増やしていくのか、それが今後の課題だろうと思います。なかなか難しいテーマではありますが、これはやらなければいけないことです。皆さんが、「これだけしかない」という移動方法の中で生きていくのは、ある意味あまり良いことではないだろうと思っています。

そうは言いつつ、盲導犬は今のところ全国で8百数十頭しか稼働していない状況にあり、選択肢の中でかなり狭められている傾向が実はあります。盲導犬については専門外のため、わかりにくい部分はありますが、増やせるものなら増やしていって、選択肢を増やせるような状況につなげていければ良いかと思っています。以上が、私が今日お話ししたいことの内容になります。

白杖については、実はかなり私たちも、私たちと言うと怒られてしまいますが、私も悩ましいと感じるところは非常に多いと思います。何十年もこういう仕事をしていますし、仕事上では「必ず白い杖は持ってほしい」と言いますが、「持てないことの抵抗」であったり、抵抗だけではなくて、「なかなか持てないことについての気持ち」というものを、私たちがいかに理解するのか、それを常に考えていなければいけないだろうと、いつも思っています。

その「持てないことの抵抗」が一体どこから来るのかという研究をされている方もいます。その方の論文等を読ませてもらうと、当然、社会環境であったり偏見であったり、いろいろな理由があるということです。それは私たちも十分理解していますが、どこまで理解して、その「白い杖を持たない・持てない」ということを理解して…、でも「持っていただかないといけない」ということを進めるためには、悩み悩みしてやっていかないといけないだろうと思います。 「白杖の使い勝手の良さ」に加え、「白杖を上手く使えるとどうなるか」を理解してもらうことが、一つのスタートではあるだろうと思います。なかなか難しい部分があって、私自身にとってもいつも非常に悩ましいところではあります。その辺のところは皆さんのお力もお借りして、少しでも皆さんが安全に移動をできるように、そういった社会環境というものも含めて、これから作り上げていけたら良いのではないかと考えています。

目次へ戻る

職場で頑張っています!

『3度の雇用保険受給生活を乗り越えて―さらに新たな歩みを目指して―』

会員 荒井誠一 (アライセイイチ)

平成10年に眼鏡を作成するために受診した都内の眼科病院で病名の告知を受け、平成20年に岡山で手帳の2級(視野障害)を取得し、令和元年に都内眼科病院で両眼の白内障手術を受けてきました。この間、岡山の国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(吉備職リハ)での1年間のPCの文書作成、データ活用、簿記等の職業訓練受講を経て就職。転職してきました。それも岡山、長野、東京と3つの地で雇用保険(失業保険)受給生活を経験し、その都度当該地や東京の障害者合同面接会に参加をし、色々紆余曲折はありましたが、タートルをはじめとした当事者団体やいろいろな方の支援を得て何とか乗り越えてきました。これも皆様方のお陰でもあります。ここに感謝申し上げます。

私は事務職というよりはビルの設備管理という現場での仕事に平成8年から都内で従事してきました。建物の屋上から地下まで巡回しながら、電気、空調、給排水、衛生設備等の各種メーターの検針値の読み取りや機器の不具合がないか、運転音に異常はないかを目視や耳で点検確認し、建物全体の適正な維持管理を図る仕事です。停電作業、消防設備点検、点検業者の修理、修繕工事の立会等多岐にわたる業務です。

平成17年に岡山市の会社に転籍後、市内の大学病院受診時に医師より「身体障害者手帳2級相当ですよ。どうされますか?」といきなりのお話。「これまで視点を動かすことで対応されてこられたんですね」との暖かい言葉も頂いたときは嬉しく感じました。急な告知で、すぐにロービジョン担当の先生に繋いでいただいたけれど、気持ちに余裕がなく辞退してしまいました。障害や契約している現場が解約になるかもしれないという話もあり思案していて気持ちの整理に半年以上かかりました。

平成20年手帳を取得し、翌年3月末日で現場が解約。岡山ハローワークを訪れ雇い止めと判断され、待期期間なしで1回目の雇用保険受給生活に。年齢と要件により360日の付与日数。障害者の就労については全く知識もなくハローワークの失業認定日の面談を受けながら職業訓練校を見学していた。その後吉備職リハに事前の現地訪問後、平成21年12月OA事務科入所。1年間のPC訓練、前半はWord、Excel、後半からは簿記も受講。最後は防音室で音声ソフトのJAWSを使った訓練を短期間受けましたが物にはならずでした。訓練終了後、翌年12月より岡山市内の人材派遣会社に障害者雇用枠で入社。派遣スタッフ登録、受付、専用ソフトによるスタッフの給与計算、個人情報書類管理、庶務業務等と事務職らしい仕事に従事。PC画面を白黒反転表示にして使用していました。

