情報誌タートル 第37号

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【巻頭言】

『障害と受容 〜生きることと、歩み続けること〜』

理事 清水 晃(しみず あきら)

人は光の届かない母の胎内で生を与えられ、その後新しい世界への歩みを始める。そこには自身の想像をはるかに超える様々なものとの出会いがあり、笑い、泣き、転びながら成長していく。私たちが当たり前のように過ごしてきた、「見える」生活から、「見えない」生活への移り変り、それは前の世界を知っている本人としては、不安と恐怖があふれる世界に感じられたかも知れない。ただ、新しい世界で「ひとり立ち」ができるほどに成長した時点では、それはそれで心地よい世界になるかもしれない。日々、子供の成長を見ながらそのように感じた。

障害の受容について福祉心理学の本に次のような分類があった。@身体的受容、A心理的受容、B社会的受容という内容である。自己の病気についての客観的な理解、混乱を起こさずにいること、そして自身が職業や家族など関係性で現実に対応することであるという。

説明すると簡単になるが実際にはとても難しく、自分自身としては決してスマートにこの期間を過ごせたとは思っていない。人前、自宅で、いつも泣きながら、それでもその時ごとに支えてくれた家族やサポーターの方々と手を取り合って、少しずつ進んできた人生であった。

自分が一番大変だったときに、Jポップのある曲にこのような歌詞があった。「わたしには何にもないそれでも夢を見ている」、「たったそれだけ、今のわたしにはそれしかできない」その曲を泣きながら何十回と聞いた、正確には数えられないくらい聞いた。今も、自分自身を振り返りながらその曲をよく口ずさむ。

「自分には何もなくなった。でも自分にできることは一つでもあるはずだ。」その淡い希望に必死でしがみつきながら歩いてきた感じがする。 今、振り返るとその過程の中で様々な、つながりができ、それが命の支えになった。死なないで今まで来られたのは、このつながりがあったからのような気がする。

自分自身を信じることができなかった私であった。でも、さまざまな「つながり」から命の力を与えてもらった。まずは大きく歩くこと、そしてなんでもいいからぶつかっていくこと。自分自身の病気は今も元気に進んでいる。ただ、自分もそれに負けずに進んでいければ幸せになれるかなと考える。泣いてもいい、ただ、できる限り大きな歩幅で歩ければうれしい。

今、病気で悩み、そして自分を否定して苦しんでいる多くの方がおられる。自分もその一人である。皆さんも自分のできる限りで歩みを止めず、進んで行ってほしい。皆さんのこれからの大きな幸せがこれからの未来に待っていることをお祈りする。

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【9月交流会講演】

『認定NPO法人とは? 認定NPO法人のメリットを活用して活動を広げよう!』

認定NPO法人 シーズ・市民活動を支える制度をつくる会
代表理事 関口 宏聡(せきぐち ひろあき)氏

皆さん、こんにちは。シーズの関口と申します。「認定NPO法人制度」につきまして、これからお話をさせていただきます。 制度はどういうものなのか、どういうメリットがあるのか、他の団体での活用事例など、夢のある話も聞いておりますので、活動の発展に向けたプランの参考となるようなお話をさせていただきます。宜しくお願いいたします。

私とタートルさんとの出会いもお話をさせていただきます。飯田橋に東京ボランテイア・市民活動センター(通称:東ボラ)というところがあります。そこで、4年ぐらい認定NPOの相談をやっています。そちらにタートルさんがいらっしゃって「認定を取りたいと考えている」と伺いました。東ボラさんと私どもとタートルさんの三人四脚ぐらいで、この認定取得に向けて2年ほどいろいろと準備をして、昨年の5月に無事取れました。

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの認定NPOは結構、取るのが大変なのです。今、全国に認定ではないNPO法人、普通のNPO法人は約5万1,000あります。そのうち認定NPOはどれぐらいだと思いますか? 実は、1,000法人ほどありますので2%ぐらいです。でも、考えてみてください。2%なのです。5万のうちの1,000弱ということで本当に2%しかない、ある意味で選ばれしNPOなのです。

最近よく私がご紹介させていただくのは、会社で言うと一部上場企業のようなものです。今では東証二部やマザーズ、ジャスダック等いろいろありますが、そのNPO界でかなり信頼性もあるし、会計もきちんとしてルールも守っていて、総会や理事会等もきちんとやっていて、かつ多くの市民・企業からの寄付(支持)もあるような、認められたNPOが「認定NPO」と言うことです。

