情報誌タートル 第44号

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目次

表紙の説明

44号には写真が一点あります。
左から高橋広先生、松坂理事長、加茂純子先生、工藤副理事長4人の姿です。
4人が仲良く並んで写っている写真です。

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【巻頭言】

『諦めずにやり遂げること』

理事 的場 孝至(まとば たかし)

みなさん、こんにちは。2017年6月から本会の理事になりました、的場孝至と申します。私は先天性の弱視で、7年前ぐらいからはほとんど見えない状況です。現在、大阪で正社員として、民間企業で事務職の仕事をしています。新卒で今仕事をしている会社に入社して今年で22年目です。

入社後約10年は拡大読書器と拡大ソフトを用いて仕事をしていました。最近の10年は視力が下がり、音声ソフトを活用して仕事をしています。視力が下がり、拡大から音声に変えるとき、同じ視覚障害者がどのように仕事をしているのか、あまり情報はありませんでした。

2010年に同じ立場の人がどのような気持ちでどのような状況で仕事をしているのかに興味をもち、大阪でタートルの交流会に参加しました。そこで感じたことは、就労の悩みは共通していることでした。就労継続のために、苦労と工夫をしているのは自分だけではないと思うと、少し気持ちが楽になりました。その後、ほぼ毎回交流会に参加するようになり昨年からはタートルの理事になりました。その思いは、タートルの活動を通じて、情報交換を行い、必要な情報を伝えることです。参加者同士の交流を通じて、工夫と諦めない姿勢で仕事を確保すること、信頼関係ができるように努力すること、読み書きを効率よくするために音声ソフトや拡大機器を活用すること、安全確保のために白杖歩行することなどさまざまな情報交換ができればと考えています。

働きやすい職場環境を作り就労継続するために、大切なことは諦めないことです。視覚障害が原因でできないことはありますが、私はどのようにしたらできるようになるのか、必要な支援は何なのかを考え、できるための方法で実践しやり遂げています。できない理由を主張するのではなく、できるための方法を前向きに考え、会社、上司、同僚に説明しています。新しい仕事、人事異動で変わる上司、変化する社内環境に、常に向き合い、視覚障害の状況とできるための方法を説明し、実践しやり遂げることが大切と考えています。その繰り返しが自分の経験となり、会社との信頼関係につながっています。

視覚障害者もやる気になれば仕事はできます。そのためには諦めずに、自分を取り巻く課題を正確に把握し、それをどのように改善していくのかを考え、やり遂げることです。 視覚障害者の就労継続のために、自分自身の勉強のために、これからもタートルの活動をしていきますので、よろしくお願いいたします。

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総会関係

【平成30年度通常総会報告】

平成30年6月2日、(社福)日本盲人職能開発センターに於いて、平成30年度通常総会が開催されました。市川浩明議長のもと審議が行われ、第1号から第7号議案が滞りなく提案どおりに承認されました。また、その模様は、スカイプにて大阪と福岡の会場に同時中継されました。会員数172名中、出席した会員数は119名(委任状含む)でした。

なお、議案ならびに当日の審議内容の抜粋を記し、報告としますのでご参照ください。

◎審議事項

第1号議案平成29年度事業報告
第2号議案平成29年度収支決算報告
第3号議案平成29年度監査報告
第4号議案平成30年度事業計画(案)
第5号議案平成30年度予算(案)
第6号議案定款の変更について
第7号議案役員の交代について

◎第1号議案平成29年度事業報告

松坂理事長より事業について一括しての報告があった。なお、報告の中で情報提供事業のアンケート協力件数に関し、議案書では105件となっているが、正しくは111件である旨、訂正があった。会員より、啓発セミナーや勉強会の運営メンバーへの質問があり、新井理事より、勉強会は新井理事、長谷川理事、西田会員が中心となって運営していること、啓発セミナーは山口会員に協力いただいており、今後はより多くの会員に参画していただきたいとの回答があった。次に会員より、ほとんどの大学に障害学生への支援室が設置されているが、視覚障害がある大学生に対して就労などのガイダンスができていないため、タートルとして、そうした場に積極的に出ていくことを考えてもよいのではないかという提案が挙がった。また、東京都内だけでなく、千葉、埼玉、神奈川など、関東近県での相談会を開催して欲しいとの要望に対して、工藤理事より、「前年も、JRPS神奈川のイベントに協力して出張相談会を行った。他の県でも、機会があれば積極的に協力して行きたい」との説明がなされた。

◎第2号議案平成29年度収支決算報告

芹田理事より収支決算報告が行われた。議長より、第2号議案は第3号議案と一緒に採決を行う旨を述べ、出席者の了承を得たのち、議事が進められた。

◎第3号議案平成29年度監査報告

伊吾田伸也監事・下堂園保監事より会計監査報告と業務監査報告が行われた。会計監査については、報告に相違なく、収支が適切に処理されていることが報告された。業務監査については、下堂園監事より、以下3点の評価、要望がされた。

・法人としての黒字転換、および行事参加者の増加は評価すべきである。
・外部への情報発信の強化を図っていただきたい。
・個人情報保護に配慮しつつ、相談業務などで蓄積したデータや知見を活用できる方法を模索していただきたい。

◎第4号議案平成30年度事業計画(案)

各事業担当理事より提案内容の説明がなされた(詳細は議案書参照)。 議長より、第4号議案は第5号議案と一緒に採決を行う旨を述べ、出席者の了承を得たのち、議事が進められた。

◎第5号議案平成30年度予算(案)

収支予算書(案)について、芹田理事より提案が行われた。

4号議案、5号議案について、会員より、平成29年度決算と平成30年度予算では、相談事業の経費が増加している一方、ボランティア協力費が減少している理由が問われた。

松坂理事長より、相談事業の費用増は、旭川で行われるロービジョン学会へ介助含む6名の派遣を予定した旅費の計上であること、事務局経費の減少は、これまで事務局長が視覚障害者であったため補助者として晴眼者のボランティアを頼んでいたが、昨年度より事務局長が晴眼者となり、補助のボランティアが減少したことが挙げられた。

◎第6号議案定款の変更について

芹田理事より、事務所所在地(住所表示)の住居表示変更に伴い、最小行政区画の表示に変更すること、また、平成30年10月1日施行のNPO法改正に伴い「貸借対照表の公告」を定款で定めた方法で行う必要があるため変更することが報告された。

◎第7号議案役員の交代について

清水晃理事より体調不良による退任届けが提出されていること、清水晃理事に代わって、中本英之会員が新理事として理事会より推薦されていることが、松坂理事長より報告された。

〈謝罪〉

理事長 松坂 治男

総会参加の役員のご指摘のとおり総会時の録音を入手し、改めて私の発言を聞いてみました。杉田前事務局長のご指摘のとおり、不適切な発言であり、言葉足りずであったことが確認できたので、ここに発言の撤回と謝罪をさせていただきます。

さらに、総会に参加された皆様をはじめ多くの皆様に、私の発言で間違った認識をお示ししてしまい、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びしたいと考えます。 つきましては、その経緯と内容について本紙面にてご報告させていただきます。

総会において、事務局経費(事務協力費)の増減について会員より質問がありました。それに対して、「これまで事務局長が視覚障害者であったため補助者として晴眼者のボランティアを頼んでいたが、昨年度より事務局長が晴眼者となり、補助のボランティアが不要となったため」という回答をしました。

認定NPO法人の会計処理は、その認定基準として「青色申告法人と同等に取引を帳簿に記録し保存していること」が求められています。具体的には、複式簿記での経理や総勘定元帳等の作成・保存などが必要です。帳簿だけでなく、領収書や契約書などの会計証憑(しょうひょう)もきちんと保管しておくことが重要です。

そのため、経理については専門性が高く経験と知識のあるボランティアに依頼をしなければなりませんでした。事務協力費の中で、経理担当者の費用が大きかったことを忘れておりましたので、「これまで事務局長が視覚障害者であったため補助者として晴眼者のボランティアを頼んでいたが、昨年度より事務局長が晴眼者となり、補助のボランティアが不要となったため」との回答は勘違いであり、誤解を招く発言でしたので、全面的に発言を撤回させていただきます。

私が、理事長を引き受ける際に是非杉田さんに事務局長をお願いしたいと願い、引き受けてもらったにもかかわらず、私の発言で杉田さんの行ってきた仕事に冷や水をかけるようなことになり深く反省をしております。

杉田さんの事務局長としての長年の仕事、これがなければタートルの活動はできなかったこと、これはわたしたちの共通の認識だと思います。晴眼者か視覚障害者か、ということでなく、眼を使う仕事が多い中、しっかりと任務を果たしていただいたことは疑問を挟むことはできません。墨字情報と向き合わねばならないことが多く、どんなにご苦労されたか、それを考えると本当にどれだけ感謝しても足りません。

さらに、総会に参加された皆様をはじめ多くの皆様に、私の発言で間違った認識をお示ししてしまい、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びいたします。

今後については、認定NPO法人の発展を目指して理事長を務めてまいりますので、会員の皆様、そしてボランティアの皆様にはご支援ご協力をよろしくお願いいたします。

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【総会議案】

『第1号議案 平成29年度事業報告』

■活動総括
 理事長 松坂 治男

各事業部の活動は、以下のとおり8割程度実施できたと思う。

1.相談事業は、相談者の情報の一元管理を推進するためのデータベース化の作業を進め、昨年度は763件のデータをまとめ、さらに電話相談の応対時間を追記した。
首都圏以外の相談者にどのようにアプローチしていくかについては残念ながら実施には至らなかった。
その他では、第18回日本ロービジョン学会学術総会(岐阜大会)で事例発表。第9回医療が関わる視覚障害者就労支援セミナーへの協力。また、ネクストビジョンのisee!運動コンテストに応募し、タートルの紹介他、会員9名の事例やアイデアが入選となった。

2.交流会事業は、タートルサロンを継続し、出会いの場の提供と情報交換を行ってきた。交流会、サロンともに予想以上の参加があり、大盛況であった。女子会はメイク教室・お菓子作りの2回実施できた。

3.情報提供事業では、活動風景の写真をホームページに掲載して、タートルの活動を視覚的にもアピールした。ビデオの掲載には至らなかった。
一昨年から実施してきた大学や企業の視覚障害者関連調査・研究に協力した。
情報誌を4回発行し、当事者だけでなく眼科医、関係機関等に配布した。

4.セミナー・啓発事業は、「タートル勉強会」を4回実施した。
2月の勉強会ではジェイリース蒲lの支援を受けて、東京・大阪・福岡をテレビ会議システムで接続して実施できた。
視覚障害者理解のための「出前講座」については、残念ながら企業からの要望がなく実施できなかった。

