タ ー ト ル No.8

1998. 3.15.
中途視覚障害者の復職を考える会
(タートルの会)

「心」の変化について

タートルの会幹事 松坂治男

 今年は、長野で冬季オリンピックが華やかに開催された。期待通りの活躍をした人、不運にも実力を出しきれなかった人、たくさんの感動を我々に与えてくれた。
 最近、インタビューの中にメンタルトレーニングという言葉が出てくる。練習の積み重ねによって鍛え上げられた肉体だけでは、オリンピックという大舞台で、実力を100%出すことができない。周囲の期待や失敗に対する不安などの微妙な心の動揺によって、明暗を分けた選手が数多くいた。
 我々も視力を失うという肉体的ハンディキャップを背負ったとき、肉体のダメージとは比較にならないほどの「心」に大きな傷を負うことになる。「悲観」、「失望」、「不安」・・・などが「心」の中に充満して、苛立ち、感情的になり、自分の殻に閉じこもり悶々とした日々を送ることになる。
 そうした長い長いトンネルの先に光を見たとき、自分は一人じゃないことに気がつく、周りには多くの仲間がいることに気がつく、閉ざされていた「心の扉」が開かれる。
 晴眼者であっても、同様に人間は一人では存在しえない。コミュニケーションの中に自分の立場、人生が見えてくると思う。ありのままの自分を認め、素直に仲間の意見に耳を傾け、しっかりと大地に立つことができる。仲間は一緒に考えて色々とアドバイスはできるが、最終的に決断をして行動をするのは自分自身である。思い悩んで仲間と語り合った経験は、今後の人生、世界観などを考えていくうえの貴重な財産となるであろう。
 長い人生、急がずゆっくり「タートル」のごとく、豊かな心、穏やかな心で、いつも「平常心」を忘れずに「愛」、「感謝」の気持ちで大いに語り合っていきましょう。

【連続交流会】

どんな仕事をどのようにこなしているか

○司会(新井愛一郎)
 どんな仕事をどんなふうにしているかを、3回シリーズで、具体的にお話しいただきました。前号では第1回を取り上げましたが、第2回、3回と続けて本号に掲載します。
 次号では、これまでの3回の「まとめ」をしたいと思っています。

★交流会その2(1997.10.18)

○滝口 ライオン株式会社に約3年半前に再就職。現在は、マーケティング本部市場情報部(部員16名)に所属。
 機械に関して、パソコンが2台。1台は入社当初に、雇用促進協会の補助でMS-DOS上の「やまびこ」というスクリーンリーダーの音声出力でやっています。もう1台のほうは、IBMの Thinkpadという機械で、これは「ZoomText」という画面拡大ソフトを使用。その他は拡大読書器。
 主な仕事は5つ。一番日々の時間を割いているのが、パソコン通信ネットワークを利用した消費者情報の収集です。ニフティサーブというパソコン商用ネットの中に、プライベートフォーラムとパティオの2つの会議室を持ちその中である限られた人たち――奥様、OLと、雑談まじりにお話をしながら、商品開発のアイディアとかニーズを探っていこうとしているものです。パソコン通信のやりとりはほとんど音声を利用。「WTERM」という通信ソフトを使って通信をして、そこから拾ってきた内容を加工していく。パソコン通信の相手がしゃべってる言葉から1つのコンセプトなり、ニーズ、困ってる部分をまとめて、それに報告レポートをつけて、社内のほかの方に発信する。そういうレポートを60ほど作りました。
 その際「dBASE4」というデータベースソフトで年齢であるとか、家族構成であるとか、そういった情報をちょっとつけ加えるというのを、ごく簡単にやれるようにしてあります。
 次に社内モニターです。うちの会社の製品をつくるに当たって、意識・実態を調査したり、あるいは実際の商品、プロト品(試作品)を社内の方にモニターしていただきそのモニターの管理を私がやってます。
 これは、さっきの「dBASE4」を使用して2000人前後の社内モニターの方々から、今回はこういう属性の方に商品を送ってテストしてもらおうとか、そういうふうな割り振りを、データベースを使って私がやってます。いろんなデータが私の方の手元にあり、それで検索用のプログラムを自分でこしらえて、宛名シール、それから一覧表のリスト、これも印刷プログラムを私が自分でこしらえて、宛名シールとかリストを担当者に渡して、私の仕事が終わる。そういう社内モニターの抽出作業です。
 3つ目は、社内の部内の管理的な業務として、商品テストとか、あるいは実態調査とか、そういった幾つかの調査の進捗状況と、予算進度状況とか、その辺を一覧表にまとめてます。これも同じく「dBASE4」を使用。
 4つ目が、生活者研究のプロジェクトのチームメンバー。インターネットを使って資料を取り出したりしました。
 また、「イベント幹事」も重要な仕事です。