当事者団体の中でもNPO法人になっていない団体もたくさんあると思いますが、タートルさんはNPO法人になられて、かつ、東京都の非常に厳しい審査をくぐり抜けてきました。事務局の方々のご準備のおかげで、何とかくぐり抜けたということです。 当事者団体でも認定を取得しているのは、数が少ないのです。簡単に調べた限りでは、例えば東京都では「東京都中途失聴・難聴者協会」というろうの団体や、「東京盲ろう者友の会」という盲とろう両方の障害を持たれている方の団体や、これは皆さんに近いと思いますが「日本盲人マラソン協会」「全国盲導犬施設連合会」などが認定NPOであって、本当に数えるほどしかありません。

他の有名どころでは、例えば「国境なき医師団」をご存じの方もいると思いますが、そちらも認定ですから、タートルさんと同じステージにいらっしゃいます。向こうは片や何10億円という財政規模なので規模が違いますが、この前は年間収入16万円の団体が認定を取っていました。大きな団体も小さい団体も、私どももそうですが、いろんな分野の団体が同じ仲間の認定NPOとして頑張っています。認識していただきたいのは、皆さんはすごい団体の会員だということです。ですから、会に誇りを持っていただきたいと思います。

認定NPOはすごく信頼性が高いと言われております。やはり当事者団体の中には、どうしてもいろいろなハンディキャップもあって、ついつい総会をさぼってしまったり、会計がきちんとできなかったり、内部で喧嘩ばかりしているような団体も結構あります。 非常にハンディもある中で大変ですが、タートルさんは会計などの地味な作業なども、しっかりしていることが東京都から認められて、認定NPOになったということです。苦労をして取ったのですから「是非使っていただく」ということで私は今日呼んでいただきました。

ここから認定NPOに受けられるいろいろなメリットを、大きく分けて4つご説明していきたいと思います。認定NPOになると、4つの優遇税制として税金上での優遇策(特別扱い)が受けられるようになります。これまでは優遇策も諸外国に比べて劣っていましたが、2011年に法律が変わり、まだ細かいところは駄目なところもありますが、今では概ねアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ等とも遜色がない、かなり世界的にも先進的な寄付税制である税制優遇ができております。

これを知っている人では、この認定NPOや寄付金控除に惹かれる方も増えていて、「どこどこの団体は早く認定を取らないかな」「私は今年何万円を認定NPOに寄付をしたから、確定申告で何万円か返ってくるのが楽しみだわ」というつぶやきも聞こえるような今日この頃になっています。そういうところで優遇策を一つずつ、細かくお話してみようと思います。

まず一つ目は、個人が寄付をした時に受けられる寄付金控除になります。ちなみにこれは第三者だけではなく、団体の役員や正会員等が自分の団体に寄付をしても大丈夫です。正会員の会費そのものは駄目ですが、正会員が正会員費と別に寄付をすればきちんと受けられます。また、役員が寄付しても控除が受けられますので、大いに寄付していただきたいと思います。ご家族や知り合いの方に寄付いただいても大丈夫ですから、ご心配ありません。

この寄付金控除は何がすごいかと言うと、1年間で寄付をした合計金額から2,000円は引かれますが、2,000円を引いた金額に掛ける40%から50%が減税になる制度ということです。これはどういうことかと言うと、例えばタートルさんに3万円の寄付をしたとします。3万円寄付をして、そこから2,000円を引くと28,000円です。28,000円掛ける最大50%ですから、14,000円が減税になるのです。3万円の寄付で14,000円が減税になるのは、結構すごいことですね。なかなか諸外国でもなくて、アメリカにはここまで減税してくれる制度はありませんから、かなり大盤振る舞いな制度になっています。

細かく言うと、40%が国の税金の所得税と言われるもので、どこの認定NPOに寄付をしても控除になります。残りの10%は住民税です。タートルさんの場合は、東京都民がタートルさんに寄付をすると大体50%受けられると思います。例えば私は千葉県に住んでいますが、千葉県に住んでいる人がタートルさんに寄付をすると、40%の所得税は受けられますが、残りの10%の住民税は残念ながら受けられないという制度になっています。

タートルさんの場合は全国組織なので、各地に住まわれている方がいらっしゃって、寄付者も全国にいると思います。40%は確実ですが、残りの10%については東京都以外に住んでいる方は所得税の40%だけで我慢していただくことになります。いずれにしても大体半分は返って来るので、これは大きいと思います。

私などはすごく年収が少ないので、こういう仕事をしていなければ全然知らなかったことばかりですが、基本的にこういう税金の話は一般的に高額所得者の方ほど詳しいのです。例えば、お医者様や弁護士さん、会社の社長さんなど、税金に詳しい方については認定NPOであるかどうかはかなり効いてくるのではないでしょうか。

例えば、皆さんの主治医の先生に「うちも認定を取ったのでお願い」と言うのも嫌らしい話かもしれませんが、何もしなければ国の税金で持っていかれ、何に使われるかわかりません。しかし、タートルさんに寄付いただければ、確実にタートルさんの活動で使われて、世の中を変えていく原資になるわけです。自信を持って嫌らしくならない範囲で、会員の皆さんにも営業活動を頑張っていただければと思います。