認定NPO法人として活動していくために事務局の充実が急務であったが、事務局長として晴眼者の理事を迎え、スタッフも増強して体制を整えてきた。

また、活動資金の確保のために寄付や助成金等の獲得に積極的にアプローチしてきた結果、今年度、「年賀寄付金」の助成金を獲得することができた。

引き続き日本盲人職能開発センターから場所の提供等、ご支援とご協力をいただいた。

■相談事業
 副理事長 工藤 正一
 理事 熊懐  敬

1.相談実績
平成29年4月から平成30年3月までの相談の総合計は、延べ件数763件(前年度751件)、実人数では、293人(前年度227人)であった。
なお、実人数293人のうち、初めての人が185人であり、疾患別では、網膜色素変性症58人、緑内障34人、先天性疾患12人、レーベル病7人、視神経萎縮7人、黄斑変性6人、網膜剥離3人、黄斑ジストロフィー3人、錐体ジストロフィー3人、糖尿性網膜症3人等となっている。
相談方法の内訳は、電話318件、メール356件、個別相談89件となっている。
個別相談のうち、眼科医など専門家の同席の下に行われるロービジョン就労相談は12回、実人数31人(前年に同じ)に対して実施できた。

2.関連学会・研究機関への協力
(1)相談の成果を関連学会等を通じて発表し、タートルの存在と役割をアピールした。具体的には、平成29年5月、岐阜市で開催された第18回日本ロービジョン学会学術総会の一環として行われた第9回医療が関わる視覚障害者就労支援セミナーに協力した。参加者数は過去最高の79人であった。参加者の内訳は、医療従事者44人、訓練施設等5人、教育・研究機関5人、職リハ機関5人、企業関係者4人、視覚障害当事者14人等と幅広い。
(2)国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する、障害者対策総合研究開発事業(感覚器障害分野)「視覚障害者の就労実態を反映した医療・産業・福祉連携による支援マニュアルの開発」研究に協力した(過去の相談者へのアンケートの依頼等)。

3.相談の特徴
(1)29年度中に相談を受けた人の主な顛末・成果は以下の通りである。
継続就労している人72人、訓練中もしくは修了した人23人、就職活動中の人18人、再就職した人11人、復職した人10人、休職中の人3人、離職した人2人等となっている。
(注)上記は29年度期末現在における集計速報値である。不詳の人のフォロー等により数値は変わる場合がある。
(2)他団体のイベントに積極的に協力し、面談による個別相談を実施した(東京、神奈川、岐阜、大阪、福岡など、計33人)。
(3)眼科医、委託訓練施設、障害者職業センター(ジョブコーチ含む)等の連携により復職を果たす等の好事例が見られた。
(4)働きながら受けられる「在職者訓練」へのニーズは強いが、提供している訓練施設は寡少である。福祉系の就労移行支援訓練の対象者が、「休職者」にも拡がった意義は大きい。更なる適用拡大が望まれる。
(5)改正障害者雇用促進法の施行後、丸2年、企業の人事担当者や支援者からの相談も散見されるようになった。他方で、無期転換を目前に離職を余儀なくされる残念なケースもあった。
(6)法律上の「障害者」には該当しても、手帳に該当しないために苦労を強いられている人も多い。法制面での改善が急がれる。
(7)70・80歳代の高齢者からのQOL系の相談が増えた一方で、学生(本人または母親)など若年層からの深刻な相談も目立った。

■交流会事業報告
 理事 重田 雅俊
 大阪会場:理事 湯川 仁康 理事 的場 孝至
 福岡会場:理事 藤田 善久

1.タートル交流会
(1)実施日時・場所
9月16日・11月18日・3月17日の3回(各第3土曜日)
実施時間:13時30分〜15時15分
実施場所:東京会場日本盲人職能開発センター
大阪会場日本ライトハウス情報文化センター
福岡会場ジェイリース兜汢ェ支店
(2)実施内容:講師を招いての1時間の講演と30分の質疑応答
@9月16日交流会講師大胡田誠氏
テーマ「共生社会の足音」
参加者数123名(東京105名、大阪18名、福岡台風のため中止)
A11月18日交流会講師外谷渉氏
テーマ「視覚障害者のシステム開発分野での可能性」
参加者数100名(東京71名、大阪7名、福岡22名)
B3月17日交流会講師石原純子氏
テーマ「眼科専門医療施設で働く視覚障害者の役割と思い」
参加者数136名(東京106名、大阪16名、福岡14名)
(3)事業効果
a.共生社会の動向、IT技術者の働き方、眼科で働く意義について見識を広げた。
b.参加者が増えて100名を超すようになり、会場が手狭になってきた。
c.交流会では企画運営の担当を毎回分担して開催することができた。
d.運営担当者全員で会場の避難経路を確認することができた。
(4)課題等
a.専門家・当事者・タートル関係者を講演の柱にし、就労に関する内容でタートル独自の講師を準備していく。
b.スカイプ中継の安定の対策を引き続き確実に実施する。
c.会場収容力を増やすため、四谷センター内の他の部屋も利用できるか検討する。
d.四谷近辺を中心に集合のしやすさなどに配慮し、広い会場の利用を模索する。

2.タートルサロン
(1)実施日時・場所
毎月第3土曜日、サロンのみ実施する場合は14時〜16時
総会や交流会の後に実施する場合は、15時30分〜16時30分(スカイプジョイント会場も同様)
実施場所:交流会の会場で引き続き実施
(2)実施内容:相談活動と会員間の交流
参加者数:東京会場通年538名
内訳:4月27名(女子会11名を含む)、5月25名、6月61名(総会講演後)、7月22名、8月25名、9月95名(交流会後)、10月36名、11月61名(交流会後)、12月23名、1月29名、2月38名、3月96名(交流会後)
大阪では、7月15日(土)に初めて独自開催のサロンが開かれ、13名が集った。
a.定例化で毎回多数の参加があり、多様な話題が提供されていた。今年度は、12回すべての月に実施し、参加者も大幅に増えている。
b.相談窓口からの紹介が増え、毎回初参加者が10名程度になってきた。
c.班分けはできなかったが、初参加の参加者にはそれなりの配慮ができた。
d.女子会はメイク教室(4月15日参加13名)、お菓子作り(10月21日参加14名)を実施した。
(3)事業効果
a.毎月の定例化により参加者も多く、入会に繋がるケースもみられた。
b.重要な相談活動の場であり、タートルと相談者をつなぐ窓口となっている。
c.会員間の主体的な交流の場であり、情報入手の場ともなっている。
d.電話担当者との連携で、毎回初参加者の連絡があり、誘導者も配置できた。
(4)課題等
a.参加者が多いので、全員が自己紹介をした後、グループに分けるようにしたい。
b.個人情報に留意し、責任のある担当者によって引き続き記録をしていく。
c.参加者の氏名と連絡先の記録については、受付を設置して対応する。
d.スタッフや参加者の見識を広げるため、施設見学を実施する。

■情報提供事業

TIT事業 理事長 松坂 治男

1.Webの管理(外部委託)
行事の案内:4回、「情報誌タートル」:4回、お知らせ等を掲載した。

2.メーリングリストの管理(外部委託)
タートルML・会員専用ML・役員連絡用ML
視覚障害者本人からの悩み、本の発刊のお知らせ、他団体の行事へのお知らせ、各種講座の開催情報及び実務で使用しているパソコンの操作方法等、活発な意見交換が行われた。

3.交流会開催時、スカイプを利用した各会場間の通信の安定を図り、ほぼ順調に接続ができた。

4.大学・企業の視覚障害者対象のアンケート調査への協力
(1)国立大学法人東京大学分子細胞生物学研究所
「ロービジョン者における点字誘導ブロックの視認性に関する実験」の実証実験に参加
(2)筑波技術大学障害者高等教育支援センター
「視覚障害者の就職活動における情報アクセシビリティに関する調査」のアンケート調査86件
(3)NPO法人神戸ライトハウスのQRコード実証実験に8名参加
(4)国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する、障害者対策総合研究開発事業(感覚器障害分野)「視覚障害者の就労実態を反映した医療・産業・福祉連携による支援マニュアルの開発」
アンケート調査の実施105件

U情報誌作成事業理事 市川 宏明

1.実施内容
(1)計画どおりに4回発行した。第39号〜42号
(2)40号より紙面をリニューアルした。
新たな提携先(DTP・印刷)を選定し、協力体制を構築した。
表紙にイラスト・写真等を取り入れて誌面を充実した。
墨字版については、背中を閉じる事で、読みやすさと保存しやすさを改善した。
(3)定形外の記事を掲載し誌面の充実を推進した。
資格試験取得奮闘記や、女子会の催し、神戸isee!運動コンテスト授賞式レポートなど

■セミナー・啓発事業
 副理事長 新井愛一郎

1.タートル勉強会の開催
平成16年度から始まった実践的ビジネススキル勉強会をタートル勉強会として、10月、12月、2月、4月の4回開催した。
会場:ジェイリース梶i東京・大阪・福岡支店会議室)
講師からの具体的な報告を踏まえ、参加者の体験を積極的に出し合い、参加者全員で作り上げる勉強会となった。
東京会場は毎回定員の35人に達する盛況ぶりで、興味の高さを感じた。大阪会場、福岡会場も大変熱心な参加が見られた。
12月以降の勉強会はジェイリース蒲lの社内テレビ会議システムを使用させていただき、大阪と福岡と東京をつなぎ、テレビ会議で開催した。通信状況は完璧で何ら心配することなく、3会場の音と映像を共有できた。素晴らしい体験だった。東京しか参加できないという問題点を克服するとともに、将来、このような会議システムがタートルのいろいろなイベントで活用できればと考えることができた。
また、勉強会の録音データのテキスト化を基に編集作業を行い、次年度に向けて公表準備を進めている。
(1)第1回10月7日(土)2時から4時
テーマ:職場での「白杖デビュー」を考える
講師:重田雅俊氏タートル理事、全国視覚障害教師の会代表
職場での白杖利用について実践的テクニックとともにみんなで真剣に考えた。
(2)第2回12月2日(土)2時から4時
テーマ:iPhone・iPadなど、スマートデバイスの働くことへの活用
講師:西田友和氏社会福祉法人ロゴス点字図書館職員
具体的な業務や、働く上で大切な教養や情報取得に積極的に役立てている事例を学んだ。
(3)第3回2月3日(土)2時から4時
テーマ:ビジネスマナーについて
講師:北島恵以子氏
専門講師を招いて、初めてのテーマにチャレンジした。実践的なビジネスマナーの意味について深く考えることができた。
(4)第4回4月28日(土)2時から4時
テーマ:墨字文書にどう対応しているのか
いろいろな墨字文書にどう対応しているかを、4人の事例発表から勉強した。

