情報誌タートル 第33号

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【巻頭言】

『フレッシュな毎日!!』

理事 市川 浩明(いちかわ ひろあき)

「よかったわ、あなたに会えて!」
その女性は、初めて会った私にそんな声をかけてくれながら誘導をしてくれました。それは、初秋のまだ暑さの残る昼のこと。その方は、「午前中に会社で仕事失敗しちゃったから落ち込んでいたんですよ」とおっしゃっていました。私の会社まで誘導してくれて、「ほんと、ありがとう!」と声を残して立ち去っていきました。私は、ただ仕事の昼休みの時間に、会社の周辺を歩いていただけでしたが、歩いているだけでもお役に立つことが出来るんだなぁと、色々思いがめぐりました。

外出していると、色々な場所で声をかけて力になってくださる方々がおられますよね?困っているときに手を貸していただけると、本当にありがたく思います。皆さんもたくさんのご経験があることでしょう。

今回は、そんな誰でも経験していることの私の場合…です。ヘルプしてくれた皆様への感謝の気持ちとともに紹介してみたいと思います。

出会いは、とても不思議です。 朝、会社の最寄り駅に到着して、「さあ!これから今日も頑張るぞ!!」と、ほんの少しだけ気合を入れて歩き始めると、「おはようございます」と後ろから声が追いかけてきました。それは、同じビルの違うフロアのテナントの方でした。その方は、多分、千鳥足風(?)な私を見ていたのでしょう。「前から気になっていたので声をかけたかったのですが、初めて声をかけました」と言って、「どうやって一緒に歩いたらいいですか?」と聞いてくれました。ひじを借りて同行してもらいましたが、思えば、会社の同僚よりも、いち早くヘルプしてもらい、仲良くなったのがその方でした。今でも、月に2〜3度会うことがあります。駅から会社までの短い時間ですが、その方が育った、東南アジアのことや、趣味の話などで朝の空気が和むような気がしています。よほど、私の歩き方は頼りないのでしょう。もう少し上手に歩きたいものです。

また、こんな方にも出会いました。 朝の目黒通りの混雑を知っている方なら頷いて頂けるかもしれません。その方は、私が、歩行中路肩駐車のバイクにてこずっていたのを車の中から発見したらしく、近くで車を停車させて、私の元に来てくれました。背の高い若い感じのその方は、夏の暑い日だからではないでしょう。多分走ってきてくれたのだと思います。汗ばんだTシャツが優しさを物語っていました。いまだに、どこに車を止めたのか?よく私を発見してくれたなぁと思いをめぐらせるのです。

毎日がとても新鮮です!嫌なこともありますが、でもたくさんの温かさとの出会いがあります。 落ち込んでも平気です!また不思議な出会いとめぐり合えるので。

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【職場で頑張っています】

『大分県初のヘルスキーパー制度導入企業として』

会社員 会員 奥澤 優耶(おくざわ ゆうや)

■はじめに

タートル情報誌をご覧の皆様、こんにちは会員の奥澤です。 私が昨年8月に入社し、現在事務職として働かせていただいている会社(ジェイリース株式会社)が、大分県の企業としては、初めてヘルスキーパー制度を導入、実施いたしましたので、ご紹介させていただきます。

まず、私とタートルの出会いは、2012年夏に開催された、ロービジョン相談会でした。相談会では私の目の状況や悩み等についてお伝えし、どのように工夫すれば解決するか等アドバイスをいただきました。また、国立障害者リハビリテーションセンターや国立職業リハビリテーションセンター等の訓練施設の情報も教えていただき、とても有意義な時間を過ごすことができました。 相談会を通して、私の人生はより良い方向へ動き出したと感じています。

次に私の目の状況についてご説明いたします。 私は2011年12月頃から目が見えにくくなりました。現在の見え方は両眼共に中心がまったく見えなく、中心以外の周辺視野はぼんやりと見えています。視力は、右目0.01・左目手動弁です。病名は「レーベル病」で、障害者手帳は2級です。

いわゆる視覚障害者となってからは、下記の経歴となっています。

@ 2012年8月 国立障害者リハビリテーションセンター自立訓練 入所
A 2013年4月 国立職業リハビリテーションセンター OAシステム科 視覚障害者情報アクセスコース 入所
B 2014年8月 ジェイリース株式会社 入社
C 2015年9月現在 会社員(事務職)として奮闘中

