議事録の目次に戻りたい時はこちら 「議事録の目次」 までどうぞ。
出席国務大臣 労働大臣 長谷川 峻君
出席政府委員
人事院事務総局任用局長 大塚順七君 人事院事務総局職員局長 中村 博君
総理府総務副長官 小渕恵三君 総理府統計局長 川村皓章君 大蔵省関税
局長 大蔵公雄君 厚生省児童家庭局長 翁 久次郎君 中小企業庁計画部
長 小山 実君 労働省労働基準局長 渡邊健二君 労働省職業安定局長
遠藤政夫君 労働省職業訓練局長 久野木行美君
委員外の出席者
衆議院庶務部長 荒尾正浩君 経済企画庁長官官房参事官 佐倉 致君 大
蔵省関税局総務課長 道正信彦君 文部省初等中等教育局特殊教育課長 国松
治男君 厚生省社会局更生課長 角田耕一君 建設省計画局宅地部宅地政策
課長 沢本守幸君 建設省住宅局住宅計画課長 京須 実君 日本電信電話
公社総務理事 山本正司君 日本電信電話公社厚生局長 小沢春雄君 社
会労働委員会調査室長 濱中雄太郎君
{以下の記事、一部省略}
本日の会議に付した案件
労働関係の基本施策に関する件
O野原委員長 これより会議を開きます。労働関係の基本施策に関する件につい
て調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本政弘君。
O山本(政)委員 大蔵省がまだお見えになっておりませんけれど、時間が短
いようですから、質問を始めたいと思います。
昭和四十八年の十二月十三日に、身体障害者雇用審議会から労働大臣のほうに
審議会の答申があったと思うのです。その答申の中で、社会福祉の理念に立った
政治の展開が強く要請されておる今日、「すべての国民に健康で文化的な最低限
度の生活を営む権利や勤労の権利を保障した憲法の規定に照らしても」身体障害
者に対する手当てを厚くすることは「国の責任である」という趣旨が盛られてお
る、同時にその各項目の中には「関係各省との密接な連携のもとに」もろもろの
施策を講じなさい、こういうこともいっております。それから「行政措置の拡大
についての検討」もしなさい、こういうこともいっている。そして身体障害者の
強制雇用問題については時期尚早としながらも、「現行法の積極的活用や行政措
置の拡大等による行政指導の強化により雇用義務の強化を」はかりなさい、こう
いうふうにいっておりますね。
そこでこの答申に対して、まずお伺いいたしたいのは、労働大臣としてはいか
なるお心がまえでおいでになるか、その点をまずお伺いしたいと思います。
O長谷川国務大臣 お答えいたします。
山本委員がおっしゃるとおり、十三日に身体障害者雇用審議会の勝木会長から
答申書をいただきました。私自身も地方においてはこういう方々の職場における
働き、あるいはいろいろな問題についての悩みを訴えられる一人でございますか
ら、あらためてこの答申を尊重いたしまして、できるだけこれが盛られているも
のを実現するように努力したい、こういうふうに考えております。
O山本(政)委員 それではお伺いいたします。
身体障害者雇用促進法の第十四条に「身体障害者の雇入れに関する計画」という
のがありますね。これは算定したある数によって「身体障害者の雇入れに関する
計画の作成」をやりなさい、こういうことだと思いますが、これを私は一般雇用
者の場合だけに限らないで、各省庁においてもそういうことが当然法の解釈上成
り立ち得る、こう思うのですね。
そこでお伺いしたいのですけれども、労働省は労働省自体としていったいどうい
う計画をいまおつくりになっておるのか。
O遠藤政府委員 官公庁につきましては、雇用率が一・六ないし一・七と、そ れぞれ現業、非現業について定められております。本件に関しまして、大蔵省の 場合を申し上げますと、大蔵省につきましては、本年の十月の調査によりますと、 一・七の雇用率に対しまして一・七三パーセントになっておりまして、一応雇用 率は達成されておるような状況になっております。各省庁につきましても、雇用 率を満たしていないようなところにつきましては、それぞれ雇用率を達成するよ うに御協力を要請いたしておるわけでございます。
O山本(政)委員 大蔵省じゃなくて、労働省は一体どうなっているかと言う のです。
