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O大蔵政府委員 具体的なケースといたしまして、この横浜税関におきまする 馬渡さんの事実に関しましては、すでに先生もここにおきまする経過を十分に御 承知のことと思います。私どもといたしましては、今日まで、馬渡さんがいわゆ る現実問題として心身障害者になったということを前提といたしまして、三年間、 はり、きゅうの学校にも通ってもらうことができるような姿勢をとってまいった わけでございますし、今後馬渡さんの処遇をどうするかということに関しまして は、すでにあるいは総務課長から御答弁いたしたかもしれませんけれども、私ど もといたしましては、現在、労働省ともまた人事院とも、この馬渡さんの具体的 なケースを中心といたしまして、どういうふうに処遇をするかということに関し て懸命に実は検討をしている最中でございます。しかも、その検討しております 最中に、現在、この答申が出てまいりまして、一般の民間の方々の職場において、 かりに職場の途中において心身障害者になられた方は、その企業がその方のめん どうを見ていくということが望ましいという答申がごく最近において出たことも、 私ども承知をしております。したがいまして、それを踏まえまして政府としての 態度をいかにするかということは、ひとり税関の問題のみならず、公務員全体の 問題かとも思われます。たまたまその具体的なケースとして現在、馬渡さんの問 題があるわけでございますけれども、やはり公務員の立場といたしましては、政 府全体の立場といたしまして、一体職場においてその途中において心身障害者に なった人たちの処遇をどう対処していくのかという問題とのからみで考えていか なくてはならない問題かと思います。したがいまして、私の立場といたしまして は、現在の段階におきましては、そういうことも踏まえて現在、厚生省あるいは 労働省、人事院とも馬渡さんの処遇を具体的にどうするかということに関して真 剣にひとつ検討をしていきたいということでございまして、もちろんこの問題と いたしましては、御本人の希望というものもございますし、また、本人が将来、 心身障害者の状態でこれから先生きていくということをやはり考えなくてはなり ませんけれども、あるいは、なかなか満足のいくというような結果が出るか出な いかは私は自信を持ってお答えをいたすわけにはまいりませんけれども、私ども といたしましては、本人が将来生活に困らないという見通しをつけ得るような状 態においてその処遇を考えてまいりたい、かように考えておるわけであります。
O山本(政)委員 先ほど、お見えにならない前に、東京国税局の例を申し上 げました。Yさんといたしておきます。そのYさんが失明いたしました。そのと きに東京国税局では、納税の相談室に電話のサービスといいますか、そういうと ころに係を新たに設けまして、そうしてその人を処遇したという実例もあります。 したがって、私は、単なる職種だけの問題ではないと思いますので、その点ひと つ前向きに御検討願いたいと思います。先ほどの答弁では、どっちなのかわから ぬという答弁でありました。それで局長にお見え願ったわけであります。したがっ て、この件については、ぜひ先ほど局長がおっしゃったように、本人の生活の問 題もあります、人権の問題でもあると思います。したがって、前向きにひとつお 取り計らいを得たい、お願いしたい、こう思います。その御答弁だけをぜひひと つ聞かしていただきたい。
O大蔵政府委員 先ほど申し上げましたように、これから人事院ともあるいは
労働省ともよく相談をしてまいりたいと思います。要するに、現実問題として、
目が見えない方にふさわしい職場というのは、税関の中におきまして、東京国税
局の場合、税務相談室の電話の交換というようなお話がございましたけれども、
私どももそういう御本人がやはり公務員として働く生きがいを感じ得るような職
場が、一体、税関の職場の内部に見い出し得るかどうかというような問題もある
と思います。あるいは場合によりましては、要するに税関の職場を離れて、それ
でせっかく御習得をされましたはり、きゅうによって生きるということのほうが、
御本人が生きる生きがいを感ずるという場合もあるかと思います。
したがいまして、やはりこういう問題に関しましては、ケースによって、長く
その税関の職場を離れていただくとか、あるいは税関にとどまっていただくとか
いうようなことは、いろいろなケースがこれから起こってき得る問題だと思いま