2.その他の啓発活動
今年度については、それぞれの基本的活動にみんなで集中したと言うこともあり、外部での講演などは、大変少なかった。それらを独立した活動領域としてきちんと設定していくのが大切であり、次年度の課題としていきたい。

■ボランティア関係
 理事 市川 宏明

1.ボランティアの現況(東京)
(1)現在22名が登録しており、昨年比、7名増加である。 新規登録メンバー7名は、全員が活動中である。
(2)駅からのガイド等、ボランティアの配置は総会及び交流会(年4回)で1回の行事に3〜4名を配置した。
(3)東京会場以外のボランティアの状況
(地方会場)「必要なし」といった拠点もある中、現状は登録数が少ない。

2.募集活動
(1)情報誌タートルの「お知らせコーナー」/Web/知人などへの呼びかけ/ボランティア向け企画/ボランティアセンターへのアプローチを実施した。
東京ボランティアセンターのWebや掲示版、地域への紙媒体配布を利用したところ、登録情報からのアプローチがあり、効果が認められた。
(2)「わかりやすい視覚障害者への接し方講座」を2月・3月連続開催した。参加者17名。
ボランティア登録や寄付金のお申し出などがあり、効果が認められた。

3.課題
ボランティア意見交換会は実施に至らず。

■助成金申請
 理事 湯川 仁康

助成金の情報収集に努め、タートルの事業に合致すると思われる1件の申請を行い、以下のとおり採択となった。
(1)申請先:日本郵便株式会社
助成名:2018年度年賀寄附金配分申請
申請年月日:2017年10月23日
申請事業名:中途視覚障害者のための就労相談・支援活動事業
助成決定額:800,000円(2018年3月29日付)

『第2号議案平成29年度収支決算報告』

掲載省略

『第3号議案平成29年度監査報告』

掲載省略

『第4号議案平成30年度事業計画(案)』

■活動方針
 理事長 松坂 治男

「全国に広げようタートルの輪」のキャンペーンの推進。会員1人1人が周辺の人々にタートルのパンフレットを手渡し、会員及び支援者の倍増を目指す。
各事業の活動は以下の通り

1.相談事業は、相談者の情報の一元管理を実施して、データベースの確立を目指す。 首都圏以外の相談者にどのようにアプローチしていくかを検討する。

2.交流会事業は、タートルサロンを首都圏以外で行うことを検討する。また、その中で女子会も試行していく。

3.情報提供事業は、ホームページに活動風景の写真やビデオを追加して、さらにタートルの活動を視覚的にもアピールし、賛助会員及び寄付者の増加に繋げる。
大学や企業の視覚障害者関連調査・研究への協力を実施する。
情報誌タートルを発行し、会員、眼科医、関連機関等に配布する。

4.セミナー・啓発事業は過去8回実施したタートル勉強会をまとめ、ホームページへの掲載と冊子化の検討を行う。さらに次期勉強会の内容を検討し推進する。

平成31年度(次年度)は「認定NPO法人」の更新時期となるので、その対策と準備を進める。また、活動資金の確保のため、寄付や助成金等の獲得に積極的にアプローチする。
今後、役員組織の若返りを緩やかに目指す。

■相談事業
 副理事長 工藤 正一

1.相談は基本的に前年通り、従来の当事者による相談をベースにしながら、電話、メールの相談には随時対応し、必要に応じ、個別面接相談、ロービジョン就労相談(眼科医や福祉施設等の専門家の同席による相談)を行う。また、タートルサロンと連携して個別相談を行い、必要に応じて、ロービジョン就労相談に繋げる。

2.相談体制の充実のために、地方の相談については各地区担当理事等と連携し、スカイプ相談会、現地相談会にも可能な限り対応する。また、相談のノウハウの共有をめざし、相談に対応できる人材の育成に努めるとともに、相談記録の整理・フォローのために、相談スタッフを増強する。

3.平成28年4月施行された改正障害者雇用促進法の趣旨を踏まえつつ、ハローワークや地域障害者職業センター、眼科医や産業医、関係支援施設等との連携を図るため、日本ロービジョン学会等の行事等に協力し、タートルの事業の啓発、情報交換、意見交換を行う。 具体的には次の事業に協力する。
@第19回日本ロービジョン学会学術総会(2018年6月15、16、17日、「旭川市大雪クリスタルホール」)の、17日開催の「第10回医療が関わる視覚障害者就労支援セミナー(テーマ『眼科における就労支援と職業リハビリテーション(仮題)』)」に協力する。
A前年度に引き続き、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する、障害者対策総合研究開発事業(感覚器障害分野)「視覚障害者の就労実態を反映した医療・産業・福祉連携による支援マニュアルの開発」研究に協力する。

■交流会事業
 理事 重田 雅敏

1.タートル交流会の開催
趣旨・目的:講演会を実施し、視覚障害者の就労に関する情報を提供する。
実施日:9月22日(第4土曜)・11月17日(第3土曜)・3月16日(第3土曜)の3回開催。
内容:専門家・当事者・タートル関係者を講師に招き、1時間の講演と30分の質疑応答を通して、視覚障害者の就労に関するタートル独自の情報を提供する。
実施場所:東京会場日本盲人職能開発センター
大阪会場日本ライトハウス情報文化センター
福岡会場ジェイリース兜汢ェ支店
を予定している。なお、各会場をスカイプで中継する。

2.タートルサロンの開催
趣旨・目的:相談活動と会員の主体的な交流の場を提供する。
実施日・回数:毎月1回第3土曜日に実施。総会のある6月は、総会後に実施。
内容:会員が自由に参加できる相談・情報交換・交流の場を提供し、知識や経験のあるスタッフが対応する。
実施場所:東京会場日本盲人職能開発センター
大阪と福岡については、主に交流会後に引き続き行う予定。
女子会をランチ会も含め3回程度企画する。

3.地方交流会と宿泊幹事会
趣旨・目的:会員相互、特に地方会員との交流と親睦を図る。
どのような企画が効果的か検討し、今年度中の実施を摸索する。

■情報提供事業

T.IT事業 理事長 松坂 治男

1.Webの管理(外部委託)
お知らせや「情報誌タートル」を掲載する。
映像なども取り入れ、タートルの活動を視覚的にも解りやすく工夫する。

2.メーリングリストの管理(外部委託)
タートルML・会員専用ML・役員連絡用MLの管理と運営

3.交流会等の開催時、スカイプ中継の安定通信を図る。
パソコン等の機材の老朽化への対策を検討する。

4.大学・企業による視覚障害者対象のアンケート調査及び視覚障害者関連調査に協力する。

U.情報誌作成事業 理事 市川 宏明

1.年4回、6月、9月、12月、3月発行予定。
中途視覚障害で悩んでおられる方に役立つ情報誌の提供に努める。
基本媒体は墨字版。会員へは希望によりメール配信、DAISY版、テープ版を1種類送付する。
DAISY版、テープ版の作成と郵送は「東京YWCAお茶の水朗読ボランティア」に引き続き委託する。
誌面の充実に努め、協力セミナーの告知など誌面の内容に合致したトピックの掲載も検 討していく。

2.業務担当者を分業化して業務効率の向上に努める。

■セミナー・啓発事業
副理事長 新井 愛一郎

T.タートル勉強会
2年にわたり、8回の実践的ビジネススキル勉強会を開催してきた。
[これまでに取り上げたテーマ]
・インターネットで情報の入手をどのようにするか?
・データや資料をどのように保存して、いつでも活用できるようにしていくか?
・素早くメモをどのように取るのか?
・メールの操作
・職場での「白杖デビュー」を考える
・iPhone・iPadなど、スマートデバイスの働くことへの活用
・ビジネスマナーについて
・墨字文書にどう対応しているのか?

1.これらの勉強会の企画にあたり大切にしてきたことは、成果をきちんと残して多くの方に活用してもらい、こんな工夫をすれば具体的に働くことが可能である、ということを明らかにしていくことである。今年度はこの成果を整理してHPに掲載していくとともに、冊子にまとめ、多くの当事者や関係者に届けていくことを目標とする。

2.次の勉強会に向けて(2019年2月・4月開催予定)
まず、具体的にどんなことが課題なのか、しっかりと当事者の声を反映させていきたい。「こんな作業に戸惑っている。」、「この点はどうやっているのか?」といったみんなからの要望をテーマにして今後の勉強会を企画する。
また、開催にあたってはジェイリース蒲lの社内会議システムをお借りして、大阪・福岡・東京をテレビ会議で繋いで開催し、今後の発展のために次のステップを考えていきたい。

U.その他の啓発活動

1.基本的な活動
まず、みんなで進めていけることとして、タートルのスタッフや会員が眼科や役所に行った際には、タートルのパンフレットやガイドブックを置いて来るといった地道な活動がある。基本にかえって啓発活動を進める。みんなのカバンの中にいつもパンフレットを、と言うことから始めよう。

2.企業や団体への講師派遣
多くのタートルのメンバーが地域などで視覚障害者理解のために講演などをしている。このような活動のできる人材が当会には多くいるのだから、視覚障害者の思いを私たちはきちんと代弁できる存在だと思う。今年度は、とくに退職後の方の活動としてもっと重視したいと思う。ホームページに「出前講座」についてアピールしていきたい。

■ボランティア関係
 理事 市川 宏明

1.ボランティアの募集
ボランティアセンターのWeb掲載や地域へのチラシ配布を利用する。
大学等への協力要請を継続する。
各拠点会場に赴き交流会の現状、ボランティア環境について現地担当者と意見交換する。

2.業務
セミナー、サロン開催時にもボランティアの配置を拡げる。各2名程度。
業務内容の精査を継続し、ボランティアの皆様にさらに活躍していただける環境を整備する。
募集からOJTといったプロセスを明確化して効率的に運営をする。

3.視覚障害者の誘導/接遇等の研修の実施の充実。
「視覚障害者との接し方講座」を継続して実施する。
「ボランティア意見交換会」を実施する。

■助成金申請
 理事 湯川 仁康

平成30年度各事業計画に合致する助成金の情報を入手し、各事業担当理事と協調しながら申請していく。

『第5号議案平成30年度予算(案)』

掲載省略

『第6号議案定款変更について』

1.事務所、所在地の変更について
【改正理由】新宿区本塩町区域の住居表示変更に伴い、最小行政区画の表示に変更する。
【改正前】
(事務所)
第2条この法人は、主たる事務所を東京都新宿区本塩町10番3号 社会福祉法人日本盲人職能開発センター東京ワークショップ内に置く。
【改正後】
(事務所)
第2条この法人は、主たる事務所を東京都新宿区に置く。