O遠藤政府委員 労働省につきましては官房でやっておりますので、さっそく 調べましてお答え申し上げます。
O山本(政)委員 大蔵省のことはわかっているけれども、労働省のこと自体 は、そういうことがわからぬということはないでしょう。そこにやはり問題があ ると私は思うのです。それじゃ厚生省は。厚生省の方はおられませんか。 それでは、労働省として各省庁に対して勧告をすることができますね。その勧告 はいつおやりになったか。きわめて近いところではいつおやりになったか、聞か していただきたい。
O遠藤政府委員 ちょっと記憶いたしておりませんので、勧告の日時を調べて お答えいたします。
O山本(政)委員 それじゃちょっと話を進められないですよ。要するに、こ の法文をつくった主務官庁が、そういう雇い入れについての率の計画の策定もで きておらないし、きわめて最近おやりになった勧告についてもいつおやりになっ たかということもわかっておらなければ、この質問は進められないじゃありませ んか。大臣、どうですか。いまの労働省のあり方に対して一体どうお考えですか。 労働大臣の答弁を求めます。
O長谷川国務大臣 質疑の応答を通じまして、具体的な数字を持っていないと いうところに ただいま来ておるようですから、お聞きいただきたいと思いま す。
O遠藤政府委員 各省庁に対します指導、勧告は、毎年十月一日現在で各省庁 の雇用率達成の状況を調査いたしております。その調査結果に基づきまして各省 庁それぞれに指導いたすことになっておりまして、昨年の十月一日の調査の後やっ たのがごく最近のものでございます。本年は、この十月一日の結果をいままとめ ておりますので、この結果に基づいて指導をいたしたいと思っております。
O山本(政)委員 要するに十二条の二項では、「適正な実施に関する事項を 勧告することができる。」というのですよ。ですから、適正な事項に対する勧告 というものは、一体どんな事項をあなた方は各省庁にお示しになったのか、その ことを私はお聞きしたいのです。
O遠藤政府委員 各省庁それぞれ現業部門、非現業部門について雇用率が定め られておりますので、それぞれの職種について、雇用率が達成されていない向き についてはそれぞれ具体的な達成のための指導をいたしておるわけでございます。 それから労働省につきましては、先ほどお尋ねの雇用率は、昨年の十月一日現在 で一・九五に相なっております。
O山本(政)委員 それでは、その資料は私のところへお届けいただけますね。
O遠藤政府委員 御提出いたします。
O山本(政)委員 これは大臣にお伺いしたほうがいいかもわかりませんが、 いま申し上げたように、少し腹をちゃんとくくって対策を講じていただきたいと 思うのです。つまり私が申し上げたいのは、身体障害者雇用促進法というのがあ るけれども、実態的にはそんなに中身が充実しておらぬのじゃないか。あとでも 申し上げますけれども、その中にいろいろな法規がありますね。たとえば雇用主 の雇用の義務なんていうものがあるけれども、罰則の規定はないわけです。大蔵 省の場合には納税の義務というのがあるのですよ。ここは雇用の義務というのが ある。納税をしなければ、これは強制徴収とかそういうことで、要するに罰則が あるわけですね。しかしこれについては、雇用義務の規定をつけながら罰則規定 はないわけですよ。だからある意味では、指導をしても雇用しなくたっていいと いう考えというものがその中には出てくるだろうと思うのです。その点について 一体どうお考えになっておるのか。
O長谷川国務大臣 山本委員のおっしゃる気持ちはよく私も理解できるのです けれども、せんだっての答申の中にも「できる限り企業内での職業更生を図るよ う行政指導を進めること」こういうふうな答申があるわけでありまして、私たち は、ただいま局長が申された、各省庁に対して一・七ですか、そういう数字に向 かってぜひやってもらうように実は促進をし、労働省の場合には一・七というも のを一・九まで率先して実行しているという気持ちをひとつ御理解願いたいと思 うのです。
O山本(政)委員 厚生省、お見えになっていますね。まだ見えていませんか。
それじゃ、八ページのところに、「上述した現行法の積極的活用や行政措置の拡