■仕事について

続きまして、私(奥澤)の仕事についてご紹介させていただきます。 現在、総務課に所属しております。 業務で使用している支援機器は次の2つです。

@ スクリーンリーダー(画面読み上げソフト)「JAWS14.0」
A 点字ディスプレイ「ブレイルメモスマート40」
※その他では、「点字板」でメモを取ることや、「プレクストーク」で会議等を録音する場合もございます。

また、国リハ・職リハの訓練で学んだスキルを生かして、集計業務(エクセル使用)や会議の報告書作成(ワード使用)、お知らせ業務(社内イベントや防災訓練等の告知)等の業務に取り組んでいます。

いただいている業務の中で特にやりがいを感じている内容は、「Health−care Room」の運営業務です。具体的には、ヘルスキーパーと連携して、施術料の集計、利用促進や稼働率向上の検討をしております。決定事項については、1つ1つ実行し、進めております。ちなみに、郵便局へ簡易書留を出しに行くこともございます。(歩行訓練を実施し、一人で行けるようになりました)

また、エクセル・ワード以外で使用しているパソコン機能(ソフト)は、OUTLOOK2010(メール)やメモ帳でして、使用頻度が高いです。

社内で工夫していることにつきましては、自分でできる部分、サポートが必要な部分を自分の中で把握し、適宜対応できるよう心掛けております。例えば、画像データは上司へ代読していただき、音声(「JAWS14.0」)や点字(「ブレイルメモスマート40」)で対応できる作業は、自分でこなすようにしております。

次に、入社して苦労したことは、社内グループウェアへの対応です。社内グループウェアは、国リハ・職リハで特に操作方法を学んでいなかったため苦労しました(しています)。ただ、職リハの指導員(先生)よりサポートをいただいたり、社内では「奥澤さんのペースで進めて良いですよ」と声をかけていただくなど環境にも恵まれ、1つ1つ課題をクリアしております。今後も、課題を1つ1つクリアしていき、サラリーマン生活を充実させていきたいと考えております。

※国リハとは、国立障害者リハビリテーションセンターの略称です。
※職リハとは、国立職業リハビリテーションセンターの略称です。
※「Health−care Room」については、項目「■ヘルスキーパー制度導入について」にてご紹介させていただきます。

■ジェイリース株式会社について

ヘルスキーパー制度のご紹介の前に、弊社についてご紹介いたします。 設立は2004年で、12年目(2015年9月現在)の会社です。本社は、大分と東京の2本社体制としており、全国に18店舗展開しています。業種は、賃貸不動産における家賃債務保証業で、実務内容は次のとおりです。

アパートやマンションを借りている入居者様が急な出張やご病気等によりお家賃を支払うことができなかった際、入居者様に代って、オーナー様へお家賃の立替え払いをする。弊社は、住まいの安心サポーターとして、社会の安定と発展に貢献するサービスを提供しています!

社員数は約300名で、法定雇用率は達成しています。 また、地域密着をモットーとしており、サッカーチームの大分トリニータ・大分トリニータレディースのユニフォームスポンサーをしています。 子会社には、不動産業を行っている「あすみらい株式会社」があります。

弊社社長の中島は視覚障害者の就労について理解があり、積極的に視覚障害者の雇用を進めてきました。結果として、現在3名の視覚障害者社員が働いています。私は3名のうちの一人でして、社長には大変感謝しております。

■ヘルスキーパー制度導入について

いよいよ本題のヘルスキーパー制度についてご紹介いたします。 2015年4月、大分県立盲学校より2名ヘルスキーパー社員を雇用しました。ヘルスキーパー社員の雇用に至るまでには、どのような支援機器を準備すれば良いのか、どこで会社説明会をすれば良いのか等、何度も社内で打ち合わせをしました。私も、国立職業リハビリテーションセンターや大分県立盲学校で会社説明会をさせていただいたり、視覚障害者が使用する支援機器の情報等を上司へお伝えしたりと、ヘルスキーパー制度導入に関わらせていただきました。 そして、たくさんの団体様のご協力があり、雇用を実現できました。 ご協力先をご紹介させていただくとともに、この場をお借りして厚くお礼を申し上げます。