2.公告の方法の変更について
【改正理由】平成30年10月1日施行のNPO法改正に伴い「貸借対照表の公告」を定款で定めた方法で行う必要があるため。
【改正前】
(公告の方法)
第54条この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う。
【改正後】
(公告の方法)
第54条この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う。ただし、法第28条の2第1項に規定する貸借対照表の公告については、この法人のホームページに記載して行う。

『第7号議案役員の交代について』

理事清水晃氏から辞任の申し出があり、理事会で承認されたので報告する。
運営委員中本英之氏を理事に推薦する。

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【平成30年度総会記念講演】

『視覚障害の認定基準はどう変わるのか、今後めざすべきFVSとは〜新基準とFVSの違い、そして英国の場合、その手厚い制度〜』

甲府共立病院眼科科長
加茂 純子(かも じゅんこ)氏

今日は、FVS(Functional Vision Score/注・視野と視力を統合してスコア化するもの)に詳しいということで呼ばれましたが、オランダや英国の話もできると思います。視覚障害はほんの少しであっても就労できなくなってしまいますので、オランダのように矯正視力0.5未満、視野半径30度未満でも視覚障害と認める方が良いと、最近では思うようになっています。

FVSはもともと労働保障のお金の計算のためにできた法則で、医師は行政にわかりやすいようスコアを出し、どこから給付するかは行政に決めてもらうというものです。そしてスコアに応じてどんな補装具が必要なのか、歩行に杖が必要かという予測もできます。また、英国の良い点としては眼科に視覚喪失アドバイザーがいて、医師の診断を受けて心理的ショックを受けている人を受けとめ、日本の手帳にあたるCertificate of Visual Impairment(CVI)を医師に書いてもらう手助けや登録の手伝いをすることで、リハビリに結びつけるような寄り添う職種があることです。

私は2016年の秋にバーミンガムのRNIB(Royal National Institute of the Blind・イギリス視覚障害者協会)で4日の講習を受け、昨年に東京のBritish council(英国文化振興会)で英語のテストとレポートを出し、日本人としても医師としても初めて視覚喪失アドバイザー(Eye Clinic Liaison Officer)、ECLOという資格を取って参りました。

また、2017年には、オランダの宿泊型視覚リハビリ施設も見学しました。オランダという国は九州ぐらいの大きさの国で、リハビリには26週間ほどかかります。その間、家族から離れていると、家族も別のことを考え出してしまう危険があるため、週末に帰宅ができるのです。そして、そのタクシー代を払ってくれるのはすごいなと思いました。今日は3本立てで話をしますから、間に質問時間を入れた方が良いのではないかと思います。司会の方、よろしくお願いします。

では、最初に「FVS(Functional Vision Score)」について、次に「新しい認定基準」について、3番目に「英国の中途失明者に対する制度」について話をしたいと思います。

(T)「FVSについて」

まず、「FVSについて」ですが、Functional Vision Scoreを開発されたのは、コーレンブランダー(Colenbrander)という先生です。 現行の身体障害者法での視覚の件ですが、実は様々な不具合がありました。何が問題かというと、そもそも国際基準ではないため、盲やロービジョンの統計が取れないことです。また、私がこの道に入り始めたきっかけにもなりますが、甲府共立病院には静的視野(検査)しかなく、視野の検査室にご自分でスタスタと歩いて行ける方でも、静的視野で測ると視野が全く真っ黒になってしまい、静的視野と動的視野にはとても乖離があるということでした。そして(様々な不具合の中には)、視野面積が半分と、10度以内の求心性狭窄の間の考慮が欠如していたことがありますが、今回の改定で少しは良くなってきています。

次になりますが、(新しい基準は)良い方の眼での評価になります。ただ、片目が0.6でもう片目が0.02であれば6級になるのに、0.2や0.3のロービジョンの方が恩恵を受けないという問題点があります。また、代償されない複視や動揺視、無虹彩で羞明、後天性色覚異常、手術やボトックスでも治らない眼瞼下垂や、眼瞼けいれんで苦しむ患者様への対応がないという指摘がされています。また、両耳側半盲の場合には、固視点からずっと遠方に暗点があるのに5級と認められません。あとは全人へのインパクトという概念がございません。

その一方で、AMA(米国医師会)による視覚基準であるFVS(Functional Vision Score)の等級づけは、そのまま国際基準級と結びついています。これはどなたでも、Web上で「Visual Standards Aspects and Ranges of Vision Loss」でダウンロードできます。またAMAのGuides6版12章に詳しいです。これを翻訳してFVS研究会から教科書も頒布されています。今日は3部ほど持って来ましたが、1,000円+送料でホームページからの申し込みもできます。PDFも作ってありますが、パスワードが必要ですのでお知らせくだされば対応いたします。

さて、視覚系の計算ステップですが、視力スコアと視野スコアがあります。視力スコアと視野スコアをかけたものを100で割るとFVSになりますが、視力のスコアでは小数視力の1.0が100、0.1が50で、0.01が0となっています。 また、LogMAR視力表というのがありますが、これは良い方の視力が小数点でマイナスになります。そして小数視力の0.01がLogMAR視力では2となってわかりにくいため、それを是正するのに100+50×Log10(小数視力)=VASという式がございます。そして、その人がどう機能するか知るために、別の式があります。先ほど出たVisual Acuity Score(VAS)を、両眼は3倍、右眼を1倍、左眼を1倍し、それを足したものを5で割ると、Functional Acuity Score「FAS」という、機能する視力スコアの値が出ます。

同様に視野スコアも検出した点を数えます。それは後ほどお見せするグリッド(方眼状のもの)でカウントしますが、同様に両眼は3倍、右眼を1倍、左眼を1倍し、それを足したものを5で割ると、機能する視野スコアの「FFS」というものになります。

この2つ「FAS」と「FFS」をかけて100で割ったものが「FVS」ですが、もちろん視力と視野だけでは表せないものがあるため、両眼視、立体視、動揺視、羞明、グレア、後天性の色覚異常等、今まで出来たことが出来なくなってしまうような要素に対して、15点までをマイナスすることができます。

この「FVS」の良い点は、両眼視を重視して、しかも片眼の欠損を無視しない点になります。そして片方が100でない限り、必ずスコアは小さくなります。例えば「FAS」と「FFS」が70であった場合、掛け算をして100で割るとすると49になりますよね。アメリカではFVS50以下は保障を受けられるので、とてもお得なシステムなっているように私は感じます。掛けて少なくなると変ではないかと言うかもしれませんが、やはり視力も視野も悪いと実際に機能が落ちるので、ちょうどADL(日常生活動作)に即しています。

計算の手順ですが、視力は右と左の他に、できれば両眼も測ります。次のページに出てきますが、1mのロービジョン視力表であれば、文字数がいくつ見えたかでVASの値が出ます。また従来の視力表であれば、先ほど言った式のVAS=100+50×Log10(小数視力)で計算ができます。これは1mの視力表ですが、折りたたんで病棟等に持って行って使うことができます。上のところにコードがついていて、その先端に遮蔽子がついているため1mをしっかり測れますし、患者が一番見やすい位置で測れるようになっています。値段は55ドルで日本の代理店はテイエムアイがしており、1万円ぐらいで入手可能です。最近は数字のチャートも出たので、お年寄りなどにも対応できるかと思います。また、ランドルト環の1mの視力表もあって、はんだやさんで2万円で売っています。

こちらは4段階ごとに程度の分類ができます。一番上の4段はプロファウンド・ロス(極度視覚喪失)、次がシビア・ロス(重度視覚喪失)、その次がモデレート・ロス(中等度視覚喪失)、そしてマイルド・ロス(軽度視覚喪失)というように、どこまで見えたかで大体の視機能状態がわかります。

FVSの良いところは、それぞれのスコアに応じて、その方がどのような能力を持っているのか、そういう見積もりができるところです。正常視覚(クラス0)は上の4つで、小数視力でいうと1.6〜0.8までなら正常の読書スピード、正常の読書距離、小さな活字への予備能力があることになります。次に、軽度視覚喪失(クラス1)ですが、小数視力で0.6〜0.31までは正常の読書スピードがありますが、読書距離が近くなります。小さな活字への予備能力がなくなります。普通のお年寄りなどはこの辺に入ると思います。

昨日、外来で70代の内科の先生が、電子カルテがちょっと見えにくいとおっしゃって、ハズキルーペを試されたそうです。今、すごくテレビで話題になっているから皆様もよく聞かれると思いますが、拡大されたものを見ていると何か酔ってしまうということでした。そこで画面を手前に寄せることを考えて、キーボードも本当に必要な所だけやって、本当にギリギリの所で見るようにしたら、見えるようになったそうです。そういうことで、高齢の内科の先生も軽度の視覚喪失に入っていると思いましたが、それでも「正常の視覚」という等級にはなっています。

そして、「ロービジョン」は次のクラスからになります。中等度視覚喪失(クラス2)は小数視力で言うと0.25〜0.125です。VASのスコア70〜55ぐらいまでは、読書補助具を使えばほとんど正常で、低倍率の拡大鏡または大活字を用います。このぐらいであれば、ご自分のポケットマネーで拡大鏡を買ったりできるので、たぶん行政の補助は要らないようです。次のクラスですが、小数視力0.1〜0.05までは、重度視覚喪失(クラス3a)と言います。読書補助具を用いて普通よりゆっくり読む、高倍率の拡大鏡を用いるということで、ちょっと行政の補助が入ってくるようです。 最後の2つのクラスが「盲(ブラインド)」ですが、小数視力でいうと0.04〜0.02ぐらいで、極度視覚喪失(クラス3b)となります。読書補助具を用いてどうにかこうにか読む、部分的に拡大鏡を使うが、録音されたものを好むという形になります。0.02未満になると、視覚的な読書はなくなり、録音されたものに頼る、点字または非視覚的な情報を利用するようになります。眼科でロービジョンケアを始めたばかりの施設であっても、こういったスコアが出ればある程度は予測ができるため、どういった補助具を勧めたら良いか参考になって、とても良いのではないかと思います。