大等による行政指導の強化により雇用義務の強化を図ること」とあります。もう
一つ聞きますがヨーロッパでは要するに雇用の義務、雇用の強化というものが大
体普遍化している、こういっていますね。日本ではまだそういう条件がないから
といっておいでですけれども、そうすると、つまり将来の展望として、あなた方
は強制雇用ということにやはり到達しなければいかぬということなんでしょう。
それで審議会の答申もそういうふうな方向へ向かっていると思うのですよ。将来
はどうなんです。
O遠藤政府委員 答申にもございますように、この強制雇用という点につきま してはいろいろと問題がございます。いま直ちにこれを実施することにつきまし ては、身体障害者の方々の雇用を促進する点から考えまして、かえってマイナス の面も考えられるということで、行政措置によって当面身体障害者の雇用促進を はかっていくようにという指示でございます。私どもといたしましては、一つの 例をあげますと、求人があります場合に、当該求人事業所が雇用率を達成してい ないというような場合には、この雇用率を達成するまで、当該職種について身体 障害者の雇用を引き受けるようにという指導をいたしながら、この求人の受理を し、職業紹介のあっせんをいたしておるわけでございまして、今後ともそういっ たことを強化いたしますと同時に、答申にもございますように、現在民間等にお きまして、雇用率の達成状況の著しく悪い事業所等につきましては、今後これを 公表するとか、あるいは求人の受理をする際に強力な指導をする、そういう措置 によりまして雇用率の達成をはかってまいりたい、かように考えておるわけでご ざいます。御指摘のように西欧諸国におきましては、第二次大戦後の戦傷病者が 非常に多数ありまして、こういった人たちの雇用を確保するために強制雇用の制 度がとられておりまして、課徴金とかそういった制度がとられておりますが、最 近におきましては、逆にこういった戦傷病者が減ってまいりましたというような 関係がありまして、課徴金その他の強制措置というものが必ずしも好ましい形で はないとというような傾向も出てまいりまして、最近におきましては、逆にこう いった強制措置を差し控えるような傾向が出てまいっております。わが国におき ましても、こういった強制措置がはたしてどういう形をとるのが適当であるのか、 あるいは強制措置をとることによってのメリットとデメリット、そういったもの を十分考慮しながら、今後この点についての検討を続けていきたい、こういうふ うに考えておるわけでございます。
O山本(政)委員 強制措置をやることによるデメリットというのは、どうい うのがデメリットなんですか。
O遠藤政府委員 西ドイツにおきましては、確かにこの強制措置によって身体 障害者の戦傷病者の方々の確保ができたようでございますが、その後次第にその 効果があがらなくなってきているというような状況を聞いております。
O山本(政)委員 だから、その効果があがらないというのは、具体的にはど ういう効果というものがあがらなくなってきたのか、抽象的なことだったらどん な答弁でもできると思うのですよ。具体的に、どういうケースで、どういう効果 があがらなかったのかということを聞きたい。
O遠藤政府委員 結局、身体障害者の雇用を促進するためのまず一番大きな問 題は、こういう人たちを職場に復帰させるための能力の開発といいますか、そう いった措置が先行しなければ、いかに強制措置をとりましても、雇用を確保する ことはむずかしいわけでございます。これは申し上げるまでもございません。先 生御承知のとおりでございます。西欧におきましても、強制措置によってある程 度は進んだわけでございますが、それ以上になりますと、かりに課徴金をとりま しても結局雇用が確保できないということになりまして、むしろ課徴金とか強制 をするよりも、リハビリテーションその他によって訓練なりやることによりまし て、こういった心身障害者の人たちの能力を開発し向上させることによって、雇 用につきやすいような体制をより強力にする、そちらのほうがむしろ効果的だと いうような考え方が一般的になってきているようでございます。