タートルさんの素晴らしいパンフレットも受付でいただきましたが、6,000部印刷されたそうですね。6,000部刷ったからには、元を取らなければいけません(笑)。1人10部ぐらいを会員さんに送っていただいて、会員さんが「こういう活動をやっている」と、社会に広げていくことも大事だと思います。

私が伺う限りでは、今のところタートルさんに「国や自治体からの継続的な補助等は無い」とのことですが、理解が広まっていけば、もしかすると政府や自治体が動いて、「こんなに素晴らしい団体があるのか」と、「それなら無駄なところにお金を使っている分を、こういう団体にもっと助成するべきではないか」という声も高まっていくかもしれません。

申し訳ないのですが、私も不勉強ながら東ボラの認定相談に来ていただくまでは、皆さんの団体の存在を知らなかったうちの一人です。直接寄付にはつながらないかもしれませんが、こういう活動をしている団体があること、視覚障害の方が就労で実は困っていること、そういう相談がすごく増えていることを世の中に広げていくためにも、積極的に広報していただければと思います。

大変ですが、寄付金控除は領収書が無いと受けられないのが基本です。個人の寄付も法人の寄付の場合もそうですが、私がタートルさんに寄付をしたら、送られてくる領収書を確定申告の時に添付して、税務署に出すと半分が返って来て減税になる仕組みとなっています。

ですから、昨年も大変だったと伺っていますが、寄付者に対してはきちんと期限までに領収書を出していただくことです。個人の確定申告は2月16日から3月15日までだったと思いますが、期限が決まっているので期間中に届くようにしなければいけません。年明けは事務局も大変だと思いますが、とにかく期間中にはタートルさんの領収書が届くようにしなければいけないのです。

先ほど「半額返ってくる」というお話をしましたが、半額返ってくるということは、皆さんの発行する領収書は、額面半分の金券のようなものです。例えばお医者さんが「オレは今年100万寄付する」と言って寄付したとします。そうして、お医者さんが確定申告の時に100万円の領収書を添付すると、大体50万円の減税になるのです。ということは、タートルさんの発行する100万円の領収書は、50万円の価値があることになります。

どこかの市議会で問題になったように金額の前に2を加えたり、20万が200万になるようなことがないように、少なくともタートルさんではそういうミスがないように、しっかりと会計と領収書の発行をしていただくことが大事です。ちょっと大変ですが、そこは譲れない一線なので頑張っていただければと思います。以上が個人の寄付金控除のお話です。

2つ目ですが、今度は個人ではなく法人の寄付になります。タートルさんが、会社や他のNPO法人、一般社団法人等から寄付をもらう場合の優遇税制になります。例えばお医者さんの場合、個人として出すのか病院を経営している医療法人からの寄付とするのか、その時の利益状況に応じて変える方もいらっしゃると思います。会社の場合もそうですが、社長個人のポケットマネーから出すのか、会社の経費で落とすのか、いろいろとあると思います。これは、是非とも両方覚えておいていただきたいところです。

では、法人の寄付について、これはユニセフや国境なき医師団、日本赤十字、共同募金さんなどと概ね一緒の扱いになりますが、要は普通のNPO法人に寄付するよりも、法人税が安くなるという優遇(制度)になります。細かく言うと「損金参入限度額の枠が広がる」と言います。 要するに経費で落とせる額が大きくなるわけです。法人税法上の経費を損金と言いますが、実は会社がどこかに寄付した時に損金として落とせる額が、厳しく制限されています。

例えば、資本金が1,000万円で所得の額が500万円の会社の場合では、NPO法人に寄付した時には、経費で落とせる額は3万7,500円しかありません。ですから、すぐ超えてしまいます。しかし、認定NPOに寄付する場合はどうかと言うと、3万7,500円ではなく17万5,000円ということで、大体4倍から5倍ぐらいに広がります。4万円ぐらいが18万円ぐらいですから、だいぶ違います。

例えば、皆さんと関わりのある事業を行っている会社や病院・医院といった医療法人、他のNPO法人、一般社団法人、何々学会、任意団体でもいいし労働組合もそうですが、そういう法人から寄付をもらう場合も、皆さんは他のNPO法人より優遇されていることになります。是非そちらもセールスポイントとして売りながら、賛助会員や助成金等も攻めていくことができるのではないかと思っています。

なるべく継続的な支援につなげるところで言うと、最近の流行としては「売り上げの何%を寄付する」というのが普及しています。例えば有名どころでは、今日私の手元に用意していただいたお水がボルヴィックですが、このボルヴィックというミネラルウォーターは、確か「売り上げのうちの何%かをユニセフに寄付します」というようなコーズ・リレーテッド・マーケティング(CRM)という活動をしています。