す。ただ、ここで私が申し上げたいのは、要するに馬渡さんのケースに関して、
私どもができるだけあたたかい心を持ってこれに対処をしたい、こういう気持ち
で臨みたい、こういうことでございます。
O山本(政)委員 それじゃ終わります。
OO(以上、社会党議員の11頁までの質疑でした。)
OO(以下、日本共産党の質疑21頁以降を示します。)
O大野(明)委員長代理 田中美智子君
O田中(美)委員 私はきょうは障害者の労働権の問題について質問したいと
思いますけれども、まず午前中に出ておりましたそれに関する横浜税関の馬渡さ
んの問題についてたいへん多くの疑問がありますので、質問をそこから始めてい
きたいと思います。
まず先ほど関税局のほうでお答えになられた中に、本人の希望を聞いて検討す
るというようなことが出ておりましたけれども、これは本人の希望ということは
はっきり出ているし、私自身もけさきちんと本人からも聞きましたし、組合にも
その旨の委任状が出ているわけです。それでもまだ本人の希望が関税局のほうに
はわからないのでしょうか。簡潔に答えていただきたいと思います。
O道正説明員 御本人の希望は、横浜税関の診療所において三療師として勤務
をしたいという御本人の希望につきまして私どもも承知しております。ただ問題
は、御本人の希望とそのような三療師を税関の診療所に置くことが、官庁組織全
体から見まして必要であり望ましいかどうかという点について問題があろうとい
う点を考えておるわけでございます。
O田中(美)委員 本人の希望がはっきりしているなら、いまの時点に立って
本人の希望を聞いてというお答えというのは、非常にそちらのほうの論理に矛盾
があると思うのです。本人はきまっているわけですね。それでなぜそのような本
人の希望を聞いてということをいまなおおっしゃるのかということに、私は非常
に疑問を持つわけですけれども、いままでありました、ことしの秋から九月二十
日、十月二日、十月二十四日、十一月五日、十一月十五日、十二月十二日と、私
のわかっている範囲でもこれだけの間に横浜税関の影井人事課長それから鎮目考
査官がたびたび本人に接触しまして、何とかやめないか、そして開業するそのお
世話をするとか、いろんなことを言って、結論的にはやめないかというふうな、
本人の意思をくつがえすそちら側の 私聞いた話によりますと、半脅迫に近い
ような、親切の押し売りのようなことばで非常におどかすようなことを言ってい
られるという事実を聞いたわけです。そういうことを聞いておりますと、きょう
の本人の意見を聞いてというおことばというのが、まだこれかたもそれをやり続
けて本人の希望を変えていこうとしているんではないかというふうに強う意疑問
を持ったわけです。その点本人の現在の希望というのははっきりしているわけで
すし、これはずっと変わってないわけですから、今後このような本人の意思を問
いただすというようなことを一切しないということを確約していただきたいと思
います。
O道正説明員 私ども、御本人の問題につきまして誠心誠意、どのような形で 社会復帰するのが望ましいかという観点できわめて強い責任を感じておるわけで ございます。先ほども午前中のこの委員会が終わりまして、御本人とお会いしま して、またお話を申し上げました。そのときも、勉強に忙しいとき、勉強に忙し くない休暇のとき、いろいろあろうということでございます。御本人とはその後 忙しくない、できるだけ休暇の間にまたお話しいたしましょう、御本人もそのよ うにしてくれということでございますものですから、御本人の意向を聞くだけで はなくて、そういうこともいかなる形において社会復帰をするか、最善の道をさ ぐるかという意味におきまして、やはり御本人のお考えもまぜ、それからまた専 門家あるいはいろいろなカウンセラーの方々のご意見も入れながら、最善の道を 探していくべきではなかろうかというふうに私ども考えております。
O田中(美)委員 本人の意向をくつがえそうとするためのいろいろなやり方
というのは、そちら側としてはそれは親切だと言われるかもしれませんけれども、
客観的に見て、いまそのような過去の実績の中で非常に疑いを持たれているわけ
ですから、今後そのようなことがないようにしていただきたいと思います。本人
の道は本人がきめることなわけですから、そちらのほうでこれが善意だろうとい
うふうなことばでやらないでいただきたいと思うわけです。
その次に、やはり先ほどのおことばの中にありました、ほかに適当な道がある
のではないか、理療師としてほかの道があるのではないか。たとえばいままでの