○大脇 平成3年11月にベーチェットで目がクローズしました。自宅で何もせず悶々としていたわけなんですが、2人の息子がいまして、子供の方が頑張っているわけですね。これではいけないと私が動き出したっていいますか、前向きな方向性になったと。今考えますと、そういうことが言えると思います。
 まず病院。平成4年から始まるんですが、多分皆さんもそうだと思うんですが、都内の著名な病院を、私も5つか6つぐらい病院をかえて、結局最後の所でも、視力は取り戻せないという形になりました。その間に1年間費やしまして、その後1年間生活訓練を東京都失明者更生館でうけました。主に歩行、点字、音声ワープロを勉強。その後1年日本盲人職能開発センターで、パソコンの勉強をやりデータベースも勉強しました。平成7年に復職。
 小泉産業株式会社に勤続20年です。
 本社が大阪にあるんですが、東京に情報発信基地のインテリジェントビルをつくろということで、全部がショールームのビルが1990年にオープンしたんです。私がちょうど1990年にそちらの方の部署に移りまして、その中で私の仕事が発生していくわけです。
 パソコン環境ですが、まず、パソコンがPC-98のBXで、OSはMS-DOSですね。それから、音声出力は「やまびこ」。それと、主な使用ソフトが「dBASE4」ですね。それとエディタ、日本語入力の方ですね、「VZ」。ワープロ「松」、これ印刷の時に使用。パソコン通信は「WTERM」。電子ブック、「広辞苑」。フットコントローラー付テープレコーダー、それから録音しますのでマイク、ミキサー等。
 仕事の内容は4項目。1番目、「テープ起こし」。先ほども言いました会社の中ショールームで女性スタッフが16名ほどいるんですが、まあ勤続1年生から10年目クラスまでで、大体そろえている。
 その「テープ起こし」という内容なんですが、当初は会社の総会、会議とか議事録をテープ起こし。最近はのショールームの中で照明の勉強会があるんですね、一応「ライティングワークス」っていう照明の研修会なんですけども。女性社員の中で、お客様に対して発表する人たちがいるわけですね。それを録音しまして、あなたはこういうしゃべり方で、こんなふうに話をしていましたよっていう、本当のべた打ちそのままのテープ起こしが1つ。それから、中身の内容の中で、ここはこういうふうにしゃべった方がいいとか、こういうふうに間違っていましたよというのを、口頭ではなくて文書という形で提出できる、そういうテープ起こし。これは女性スタッフ16名の中で、みんな同じものを渡すんではなくて、新入社員の入社しましてから1年目〜3年目クラスとか、あるいはちょっとベテランに近い入社4年目〜6年目の人、あるいはベテランの7年目以上の人というふうに、ちょっとクラス別にしたものを、研修会等を私が録音して、それをそのクラスに合った形でテープ起こしするという、そういう内容のもののテープ起こしになっています。
 2つ目は簡単なもので、いわゆる御礼状とか、案内状といったものです。
 3つ目が「名刺管理」。まず、ショールームに来られたお客様の名刺をインフォメーションの方でお預かりします。それをインフォメーションの方で取っておくんですけども、90年からですから、相当な枚数になっているんですが、ファイルに入れてあるものがちゃんと保管されているんですけども、それを社員の方たちが探すとなると、1個1個その名刺ファイルをあけなくちゃいけないんですね。それをデータベースの中で、私がそのインフォメーションから大体月に400枚くらいのもの、その名刺を日本盲人職能開発センターでテープに入れてもらうんです。そのときに来場された「日にち」、「業種名」、「業種コード」、「会社名」、「所属」、「住所」、「電話番号」。それを会社に持ち帰り、それを聞きましてデータベースに打ち込んでいく。
 それをすることによって、例えば、今回イベントをするときは、東京23区内の設計事務所の先生方に案内しよう、勧誘しようという場合は、該当するお客様をデータベースから抽出すればいいわけです。
 それから、4番目に「情報発信」。これがまさにインターネットという形になるんですけども。今度会社がEメールに変わるんです。Eメールに変わると、私も自分のデスクトップのパソコンからニフティを使いまして、社員の方々に情報発信ができるという環境が整ったわけです。
 そういう中で、私が個人的にニフティに入っていまして、ニフティの中にクリッピング・サービスというものがあるんですけども。そこで、自分の仕事に関係のある新聞等の記事を検索しちょっと自分で加工した形で皆さんに見てもらうとか、Eメールで発信するとか、そういう作業を今新たな仕事と思いまして、いずれはこのことを仕事に活用していきたいという形でやっています。