寄付をする場合にも、損金参入枠は認定NPOのメリットとして効いてきます。皆さんの活動に近いような企業と言うと、最近、皆さんはITと親和性が高いと伺っているので、例えばITメーカーやソフト会社、あとはつながりがあると言うと杖のメーカーという感じでしょうか。 単発の寄付ももちろんありがたいですが、つながりのある所に「うちは認定NPOになったので、是非継続的なご支援をお願いできないか」ということで、会員になったり、なるべく継続的に寄付していただくことが、財政の安定にもつながります。そういった営業をしていただくと良いのではないかと思います。また、企業のCSR担当者に聞くと、なぜ認定NPOになってほしいかと言うと、当然優遇税制もありますが、信頼性が高いからと伺うことが多いのです。 残念ながらNPOの中には駄目な団体も多くて、ひどい場合には犯罪をしてしまうような団体もあります。企業でも一体どこが良いNPOなのか、どこが信頼できるのかを探しているのです。

あと、例は少ないのですが、他のNPO法人や一般社団法人でも、結構法人税を払っているところは多くて、儲かっているということです。そういうところから寄付をもらうのも一つの選択肢です。

続きまして、今度は声だけでご説明するのは難しいのですが、「遺贈・相続財産の寄付での優遇税制」をご説明しようと思います。わかりやすくお話しをするつもりですが、込み入った話になるのはご容赦ください。

認定NPOは、相続財産を寄付した時に「寄付した相続財産が非課税になる」という優遇税制を受けられるようになります。この説明をする時に、せっかくなので一緒にご説明していますが、「遺贈」と「相続財産の寄付」の2つを整理して説明する必要があります。

まず、「遺贈」というものが法律や税金の話でいろいろと出てきます。「遺す」に「贈る」と書いて遺贈ですが、遺贈というのは亡くなった方が遺言書を書いて、その中で「私が死んだら、全財産を認定特定非営利活動法人タートルに寄付する」と遺言に書き、私が死んでから遺言に従って財産がタートルさんに寄付されることを遺贈と言います。

遺贈の場合には、基本的に認定NPO法人でも普通のNPO法人でも、税制上はお互いに(税金が)かかることはありません。私が死んだ時には、私はいないので大丈夫ですし、金銭の場合にはお互いに特段の税負担はないため、寄付されて「はい、終わり」ということです。

NPO法人でもオーケーですから、認定NPOであればなおさらのこと、タートルさんがどこかの第三者から遺贈によって遺言で指定され、その遺言が執行されて寄付が来るのであれば、通常は有難くいただいて活動に使っていただいても大丈夫です。 いわゆるお一人様で相続人がいない場合は、最終的には「国庫に帰属する」ということで、国の財政に充てる規定がありますので、何もしないと国のものになってしまいます。 例えば「タートルのような活動をしている団体のために役立てたい」という方は、特に相続人のいない方では知っておいて良い制度だと思います。

次が「相続財産の寄付」になります。これは何が違うかと言うと、亡くなった方の遺言ではなく、相続が発生して1回相続財産をもらった人が「タートルに寄付しよう」ということで、タートルさんに寄付した場合になります。 私の例で言うと「私の両親が死にました」という時、両親が遺した相続財産を私が幾ばくか貰いました。私は相続財産を貰ったのですが、そのうちの全額や一部などをタートルさんに寄付した場合が、相続財産の寄付になります。

相続財産の寄付の場合は、認定NPOであるかどうかが大事です。相続財産の寄付の場合は、認定NPOへの寄付でないと非課税にはなりません。例えば私が両親から1億円の相続財産を相続したとして、全額をタートルさんに寄付をしたとします。その時に税金がどうかということです。 1億円を私が相続して、そのまま1億円をタートルさんに寄付するのですが、タートルさんがもし認定NPOでなかったらどうなるかと言うと、私は相続財産を全額寄付しているにも関わらず、それがあるものとして計算されてしまうのです。お金は実際に無いのに、上げてしまったのに何千万円かの相続税を払わなければいけなくなって、非常に負担になります。

しかし、タートルさんは認定NPOですから、例えば私が1億円全額をタートルさんに寄付すれば、「1億円全部を認定NPOであるタートルさんにあげているから、相続税はゼロにしてあげよう」となり、実態に合うわけです。課税対象の財産はゼロになり、私は相続税を払わなくて良くなります。 ちょっと紛らわしいですが、遺贈であれば通常は税金の心配は要りませんが、相続財産の寄付になると、寄付先が認定であるかどうかが非常に重要になります。