平成27年5月に実家の事情で自己都合退職、長野に帰郷。3か月の待期後2回目の雇用保険受給生活、年齢と要件により付与日数は360日。長野で就職活動するも時期を逸したこともあり難航。たまたま高校時代のクラス会があり、そこで友人が経営する病院に縁があり、翌年4月より入職。施設課配属。過去の経験を活かしExcelで院内施設管理全般、各種消耗品の発注、業者工事立会等。PCは白黒反転表示で使用。同級生というつながりはいつまでたっても大事なものですね。地域医療に貢献していた友と一緒に仕事が出来た時間は貴重でした。この間母の死去、その1か月後に同級生である院長が半年余の闘病生活後死去したこともあり、平成30年3月退職。同月都内北区の病院に設備管理職として入職するも機器の検針値を見間違えるなどもあり数か月で自己都合退職。3度目の雇用保険受給生活。付与日数は360日。たまたま条件を満たしていただけですので普通はこうはならないと思います。この間タートルの例会にも岡山、長野からと都合のつくときには参加していましたし、何よりも孤立感を感じることなく色々な情報も得ながら生活できていたことは大きな支えだったと思います。

令和元年4月より都内の自治体で障害者雇用枠にて採用。会計年度任用職員の労務職として週に4日30時間勤務というパートタイム型の非正規公務員です。同年4月と10月に白内障の手術を受け視力が少し回復したこともあり、この機会を生かすべく令和3年4月より厚生労働省の専門実践教育訓練の「教育訓練支援給付金」制度を活用して地元にある大学の通信教育科社会福祉士養成課程に入学。課題のレポート提出や面接授業出席をこなしながらも、10月に業務中に労災事故を起こし治療、療養のため2か月休職。予定していた11月から23日間の実習は次年度に延期。12月に職場復帰。

視野の狭さは初診時の頃より進行しているかもしれませんが、どこまで維持できるのかを見据えながら、今まで多様な援助や支援を受け、至らない点も多々ありますが、今までの経験を踏まえ福祉の制度を体系的に学び直したいと思っています。視覚障害者をどう支援したらよいのか、支援の中身をより深く理解し、他の職種との連携を構築したいと思います。

現在、給付制限期間は3ヶ月から2ヶ月に短縮されたと聞いています。詳細はハローワーク等に確認してみてください。

目次へ戻る

お知らせコーナー

◆ ご参加をお待ちしております!!(今後の予定)

◎交流会

昨年はコロナ禍で開催できませんでしたが、今年度はまた、9月、11月、3月の第三土曜日、14時から16時までオンラインで行います。毎回、講演を聴いたあと、講師との質疑応答の時間も設けます。

◎タートルサロン

上記交流会実施月以外の毎月第3土曜日の14:00〜16:00に行います。情報交換や気軽な相談の場としてご利用ください。
他にも、原則第1日曜日には、テーマ別サロン(偶数月)、ICTサロン(奇数月も行います。

*新型コロナウイルス感染症の動向によっては、会場での会合が難しく、引き続き開催を差し控えさせていただきます。
※その場合にも、Zoomによるオンラインでのサロンは引き続き行います。奮ってご参加ください(詳細は下記の事務局宛にお問い合わせください)。

◆一人で悩まず、先ずは相談を!!

「見えなくても普通に生活したい」という願いはだれもが同じです。職業的に自立し、当り前に働き続けたい願望がだれにもあります。一人で抱え込まず、仲間同士一緒に考え、気軽に相談し合うことで、見えてくるものもあります。迷わずご連絡ください!同じ体験をしている視覚障害者が丁寧に対応します。(相談は無料です)

*新型コロナウイルス感染症の動向によっては、会場に参集しての相談会は引き続き差し控えさせていただきます。
*電話やメールによる相談はお受けしていますので、下記の事務局まで電話またはメールをお寄せください。

◆ICTに関する情報提供・情報共有を行っています。

タートルICTサポートプロジェクトでは、就労の場におけるICTの課題に取り組んでいます。ICTについては、専用のポータルサイトやグループメールをご活用ください。

タートルICTポータルサイト
https://www.turtle.gr.jp/ict/

タートルICTグループメールへの登録は以下をご参照ください。
https://www.turtle.gr.jp/ict/activity-2/ict-groupmail/

◆正会員入会のご案内

認定NPO法人タートルは、自らが視覚障害を体験した者たちが「働くことに特化」した活動をしている「当事者団体」です。疾病やけがなどで視力障害を患った際、だれでも途方にくれてしまいます。その様な時、仕事を継続するためにはどのようにしていけばいいかを、経験を通して助言や支援をします。そして見えなくても働ける事実を広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。当事者だけでなく、晴眼者の方の入会も歓迎いたします。
※入会金はありません。年会費は5,000円です。