・認定NPO法人タートル
・大分県立盲学校
・大分高齢・障害者雇用支援センター
・大分障害者職業センター
・国立障害者リハビリテーションセンター
・国立職業リハビリテーションセンター
・その他ご協力いただきました企業の皆様

肝心のマッサージ室(弊社では、「Health−care Room」と呼んでいます)ですが、2015年6月にオープンし、現在稼働中です。

※2015年4月からオープンまでの期間につきましては、運用方法の検討やベッドの購入等オープンに必要な準備をしていました。

オープン以後社内で好評いただいており、ご利用していただいた患者さんから、「身体が楽になりました」「リラックスできました」「是非、また利用したいです」とコメントをいただいております。

続きまして、「Health−care Room」の運営詳細をご紹介します。

営業時間:10時〜17時
コース料金:15分300円、30分500円
就業時間内利用:可

また、ヘルスキーパー社員は、「社員の健康管理」「福利厚生の充実」という役割を担っています。下記、ヘルスキーパー社員よりコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。

Tさん(男性)
ヘルスキーパーとして、社員の方々に少しでもリラックスしていただけるようマッサージを行っています。分からないこともありますが、「マッサージしてもらったら体の調子がいい」など声をかけていただき、社員の方々と距離が近いのもヘルスキーパーならではだと思います。まだ知名度の低いヘルスキーパー制度ではありますが、とてもやりがいのある仕事なので、今後日本全国へ広まってほしいです。

Oさん(女性)
大分県初のヘルスキーパーということで、多くの方々に協力して頂き「Health-care Room」を開設する事が出来ました。まだ運営は手探りの状態ですが、社員の方々に「気持ち良かった、楽になった」と言ってもらえるのはとても嬉しく、やりがいを感じます。これからも多くの社員の方に来室頂き、健康管理の面から会社に貢献していきたいと思います。

■大分から全国へ!

弊社は、大分県で初のヘルスキーパー制度導入企業です。弊社の事例をきっかけとして、全国の企業様が、よりヘルスキーパー制度を導入していただけましたらと願っています。 また、これまでに「大分合同新聞様」「日本経済新聞様」から取材を受け、メディアにも取り上げていただきました。

ヘルスキーパー社員を雇用することは視覚障害者の就労問題の解決に繋がります。そして、社員の健康管理や福利厚生の充実にも繋がります。ヘルスキーパー制度は、視覚障害者と企業の双方にとってプラスの効果があります。 プラスの効果を更に拡大していけるよう、「Health−care Room」を育てていきたいと思います。

■終わりに

今回、認定NPO法人タートル情報誌へ寄稿させていただき、大変感謝しております。原稿の加筆・修正にご協力いただきました方々へ心より感謝申し上げます。

末筆ではございますが、今後も認定NPO法人タートル様のご発展とご活躍を心よりお祈りしております。

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【お知らせコーナー】

◆ ご参加をお待ちしております!!(今後の予定)

《タートルサロン》

毎月第3土曜日 14:00〜16:00
情報交換や気軽な相談の場としてご利用ください。
場所:日本盲人職能開発センター
*交流会開催月は講演会終了後

《3月交流会》

日時:平成28年3月19日(土) 13:30〜16:30
場所:日本盲人職能開発センター(東京)
(大阪・福岡とスカイプで中継予定)
講師:株式会社Studio Gift Hands 代表取締役・医師 三宅 琢 氏
テーマ:目の不自由な方への情報ケアとiPad、iPhone活用

◆一人で悩まず、先ずは相談を!!

見えなくても普通に生活したい、という願いはだれもが同じです。職業的に自立し、当り前に働き続けたい願望がだれにもあります。一人で抱え込まず、仲間同士一緒に考え、フランクに相談し合うことで、見えてくるものもあります。気軽にご連絡いただけましたら、同じ視覚障害者が丁寧に対応します。(相談は無料です)

◆正会員入会のご案内

認定NPO法人タートルは、自らが視覚障害を体験した者たちが「働くことに特化」した活動をしている団体です。疾病やけがなどで視力障害を患った際、だれでも途方にくれてしまいます。そんな時、仕事を継続するためにはどのようにしていけばいいかを、経験を通して助言や支援をします。そして見えなくても働ける事実を広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。当事者だけでなく、晴眼者の方の入会も歓迎いたします。