今までお話したことは基本的にお金のことですが、実際にお話が結構来るのは、例えば土地建物といった不動産、有価証券の株式、古美術品や骨董品、自動車など、そういう現金ではないものの寄付のこともあって、これからタートルさんにもそういうお申し出があるかもしれません。

ただ、この不動産等はちょっと厄介です。不動産の場合は今お話したようなシンプルな話にはなりません。認定NPOへの寄付であっても、不動産の寄付は要注意です。 実際にこういう話はあるのですが、万が一会員さんや第三者の方から「ちょっとタートルさん、アパートがあるからあげるよ」というお話があった時には、シーズにご相談いただければと思います。また、税理士や弁護士に是非ご相談いただいた方が良いかと思います。それはお互いに税金がかかってしまうことがあるからです。いままでのお話は金銭の場合ですから、不動産などの時はちょっと慎重にならざるを得ないわけです。

もう一つ、是非イメージを持っていただきたいのは、仮に「1億円貰ったら何をやるのか」ということを、団体内で考えておいてほしいのです。というのも、相続財産や遺贈は大体突然来るのです。遺贈や相続財産の寄付で、相続税の申告期限は相続を知った日から10か月と定められています。要は亡くなった日から10か月ですから、葬儀とか遺産分割協議などで、10か月なんてあっという間になります。「時間がないから早く貰って」ということで、「タートルさん、早く領収書をください」ということになってしまいます。

使い道を考えておかないといけません。何でそんなことを言うのかといえば、その使い道で揉めるからなのです。 私どもでもそうですが、1億円来てしまったら、もう本当にどうしようかと考えてしまいます。まず、自分の給料を上げて自社ビルでも買うかとか、そういう話をしかねませんし・・・もちろん冗談ですが(笑)。他団体でもお金の使い道では結構揉めるそうです。嬉しいとはいうものの、そういう大口の寄付や相続財産の寄付が来た団体の例を見ていると、皆がみな円満にまとまるのではなく、内部でいろいろと使い道を揉めるケースが結構多いのです。

やはり夢を持つためにも、具体的にタートルという団体の発展イメージを会員や役員の中で描くためにも、正式な文章ではなくても良いのでイメージを共有しておくことです。 そうすれば、突然そういうお話があった時にも団体が混乱をしません。これは、過去の私どもの経験から言うことができますので、是非そんなプランも練っておいてほしいと思います。以上が相続財産の寄付ということで、遺贈と相続財産寄付のお話でした。

続きまして、4点目がみなし寄付金ですが、これはタートルさんの場合、今の時点で使える優遇税制ではありません。今後の活動が発展して来たらという話ですが、ご説明をしておきます。これまでお話した「個人の寄付金控除」「法人の寄付金損金参入」、今お話した「相続人が寄付した時の相続財産の非課税」は、どちらも寄付した方がお得になる制度でした。寄付した個人が得になる、寄付した会社が得になる、寄付した相続人が得になる制度でした。

ところが、4番目の制度は、タートルさん自身の税金がお得になるというお話です。NPO法人になっても、実は「法人税法」で決まっている34業種の事業をやってしまうと、法人税が課税されるのです。

ただ、タートルさんの場合は34個の収益事業に該当するものをやっていても、除外規定の中に「障害をお持ちの方が生計に云々」という特例があるので、おそらく法人税が課せられることはないと思いますが、万が一今後のお話の中でそういう話が出てきたらどうかというところです。

例えば、物品販売業や請負業は収益事業であるために、認定NPO法人がやっていても法人税がかかります。出版業もありますから、ブックレットを作って売るのも出版業になってしまいます。 そういったものをやると、普通のNPO法人でも税金がかかってしまいます。 ですが、認定NPOがその34個の収益事業を行った場合は、出た利益の200万円または50%のどちらか多い方まで、損金参入が認められる制度があります。結果として何が起きるかというと、次年度法人税での収益事業の利益が200万円までなら、法人税をかからなくできるということです。全額を損金で落とせるので法人税を払わなくても良くなり、その分を活動に回せる制度です。

200万円の利益を残すのは結構大変なので当分は大丈夫ですが、認定NPOの中にはこれを3,000万円使っている団体もあります。3,000万円のみなし寄付金を使っている団体は、おそらく利益が6,000万円以上あるということです。どこの団体なのかと思って調べても、未だにその団体につきあたっていません。そういう団体もあります。

あとは、例えば皆さんがこれから指定管理でどこかの施設を受けるとか、行政から大口の委託事業が貰えたとか、いろいろと物品販売や何かの代理業を、また、先ほど言った不動産の寄付を貰って、アパート経営を始めてしまうと不動産賃貸業になります。これは、そういう税金がかかる事業を行って、利益が出るようになると効いてくる話であって、法人税を払わずその分を活動に回せるようになります。