お話の中に開業などのお世話をするというようなこともいろいろ言っておられま
したけれども、気持ちの上のお世話というふうなことでは、退職金二百七十万円
ではどうしようもないことなんですけれども、それをするしないは問題としまし
て、いま三療師の道というのは、これは労働省にもぜひ聞いていただきたいので
すが、視力障害者のセンターで調査したのによりますと、二万八千人であった視
力の障害者の三療師、この方たちが五年間に一万九千人に減っているわけです。
五年間で九千人も減っているわけですね。これは目の正常な方たちがやるように
なってきているからです。これは職種指定ということで最優先することになって
いるこの職種から視力障害者が締め出されているという現状が外にあるわけです
ね。そういう中で安易に、四十四歳になられたことを理由にこれから新しく開業
せよ、これは親切である、これがその本人にいいのだということは、そうした情
勢というものをお調べになっているのかどうか、私は非常に不満に思うわけです。
視力障害者の職場開拓ということは、先ほども話に出ておりましたように、ただ、
はり、マッサージというものだけでなく、たくさんの職場、能力を生かす仕事が
あるはずなわけですけれども、せめてこの視力障害者の職場を維持するというこ
とがいま非常に押さえられている。この点、労働省としてもそうならないような
努力をしていただきたいというふうにお願いしておきます。
それから理療師の問題ですけれども、先ほど、もし置いた場合に八百人が利用
する、その八百人に一人がもったいないような発言だったわけですけれども、私
の調べたところでは、あそこで千二百人が通えるということでした。それから組
合の方たちにお話を伺ったわけですけれども、横浜税関の総務課長が、一昨年一
年間に腱鞘炎が三十人出ているということを発表していらっしゃるわけです。そ
ういう中で、ことしになっても七人腱鞘炎が出ております。これが現在通院して
いる。これは腱鞘炎とはっきり診断された人の数であって、肩が痛い、手が痛い
といって、まだはっきりそこまでいっていない人たちというのは潜在的に非常に
たくさんいるわけです。その上に腰痛、高血圧、神経痛というふうなものの数を
入れますと、非常に多い病人と、それから病人に続く者たちがいるということが
言われているわけです。そういう調査や何かを税関ではしていらっしゃるのかど
うか。置くという形には、ただ人間の数だけで考えるのでは非常に片手落ちで、
中がどうなっているかということなわけです。いまこれは税関だけでなくて、職
場にマッサージ師を置いてほしいという希望は非常に多く出ておるわけです。厚
生省の統計にしても、この十年間に病人が二倍になっているという統計が出てい
るわけですね。そういう状態というものを横浜税関ではお調べになったのかどう
か、この点をお聞きしたいと思います。
O道正説明員 第一点でございます。私ども、本人のために開業が望ましいと いうことを結論づけておるわけではございません。午前中にもお答え申し上げま したように、センターのほうでは、センターの教官に欠員があれば、御本人が非 常にまじめな方でもございますし、それから学歴も高いというような点から非常 にふさわしいということを言っておられるわけでございまして、やはりそういう ポストを含めまして、どういうような位置が望ましいかという点をわれわれ真剣 に、前向きに考えていきたいということでございます。 それから、ただいま腱 鞘炎の問題が出たわけでございます。それに関連して、本関の人員が八百人でご ざいます。その近辺に出張所その他ございますので、若干人数がふえるというこ とはあり得ると思います。診療所を利用するということ。ただ、わがほうの税関 におきまして腱鞘炎が非常にふえておる、診断書がたくさん出ておることは事実 でございます。ただ腱鞘炎 鍵を、キーをたたくわけではございますけれども、 通常の場合でございますと、私どもの調査でまいりますと、一日三万キーたたく のが普通のようでございます。わが税関におきましては、調査しましたところ、 その約十分の一以下のキーの打さんであるようでございます。それにもかかわら ず、やはりキーをたたくことによりまして腱鞘炎がないとは言えないわけでござ いまして、私ども三万鍵というようなことを考えあわせますときに、横浜税関あ るいは東京税関、そういうところにだけ三療師が必要であるかどうか、私どもこ れを検討しておるわけでございまして、そこらをどういうふうに持っていくか、 必ずしも、はり、きゅう、三療師が当面必要であるかどうかということは現在私 ども疑問に思っておる点でございます。