視野に関しては、ゴールドマンのIII/4eという視標を用います。日本ではI/4とI/2という少し薄暗い視標を用いていますが、もう少し明るく大きい視標で測っています。(注・視標Vは検査時の光面積が4mu、Tは1/4mu。光輝度は1から4まであり4が一番明るく、さらにa〜eに分かれる。)それで視野半径が60度であれば、正常の視覚オリエンテーションと移動のスキルがあることになります。次の視野半径が50度〜40度、あるいは片眼を喪失した場合には「軽度視覚喪失(クラス1)」で、正常の視覚オリエンテーションとモビリティ(移動スキル)があって、スキャニング(キョロキョロすること)がもっと必要であり、横からのイベントに時々驚くことになります。片眼が全く正常であれば、FVSでも「ほとんど正常視覚」に入りますし、片眼がちょっと悪ければ「ロービジョン」に入りますが、いろいろと工夫することでロービジョンにすることもできます。

次に、上半分の視野喪失、あるいは半径が30度未満〜20度未満になると、「中等度視覚喪失(クラス2)」になります。この範囲はほとんど正常のパフォーマンスですが、物を見つけるのにスキャニングを要する形です。そして、次に「重度視覚喪失(クラス3a)」になります。同名半盲で右半分や左半分が見えなかったり、下半分の視野喪失になると、求心性視野狭窄の10度〜8度未満と等しくなります。このクラスになると、視覚による動きが正常より遅く、常にスキャニングの必要があります。あるいは杖が補助として要るかもしれません。

次が「極度視覚喪失(クラス3b)」です。半径が6度〜4度になって、VFSは30度〜15度になり、物を探すのに杖が必要になりますが、物を見つけるのに視覚を使うかもしれません。そして平均半径が2度以下になりますと、視覚によるオリエンテーションは信頼できなくなり、杖か音、盲導犬、または他の盲の移動スキルに依存することになります。慣れていないORT(視能訓練士)や医師であっても、このようにスコアが出て「ブラインド」の範疇に入れば、歩行訓練士に紹介した方が良いということがわかると思います。

具体的に言いますと、VISUAL FIELD SCORE(VFS・視野スコア)カウントの概説になりますが、半径10度以内には(視認点数が)50点があって、外側に50点があります。下の視野はとても大切で読書や歩行にも必要なので60点を与え、上は40点という分布になっています。この半径10度以内に50点を配置する理由としては、中心10度は後頭葉視覚皮質面積・体積の50%占めることもあります。それで下方に50%加重してあるので、半盲でも50点となります。

グリッドの具体的な配置ですが、上の経線は2本で下の経線は3本あります。水平線と垂直線にかかっていない理由ですが、同名半盲が垂直線にかかってしまい、カウントする時に入れるかどうかを迷うため、そこは避けてあります。また水平線も避けてありますが、これは緑内障の鼻側階段で急にガタッと水平線にかかる時があり、カウントが難しいためにわざと避けてあります。また10度以内では2度に1点、10度以上では10度に1点があります。

この視野の有用性についてもう少し詳しく言うと、中心10度に(視認点数が)50点あるのは不均等に思われるかもしれませんが、いくつかの理由があります。先ほども申しましたが、1番目に中心10度は視覚皮質の50%を占めるということ。2番目に機能的観点から10度以内は50点が読書のために、10度より外は50点が移動のためにあります。そして、実用的な観点からすると、以前のルールを維持するということで、視野半径10度以内への制限と0.1以下への制限が等しいことがあります。

Colenbranderグリッドをクリアシートに写して、左右を合成して両眼の視野を作ります。エクセルシートを用いてFASやFFS、FVSを出します。このグリットは、私ども「山梨県視覚障害を考える会」の「FVS資料集」の中にあるので、ダウンロードすることができます。

ご覧になれる方はどういう配置なのか見ていただくと、先ほど申したように上の象限には2本の経線が、下には3本の経線があるような配置になっております。これをゴールドマンの視野の上にかぶせて、見えない点については右眼はスラッシュで消します。それが終わったら、同じ透明シートを左眼のゴールドマンの視野にのせて、見えないところを逆スラッシュで左上から右下に向かって印をつけると、バッテンの所は両眼で見えないことになり、それ以外の点をカウントすると両眼のVFSということになります。

FVSの特徴としては、静的視野と動的視野の乖離が少ないことがあります。私どもが第64回の臨床眼科学会で発表したのですが、相関係数0.97というあり得ないほど良い相関で、ほとんど一致しておりました。境目の方は1クラスぐらいずれることはありますが、ほとんどが同じクラスに入ります。FVSは簡易ではありませんが、判定医間および判定医内での差が出ないということです。現行の日本の規定よりも、FVSの方がVFQ−25(音声ではVFS25)という質問表と良い相関があることがわかっています。また、国際基準であるため、同じスコアリングで国際的に通用し、原因疾病の統計比較や失明予防対策の議論に役立ちます。

これがWHOの国際統計と合っているという話ですが、FVSの0〜12が「(ほとんど)全視覚喪失」で、FVSの93〜100が「正常視覚」です。その間は20ごとに分かれているのですが、FVSの0〜32が「ブラインド」で、72〜33が「ロービジョン」ということで、WHOの国際統計範囲と合致していて、日常生活活動をパーフォームするために見積もられる能力がある程度はわかります。ただ、統計的な見積もりであって、個人では異なるということです。

また、数値で表すと視覚障害の全人に対する機能障害も計算できます。視覚の喪失が50点までなら全人に対する障害の50点ですが、50より大きければ計算式としては50+0.7×(VPI−50)となります。視覚の喪失は身体の喪失において、何よりも全人に対するインパクトがあることになります。

国際基準での各科の共通のクラスですが、クラス4が一番強い障害になっています。継続的な治療にかかわらず、いつも重度の異常があるのがクラス4ですし、間欠的に非常に重度の異常があるのもクラス4になります。また、クラス3は継続的な治療にかかわらず、いつも中等度の異常または間欠的に重度の異常があります。そして、視覚に限ってはこのクラス3が、より重い3bと3aの2つに分かれています。また、クラス2のところは継続的治療にかかわらずいつも軽度の異常があるか、間欠的に中等度の異常があるということです。クラス1は継続的治療によりいつも正常か、間欠的に軽度の異常となります。

それで、他の臓器の全人へのインパクトを見ると、例えば不整脈で一番重度のクラス4では冠動脈疾患で45〜65%ですし、クラス4は糖尿病でも取れますが16〜28%になります。糖尿病で取れるということですが、ヘモグロビンA1cが治療にもかかわらず10以上の方はクラス4に入ります。また、ヘモグロビンA1cが治療にもかかわらず8〜10の方はクラス3に入ります。

視覚障害の方には、糖尿病も合併している方がかなり大勢いらっしゃるので、合わせて重い級が取れるのではないかと思います。それに対して視覚のクラス4は76〜85%になります。また、クラス3bは63〜76%、3aは48〜62%でとても重いです。ちなみに聴覚障害で、両耳が全く聞こえない方のクラス4は35%になります。そういう点からも、やはり視覚は重く取って欲しいことがわかりますし、日本では同じ1級であっても重みは全々違うと思います。 FVSは以上になります。

(U)「現行の法律の改定・新しい認定基準について」

今回「視力の和」という基準が改善されたので、ちょっとチェックを入れましたが、{視力にLogMARの概念がない}というのは、少しだけ考えられているようです。これは後ほど説明します。そして「正常の視野が大きすぎる」というのはそのまま残っていますが、逆に視野の5級は取りやすいと思います。視力ではロービジョンの谷間になっている人を、逆に視野の5級で取ってしまえば、手帳をもらえるところが残っていると思いました。

そして、動的(視野)と静的(視野)の乖離ですが、エスターマンテストが使われることになり、エスターマンは(視標サイズ)V−(感度)10dbなので、静的と動的でかなり一致した結果が出るようになりましたが、本当にロービジョンの場合、10−2プログラムはあまりにも仄暗い光となり過ぎて、検査の途中で嫌になってやめてしまう方がいます。悪くなればいいというのはどうかなと思うところもあって、私はちょっと疑問に思います。

また、求心性視野狭窄に関しては、「求心性」がなくなったので良かったと思いますが、同名半盲がどうかと言うと、そこはあまり変わっていません。そして、異名半盲は残っているし、代償されない複視や動揺視も考慮されていない感じがします。

ここで、厚労省から出されたものをスライドで映します。改正の要点ですが、両眼の視力の和であったが、両眼の視力の和ではなく、良い方の眼の視力で認定するということになりました。そしてゴールドマン型視野計の製造中止、ならびに日常診療における自動視野計の普及があるので、ゴールドマン型視野計、自動視野計のどちらでも等級認定ができるようになりました。ゴールドマン型視野計はスイスのハーグストレイト社では製造中止になりましたが、日本のタカギでは依然として作っているので、ゴールドマンでの視野検査を続けることはできる筈です。

現状の判定では、I/4イソプタ(視標)で両眼とも10度以内の症例は、それに続くI/2イソプタ(視標)を用いた判定基準で4級、3級、2級に進むことになっていましたが、今回、I/4の8主経線が80度未満の場合、4級ではなく3級、2級に進めるようになりました。以前は本当に中心部が求心性の10度以内でないといけませんでしたが、8主経線が80度以内となったことで、横に寄って真ん中が見えなくても、先に進めるようになったのは良くなったと思います。また、中心暗点があれば、その度数を引けるようになりました。

もう少し具体的に言いますと1級は0.01以下、2級は0.02以上0.03以下ですが、例外があって0.04でも片方が手動弁以下なら2級に入ります。3級は0.04以上0.07以下ですが、この場合も0.08でもう片方が手動弁以下なら3級に入ります。こちらには書いてありませんが、あとの表でまた説明します。4級は0.08以上0.1以下です。5級は片眼が0.02以下で、他眼の視力が0.2以下のものです。6級は一眼の視力が0.02以下で、他眼の視力が0.3以上0.6以下のものです。

これは私の感想ですが、WHOでは0.04以下が「盲」になります。「盲」であれば本当に視覚を用いての仕事はできないわけですから、全員1級にしてしまえば良いと思いますが、なぜか3級になっています。6級は一眼が0.3以上0.6以下で片眼が0.02以下でなければ取れませんが、両眼0.2以下は谷間になっています。どうして片眼0.02以下にこだわるのか、それが不思議です。

先ほど「LogMARの概念がない」と言いましたが、この表は雑誌『日本の眼科』に私が2011年に投稿したものを用いて線を引っ張っています。この時はICD−9(国際疾病分類第9版)で、「ブラインド」の範疇が0.016以下だったので、そこを1級としたようですが、ICD−10(同・第10版)では、以前の極度ロービジョンである0.04以下が「盲」になっているので、国際的にもそこが「盲」で良かったのにと思っています。