ですから、認定NPOであれば、収益事業による法人税の負担を恐れることはなくて、果敢に収益事業を行えるのです。今後、寄付金を増やすのはもちろんですが、例えば、確実に売れる物を作って、価値ある物を作って売っていくと、収益は通常ですと法人税がかかりますが、「みなし寄付金」を使って損金で落とすことができます。政策提言の活動や交流会など、対価の取りづらい事業等の活動資金を、儲かる事業でしっかり賄っていくことも、1つの将来像としてあります。

例えば、動物愛護の団体はチャリティグッズというものを作ります。ワンちゃんネコちゃんのかわいいカレンダーやストラップを作ってバンバン売るのですが、これは物品販売業なので通常であれば法人税がかかってしまいます。それに対して、この「みなし寄付金」を使うことによって法人税をゼロにして、その分をシェルターや殺処分ゼロといった活動に充てている団体もあります。

以上が4つの優遇税制のお話ですが、他にも認定NPOに関するメリットというものがあります。それは優遇税制ではないですが、やはり信頼性や透明性というところであって、先ほど冒頭で申し上げたとおり、5万の中の2%というところです。

例えば、皆さんがどこかの助成金に申請する時や、行政との委託事業や協働事業、そういう協働事業などにチャレンジする時も、普通の任意団体やNPO法人と比べて、認定NPOであることは非常にアドバンテージになります。私は新宿区の審査員をやっていますが、自分の中では認定NPOに加点をしています。 一般国民はどれだけ知っているかと言われると、正直そこまで知らない方もまだ多いですが、CSRの担当者や、企業・行政の担当部局レベルではだいぶ浸透して来ています。逆に認定NPOを知らない人は「もぐり」というぐらいです。せっかく苦労して取っていただいたわけですから、しっかりアピールして助成金獲得や事業獲得につなげていただきたいと思います。

あとは、ちょっと皆さんとは違うかもしれませんが、念のためにお話をしておきますと、融資制度というものにも優遇があって、NPO法人でも金融機関からお金を借りやすくなっています。昔は銀行に電話して「NPO法人ですが、お金を借りたいのですけれど」と言った瞬間に電話を切られたという逸話があるぐらい、とてもではないですが「NPO法人にお金を貸す」という文化はなかったのです。今は逆で、金融機関が貸したがっています。 NPO法人でも「信用保証制度」が使えるようになっていますし、私どもも日本政策金融公庫(国金)から借りていますが、国金などもすごくNPO法人に貸したがっていますし、実績も大きく上がっています。認定NPOであれば金利優遇もあって、多少ですが借りる時の金利が安くなることもあります。

これも多くはないですが、企業が行っている支援プログラムの中には「認定NPOでないと使えない」という縛りを設けているものも徐々に出始めました。昔は大体NPO法人なら使っていいというパターンが多かったのですが、認定NPOも既に2%まで増えて来ており、選択基準としては「認定NPO法人か公益法人」という括りで支援サービスを作るところも出て来ています。

例えば、READYFOR(レディーフォー)というクラウドファンディングのサービスがあります。そのREADYFORは日本でのクラウドファンディング最大手ですが、通常は「購入型」と言われるもので、引換券で特典(リターン)があるような、いわば寄付金控除が使えないパターンのクラウドファンディングをしています。

認定NPOになると、「寄付型」という寄付金控除ができるパターンのクラウドファンディングも使えるようなサービスがあります。まだ数は多くないですが、認定が1,000で公益法人が1万弱まで増えて来ていますから、これからは企業の様々な支援策も「認定NPOでないと使えない」という括りが増えて来るかもしれません。普通のNPO法人では使えませんから、「認定」を活かして、そのような支援策をゲットしていくことも大事だと思います。

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【職場で頑張っています】

『父の前向きな選択 退職・失業・訓練・就職』

会員 山本 一也 (やまもと かずや)氏

昔の話である。ある年の7月、父は退職し、ついに失業した。 網膜色素変性症であった父は退職の1年程前から文字の読み書きが困難となり、ミスが続き、蜜月であった上司との関係もギクシャクしだし、叱られる事が多くなっていた。父は、家族の生活を守る為、その職場で働き続けようと、必死であった。仕事の遅れを取り戻す為、就業1時間以上前に出勤したり、書類を家へ持ち帰り、私が代読したりして、何とか業務をさばいていた。