O田中(美)委員 いま腱鞘炎だけのことをおっしゃいましたけれども、腰痛 症、高血圧、神経痛、そういういろいろな病気の治療にマッサージが要るだけで はなく、理療師というのは病気治療だけではなくて健康管理にも必要なものであ るという考え方というものがいま出てきているわけですね。いまのおことばのこ とばじりをとるようですけれども、なぜ税関だけに必要かというふうなそういう 発想が出てくる頭というのが、もう少し根本的に発想を転換していただきたいと いうふうに思うわけです。これは何も税関だけを いま税関の中で出ているか らやっているわけであって、あちこちの企業でいま労働者がマッサージを置いて ほしいという、新しい現代病として出てきているわけです。これに即応していく ということが、これは官庁が率先してやるべきだし、現在そういう問題が出てい る。その上に今度の答申を見ましても、先ほど局長も言っていらっしゃいました。 読みましたとおっしゃっているわけですね。ということは、いまいる人たちが障 害になっても、それを首を切らないで、その職場の中で職場開拓をしていくとい うことをせよということをいっているわけです。そうすれば、現在これだけの状 態がそろっているならば、これを一つの新しい日本の行き方としてこれをやって いくという決断をぜひつけていただきたいというふうに強く要望します。一言で そのことについてお答え願いたいと思います。
O道正説明員 その点につきましては、午前中局長がここで答弁しましたとお りでございまして、そのような新しい答申の線に沿いまして、全官庁の問題とい たしまして考えていくべきであろうというふうに考えております。
O田中(美)委員 それに関連しまして労働大臣にもお願いしたいわけですけ れども、この答申が出たのは労働大臣あてに出ているわけです。この中で、障害 者の職場を開拓するということがたいへんな困難なことだというふうに、いまま で努力をしないから困難がいつまでもなくならないんだというふうに私は思うわ けです。そういう意味で、何も税関だけでなくてほかの職種の中にも、企業の中 にも、こうした健康管理の中に看護婦さんと医者というだけでなくて、マッサー ジをやっていくということが労働者の健康を守り、またこれが障害者の仕事を、 そのときには必ず視力障害者を入れていくということがまた障害者の職場開拓に もなっていくのだというふうに思います。そういうことをやっていただきたいと いうふうに思います。一言お答え願いたいと思います。
O長谷川国務大臣 まさに田中さんがおっしゃるとおり、私が答申をいただい たものでございます。そこで、職場開拓ということをやるために、私のほうでも いろいろな研究部会を持って総合的にやってみたい、こう考えております。
O田中(美)委員 それから、労働大臣に関連してお願いしたいと思います。
いま職業安定所に労働者の雇用、職場開拓という意味で行くわけですけれども、
障害者が職安に行きましても、行った人が全部登録されないわけなんです。そう
いうことがしばしば しばしばどころか非常に多いわけです。そういうことで、
登録をする、それで求人があるとそれに回すということでほとんどがお世話して
います。パーセンテージだけは高くなるということでは困ると思うのです。です
から、相談に来た人は全部登録をして、そうしてその中で、何人しか就職できな
かったということは職安の罪ではなくて、さっきもおっしゃったように、まだ日
本の国民の連帯が少ないとか企業のほうの理解が弱いとか、いろいろな複雑な状
態があると思います。しかし現状を、これだけ職場を要求しているのにこれだけ
しかいかれない状態というものを、勇気をもって職安が出していくことが大きな
啓蒙活動になるんだと思うのです。その一歩のところが職安のところでとどまっ
ているということを、強く訴えがあるわけです。その点について一言お願いした
いと思います。
O遠藤政府委員 ただいま御指摘のことでございますが、職安の窓口に障害者 の方が行かれて求職申し込みをしたいということで、その登録をいたしませんと いうふうな事実は全くございません。現在、安定所に登録をされている身体障害 者は約十二万でございます。登録しながら、現実には求職申し込みはその場では とらない、あるいは一たん求職申し込みをしても半年も一年もそのままになって いるという状態の人がございますけれども、求職申し込みなりあるいは登録を受 けつけないという事実は全くございません。もしかりにそういうことがあるとす れば私どもの手落ちでございまして、そういうことがないように十分注意いたし ます。