O山本(政)委員 つまり労働行政、厚生行政、文部行政ということについて、 それぞれ、要するに基礎的なものをやらなければいかぬということでしょう。そ れがやれるようになったら、強制的な雇用もやれるということでしょう。そうで すね、順序からいけば、あなたの議論から推していけば。そういう条件ができた ときには、強制雇用というものは当然考えられますね。そうですね。その時点で 一体強制雇用というのは考えられるのかどうかということです。つまり将来にわ たっても強制雇用しないのかするのか、私が聞きたいのはそれだけです。
O遠藤政府委員 現在雇用率が設定されておりますのは、民間事業所におきま して一・三パーセント、官公庁におきまして一・六、非現業一・七、こういうこ とになっております。おおむね、民間事業所におきましても一・二九パーセント、 官公庁につきましては大体一・六ないし一・七をほぼ達成しております。こうい う状況でございますので、今後そういった基礎的な前提となります各種の施策を 講ずることによって、いまなおこれからも発生を予想されますたくさんの身体障 害者の人たちの雇用の促進をはかってまいらなけれなりませんが、その際に、そ ういった前提条件が十分達成された後におきましては、この雇用率そのものをもっ と引き上げるということも十分考えられると思います。その際、強制措置をとら なければ雇用率は達成できないのかどうか、そういった点にかかってくるであろ うと思いますが、私ども現在の情勢におきましては、この雇用率達成は、強制措 置をとらなくて指導を強化することによって十分達成できるのではなかろうか、 こういうふうにも考えられるわけでございます。
O山本(政)委員 要するに、身体障害者を強制雇用するかしないか 、でき
るかできないかというのはペンディングだというふうに、あなた方おっしゃって
おると思うんですが、当然私は強制雇用すべきだと思うんですね。時間がないか
ら、これ、詰めたいんですけれども、しかし話題を変えましょう。
仕事についている人たちが就業している際に、要するに身体に障害を起こした
というような場合がありますね。そういう場合に、障害者の解雇制限をするとい
うお考えはないのか。つまり強制雇用というものは、これは望ましいと私自身思
いますけれども、あなた方はまだはっきりした返事をくださらないけれども、そ
れなら一歩譲りましょう。
仕事をしている人たちが途中で身体障害を起こしたという場合に、このことに
対する解雇制限というものを当然私は考えてもいいと思う。強制雇用じゃないで
すよ。だけれども、解雇制限なら当然考えられるはずですね。あなた方は一・何
パーセントというようなことできめて、そして強制雇用はできないけれども、そ
れに対するいろいろな措置を講じる、とこうおっしゃっているんですから、それ
ならば仕事の途中に身体の障害を起こした場合に、その人たちを救済する道は当
然あっていいだろうと思うんです。その点いかがですか。
O遠藤政府委員 私ども、身体障害者の雇用促進法の趣旨ないしは今回の審議 会の答申にもございますように、身体障害者の雇用促進をはかる見地から、雇用 率の強制はできないにしても、行政措置で雇用率達成の強化をはかっていくとい うことでございますし、一般の身体障害者を各事業所それぞれに雇い入れてもら うということからいたしますと、当該事業所で身体障害者になった人たちが、業 務上であれば当然解雇は制限されますが、業務外の事故による身体障害につきま しても、当該事業所で配置転換なり、あるいは他の技能を身につけることによっ て、適当な職場に配転をいたしまして雇用を確保するということは、これは当然 のことであり、望ましいことだと思います。
O山本(政)委員 大臣から、もう一ぺんはっきりとした御答弁を願いたいと 思います。
O長谷川国務大臣 労働省といたしましては、いま山本さんのお話、あるいは また先日の答申の趣旨もよくわかっておりますので、雇用されている労働者が身 体障害者となった場合は、できるだけ解雇されることのないように、事業主に対 して行政指導の強化等について検討しておきたい、こう思っております。
O山本(政)委員 検討しておきたいということじゃなくて、あなたのお考え として一体どうお考えになっておるのか、当然私はそうあるべきだと思うのです が、再度・・・。