その様子を察し、上司は父の仕事を他者へ引き継いだ。父は「上司の心遣いは嬉しかったが、多忙を極める部下に心苦しく、自分が心底惨めになった」と後年語っている。

そんな周囲の理解・協力とは裏腹に、心と体は悲鳴を上げストレスの為か、夜間に寝汗をビッショリかき、起きる日が続いた。その寝汗はひどく臭かったと母は語っている。 母は父の様子を見て、打開策を探し、見つけた。それがタートルとの出逢いであった。 両親でタートルサロン、ロービジョン相談会に参加し、退職、職業訓練で、復職する策をみつけた。退職日が第二の職業人生を切り拓く為の誕生日となった。

その年の10月、父は国立職業リハビリテーションセンターの訓練生となり、50歳を目前に学生証を手にした。訓練期間は父の場合、1年3か月あったが、運よく就職が決まり、3か月残し修了した。父は訓練生活が好きであったようで、日々、元気に、愉快に、気楽に、生きているように私には映った。

そして、父は現在、人事部に属している。入社当時、ルーチンの仕事は、唯一、議事録の作成であったようだ。その他は特になく、履歴書をシュレッダーにかけたり、会社案内を封筒に入れる等、30分程度で終わってしまう作業しかなかったようだ。上司も目が不自由な人に何を依頼してよいか分からず、困っていたのだろう。父が居ても居なくても職場は困らない。お味噌なのである。日々、自ら、仕事を探す為、会社のネットワーク上にある情報を見て、会社、職場の様子を理解し、今はルーチンの仕事が出来、一日がアッという間に過ぎると言っている。

最後に父からのメッセージをお届けする。

障害者枠で入社でき、新しい生活が始まった。日々充実しているとは、言いきれないが、仕事にどっぷりつかっていた25年間とは違い、今は心に余裕があるように思う。見える時は一週間に2回は飲みに行き、午前様もちょくちょくあった。休日も仕事をし、家には寝に帰るといった生活であった。そんな生活は、今はない。5時30分に起き、20 時前に帰宅し、22時過ぎには寝るといった単調な生活である。土日もしっかり休みだ。仕事も割り切って、やっている。もっと責任ある仕事をしたいが、逆に考えれば、たいへん気楽であり、自分のペースで進められ、ストレスがない。網膜色素変性症は進行性である為、必ず今より見えなくなる。それを考えると、今程度の仕事を継続させ、職場のお荷物にならない方が、私も周囲も幸せだと考えている。

「一身にして二生を経る」という言葉があるが、まさに、そんな職業人生を謳歌している。 目が不自由でも、こんな仕事ができますと、職場の人たちを通して、世間に知らせる事ができ、それが、視覚障害者就労の一助になれば幸いである。

そして、私は生活のクオリティーを上げる為に訓練は不可欠だと思っている。自身も訓練を通じ、出来なかった事が、日々、出来るようになりV字回復を体験した。 休職して訓練を受けるのがベストな選択ではあるが、困難な方もいると思う。そんな方は、迷いに迷っていると思うが思い切って退職し、訓練を受け、再就職するというのも、今後の長い人生を考えた時には、前向きな選択だと思っている。

父は職リハでの訓練、就活を通じ多くのノウハウを得ました。そのノウハウを綴った体験談がありますので、ご興味のある方はお問い合わせ下さい。

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【お知らせコーナー】

◆ ご参加をお待ちしております!!(今後の予定)

◎タートルサロン

毎月第3土曜日  14:00〜16:00
*交流会開催月は講演会の後に開催します。
会場:日本盲人職能開発センター(東京四ツ谷)
情報交換や気軽な相談の場としてご利用ください。

◎交流会

3月18日(土)
白浜 一氏(国立リハビリテーションセンター自立支援部)
「自立支援局のサービス概要について〜視覚障害者を中心に〜」

◎平成29年度総会・記念講演

平成29年6月3日(土)(予定)
会場:日本盲人職能開発センター
*詳細は決まり次第ご案内いたします。

◆一人で悩まず、先ずは相談を!!

見えなくても普通に生活したい、という願いはだれもが同じです。職業的に自立し、当り前に働き続けたい願望がだれにもあります。一人で抱え込まず、仲間同士一緒に考え、フランクに相談し合うことで、見えてくるものもあります。気軽にご連絡いただけましたら、同じ視覚障害者が丁寧に対応します。(相談は無料です)

◆正会員入会のご案内

認定NPO法人タートルは、自らが視覚障害を体験した者たちが「働くことに特化」した活動をしている団体です。疾病やけがなどで視力障害を患った際、だれでも途方にくれてしまいます。そんな時、仕事を継続するためにはどのようにしていけばいいかを、経験を通して助言や支援をします。そして見えなくても働ける事実を広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。当事者だけでなく、晴眼者の方の入会も歓迎いたします。
入会金はありません。年会費は5,000円です。