厚労省から出ていた図ですが、1級の0.01以下がここにあります。(2級は)0.03以下ですが、この0.04と片方が手動弁の箇所が少し飛び出しています。そして、3級はこの黄色い箇所ですが、0.08と手動弁の箇所がはみ出しています。ここは、ちょっと皆さんの気づかないポイントかと思います。あとは、0.2の5級と、6級がこのようにありますが、一番お得なのは0.6と0.02の箇所です。ここはFVSで計算すると74点取れて、手帳を貰えます。ですが、同じ74点でも0.5と0.04の箇所は貰えませんし、こちらの0.4と0.1の箇所、0.3や0.2の箇所も貰えません。

一番気の毒なのはこの57点のところで、0.2と0.03の方は貰えません。こちらの0.6と0.02の方は貰えるので、「ずるい」と思ってしまう範囲が残っています。一応、ロービジョンは72点未満ですが、この辺は本当に補助具を用いれば見える可能性があるところなので、「ここを入れるのであれば、こちらも入れてあげたら良いのに」と、個人的には思います。

そして、視野の規定です。以前からあった5級はI/4視標で視野が半分以上の欠損というのは、皆さんもご存知だと思います。今度新しく加わったのは、I/2視標を用いて両眼の中心視野角度8主経線を足し、56度以下であれば5級が認められるようになったことです。これが新しい点です。そして、I/4視標は先ほども少し出てきましたが、8主経線を足して80度以下であれば次に進むことができ、I/2視標によって56度以下であれば3級、28度以下であれば2級ということになりました。

一方、静的視野では両眼開放エスターマンテストがあります。どういうレイアウトなのか後ほどお示ししますが、満点が120点になります。そして、100点以下で5級が取れるというのは、お年を召してまぶたが下がっても取れるぐらいの、かなり緩い基準となっています。

また10−2のプログラムといって、半径10度以内に測定箇所が68点あるプログラムで検査をした時に、26dbの測定箇所が40点以下であっても5級が取れるようになりました。これが加わった点です。つまり、エスターマンテストで70点以下で、なおかつ10−2プログラムで26dbの箇所が40点以下であれば3級、20点以下なら2級というのが新しくなったところです。ですから、視野については以前より障害に合わせた認定ができるようになっているかと思います。

これはホームページでご覧いただけるので覚えなくてもいいですが、実際には委員会がいろんな基準を出して来ました。昨年、臨床眼科学会での演題を出そうという時には5級でしたが、私が演題を出したため、視野学会の偉い先生が考え直して改定した実際の事例がありますので、ちょっとご紹介をしたいと思います。

73歳の男性で糖尿病歴が20年になります。10年前に右下肢を切断して、今回左の足指の壊疽(えそ)にて入院中に紹介があり、来科されました。他の眼科で糖尿病網膜症、黄斑症に対しての汎網膜光凝固後に、網膜全体の萎縮や2次性の緑内障がありました。矯正しても読書ができず、音声から情報を得るのみです。以前に義足で杖歩行をしていた時も、周囲が見渡せずに転倒することもしばしばあり、仕事もできないということです。右眼の視力は光覚弁で、左眼が0.3になります。(この後で「左眼はほとんど見えない」とか、10頁7行目でも「右眼が0.3」と言っているので、左右が逆転しているかもしれません) 次に、OCT(眼底三次元画像解析)や視野を供覧しますと、これは見慣れないかもしれませんが、赤い箇所はだいぶ薄くなっているところで、網膜も離剥化しています。視野ですが、左眼はX/4すら見えませんが、右眼はI/4eが10度を超えています。今までの規定では、10度以内の狭窄ではないため、5級しか取れないことになっていました。

これが8主経線になりますが、今回の改定では耳側17度、鼻側8度というように全部を足すと69度となり、これは80度以下になるためI/2視標で計算をすることができます。この方はI/2が2度しかなかったので、2級を取れるようになりました。そういうふうに、今までは視野で認められなかった方が、認められるようになりました。

同じ症例をFVSで計算してみると、左は全く見えないので、先ほどのColenbranderグリッドでは0になります。この赤いところですが、数えると50点あります。Colenbranderグリッドはもう良いかと思いますが、視認点数が中心に50点、外側に50点、上に40点、下に60点あります。

これは私が考えたエクセルシートですが、先ほど視力が0.3でしたので、右眼のところに0.3と入れ、光覚弁がある方の場合は0.01以下なら全員0.01と入れます。そうすると両眼で0.3となり、機能する視力スコア(FAS)は59になります。右眼のVFS(視野スコア)が50で、左眼が0だから0を入れるかと思いますが、実は中心暗点ルールというのがあります。

これは、視力がとても少ないとVAS値(視力スコア)が大変小さくなって0になるため、両方が0では重くとり過ぎるということで、ここには中心暗点ルールの50を入れます。そうして計算すると、機能する視野スコア(FFS)は50になります。FASの59とFFSの50をかけて(100で割る)とFVSは30となり、クラス3bの「盲」の領域に入ります。視力は6級ですが、I/4eが80度未満でI/2が28度以下なので、視野で2級が取れるようになりました。一方で、国際分類でもFVSが30なので3bで「盲」のクラスに入ります。

次に静的視野に移ります。エスターマンテストと10−2プログラムということですが、エスターマンテストは、先ほども申し上げたように視認箇所が全部で120点あり、水平部にたくさんの点があります。どうしてかと言うと、緑内障では鼻側階段と言って、このように水平線のところに欠損ができるため、ここに多くの視認点があります。 そしてビエルム暗点といって、マリオット盲点から球状の暗点もできるため、15度のところにも多くの視認点があります。これは緑内障の専門家が緑内障の進行を調べるために開発したプログラムなので、緑内障のちょっとした欠損も捉えることができるのです。この図は小さくてわかりにくいのですが、欠点は半径7度以内に刺激点が1つもないことです。

実際に半径7度以内はとても重要で、暗点ができると読書が遅くなったりすることがあるので、そこはとても必要です。 そして、それを補うために10−2プログラムが組み合わされました。これは68点を測定するのですが、それぞれどのdbで答えられたかを数字で記録します。数字が高いほど、ほの暗い光になりますので、その数字の26db以上が40点以下なら3級、20点以下であれば2級ということで、医師が勘定しなければいけなくなりました。患者さんも2つの検査をしないといけませんし、判定する医師にとってもこれは手間がかかることだと思います。

それでは、実際に網膜にグリッドを通して見てみます。前に座っていてよく見える方しかわからないと思いますが、半径10度以内の50点はこのくらいで、ここに50点があって、その外側に50点があります。エスターマン・スコアでは中心7度以内には全く刺激点がなく、点の配置はぽつぽつと今指し示しているくらいです。 10−2プログラムは半径10度以内に68点がありますから、このような部分に68点が多くあるわけです。さて、この10−2プログラムですが、視野の深さまで測るため、とてもほの暗い光も出されます。そのために途中で眠ってしまったり、やめてしまう患者さんがいるかもしれません。

これがColenbranderグリッドです。先ほどから何度も出ていますが、罫線は25度、65度、115度、155度、195度、225度という具合になっています。中心からは1度、5度、3度、9度に配置され、あとは15度、25度、35度、45度、55度というように配置されています。また、エスターマン・スコアの配置ですが、一番上は23度36度、外側は75度3度、下は8度−57度というように並んでいます。そして、上の象限には19点、下の象限には41点ございます。 水平線上に多くの刺激点があります。エスターマン・グリッドをColenbranderグリッドの上に重ねると、赤がエスターマンで、黒がColenbranderですが、中心にColenbranderグリッドがたくさんあることが、おわかりになるかと思います。

ここで、今回の改定で救われない症例のことも、少し言わせていただきたいと思います。重度の眼瞼けいれんや、羞明で目を開けられない症例等がございます。2015年4月に、東京のある先生から県内在住の52歳女性が紹介されました。目が全く開かなくて、まさにブラインドの状態です。2回ほどボトックス注射をして少しは目が開くようになりましたが、注射をして1か月ほどで下肢の筋力低下があって、くずおれるようになったため、ボトックスを拒否されています。神経内科の先生に相談し、ボトックスとは関係が無いという説明をしても受け入れません。また、MRIも閉所恐怖症があるために拒否されています。

このように医療関与を拒否され、経済的にも問題があって身体障害者手帳の1級を申請しました。眼瞼下垂と書かれたのですが、「認められない」ということで返却されました。ここにはビデオがリンクされていますが、このように目が開けられません。一生懸命に目を開けようとされますが、こんな具合です。運転はもちろんのこと、日常生活も手さぐりの状態です。音は出ていませんが、今お話したようなことを言っていらっしゃるので、このような状態であることがわかっていただければ良いと思います。

次に進みます。異名半盲には両耳側半盲というものがありますが、日本の身障者5級の規定では、ゴールドマン等では1つの平面でしか視野を測りません。そのため、両耳側半盲は右と左を合わせると、あたかも全視野があるかのようになってしまいます。

また、視交叉部に障害があると右と左の連結がなくなるため、Hemifield Slide Phenomenonというものが起こります(注・Hemifield Slide現象とは、単眼の鼻側半視野間にずれが生じ、視界の中心部に視覚異常が生じること)。そして、右と左が上下にずれたり、重なったり離れたりして、字が二重になったり消えたりする現象も起こります。これは絶対に不便なので認めたらいいと思って、視野学会で論文を出しました。しかし、「そんなことは昔からわかっていたことで、新しいことではないから」と言われて、却下されてしまいました。

私は、5級に認められていないために出したのですが、こういった具合に両耳側半盲のこともあります。私は眼瞼手術もするので、術前術後のFFSを計算してみました。点線のところが術前のFFSで62.4ぐらいで、術後が68.8となりました。でも、72以下はロービジョンですから、ロービジョンになるかと思います。

逆に両鼻側半盲の場合、これは本当に症例としては少なく、視交叉部の両側に病変あるケースで滅多にないのですが、計算をしてみると57.6と7視点で、一応ロービジョンの範疇には入ります。両鼻側はそうでもないのですが、両耳側であると立体視が損なわれるので、もし視野で取れなくもオプション調整で15点を引くことも可能かと考えています。

あとは同名半盲と輪状暗点についてです。日本では同名半盲が大変低く評価されているため、症例での検討をしてみました。また、輪状暗点は緑内障で典型的に起こり、中心は残っているものの、外側には(リング状に欠損が)あるような視野です。この症例でColenbranderグリッドとエスターマン・グリッドの両方を計算したところ、31.4に28で両方ともクラス3bで「盲」の領域に入りました。