◆賛助会員入会のご案内

〜賛助会員の会費は、「認定NPO法人への寄付」として税制優遇が受けられます!〜
認定NPO法人タートルは、視覚障害当事者ばかりでなく、タートルの目的や活動に賛同し、ご理解ご協力いただける晴眼者の入会を心から歓迎します。ぜひお力をお貸しください。
眼科の先生方はじめ、産業医の先生、医療従事者の方々には、視覚障害者の心の支え、QOLの向上のためにも賛助会員への入会を歓迎いたします。また、眼の疾患により就労の継続に不安をお持ちの患者さんがおられましたら、どうぞ、当認定NPO法人タートルをご紹介いただきたくお願いいたします。

◆ご寄付のお願い

〜税制優遇が受けられます!〜
認定NPO法人タートルにあなたのお力を!!
昨今、中途視覚障害者からの就労相談希望は急増の一途です。また、視力の低下による不安から、交流会やタートルサロンに初めて参加して来る人も増えています。それらに適確・迅速に対応する体制作りや、関連資料の作成など、私達の活動を充実させるために皆様からの資金的支援が必須となっています。
個人・団体を問わず、暖かいご寄付をお願い申し上げます。

★当法人は、寄付された方が税制優遇を受けられる認定NPO法人の認可を受けました。皆様の積極的なご支援をお願いいたします。
寄付は一口3,000円です。いつでも、何口でもご協力いただけます。
申込書はタートルのホームページからダウンロードできます。

≪会費・寄付等振込先≫

ゆうちょ銀行
記号番号:00150-2-595127
加入者名:特定非営利活動法人タートル

◆活動スタッフとボランティアを募集しています!!

あなたも活動に参加しませんか?
認定NPO法人タートルは、視覚障害者の就労継続・雇用啓発につなげる相談、交流会、情報提供、セミナー開催、就労啓発等の事業を行っております。これらの事業の企画運営に一緒に活動するスタッフとボランティアを募集しています。会員でも非会員でもかまいません。当事者だけでなく、晴眼者(目が不自由でない方)のご支援も求めています。積極的な参加を歓迎いたします。
具体的には事務局の支援、情報誌の編集、HP作成、受付、スカイプの管理、視覚障害参加者の誘導等いろいろとあります。詳細については事務局までお気軽にお問い合わせください。

☆タートル事務局連絡先

Tel:03-3351-3208
E-mail:m#ail@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

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【編集後記】

全国のタートル会員の皆様、お元気でお過ごしですか? ラジオやテレビの番組などを聴いていると、今年の紅葉は、10年に1度とか、20年に1度くらいの鮮やかな紅葉などと、あちこちから伝わってきました。見てみたいなとの思いが7ちょっとだけ湧き出てきますが、かないません。見えていた頃の鮮やかな紅葉を思い出しました。

30数年前ですが、仕事でヘリに搭乗する機会がありました。新潟から佐渡、佐渡から群馬まででした。天候に恵まれた午後だったと思います。佐渡から群馬に向かう際、三国峠超えのルートを飛んでくれました。あまり天候が良くない場合は、川とか道路沿いのルートを選ぶのだそうです。その時は天候が良く、ラッキーでした。新潟平野の刈り取りが終わった田んぼ、山すその集落と黄色や緑の風景、中腹に向けての黄色や橙、そして、ところどころに真赤な木々の色、まるで、たとえが良くないかもしれませんが、山が燃えているような鮮やかな紅葉でした。一方、午後でしたので、日陰になっている反対の山肌は、くすんだ紅葉だったのを覚えています。太陽の力は大きいなと思ったものでした。

京都の嵐山だとか、東京の○○公園の紅葉のライトアップなどのニュースを耳にしますが、光の力って、大きいんですよねぇ! 光を失った私たちは、耳で聞いて、また、思い出や想像で楽しみましょう! この情報誌が届く頃には、冬景色のところもあるんでしょうね?

さてさて、第32号で情報誌編集から、引退のご挨拶をさせていただいたのですが、また出てきてしまいました。後任の方の邪魔にならないようにしたいと思っております。

(長岡 保)

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奥付

特定非営利活動法人 タートル 情報誌
『タートル第33号』
2015年11月28日発行 SSKU 通巻第5306号
発行 特定非営利活動法人 タートル 理事長 松坂 治男

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