O田中(美)委員 全くないとおっしゃいましたけれども、これはたいへん事 実に反していると思うのです。今後ありましたら、それじゃすぐに職安局長に直 接私のほうからお電話を差しあげるようにしますけれども、まず東京都内を見ま しても、車いすの入れる職安というのは二つしかありません。そういうことを見 ましても、障害者が来れない状態をつくっていたんでは、それで来ないんだとい う結果になっているわけです。気持ちの上ではそうではないにしても。そういう 意味で、早急に障害者でもそこに入ってこられるという道をあけることが、この 答申にこたえる第一歩だというふうに思います。その点について一言お願いしま す。
O遠藤政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、身体障害者の中 でも特にこれからの重点は重度障害者だと思います。そういった意味におきまし て、新設された安定所につきましては、ほんとうに重度な人でも出入りできるよ うにやっておりますが、既設の古いものにつきましては、車いすではいっていく ことはなかなかむずかしいことでございます。そういう点も十分考えまして、今 後できるだけ改造して、そういう重度障害者のお求めにも応じ得るような体制を とるつもりでいろいろ対応いたしておるわけでございます。
O田中(美)委員 その次に、またもとの税関に戻りますけれども、その能力
開発に努力しているということを先ほどおっしゃられたわけですけれども、どう
いう点で能力開発をしていられるのか。時間がありませんし、私、次があります
ので、このことについてこちら側の意見だけ言わせていただきますけれども、視
力障害センターに行くということは能力開発だというふうに思うのです。そうで
あれば、これは身分をそのままにしてそこに訓練に行くという状態にすべきだと
思うのですけれども、それを病気休暇中とか、理屈からいっても非常におかしい
ような状態で、それを温情というような形で、給料を半分にしてしまうというよ
うな形でやっていることは、正しい能力開発の態度ではないと思うのですね。そ
れほど大みえ切って、能力開発に努力しているとおっしゃるならば、はっきりと
その本人が能力開発して職場におられる状態になるまでの努力というものはやる
べきだと思うのです。それを、そういう状態でやってきた。視力障害センターを
見つけてきたのも税関ではなくて、むしろ組合が一生懸命世話をしてきていると
いうところで、これは税関側としては能力開発をしてきたというふうにはいえな
いんだというふうに私は思います。そのことだけひとつお伝えしておきたいと思
います。
その次にもう一つ、税関が我が組合との交渉をなぜ拒否しているのか、そのこ
とについて、こういう重大な問題というのは、本人も組合員であるし、組合と一
緒に十分に話し合っていくのが民主主義だというふうに思うわけですけれども、
なぜ組合との交渉を拒否していらっしゃるのか、その点をお伺いしたいと思いま
す。簡単にお願いします。
O道正説明員 私ども聞いておる範囲で申し上げますと、交渉の課題といたし まして、個人の個々の人事その他交渉の議題にならないものと、交渉の議題にな るものというふうに分かれ得るものだろうと思うわけでございます。ただしこの 馬渡さんの問題につきまして、心身障害者問題というような問題、一般的な問題 と考えることも十分に可能でございます。横浜税関におきまして、われわれ聞い ておるところによりますと、近々のうちに組合との間で交渉を行うというふうに 聞いております。
O田中(美)委員 人事院にちょっとお伺いしたいわけなんですけれども、い まの問題、いま近々なさるとおっしゃったのですが、いままで国家公務員法の百 八条の五によって、組合との交渉をしないというふうに税関側がいっているわけ ですけれども、人事院としては交渉を拒否していることについてどのように思わ れますか。
O中村(博)政府委員 百八条の五の精神からまいりますと、登録職員団体か ら勤務条件に関して交渉申し入れがあった場合にはこれに応ずべき義務がある、 こういうことを書いておるわけです。ただし、管理、運営事項を除きますから、 したがいまして、いま税関のほうからお話がございましたように、一般に個別的 な人事等はここにいう勤務条件とは解しておりません。したがいまして、一般的 な人事の基準とかそういうことはこの法条の示す交渉対象である勤務条件になり 得る、かように思います。ただし管理、運営事項は別でございます。