○阿部 勤務先は近畿日本ツーリスト総務部。現在の視力は光覚か手動弁ぐらいで、明かりぐらいは感じられますから、歩行はちょっと苦痛ですけども、何とかできてるというような状況です。
 現在53歳です。自分の職場の環境はデスクトップのPC98。「おんくんシステム」、その手前の方には、「広辞苑」。そのパソコンとくっつけて富士通のVSU。そして、その奥の方にプリンタに自動的に電波で飛ばす通信機器みたいなもの。それから、フットスイッチテープレコーダーが2台。1台はマイクロカセット用、1台は通常のカセットテープ用、その手前の方に電話機があります。拡大読書器。私の机の背中の方には一般の部員が使っているパソコンが3台ございます。1台はウインドウズ対応のもので、最近始めたイントラなどをそこでやってます。あとは、DOS環境。上の方にはプリンタが2台ありまして、そのプリンタの方に電波で飛ぶようになってます。
 主に使ってるソフト関係は、ワープロソフトについては「新松」、音声読み上げソフトは「やまびこ」。それから「dBASE3」、それから「ロータス1-2-3」。CD−ROMも、辞書引く際に「広辞苑」を使っております。
 現在主にやってる日常業務、それから定型的な仕事、不定期的な仕事というふうに分けてお話しますと、日常業務で一番時間を割いてるのは電話受付業務が一番時間がかかってる状況です。この電話管理は、会社の代表電話が全部総務に入ってきます。1日100本。これを私を含めた総務部員が手分けして受けるんです。データベースに「TELシステム」っていうシステムを導入、単純に“TEL”とタイピングすると、電話管理、社内メール、社内電話のデータベースが立ち上がってまいります。そこでは内容的には簡単に、検索と入力と修正、この3つしかできないようにしてあって、主にそれは役立たせるのは、即対応できるような電話のシステムにしてるということです。ただし、電話機は多機能電話でして、とりあえず一番かかってくる辺りの所に手を置いて、ボタンを片っ端から押してしまう。そして、当たればそれで受けるという、実態はそうなんです。
 2番めに定型的な業務として、データベースで部員の担当する業務の進捗状況管理表の作成。毎週1回部内ミーティングに管理表をもとに部長がチェックします。ただいまの案件はどういうふうになってて、いつ完了するか、現在どこまで進行しているか、そういう内容で、内容が約10項目ぐらいポイントが入ってるようになってるんです。
 それに基づいて進捗状況を管理していく管理表っていうものを、ミーティングの時点でまずテープに入れます。テープに入れたものを、次の週が来るまでに私の方でデータベースを更新していきます。そして、更新していったものを次回のミーティングに資料として出して、それに基づいて、さらにまた同じような進捗状況のチェック、もちろん新規に入ってくる案件については、そこでまた新規として登録しておきます。すなわち、1回ごとの案件をもってる、生きてるやつね。生きてるやつでは約100件ぐらいの案件が常に保存されていく。したがって、完了していくのもありますね。完了をしていくやつは完了日を入れて一応終了にさせて、しまっていく。ですから、通常は生きてるデータだけを生かす。それから、それを最終的に管理する人がいるんですが、その管理する担当者には、完了データもすべてアウトプットしてお渡しするというような内容になってるのが管理表、これをデータベースでやってるわけす。
 それに連動させて費用管理もしてるんです。この費用管理はどういうことかというと、案件には必ず顧問弁護士あるいは外部の弁護士をつけてまして、弁護士の指導を受けながら案件を処理していきますので、もちろん弁護士の費用が発生してきます。その費用管理を別ファイル、いわゆる弁護士管理台帳っていうものをつくって、データベースをつくって、その管理表と連動させてる。これはプログラムで連動させてますから、いわゆる予算管理表というものをつくって、これは半期1年でとらえるようにしていって、弁護士別、月別に予算と実績が集計できるようにして、もちろん差異がそこに出てきます。この差異をとらえて、次年度の予算の作成の資料にしていく。あるいは現在の予算の進捗状況、それを部長が把握して、使いすぎてるから、今回の案件は弁護士に頼まないで自前でやろうやとかっていうふうな、そういうような方向でこの予算管理表は常に活用していくというやり方をしてます。
 期末には弁護士ごとの案件、例えば、ABCDという弁護士がいれば、Aさんの弁護士はどの案件で、そして何月何日どういうことの案件でかかわったかというのを先ほどの管理表から連動させてますから、弁護士さんの名前で入力していってアウトプットさせるようなプログラムを組んでまして、それをAという弁護士さんのリストを出させれば、それが今現在どこまでどれだけの金額で案件はどういう案件でというデータが即座に出るようにしてあります。それが弁護士管理台帳と予算管理を連動させたいわゆる管理表というものを管理させてもらっています。
 それから、ワープロのテープ起こし。これも結構な量でして、これは不定期なんですけども、でも量としてはやっぱり、さっきの電話の半日使うような量が結構入ってきます。
 また「苦情処理事例研究会」というのがありまして、これは顧問弁護士をお呼びして、顧問弁護士と、旅行のツアー上での問題が発生したトラブルの際の法的な処理方法、こういうものを関係部署の部長クラスを呼んで、検討会をやっているので、その事務局員なんですが、ここは完全に話された内容をテープ起こしして、その事務局にお渡しして、フロッピーでもテキストファイルにして渡すという部分も相当あります。
 また、「障害者ツアーマニュアル作り検討委員会」にも委員として参加。