O長谷川国務大臣 おっしゃるとおりです。
O山本(政)委員 ありがとうございました。
それじゃお伺いいたします。きょう私がお伺いしたいのは、横浜の税関に入関
をした馬渡さんという方がおります。その人が横浜の税関に入関をしたのは二十
六年の四月でありますが、三十三年の二月に左の目の網膜剥離を発病した。専売
病院に入院をいたしましたけれども、そして手術をしましたが、左の目が失明を
した。それから高島出張所の輸出検査から、本関の検査所へ配置転換をされまし
た。その後四十三年四月に、本関の検査所から山下出張所へ配転された。この山
下出張所というのは、私も図面を見させていただきました。環境からいえばたい
へん悪い環境のようで、私自身が見ただけでもそういう感じのするところありま
すけれども、それが四十三年の四月であります。四十三年の十月に、残った右の
目に網膜剥離症が発病した。そして病状が悪化をいたしまして、四十五年の三月
に身体障害者の一級の認定を受けました。そして四十六年の四月に、国立視力障
害センターに入所したわけであります。そして、はり、きゅう、マッサージ科に
入って資格を取得をした。そのころになって大蔵省のほうで、退職の勧奨があっ
たというわけであります。この間にいろいろのいきさつもあります。それは、研
修扱いにしてほしいというようなことで当局にも要求をしただろうし、その答え
がたいへん不十分なようなことで、国立視力障害センターに行くにしても、自分
でかってに行かれるならばこれはやむを得ませんというようなことで、大変あた
たかみのない処置をされたように私はお伺いするわけであります。
そこでお伺いしたいのは、来年の三月にやめなさいというようなことで話があっ
たそうでありますけれども、なるほど国家公務員法の七十八条の第二号、これに
よると分限免職ということができます。だけれども、それじゃ雇用促進法と一体
この公務員法の七十八条との関連ですね。「本人の意に反する降任及び免職の場
合」ということがあるけれども、その関係は一体どうなっているのか。これは労
働省の関係から、ひとつ解釈上お伺いしたいと思うのです。
片一方では、この審議会の答申にあるように、身体障害者に対する雇用促進と
いうものに対して十分な いままでは不十分であるから十分な配慮をしな
さい、こう言っているんだ。そして、いま大臣の御答弁のように、就業中に身体
に障害を起こした人たちに対しては、その配置転換なり何なりによって救済をす
るのが当然である。私は二回確認したわけですけれども、そういうことになって
いる。そうすると、この関連について一体どうなるのか。ぼくは、国家公務員法
のこの規定というものが、ただ首をぶち切ればいいんだ、身体に障害があって職
務に差しつかえがあるんだから首を切ればいいというものじゃないだろうと思う
のです。国家公務員法のこの規定というものは、万やむを得なくて、どうしても
やむを得ない場合に、そういう処置をすることもあり得るというふうに私は解釈
するのだけれども、その点どうなんですか。労働省の考え方を聞きたい。
O遠藤政府委員 私は、身体障害者雇用促進法の趣旨からいいまして、こういっ た人たちに対しましては、本人の御希望、御意向を十分尊重した上で最大限の努 力をして、配置転換、職場の変更ということで処置すべきであろうと考えます。 ただ、そういった際に、本人の能力、環境等からいたしまして、どうしてもそう いう職場がないという場合には、本人とご相談の上で他の職場への社会復帰とい うことも考えざるを得ない場合があり得ると思います。
O山本(政)委員 身体障害者の雇用促進というのは、明らかに健康人と身体 障害者においては能力の差がある。そのことを承知しながら、なおかつ、要する に雇用促進というたてまえに立って障害者に対してはひとつ救済措置をする、あ るいは就業の機会を与えるというのが、ぼくは身体障害者雇用促進法の本旨だと 思うのですね。そうですね。そうすると、おっしゃったように、その人に対して 職場において、先ほどの話ではありませんけれども、要するにリハビリとかなん とかありますね。そういうことによって仕事に再配置をする、もう一ぺん職場に 戻してやる。もしその職場が適切でなければ、配置転換によって救済措置をする というのがあたりまえだと思うのですね。そうですね。もう一ぺん確認をしたい のです。