◆賛助会員入会のご案内

☆賛助会員の会費は、「認定NPO法人への寄付」として税制優遇が受けられます!
認定NPO法人タートルは、視覚障害当事者ばかりでなく、タートルの目的や活動に賛同し、ご理解ご協力いただける個人や団体の入会を心から歓迎します。
年会費は1口5,000円です。(何口でも結構です)
眼科の先生方はじめ、産業医の先生、医療従事者の方々には、視覚障害者の心の支え、QOLの向上のためにも賛助会員への入会を歓迎いたします。また、眼の疾患により就労の継続に不安をお持ちの患者さんがおられましたら、どうぞ、当認定NPO法人タートルをご紹介いただけると幸いに存じます。
入会申し込みはタートルホームページの入会申し込みメールフォームからできます。また、申込書をダウンロードすることもできます。
URL:http://www.turtle.gr.jp/

◆ご寄付のお願い

☆税制優遇が受けられます!
認定NPO法人タートルにあなたのお力を!!
昨今、中途視覚障害者からの就労相談希望は急増の一途です。また、視力の低下による不安から、交流会やタートルサロンに初めて参加して来る人も増えています。それらに適確・迅速に対応する体制作りや、関連資料の作成など、私達の活動を充実させるために皆様からの資金的支援が必須となっています。
個人・団体を問わず、暖かいご寄付をお願い申し上げます。

★当法人は、寄付された方が税制優遇を受けられる認定NPO法人の認可を受けました。
また、「認定NPO法人」は、年間100名の寄付を受けることが条件となっています。皆様の積極的なご支援をお願いいたします。
寄付は一口3,000円です。いつでも、何口でもご協力いただけます。
寄付の申し込みは、タートルホームページの寄付申し込みメールフォームからできます。また、申込書の書式をダウンロードすることもできます。
URL:http://www.turtle.gr.jp/

≪会費・寄付等振込先≫

ゆうちょ銀行
記号番号:00150-2-595127
加入者名:特定非営利活動法人タートル

◆ご支援に感謝申し上げます!

今年も多くの皆様から暖かいご寄付を頂戴しております。心より感謝申し上げます。また、賛助会費も確定申告で寄付控除の対象となります。これらのご支援は、当法人の活動に有効に使用させていただきます。
今後とも、皆様のご支援をお願いいたします。

◆活動スタッフとボランティアを募集しています!!

あなたも活動に参加しませんか?
認定NPO法人タートルは、視覚障害者の就労継続・雇用啓発につなげる相談、交流会、情報提供、セミナー開催、就労啓発等の事業を行っております。これらの事業の企画運営に一緒に活動するスタッフとボランティアを募集しています。会員でも非会員でもかまいません。当事者だけでなく、晴眼者(目が不自由でない方)のご支援も求めています。積極的な参加を歓迎いたします。
具体的には事務作業の支援、情報誌の編集、HP作成の支援、交流会時の受付、視覚障害参加者の駅からの誘導やスカイプの操作等いろいろとあります。詳細については事務局までお気軽にお問い合わせください。

☆タートル事務局連絡先

Tel:03-3351-3208
E-mail:m#ail@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

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【編集後記】

全国のタートル会員の皆様、お元気でお過ごしでしょうか?お手元に今回の情報誌が届く頃は、師走の慌しい時期でしょうね…?

今年もハロウィーンや、クリスマスなど10月半ば過ぎからは、イベントが目白押し! 街中も仮装グッズが売り出されたと思えば、次の日には、クリスマスの装飾が街にあふれ、うきうきするような、しっとりもするような…そんな時期ではないでしょうか? 年末には、第9交響曲を聴いたり、田舎に帰郷したり、年越しそばを楽しみながら1年を振り返ったりと、皆様もさまざまな過ごし方をされるのでしょうね。

今年をチョット振り返ると、大きな災害があり、オリンピック・パラリンピックがあり、我々にとっては非常に関係がある法律が施行されたり、ノーベル文学賞はボブディランだったり…(?)本当に色々あった1年でした。この編集後記を書いた後にもいろいろなことが起きるかも知れませんが、Good Newsばかりがたくさん飛び込んでくれることを祈るばかりです。

私は自分の今年1年を振り返ると「何となく物足りない1年」のような気がします。 その気分を払拭するために年末は、ゆっくり時間と戯れながら、まったり過ごせればなぁなどと考えています。

さて、今回の「情報誌」はいかがでしたでしょうか?これからも会員の皆様に楽しんで頂けるような充実した誌面作りを目指していきたいと思っております。今後とも、より一層のご愛顧を賜りますようどうぞ宜しくお願い致します!!

(市川 浩明)

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奥付

特定非営利活動法人 タートル 情報誌
『タートル第37号』
2016年11月26日発行 SSKU 増刊通巻第5456号
発行 特定非営利活動法人 タートル 理事長 松坂 治男

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