★交流会その3(1997.11.15)

○北神 47歳です。網膜剥離で、左右とも光覚。今の会社に入ってから、4年7カ月。会社は建築資料研究社。
 前は印刷会社で約20年近く経理と原価計算、電算機の管理をしてました。会社に復職を前提で、国リハ、職リハと進んできたんですが、いろいろな行き違いが出てきて、結局復職できなくなりました。ただ不思議と私は生来楽天的なせいか、何とかなるだろうといって、職業訓練を終えて約1年間ぐらい仕事探し、約50社ほどに履歴書を出した。結局知り合いの紹介で、今の会社に奇跡的に入れた。
 入社してしばらくは、社内のネットワークの推進のプロジェクトの事務局の仕事、パソコン講習会のインストラクター。視覚障害者が晴眼者に教えることはできるものです。その他社内で、パソコンに関心のある社員でつくる研究会の事務局など。
 しかし、新しい変化の中で今は週1回ほど会社に出るだけで、基本的には在宅勤務です。必要に応じて打ち合わせ、あるいは、インストール、そういった仕事の時に会社に行く。
 機器構成とソフトウエア構成ですけども、機器は98が2台。1台は9821AP、66MHz。もう1台はXA13、MS-DOS(Ver.6.2)と、Windows95を動かして仕事をしています。
 ソフトウエアは、音声ソフトは、DOSの方は「VDM100」、Windows95の方は「95Reader」。これが音声で最も使いやすいなと思うものを使用。
 まず、ワープロは「一太郎 Ver4.3」、時によって、Ver5を使います。Ver5は音声対応がすこぶる悪いんで、大きな文字が必要なときにしか使いません。
 それから、表計算。これは「Lotus1-2-3」の2.3Jと2.4J、それに「Excel95」。何でLotus、2つも使う理由は、実は、私が使っているVDMのVer4では、2.4Jは音声対応が非常に悪いです。2.3Jの方がいいが、ただ、基本的にはもうみんなLotusは、DOS版はもう2.4Jが最終版ですから、2.4Jで提供しなければなりませんので、2.4Jでつくったものを2.4Jに読み込んで使うようにしています。場合によっては、社内でエクセル形式で提供する必要がありますから、そのときはExcelに変換して、2.3J、あるいは2.4Jでつくったものを変換して使っています。
 次にデータベースソフト。これは「dBASE4」と、あとは「The CARD Ver5」。使い分けはdBASE4は主に社内向けアプリケーションの作成、それから、The CARD Ver5は自分用のデータベース作成に使っています。
 それから、エディタは3種類。「SEDIT Ver5」「SEDIT Ver6」、それから「VZ EDITOR」。これも何で3つ使うんだと。実は、音声対応が最もいいのがVer5だからです。SEDIT Ver5の音声対応が最もいい。次にVer6。VZは私の使い方が上手じゃないせいか、どうも音声対応が一番使いにくいんで、非常に長いものや、あるいは複数のファイルを聞き出さなきゃいけないときにだけ使っています。