O長谷川国務大臣 いま山本さんがおっしゃったことと私のほうの局長がお答 えしたことと、同じだと思います。労働省のたてまえもそういうたてまえで、い ろいろな施策を講じて申し上げた、こう御理解いただきます。
O山本(政)委員 じゃ、大蔵省にお伺いいたします。いま労働省のほうのお 考えは、そういうふうなお考えだ。じゃ、大蔵省のお考えはどういうお考えだ。 少なくともいままでの経過を、あるいはあなたのほうで一方的とおっしゃるかも わかりませんけれども、私がお伺いした範囲では、どうも職場から排除をしよう、 つまり目が見えない、全盲ということで、それに対して、ただ法規にのっとって 職場から排除をしようというようなお考えのように見受けられるのですけれども、 その点いかがでしょう。
O道正説明員 ただいまの件でございますけれども、横浜税関でございますが、
現在、税関総数といたしましては千六百人くらいの人数がおります。本関には八
百人くらいの人数がおるわけでございます。本人の希望 私ども具体的なケー
スを扱っておるものでございますので、具体的にお答え申し上げますと、本人の
希望は先ほど先生がおっしゃいましたように、約三年前から三療の勉強をされて
国立視力障害センターに入所されましてそちらのほうの勉強をされておる、来年
の二月でございますか、卒業をされるということになっておるわけでございます。
たいへんお気の毒な立場であるわけでございまして、本人の御希望は、横浜税関
の診療所におきまして三療のことで職場復帰をいたしたいということが希望であ
るわけでございます。
私ども、八百人の税関において診療所がいまどういうことになっておるかと申
し上げますと、一週間に二回、しかも一日三時間でございますが、女医さんが参
りまして診療をやっておるわけでございます。ほかに歯科あるいはレントゲン、
あるいは看護婦という方もおりますけれども、そういうような診療所であるわけ
でございます。このような八百人のために税関におきまして三療師を一人置くと
いうことは、私ども考える場合にこれは決して適当なことではなく、またそうす
べきでもないのじゃないかというふうに考えております。と申しますのは、やは
り八百人くらいのところに、はり、きゅうの利用と申しますのがそうたくさんあ
るというふうには思いませんし、むしろ私は、本人の長い目で見た生涯を考えま
して、最前の形におきましてどういう形で職場、むしろ社会復帰されるのが
一番望ましいことであるかというふうな観点に立ちまして、本人の希望が三療師
のほうで道を立てるということでございますので、国立視力障害センターの先生、
カウンセラーの方々、あるいは、やはり税関といいましても官庁組織の一部でご
ざいます。これらの行政全体のあり方として、こういう失明された方々をどうい
うふうに考えていくべきか、労働省、厚生省、人事院、それから予算を受け持つ
主計局あるいは行管、その他いろいろ関係局があると思うわけでございますが、
それら関係各省と連絡をとりつつ、現在慎重に検討を加えておるところでござい
ます。
O山本(政)委員 私は、いまの御答弁に対してたいへん不満です。と申しま すのは、あまり言いたくないのですが、申し上げますよ。センターに入るまでに いろいろないきさつがあるのです。行くならかってにお行きなさいということな んですよ。それまでに一体どれだけのことを税関の当局が親身になって考えたか どうかということが一つの問題点。もう一つは、奥さんと親戚の人たちに立ち会 わせて、何でもいいから判こを押せと言って判こを押させているじゃありません か。それは、卒業したら自己退職をするのだということに判こを押させています よ。三つ目、再三言っているけれども、私が把握した範囲では、十一月の五日に 人事課長と考査官が本人に会っているじゃありませんか。そして自己退職を強要 しているじゃありませんか。そういう発想の中から、つまりあなたがおっしゃっ ているようなことを考えると、私は考えられないのですよ。何も好んであんまと かはり、きゅうを習いにいくのじゃありません。そして現実にいま、電話の呼び 出しとか電話の交換とかいろいろなことを全盲の人がやっていますよ。そういう ことをなぜあなた方は配慮なさらないのか。しかも労働省に話に行ったのは、こ れだけの長い経過の中で、三週間かそこら前じゃありませんか。問題がいよいよ 顕在化したときにあなた方はそうやったのじゃありませんか。それが行政官庁の あるべき態度ですか。私はそのことをお伺いしたいのです。そして本人が将来を 考えていいかどうかは、あなた方が判断をするのじゃなくて、 本人に判断させ るのが一番じゃありませんか。最大のファクターは本人に判断させることじゃあ りませんか。その点を私はもう一ぺんお伺いしたいのです。