O田中(美)委員 そうすると、いまのこの馬渡さんの問題について、組合側 と税関側が話し合いを持つということは正しいことなわけですね。
O中村(博)政府委員 いま御答弁申し上げましたように、この法条でいう勤 務条件であるかどうかという点につきましては、いま先生御発言のように馬渡さ んのということで、私その中身をよく存じませんけれども、特定個人の人事に関 することは直ちにここにいう勤務条件には当たらない、私はさように考えており ます。
O田中(美)委員 今後必ず組合との話し合いというものを十分に税関当局の ほうで持っていただきたいと思いますけれども、これを絶対拒否しないというふ うにしていただきたいと思います。よろしいですか。
O道正説明員 私ども今後も当然しかるべく組合との間で交渉をやりますし、 従来におきましてもわれわれ理由なく交渉を拒否したということはないと私ども は信じております。
O田中(美)委員 今後必ず組合との交渉を密接に持ちながら話し合いを進め
ていただきたいというふうに思います。
それから最後に、障害者というものに対するものの考え方なわけですけれども、
障害者というのは、いわゆる六法にありますような、こうなっておる、こうなっ
ておるという身体的な障害というものももちろん障害者ですけれども、労働省が
考えるときの障害者、一般にわれわれが障害者問題をどうしようと考えるときの
障害者というものは、社会的にハンディを持っておる人、職業的にハンディのあ
る人を障害者というふうに考えなければ、先ほどの話のように、やはり一・七と
いっても、その中に小指一本ない人、片目がちょっと薄い人も全部入っていて一・
七だということで、結局五級以下の人たちというのばかり入って、そして一、二、
三、四というところはほとんど排除されているのでは、ほんとうの社会的、職業
的なハンディを持った人たちを障害者だといっておることにならないというふう
に思います。そういう点で、今度の答申にもそれは十分にうかがえることですし、
労働省としてはっきりと障害者というのは何かということを、基本的な考え方を
いままでのような考え方では困るのではないかというふうに思います。そういう
ことが職安の運営にもかかってきて、軽い人だけのお世話をするということに結
果的になっておるのじゃないかというふうに思うのです。こういう観点から考え、
税関のほうでも障害者というものを、社会的、職業的にハンディがある、このハ
ンディをどうしていくかというふうな考え方で答申に沿った対策をしていただき
たい。
最後に税関当局に強く要望をしておきますことは、昨年の十月六日に休職を解
きましたね。そして病気休暇ということに切りかえて半分の賃金をいただくとい
うことになった。そのときに、御本人とそれから矢野考査官という方と影井人事
課長それから本人の奥さんとおじさん、それから視力障害センターの指導員とい
うメンバーのいられるところで、本人に、やめるというふうなものに判こをつか
せたということを聞いておりますけれども、事実でございましょうか。
O道正説明員 私が聞いておるところによりますと、去年休職から病気休暇に 切りかえるにあたりまして、この病気休暇、通常でありますと・・・(田中(美) 委員「事実か事実でないか、それだけ」と呼ぶ)判こでなくて、そのようなこと を書いていただいたということはあったというふうに聞いております。
O田中(美)委員 それではその文書を 本人は目が見えないものですから、 内容を耳で聞いただけではっきりしないわけなんですね。それを至急私のところ に提出していただきたいと思います。すぐに提出していただきたいと思います。 そのお返事を伺いまして、質問を終わりたいと思いますので、御回答を願います。
O道正説明員 きわめて個人の問題にかかわる問題でございまして、われわれ 前向きにこの問題を検討するという段階で 他とのいきさつ、いろいろあった と思うわけでございますけれども、前向きに考えたいというような意味からいい まして、過去にございました資料をどういうふうに考えていくかという点にかか るわけでございますが、個人的な問題にかかわる資料でもございますし、私とし てはどうしたらいいのか、現在にわかに御提出申し上げるというふうに申し上げ るわけにはいかない。ただ、検討さしていただきたいと思います。