これは左が見えない状態の同名半盲ですが、ただの同名半盲ではなく、糖尿病の網膜症で汎光凝固をした後なので、周辺の視野も少し落ちています。そのため、数値がこのように小さくなったのですが、Colenbranderグリッドで計算すると30.3、エスターマン・グリッドで22.6ということで、両方ともクラス3bで「盲」の領域に入ります。

これはFFSとFVSから見た同名半盲と2級の輪状暗点ですが、こちらは同名半盲です。濃い青のところがFVSなので、ここを見ていただければと思います。FVSが30を下回る症例が、同名半盲の中にもあります。輪状暗点の中にはもっと全然平気というか、ロービジョンでも軽い方もいますが、同じぐらいに分布しているのにもかかわらず、同名半盲はどうしてこんなに不自由ではないと思われてしまうのか、それが不思議です。

しかし、I/4e視標だけでなく、I/2e視標で8主経線の56度未満という判定が入ったので、もしかしたら今度は認められやすくなるかもしれません。実際にやっていないのでよくわかりませんが、中には3級や2級に進める症例があるのかもしれません。 今回の改定について、私の感想をまとめたものはここまでです。

(V)「英国の中途失明者に対する制度」について

ここからは「英国の視覚障害者制度について〜中途失明者の為のパスウェイと資格喪失アドバイザー」について、ご紹介をしたいと思います。

私は、92年から94年に英国・スコットランドのDundee(ダンディー)というところに留学をしておりました。ここに写っている女性の先生は、コンサルタント(指導医)になったばかりの先生で、斜視について研究されていたのですが、ディスカッションの時にもスコットランドなまりで、本当にまくし立てるようで、何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。時々私に振られるのですが、「はぁ」という感じでした。2人目のお子さんを妊娠されていて、産むその日まで働いていらっしゃいました。すごいですよ。でも、英国の場合には産後6か月まで有給で休めるので、それもありかなと思っていました。

久しぶりに英国眼科学会のホームページを見てみました。指導医だった先生はCarrie MacEwenというのですが、何と英国眼科学会の理事長になっていて、びっくりしました。その方たちが中心になって作られたと思いますが、英国の眼科学会のホームページにリンクされていたものです。

これは「成人英国の視覚喪失のパスウェイ(道筋)」で、中途失明者が独立した生活アウトカム(成果)を達成するためには、どうしたら良いかということが書かれています。盲や部分的に見えている人に対して、「自分の方法で見る」アウトカムを達成するのに貢献します。これらのアウトカムが英国視覚戦略を支えます。これは戦略ということなのです。そして、各々の部署が結合することで、視覚を喪失した誰もが改善した眼の健康と、アイケアサービスから享受できることを確かなものにします。

ちょっと詳細に書いてありますが、まず「紹介」というプロセスです。「自分は見えない」というのは自己紹介でも構いません。また、英国にいるGeneral Practitioner(GP)という家庭医や、救急サービスからになりますが、まずは眼科医ではなく、オプトメトリスト(検眼医)やオプティシャン(眼鏡技術者)、またはロービジョンサービスに紹介されます。ただ、診断や証明をするのは眼科医なので、眼科医のところに行って、日本の身障者手帳にあたるCVIというものを書いてもらいます。CVIが書かれると、患者さんの同意を取った上で、コピーが行政と原因疾患統計のために英国眼科学会や、ケアサービスにも行きます。

そしてCVIを受けた行政は、5日以内に患者さんに「登録をしますか」と連絡します。登録をするとどんなメリットがあるかを電話で話し、登録することになれば2週間以内に患者さんのご自宅を訪問します。そこで視覚の評価をしてその人のニーズを捉え、必要があればロービジョンでのリハビリに結びつけます。

そこで、もしリハビリが不能であれば、介護のコミュニティケアの評価をします。該当すれば、コミュニティベースの社会ケアサポートということで、行政のファンドを用いて、コントロールができる独立生活をします。該当しない場合には、行政のファンドではないコミュニティベースのサービスにつながることで、漏れることや引きこもることなく、とりあえず独立した生活ができるようになります。

そして、これがとても重要ですが、身障者手帳申請の際に眼科スタッフが聞き取る質問があるので読み上げます。「患者様は一人で住んでいますか」「患者様には難聴もありますか」「身体の移動が不自由ですか」「他の医学的問題がありますか」「この登録の問題で、感情面に影響するような心配がありますか」「移動などの現実的な問題をリハビリワーカーと議論することで、恩恵を受けますか」「日常生活の術など現実的な問題をリハビリワーカーと議論することで、恩恵を受けますか」というものです。

ただ、日本にはリハビリワーカーが病院にあまりいません。私どもの病院には50人ものリハビリワーカーがいますが、理学療法士や作業療法士、または言語療法士であって、視覚に特化した人は一人もいないのです。なぜかというと、学校自体で教えていないからです。

英国や米国では作業療法士の一部が視覚に特化されているので、病院の中でこういったケアを受けることもできます。日本ではそれが無いのが残念です。歩行訓練士はいますが、山梨県では2人ぐらいしかいません。月に1回ぐらいずつ来ていただいて、その後はご自宅に行ってもらっていますが、病院の作業療法士が視覚についてわかっていると、本当に遅滞なくケアができると思いますし、それがすごく違うところだと思います。

次に聞くのは「雇用の問題などの現実的な問題を、リハビリワーカーと議論することで恩恵を受けますか」「子どもの場合には、両親(後見人)が子どもの発達、学校教育、社会支援に関するガイダンスを歓迎していますか」ということです。最後に「患者様は退職されている/雇用されている/失業中/子どもである」というように、これを全部統計に取りますが、これはすごく重要なことです。「視覚障害者はどうしているのか」「その人たちが再び独立して生活できるか」ということを、国がすごく気にしている様子が表れていて、これは良いページだと思います。

そして、「自分の方法で見る」10のアウトカム(成果)というものがあるので、それを読み上げます。

1.私の眼の状態と登録の過程を理解する。
2.だれか話す人がいる。
3.私は自分、自分の健康、自分の家、自分の家族を世話することができる。
4.私は必要なベネフィット、情報とサポートを受けることができる。
5.私は自分のもっている視覚を最大限活用できる。
6.テクノロジーを最大限活用して、情報にアクセスできる。
7.外出し、あちこち歩くことができる。
8.コミュニケートするツールと、技術と、自信を持っている。
9.私には教育と生涯教育への平等なアクセスがある。
10.私は仕事とボランティアもすることができる。

というものです。各々に本当に細かいことが書いてありますが、時間の関係から2つだけ詳しく話をします。

まず、2番目の「だれか話す人がいる」というところです。定義ですが「私の状態と変化や自分が生きるのに必要な調整に関して助けがあるでしょう。この支援はアドバイスやプロのカウンセリングであれ、私の必要に適切であるでしょう」というもので、これは以下を意味します。「私には情報とアドバイスと診断の時点で、適当なサポートを訓練されたプロか情報サービスから入手できます。自分が自信を持ち、健康な状態に達するまで私が望む限り、熱心に何時間と私を助ける支援が得られます。自分が落ち込んでいると感じ、それにアクセスする必要がある時、私は支援をするサービスの情報を受けられます。十分装備されたきめ細かい支援グループへのアクセスがあります。他に障害があるために、自分の視覚障害で自分がどう感じているかを上手く伝えられないかもしれないので、私には通訳が要ることもあります。」というものです。イギリスは多民族国家ですから、本当にいろいろな通訳もつけてくれるということです。

これはバーミンガムで講習を受けた時のものです。講師は6〜7人ほどいたのですが、Stevieと言うこの方は、ロンドン大学シティ校(City,University of London)でしたか、そちらのオプトメトリストの教授でした。最初に「このコースに来た理由を言ってください」ということで、一人ずつに質問をしました。

受講生からは、「目の状態のことを知りたい」「ベネフィットの制度のことを知りたい」、あとは「登録について知りたい」などありましたが、私は「この制度を日本に紹介したい」と言いました。これは先ほどのバインダーですが、5〜6センチほどあってかなり厚かったです。もちろん大活字ということもありますが、すごく豊富な内容でした。

このRNIB(イギリス視覚障害者協会)の感情支援の枠組みですが、3層になっています。最初はECLO(視覚喪失アドバイザー)と言って、眼科に勤めている看護師や日本で言うORT(視能訓練士)のような人が講習を受けて、それを聞いてあげる時間を持ちます。それが駄目であれば、2番目にプロによるカウンセリングサービスを受け、3番目にはメンタルヘルスサービスを受けることになっています。

ECLO(視覚喪失アドバイザー)の役割は、「聞くこと・相手の気持ちになって理解すること」「正常化すること・視覚喪失した時に悲しんだり、否認したり、混乱したりするような反応は正常である」と伝えると安心されますし、「疾患や制度に関して知識を与える」「患者のニーズを確かめる」「さらなるニーズを把握する」ということになります。

代弁者としての役割ですが、「患者は何が欲しいのか、権利を守り、彼らの興味を代弁し、彼らが必要なサービスを得るのを助けるためにアクションをし、代弁者となる」「ECLOは理由がどうであれ、患者がアクションすることができない時に、患者のために代弁する。代弁者としてECLOは独立しており、公平な立場であって判定的ではない」ということ。

ECLOに必要なのは、「コンサルタント(上級医)や他のプロフェッショナルと協議すること」「書き、口頭コミュニケーションが上手にできること」「敬意を持つこと・関係を壊してはいけない。(もし患者が治療を拒否してしまったら、あなたが提供できる支援があるでしょうか)」ということです。

そして職業の境界としては、「眼科医、医学チーム、またはGP(英国の家庭医)に逆紹介して、医学的なアドバイスを得なさい。一般的な情報のみを与えなさい」「移動訓練やロービジョンセラピストではありません」「リハビリワーカーやカウンセラーではありません」「ソーシャルワーカーでもありません」とのこと。

また、環境としては、「眼科の中に個室を、クリニックに近いところに部屋を持ちます」「ウェルカムします。―クリニックではありません」「アクセシブルな(利用しやすい)こと。−車いすでも入れること」「記録を保持する」「基本的に必要最小限な装備」です。 10のアウトカム(成果)で最後の10番ですが、これも究極の視覚リハビリです。「私は仕事とボランティアもすることができる」ということの定義ですが、「私は働き、ボランティアをし、社会に全面的に参加できる。私がこれをするために、私は訓練とスキルの発達にアクセスする必要があるかもしれない。雇用者は他の同僚と同様に私を取り扱う」というもので、これは以下を意味します。「私がすでに働いているならば、私の雇用者はまた仕事を再開するための、仕事のための新しいスキルと異なった方法をどのようにして支援するかを知る必要があるでしょう」「自分の雇用を維持するために法律家の支援を受けるでしょう」「私が求職しているならば自分の選んだ分野での訓練を受けることができ、仕事を探す支援を受ける」「私が見えないために仕事場やボランティアの場で差別を受けてはならない」というものです。