O道正説明員 ただいま先生の御指摘になりましたように、私どものいままで
の長い
一番最初に休職になりまして五年たっておるわけでございます。その間にセ
ンターに入所する、その他いろいろのことはあったわけでございますが、確かに
私ども税関だけの職場を考えた場合におきましては、先ほど申し上げましたよう
な観点からいきまして、御本人の希望がやはり、きゅう、三療師としてのことだ
ということでございますもので、税関におきましてはそれは困難であろうという
ような観点でわれわれ検討しております。したがいまして、ほかのところにおき
まして三療師としての活躍の場所はないか、われわれ承知している範囲におきま
しては、国立視力障害センターのカウンセラーの方のおっしゃるには、御本人は
学歴もおありになるということで、そういうセンターの教官のポストというもの
も欠員があるならば可能であるというようなことも聞いておりますし、御本人が
そういうような線におきまして社会復帰できれば、それが最善のことではなかろ
うかというふうに 考えて、いままで御本人とも接触をしておりますし、関係各
省との話がおそいということも確かにおっしゃるとおりでございますけれども、
来年の二月、三月をめどにいたしまして、われわれ今後とも御本人の意向も十分
に確かめ、またわれわれの事情も十分にご説明しながら、本人が最善の形におき
まして社会復帰できるようにわれわれ考えていきたいと考えておるものでありま
す。
O山本(政)委員 わたしはいつでもこういう問題を取り扱うときに思うので すけれども、つまり障害者ということになりますと、何だか能力がないというよ うに考えるのですね。しかし、身体障害者に局長のおっしゃるようにリハビリを やり、そしていろいろな基礎的な訓練を施していくなら、能力というものはぼく はずいぶん開発されるだろうと思うのです。それをさせないで、これは馬渡さん とは関係ありませんけれども、何か全盲になったらあんまとかはり、きゅうだけ しかないということは偏見ですよ。身体障害者に対する、あるいは全盲あるいは 目の見えない人たちに対する偏見なんですね。目が見えなかったらあんまとかは り、きゅう以外に何もないというような考え方にとらわれているのですよ。英文 タイピストをやっている人もおるでしょう。現実におるわけですよ。一体そうい うことをセンターに入る前にお考えになったかどうかということが、まさしく一 番問題なんですよ。現在はり、きゅうの資格をとっているから、だからどうだと いうことは問題じゃないのですよ。自分で解決したらいいでしょうと言うけれど、 五百万か六百万要るのじゃありませんか。馬渡さんの退職金は幾らになりますか。
O道正説明員 退職の形におきましても、いろいろの退職の形があるわけでご ざいまして、退職金・・・・
O山本(政)委員 時間が惜しいですから申し上げますが、ぼくは、退職金を もらっても五百万か六百万だろうというのですよ、言いたいのは。そして本人の 年齢を考えてごらんなさい四十四歳から一体どこに転職ができるのかということ です。それを、自家営業したらいいでしょうということにはならぬだろう。そう いうことを私は申し上げたいのです。関連質問もあるようですからよしますけれ ども、このことに対して、大蔵当局としてちゃんと馬渡さんに対して、本人の納 得のいくような職場における仕事というものをお与えになるお考えはあるのかな いのか、私のお伺いしたいのはそれだけなんです。税関の中には腱鞘炎もあると いうことですから、要するに肩がこったり腰痛があったり腱鞘炎も起きていると いう話ですから、その比率については高いかどうか知りませんけれども、しかし そういうことがあるならば、そういところにお使いになったって一向差しつかえ ないじゃないかということです。私はそう思うのです。その辺をひとつはっきり した御答弁をきょう私はいただきたいのですよ。