 それから、ほかに通信ソフトとして「WTERM」。あとは、フリーソフトの「LHA」や、時々私いろんな用事で出かけますので「駅すぱあと」という鉄道検索ソフト、DOS版ですけども。
 ハードでポイントなのがオプタコンです。私はオプタコンなくしては、今の仕事は務まっていかないです。
 私の現在の仕事は社内向けアプリケーションの開発です。それに付随した仕様書、マニュアル類の作成、あるいは立ち上げ作業、サポート、全部それは1人でやります。もちろん電話でのサポート業務もありますし、場合によっては行ってサポートすることもあります。全部社内ですから、幸いに今、建築資料にある機械は98がメインですので、割合DOSでも対応しやすい。
 そんな中で、オプタコンというのが、非常に大事な役割を果たしています。例えばdBASEでソフトを開発します。数多く設計した帳票を、全部、人に読んでもらうなんて不可能です。自分で設計したものを自分で確認するのは、今のところオプタコン以外の方法は、私は思いつかない。オプタコンでしたらプリントアウトして、慣れてくれば1分以内にレイアウトを確認して直すことができます。
 そういった仕事の中で、とにかく視覚障害者といえども、きちんとした戦力として会社の中で存在感を示さなければならない。社内のできるだけ多くの人といいコミュニケーションをとりながら、いい仕事をしていくことが、会社の中で、きちんとした仕事をやっていくキーになるのかなと、自分なりに思っています。
 使用ソフトの名前をずらずらと挙げましたけども、ひとえに、どうしたら少しでも効率的に仕事ができるかをを考えるからです。とにかく常に日々、工夫を繰り返し、でも、これは視覚障害者だけじゃないと思います。ただ、より視覚障害者の方が、どうもエネルギーは必要かなという気はします。
 今、壁になっているのはウインドウズの問題があります。ただ、これも与えてもらうだけじゃなくて、みずから、もし協力できるものがあるんだったら協力したい。
 在宅勤務について。音声装置を使っていまして、イヤホンをずうっと使いましたら、耳鳴りがとまらなくなって、通勤も危ない状態になりましたので、会社に話しましたところ、ちょうど今の仕事でしたので、それなら家でもできるということから、家で在宅勤務が始まったわけで、決して計画的にステップを踏んでやったわけではないんです。ただ、結果的にいうと、在宅の方が仕事の能率は上がります。つまり、1日自己管理さえできていれば、仕事に集中できるから。通勤のストレスもないし、肉体的精神的な疲労もありませんから、仕事に集中できる。ところが、マイナス面としては、夜中でもひらめくと、パッとパソコンのスイッチ入れるようなことになりかねない。
 確かに在宅勤務は障害者にもいいと思いますけど、世の中全体が、実はソーホー(SOHO)といわれる方向に向かいつつあるんじゃないか。