◆賛助会員入会のご案内

☆賛助会員の会費は、「認定NPO法人への寄付」として税制優遇が受けられます!
認定NPO法人タートルは、視覚障害当事者ばかりでなく、タートルの目的や活動に賛同し、ご理解ご協力いただける個人や団体の入会を心から歓迎します。
※年会費は1口5,000円です。(複数口大歓迎です)
眼科の先生方はじめ、産業医の先生、医療従事者の方々には、視覚障害者の心の支え、QOLの向上のためにも賛助会員への入会を歓迎いたします。また、眼の疾患により就労の継続に不安をお持ちの患者さんがおられましたら、どうぞ、当認定NPO法人タートルをご紹介いただけると幸いに存じます。

入会申し込みはタートルホームページの入会申し込みメールフォームからできます。また、申込書をダウンロードすることもできます。
URL:http://www.turtle.gr.jp/

◆ご寄付のお願い

☆税制優遇が受けられることをご存知ですか?!
認定NPO法人タートルの活動にご支援をお願いします!!
昨今、中途視覚障害者からの就労相談希望は本当に多くあります。また、視力の低下による不安から、ロービジョン相談会・各拠点を含む交流会やタートルサロンに初めて参加される人も増えています。それらに適確・迅速に対応する体制作りや、関連資料の作成など、私達の活動を充実させるために皆様からの資金的ご支援が必須となっています。
個人・団体を問わず、暖かいご寄付をお願い申し上げます。

★当法人は、寄付された方が税制優遇を受けられる認定NPO法人の認可を受けました。
また、「認定NPO法人」は、年間100名の寄付を受けることが条件となっています。皆様の積極的なご支援をお願いいたします。
寄付は一口3,000円です。いつでも、何口でもご協力いただけます。寄付の申し込みは、タートルホームページの寄付申し込みメールフォームからできます。また、申込書をダウンロードすることもできます。
URL:http://www.turtle.gr.jp/

≪会費・寄付等振込先≫

●郵便局からの振込
ゆうちょ銀行
記号番号:00150-2-595127
加入者名:特定非営利活動法人タートル

●他銀行からの振込
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
支店名:〇一九店(ゼロイチキユウ店)
支店コード:019
預金種目:当座
口座番号:0595127
口座名義:トクヒ)タートル

◆ご支援に感謝申し上げます!

多くの皆様から本当に暖かいご寄付を頂戴しました。心より感謝申し上げます。これらのご支援は、当法人の活動に有効に使用させていただきます。
今後とも皆様のご支援をお願い申し上げます。

◆活動スタッフとボランティアを募集しています!!

あなたも活動に参加しませんか?
認定NPO法人タートルは、視覚障害者の就労継続・雇用啓発につなげる相談、交流会、情報提供、セミナー開催、就労啓発等の事業を行っております。これらの事業の企画や運営に一緒に活動するスタッフとボランティアを募集しています。会員でも非会員でもかまいません。当事者だけでなく、晴眼者(目が不自由でない方)の協力も求めています。首都圏だけでなく、関西や九州など各拠点でもボランティアを募集しています。
具体的には事務作業の支援、情報誌の編集、HP作成の支援、交流会時の受付、視覚障害参加者の駅からの誘導や通信設定等いろいろとあります。詳細については事務局までお気軽にお問い合わせください。

☆タートル事務局連絡先

Tel:03-3351-3208
E-mail:m#ail@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

目次へ戻る

編集後記

全国のタートル会員の皆様、いかがお過ごしでしょうか? いつも情報誌を愛読してくださり、ありがとうございます!

冬季オリンピックも無事に終わりましたね! 寒かった冬も過ぎ、だいぶ春が近づいてきた感じです。そして、タートルも新しく、春を迎えます。毎年思うのですが、新年を迎えて「さぁこれから、1年間、がんばるぞ!」と、気合いを入れるのですが、あっという間に、1ヵ月、2ヶ月と経過してしまい、本当に、時間の経つのは早いなぁと、感じるところです。

皆様は、今年何か1年間の目的、目標は立てましたか? 仕事も、遊びも、2022年が充実した1年でありますように。そして、私も、2022年の1年間、情報誌を皆様のお手元に届けるべく、頑張ってまいりたいと思っております。どうぞ本年もよろしくお願いいたします。

ところで、暗い話題ですが、ヨーロッパでは、悲惨なことが起こっていますね。いろいろな国や、企業や、人々が寄付などのサポートをしています。皆さんの中には、何か行動している方もいらっしゃるかもしれませんね。私は、ちょっと寄付をするだけで、ほとんど何もできておりません。とは言え、気持ちだけは、伝わればいいなと思っています。本号がお手元に届くときは、平和が訪れていることを願っています。

さて、今回の情報誌はいかがでしたでしょうか? これからも、皆さんに楽しんでもらえる誌面をお届けしますので、情報誌タートルを、どうぞ宜しくお願いします!

(イチカワ ヒロ)

目次へ戻る

奥付

特定非営利活動法人 タートル 情報誌
『タートル第58号』
2022年3月25日発行 SSKU 増刊通巻第7269号
発行 特定非営利活動法人 タートル 理事長 重田 雅敏

目次へ戻る