O道正説明員 先ほどの退職金でございますが、来年の四月一日にかりに勧奨
に応じまする退職をなさったという場合でございますと、退職金が二百八十万と
いうことに計算上なさっております。それから、いま先生のお尋ねの件でござい
ます。横浜税関の中において診療所における三療師として職場復帰を考えたらど
うかという点でございますが、私ども、いままで関係各省と打ち合わせたところ
におきましては、現在のところ八百人の税関におきまして、先ほど申しましたよ
うな状態の診療所に三療師の専門の方を置くということは考えられないというの
が現在の私どもの考え方でございます。
しかし、現在われわれさらに検討を加えておる段階でございますので、今後と
もやはりどういう形における社会復帰が御本人のために最善であるか、税関の事
情あるいは官庁組織全体として、こういう方々をどういうふうに迎えたらいいか
という観点についての反省も加えながら、御本人の希望、当局の考え方突き合わ
せまして、今後とも慎重に検討を急ぎまして、できるだけ早く結論を出していき
たいというふうに考えております。
O山本(政)委員 私はたいへん失礼なことを申し上げたのです。五百万か六
百万ぐらいだろうと言ったのだけれども、いま二百七十万というのです。二百七
十万で一体、将来の生活というものを馬渡さんがやるといったときに、あなたな
らおやりになれるのか、このインフレの中で、そのことを一つお伺いしたい。
第二点は、関係各省というから、おそらく労働省でしょう。労働省とも御相談
をなすったりということになれば、労働省のほうのお考えもあわせてお伺いした
いと思います。先のことですから、そして馬渡さんの要するに将来の生活にかか
わることなんですから。
そして第三番目には、八百人だから無理だということの理由ですね。これは労
働省かどちらか知りませんが、しかし関係各省と相談をしているというのですか
ら、お伺いしたい。
O道正説明員 ご質問の第一点でございます。現在御本人は住宅公団にお住み
でございます。したがいまして、やはり直ちに開業されるということでございま
すれば、相当の施設が必要であるわけでございます。家をさがすということも必
要であろうというふうに考えております。横浜税関といたしましては、そういう
家さがしにつきましても現在心当たりを当たっておるという段階でございます。
ただ、これは決して強要するという性質のものではございませんで、やはりわれ
われの心がまえの一つとして、そういう点につきましても検討は進めております。
そしてどのくらいの金額が必要であるかという点につきましては、やはり相当の
金額が要ると思いますし、またどのように借財と申しますか借用ということが可
能であるかという点につきましても、われわれいままで調べた点につきましては、
きわめてわずか貸し出すような機関しかないようにも聞いているのでございまし
て、現在さらに、どういうような点につきましてどういうような可能性があるの
か検討を加えていかなければならないことであろうというふうに考えております。
それから第三点の、八百人でどうしてだめなんだということでございます。私
ども、人数も一つの要素でございまして、やはり現在までのところにおきまして
はその定員の中ではり、きゅう、三療師の方を一人迎えるということになります
れば、医療職の(二)という職種になるわけでございまして、そのような職種を
人事院かあるいはそういうようなところから、あるいは定員というものをわれわ
れ獲得してくるということが必要になってまいるわけであります。そのような観
点から見ますと、それぞれの官庁がそれぞれの組織にどういうような職種がどれ
ほど必要であるかという観点もやはり一方に考えなければならないのでございま
して、現在までの検討の結果では、横浜税関にそのような職種を一つ置くという
ことについては、我々積極的に考えるわけにはいかないというふうに考えておる
ところでございます。
[続く]