O田中(美)委員 これは絶対に出していただきたいというふうに思います。 これはそちらのほうで書かれたものに、本人に口だけで伝えて判こを押したもの ですからね。こういうことを目の悪い人にしたということ自体、いまこの問題は 日本全国の障害者が問題にしているわけなんです。税関の問題ではないんですね。 障害者の人権問題にしているわけです。目の見えない人に、点字で書かれている なら別です、それと同じものを渡しもしないで判こを押した。そして一年もたっ て これは本人はよくわからないわけです。こういうものが残されているとい うことは非常にあれですので、見せていただきたいと思います。もしそれを破棄 できるなら破棄するとか、それを見せていただきたいと思います。それをもう一 度 それをどうしてもお逃げになるということは、その中身が非常におかしい ものであるということを全国の障害者は思うだろうと思います。ぜひ出していた だきたいと思います。もう一度お願いいたします。
O道正説明員 検討さしていただきます。
O田中(美)委員 検討というお返事だけしかできないんですか。ですから、 私は局長に出てほしいと言ったわけですね。あなたが役不足ですかとおっしゃっ たけれども、確かに役不足です。そんな返答しかできないということは自分のほ うが 目の見える人がちゃんと読んで、その同じものを渡していたならいいで すよ。見えない人に点字でないものを読んで、そんな人権無視なことは、いま障 害者の非常に強い怒りになっている。税関、国の官庁がこんなことをやる。それ の行政指導は労働省にあるわけですよね。そういう行政指導を労働省がもうちょっ としっかりしていただきたい。そんな姿勢では、企業全体だって、全国の障害者 が仕事をしていくということは、ほんとうに私としては不満に思うわけなんです。 そういう点で、そのお返事を絶対に、検討するというのはいつまでに検討するか、 そのお返事を聞かしていただきたい。いつまでにその回答が出るか。
O道正説明員 では、私も鋭意検討いたしまして、あと一週間ぐらい時間をい ただければありがたいと思います。
O田中(美)委員 じゃ、一週間以内に必ず私のほうに返事をいただきますよ
うに。
これで質問を終わります。
O大野(明)委員長代理 石母田達君。
O石母田委員 私は、きわめて限られた短い時間の中で、田中議員が先ほどか
ら取り上げている全税関横浜支部の馬渡氏の問題について質問したいと思います。
私もこの問題については、横浜におりますので、長い間知っております。御承
知のように、この方は昭和二十六年に入関したときも非常に近視でありましたが、
三十三年に網膜剥離、左眼失明された方であります。そして、それから十年ほど
おりました本関のいわゆる検査場管理室から昭和四十三年の四月、突然山下埠頭
出張所へ配転されたわけでございます。その職場がどんなにひどいものであるか
は、先ほどの質問の中にもありました。私ももとの建物の外側だけは見たことが
ありますけれども、あれだけでも非常に暗いところです。しかも組合の報告によ
りますと、その中の、外に対しては窓の一つもない、三方がコンクリートの壁で
囲まれた暗いところへ、わずかに残った、視力の弱った片方の目で仕事をなさっ
ていた馬渡さんが配転された。これはこうした視力障害者に対する常識的な配置
転換ではない、私はこういうふうに考えておりますけれども、この点について答
弁願いたいと思います。
O道正説明員 確かに四十三年の四月に山下埠頭に行かれたということは事実 でございますが、その実際の職場の実情をもうちょっと私、検討させていただき まして、現在どうなっているか、そのときどうなっていたか、どういうふうな職 場が望ましいのかという点につきましては私ども検討してみたいと思うわけでご ざいます。
O石母田委員 そしてその半年あとに網膜剥離で入院されて、とうとう両眼と
も失明された。この職場がどんなにひどいものであるか、もちろん私どもの調べ
でも、いろいろこういう条件の悪い方でもあります。その条件の悪い、身体障害
者である、しかも片方の目
しか残っていない方をこういう職場に入れて、そのあと全眼失明になったという
問題について、私はその税関当局あるいは監督官庁の人事院にきわめて重大な責
任がある。これが法律でいう身体障害者福祉法あるいは雇用促進法あるいは対策
基本法、こうしたことを模範的にやらなければならない国のやることであるかと
いうことについては、きわめて私は怒りを覚えるわけです。この点についての責
任についてはどう考えておられるのか、両者に聞きたいと思います。
O道正説明員 さきほどお答えいたしましたように、山下埠頭の勤務条件がど のようなものであるか、われわれ検討いたしましてお答えいたしたいと思います。