○松坂 47歳です。網膜色素変性症で現在の視力は、0.01以下で障害程度は1級。
 現在は、オータックス株式会社で、スイッチをつくる会社。丸2年勤務。その前に、同業の会社で技術部に属しスイッチの設計技術で22年間やってきました。
 前社はそんなに大きい会社じゃなかったので、技術者といってもお客さんとの接触、それは新製品があればお客さんのところに行って打ち合わせもするし、その後、納めて、問題が起きればトラブル処理で、謝りにも行く。主体は設計ですが、よかったのか悪かったのか、営業の仕事もわかりますし、そういう品質関係の仕事もやっていた、そういった関係もありまして、今現在、それらの経験を生かし昔の競合メーカーで、ライバル会社に籍をおくような形で推移しています。
 前社で業績不振がありまして、各部署の責任者が全員責任とらされました。今の会社の社長と技術部長を知ってましたので、「籍を置かしてくれないか」って言ったら、「机だけは空けるよ。仕事は来てから考えりゃいいじゃないか」というような形で、非常にラッキーなんですけれども。会社は変わったんだけど物自身は同じ物だっていうことで、気楽にできる条件があるわけなんです。
 視覚障害になって皆さん一応、訓練を受けて、いろんな形でパソコンを利用しているのですけれども、私の場合には、一切そういうことありません。ちょうど2年前に、日本盲人職能開発センターの「情報処理の指導員講習」の4日間のコースに参加しそのときにパソコンがあれば、書くことはできることを知った。
 現在、拡大読書器とパソコンを隣同士に置いております。プリンタも机の上に置いて、書類は全部拡大読書器で見る。パソコンの環境は併存の形で、音声化ソフトは、DOS環境の「VDM」と「95Reader」を使用。ワープロはDOSの環境では「でんぴつ」。Windows95の方では、「一太郎」のVer6.3とVer8。表計算の方は、「Excel95」。それにOCRとして、「読取物語」を一応接続してます。
 仕事の内容としては、今までの22年の経験があるっていうことで、それが1つの財産ですので、基本的には、スイッチの規格書をつくる仕事とか、新製品の材料だとか素材の情報を収集することと、もう1つは、過去の経験を生かしてクレーム処理、問題が起きたときに改善をしなきゃいけないときのアドバイスっていうことで、実際には、今はクレーム処理みたいな仕事がメイン。やっぱり、後ろ向きの仕事っていうのはなかなかみんな避けるもので、そういった面を過去の経験を生かして改善をしていくアドバイスですね。
 実際の仕事は、自分が手づくりだとか、削ったり切ったりだとか、そういった仕事はできませんので、指示だけして、その結果をまた測定してもらって、出た結果をExcelにデータを入れて、それを分析する。これは音声だけじゃなくて、目も使うが、グラフの処理をしてみたり、標準偏差を取ってみたり、平均値を取ってみたり。そういったExcelの後処理、そういったものを利用しながら自分の職務を進めている。
 もう1つ、定型的な仕事は、JIS規格だとか、各製品の仕様書をつくるんですけれども、前の会社でも10年ぐらいやってましたので、その仕事をするために、テキストで、「でんぴつ」で起こしたやつを、最終的な校正は「一太郎」を使って体裁を整えるっていう仕事をしています。
 それと、最近ではアンケート調査がフロッピーで送られてくる。これが、Excelの形式のものがそのままフロッピーで送られてくる。その中に書き込んでフロッピーを返す。あくまでもパソコンは補助的な役割っていう形で位置づけられています。
 人間関係としては、聞き側に回っといて、いざ相談を受けたときには素直に、相談を受けたら一緒になって解決していくと、そういう繰り返しをやっていく中で、だんだん仕事の職域がふえてくるんじゃないかなということですかね。
 視覚障害者としての職業訓練だとか、そういうことをやってませんので、基礎はないんですけれども、自分がぶつかっていって問題が起きたときに初めて勉強になる、頭でやるんじゃなくて、体で覚えていこうっていうような形で、これからも仕事を進めていきたいと思います。