これらの10のアウトカム(成果)は、私どものホームページ、「山梨県視覚障害を考える会」で調べていただければ載っています。これは公開されていませんが、私が行ったので特別に翻訳させてもらえたものです。受講生は12人ぐらいのメンバーですが、全く見えない方も2人ほどいらっしゃいました。看護師や行政の方、盲導犬センターの方などもいらっしゃいました。

その中で印象に残ったことですが、弁護士さんがいて円錐角膜で両眼を手術した後に、それまでの仕事ができなくなってしまったと言います。解雇されて落ち込んでいるところ、配偶者からも離婚を突きつけられ、本当にどん底になってしまったそうです。しばらくしてからECLO(視覚喪失アドバイザー)の存在を知って、「その時にECLOがいたら、私はこんなことにならなかったのに」と言われました。このコースでは拡大ルーペ等を利用して読んでいたので、少しのロービジョンケアで再び仕事ができるようになっていましたが、さらにECLOもすることで、視覚障害者のために働きたいということでした。弁護士ですから、患者さんの権利を守る仕事もしたいと言われていて、それが大変印象に残りました。

私は、このような機会が得られてすごく良かったと思いました。また、日本にもこういう制度があれば良いなと思いました。以上です。ご清聴をありがとうございました。

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【定年まで頑張りました】

『定年まで頑張りました。そして、8月から再就職し、頑張っています』

会員 元東京都職員 箭内 良成(やない よしなり)

私は、眼の病気を乗り越え、今年の3月末に定年を迎え、31年間の公務員生活を終えることができました。

はじめに

私は子どもの頃から強度近視で乱視もあり、眼がよくはありませんでした。それでもコンタクトレンズで矯正ができ、それほど不自由は感じていませんでした。 ところが、37歳頃から見えづらくなりました。受診したところ、両眼が緑内障にかかっていましたが、点眼薬ももらわず放置していました。その後、42歳頃に左眼はほぼ失明していました。仕事が忙しくパソコンで眼を酷使し、夕方には眼が痛くなっていました。

45歳頃に再度病院に行ったところ、右眼も緑内障がかなり進み、白内障にもかかっていました。視野もだいぶ欠けるようになり、見づらくなりました。点眼薬の処方と半年ごとの視野検査を受けながら、色々な病院を転々としました。白内障手術を勧められたこともありましたが、踏み切れませんでした。

職場でも人とぶつかったりしそうになりながら、何とか事務仕事を行なってきました。47歳の時に、勤務していた病院に電子カルテが導入されて、更に眼が悪くなりました。

タートルの会との出会い

眼がいつも充血し、人の顔もよく見えなくなり、プリントやパソコンが見づらくなりました。失明の不安で精神的にも落ち込み、うつ病にかかり3か月病気休暇をとりました。53歳の時でした。その後復帰し、拡大器を上司に要求しましたが、受け入れられず見えないながらもPCを使って何とか働いてきました。

56歳の時に、プリントもPC画面も殆ど見えず、入力ミスが多く出るようになりました。休職して白内障の手術をすべきかと悩みました。妻がインターネットで「タートルの会」のことを調べてくれ、早速会に連絡し、相談しました。

下堂薗さんは優しく病気休職制度のことを教えてくださり、定例会に誘ってくださいました。 網膜色素変性症や緑内障などで中途失明された方々が会を作り、運動をし、拡大器などのPC器材を勝ち取ったことや、生活・職業訓練のリハビリも病気休職として認めさせたことを聞き、頭が下がる思いでした。

定例会で色々な人の状況を聞き、絶望感で一杯でしたが、勇気をもらいました。ロービジョン治療で有名なにしかまた眼科の梁島先生をご紹介いただき、慈恵医大病院での白内障手術につながりました。感謝の言葉で一杯です。

3か月間の病気休暇をとりました。緑内障が悪いため、白内障の手術も対応できる病院が限られていました。手術待ちの患者も多く、さらに当初の予定日には眼が充血しており手術は延期になりました。病休を延長して、白杖の歩行訓練やPCのブラインドタッチや黒白画面での練習、JAWSなど音声ソフトを試したりしました。中途退職することを何度も考えました。

2016年3月に白内障手術・眼内レンズ挿入を行い、PCの文字も新聞も見えるようになりました。4月に職場に復帰しました。病院事務なのでPC作業が中心で、患者さんと接することもありました。拡大器があればなあと思いましたが、何とかやってきました。ただ、視野が狭いために、足元や左側が見えず、ごみ箱を蹴ったり、人や物にぶつかったりしていました。特に、駅などの人混みは危ないです。夜は殆ど見えず勘に頼って歩いている感じです。職場の同僚に支えられ、何とか勤務を続け、定年退職しました。

苦しい病休期間もありましたが、何とか続けてこられました。定年まで頑張れたのは、タートルの会の方々のアドバイスと梁島先生をご紹介いただいたお陰でした。これからはまた仕事を続けるとともに、ボランティアとしてお役に立てればと思っています。ありがとうございました。

退職後の4〜5月はライブと旅行と骨休みで、6〜7月はハローワーク紹介のパソコン講座でWord基礎とビジネスマナーを1から学びました。8月から大学病院で眼の負担軽減の配慮をいただき、事務職として働いております。引続き65歳まで頑張って働きたいと思っています。

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◎タートルサロン

毎月第3土曜日  14:00〜16:00
*交流会開催月は講演会の後に開催します。
会場:日本盲人職能開発センター(東京四ツ谷)
情報交換や気軽な相談の場としてご利用ください。

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11月17日(土)
演題:「目がみえなくてもICT機器を使って少しでも豊かな生活を」 〜よりやさしく使いこなすために〜
講師:山賀信行氏
(NPO法人スラッシュ副代表・「やまさんの森」主催)

3月16日(土)
演題:「たくさんの方の支援を受け復職〜充実の毎日〜」
講師:六川真紀氏(東京海上日動あんしん生命保険葛ホ務)

◎勉強会

2月2日(土) 14:00〜16:00
テーマ:未定
※東京・大阪・福岡をテレビ会議で結んで行う予定。

◎「簡単でわかりやすい!視覚障害者との接し方講座」

10月、2月(第3土曜日)10:00〜12:30
※詳細はタートルMLにてお知らせいたします。

◎12月1日(土)忘年会

会場:両国ビューホテル(毎年恒例の会場です)
交通:JR総武線「両国駅西口」徒歩1分
会費:6,000円(予定)

◆一人で悩まず、先ずは相談を!!

「見えなくても普通に生活したい」という願いはだれもが同じです。職業的に自立し、当り前に働き続けたい願望がだれにもあります。一人で抱え込まず、仲間同士一緒に考え、気軽に相談し合うことで、見えてくるものもあります。迷わずご連絡ください!同じ体験をしている視覚障害者が丁寧に対応します。(相談は無料です)

◆正会員入会のご案内

認定NPO法人タートルは、自らが視覚障害を体験した者たちが「働くことに特化」した活動をしている「当事者団体」です。疾病やけがなどで視力障害を患った際、だれでも途方にくれてしまいます。その様な時、仕事を継続するためにはどのようにしていけばいいかを、経験を通して助言や支援をします。そして見えなくても働ける事実を広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。当事者だけでなく、晴眼者の方の入会も歓迎いたします。
※入会金はありません。年会費は5,000円です。

◆賛助会員入会のご案内

☆賛助会員の会費は、「認定NPO法人への寄付」として税制優遇が受けられます!
認定NPO法人タートルは、視覚障害当事者ばかりでなく、タートルの目的や活動に賛同し、ご理解ご協力いただける個人や団体の入会を心から歓迎します。
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眼科の先生方はじめ、産業医の先生、医療従事者の方々には、視覚障害者の心の支え、QOLの向上のためにも賛助会員への入会を歓迎いたします。また、眼の疾患により就労の継続に不安をお持ちの患者さんがおられましたら、どうぞ、当認定NPO法人タートルをご紹介いただけると幸いに存じます。

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【編集後記】

この度の西日本豪雨により亡くなられたかたのご冥福をお祈りするとともに、被害を受けられた皆様に心からお見舞い申し上げます。皆様の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

今号の情報誌は6月から準備を始めています。この4ヶ月ほどをちょっと振り返ってみると…。6月は梅雨時期、今年は、インスタのためにかたつむりをレンタルするなんてこともあったらしいですが、そういう時代なのだなぁと…。そして、今年は、サッカーワールドカップ!ロシア大会は、凄い盛り上がりでしたね。時差が大きくなかった為、仕事帰りや、少し家で夜更かしをして楽しんだ方も多いのではないでしょうか?私もその一人でして、帰宅後に一服して楽しんだのですが、お友達がいまして、「お酒君」と「おつまみさん」。このお二人には必ず一緒にいてもらったのです(笑)。さて、「西野ジャパン」はここ3ヶ月ぐらいに話題になったワードだと思いますが、なんだかんだ言いつつやはり私たちは「日本」が大好きなんですね(笑)。パブリックヴューやスポーツバー、テレビやインターネット、とても多くの人たちが「JAPAN!」を応援したのでした。

熱い6月が過ぎて今度は暑い7月がやってきました。これからの時期は、高校野球!一度だけ予選を見に球場まで行きましたが、高校生は本当に元気!あの日差しの中、男子は勇ましく、女子は華々しく精一杯の応援をしていました。「とてもかなわん…」年齢を痛感してしまいました(汗)。果たして記念となる100回大会。どこが優勝するのでしょうか?また、涙の出るようなドラマが待っているのでしょうね。

この総会特別号は9月頃に皆様のお手元に届くと思います。この情報誌がお手元に届く頃は、猛暑が過ぎて穏やかな季節でありますよう。

さて、今回の「情報誌」はいかがでしたでしょうか?これからも、会員の皆様に楽しんで頂けるような誌面にしていきたいと思っております。どうぞ宜しくお願い致します!!

(市川 浩明)

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奥付

特定非営利活動法人 タートル 情報誌
『タートル第44号』
2018年9月8日発行 SSKU 通巻第6198号
発行 特定非営利活動法人 タートル 理事長 松坂 治男

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