O石母田委員 しかも重大なことは、あなたたちも知っているように、その当 時組合は残念ながら二つの組合に分裂しておって、この全税関横浜支部の組合員 としていた、つまりよくあなたたちが言う好ましくない組合だ、こういうような 組合員であったということ、私どもこういう問題でいろいろの差別があったこと について、あそこの税関長、税関の幹部に会ったことがありますけれども、その ときには差別があったと言わなかったけれども、今日見れば是正すべき点が幾つ かあったということで、最近その一部は是正されているようでございます。その 当時を振り返ってみて、この方が第一組合員であった、いわゆる第一組合といわ れる、税関当局にとってあまり好ましくないというような形、そういうことで、 それまで本人も言っておられるようなわりに勤務しやすい職場から、突然こうい う穴蔵のようなところに失明寸前のこの人を配転したという、こういう事実があ るとすれば、これは重大な問題だと思いますけれども、どうでしょうか。
O道正説明員 私ども税関当局といたしまして、現在二つの組合をわれわれの 職員は組織しておるわけでございますが、一つの組合が望ましくないというよう なことは全くないのでございまして、われわれいろいろ最近の実情を考えまして、 おかしな点につきましては労使正常化というようなことを鋭意進めておるわけで ございまして、われわれといたしましては、どこの組合にその職員が属するかに よりまして人事その他の差別をやっているというつもりはございません。
O石母田委員 そういうことは、私の目を見ていえないでしょう。何を言って いるんだ。現実に税関当局の幹部はそういう是正すべき点があった、そういうこ とを反省しておるのですよ。そういうことを国会の中でしらじらしくも 税関 の幹部の中では言ったこともある人がいるんです、好ましくない組合だと。そう いうことについて現実にあなたたち知らないとは言わさない。国会でそういう答 弁をしていれば切り抜けられると思ったら大間違いです。そういう点で、この問 題、非常に重大な問題ですから あなたたちがそういう職場に配転したことが あるのかどうか、どういう職場であったか、それが障害者にとってきわめていい ところだったのか、そうでなかったのか、調べてなかったらよく調べて、そうし てもし、その当時の責任者はあなたじゃないのですから、その当時の責任者が誤っ て、そうした組合員だからという、あるいは何かの感情的な問題、いろいろな問 題でそうした職場にこの方をやったということならば、これは非常に重大な問題 でございますので、そういう点を事実を調査してしかるべき処置をとるというふ うにしたいと思いますけれども、この点について、監督官庁の人事院も含めて、 あなたのほうに調査する意志があるかどうか、これをきっちりと述べてもらいた いと思います。
O道正説明員 ただいまの御指摘出ございますが、私どもといたしましては、 そのような意図的な考えで人事をやるということは考えられないことでございま して、私はそういうことはないと確信しております。ただし、どういう事情でそ のような配置転換が行われたのか、事情につきましては、調査申し上げます。
O石母田委員 人事院。
O中村(博)政府委員 いま石母田先生お尋ねのような事案がかりにあったと いたしますと、そのような行為は国公法の百八条のなな違反でございます。した がいまして、不利益処分の審査請求をなされば、人事院としてはその中身をよく 調べまして、人事院において公正な判定がなされるケースでございます。
O石母田委員 そういうことじゃなくて、いま税関当局がそういう職場があっ たかどうかということも知らなかったということでしょう。こういう問題を私が 提起しているのだから、そういうことを調べて、そういう事実があったかどうか というのを 私のほう、組合のことを言っているのじゃないです。あなたたち は調べる義務がある、こういう問題になったのだから。そういうことについて、 そういう職場だったのかどうかということもあわせて調べられるかどうかという ことについて、もう一度御答弁願いたいと思います。
O中村(博)政府委員 調査いたします。
{中略}
O石母田委員 最後に、労働大臣にも要望します。先ほどから馬渡さんの問題、 いろいろありましたけれども、この障害者の雇用促進法の立場で、ぜひともこう した同じ政府部内に起きている問題ですから、慎重に特にそうした立場から善処 されるように要望しておきたいと思います。
O長谷川国務大臣 承知しました。
O石母田委員 終わります。
[おわり]