○吉泉 もともと目が弱くて、右目の方は全然見えず、左目の方も網膜剥離を起こし、12才で失明。それから盲学校に入って、一般の大学に行き、所沢の身障リハと職リハを経て、1983年に労働省に入る。労働省では、最初、障害者雇用対策室。そこで5年間、その後、国際労働課の海外労働情報室で7年。それでまた、入省当初の障害者雇用関係のところに今現在戻って、丸2年が経過。
業務の内容は、要するに文書作成です。1番目は研究会とか審議会にまつわるもの。役所は予算措置を決めるとか、施策を決める前に、大体研究会や審議会をやる。これが結構私の部署の中でも大きなウエイトを占めている仕事で、その中で配布資料の作成、その会議録をとるとかといったことをやります。
2番目に英文の資料の翻訳・要約。これは今の部署にくる前の海外労働情報室で毎日こればっかりやってたんですけども、英文の資料を読んで、翻訳したり要約したり、大抵は要約が中心。
やり方はパーソナルレーダーという英文読取装置−OCRの英語版みたいなものですね。これは英語しか読み取れないんですが、それを使って文書を電子データ化して、それを点字ディスプレイを使って読んで、音声ワープロで書いていく。
3番目が関連情報の収集。
4番目としては、点字の試験に関係する併任業務。国家公務員の採用試験と社会保険労務士の試験に関すること。
あとはいろんな所から依頼された原稿を書いたりとか、障害者関係の施設とか機関との連絡調整。
次に作業環境。私の場合も残念ながら専門のアシスタントの方というのはついていません。これは何年かずっと要望は出しているんですけども、なかなか思うように配置してもらえない。書く方はあんまり問題ないですけど、読む方は、回覧文書なんかは、大体回ってくるときに紙を私に渡すということではなくて、私の所に持ってくる人がチョコチョコッと読んでくれる。「こんなイベントありますよ」とか、冠婚葬祭関係ですね。これは特定の人じゃなくて、多分若い人たちが3〜4人でそれなりにローテーションを組んでやっているんだと思うんですけども、私の方から特にお願いして読んでもらうということではなくて、向こうの方で読んでくれるような態勢が、それなりにあるようです。回覧文書以外で短いものについては、その仕事に関連している割と若い人たちに録音してもらったりというようなことをしています。あと、長いものについては、外部のボランティアの方ですとか、そういったところにお願いして、録音してもらったり、点字にしてもらったりというようなことをやってます。
使っている機械は大体ほかの方とそんなに大きく違いはないです。パソコンはPC9821のVALUESTAR13といったものとか、音声出力装置はVSUとか、点字ディスプレイはブレイルノート46Cというのを使っています。あとは墨字用のプリンターとか、CD-ROM用の辞書は一式入っています。点字タイプライターもあります。
課題として、アシスタントをちゃんと専門の人をつけてもらいたいと。いくら周辺でそれなりの態勢をとってくれたとしても、自分の思っているところをパッと読めるということではないので、そのための人を確保してもらいたいというのは、要望し続けていきたいと思います。機器類の関係でいうと、機器そのものは大体いいんですけれども、社内のLANというんですか、ネットワークシステムなんですけども、私がまだ使える状態にないものですから、少しでも使える部分を広げていければな、と思ってます。
一般職っていうのはなかなか視覚障害者には、率直に言って大変です。いろんな仕事をこなさなくちゃいけないというよりは、ある1つの領域の仕事に専念できた方がやっぱりやりやすいというようなところがあります。本省にいるとなかなかそういうわけにいかないものです。
健常者と全く同じような形で昇進できるとは思っていませんが、今のままでズルズルいっていいものかと。自分の仕事の領域というのは、ある程度専門的な部分で、私の希望としては、労働省ですけども、やっぱり障害者関係のことにずっと携わっていきたいというふうに思っていますので、そういった領域で、多少専門的な部分に首を突っ込んでいきながら、少しずつ昇進も考えていけるような方向で持っていきたいと思っています。


通信ネット情報交換会(1998.2.21.)

50名弱の参加があり、予想外の大盛況のうちに無事終わる。
(1)WTERM によるアクセス〜 北神あきら幹事
(2)WINDOWS95 での通信ネットアクセス〜 松坂治男幹事
(3)DOSによるppp接続でのインターネットアクセス〜 吉泉豊晴幹事

 上記のように3氏がそれぞれ担当し、デモを行った。質疑も活発になされたが、なかには用語が難しい、初心者には別な機会をとの声も。

【交流会:1998.1.17】

「歩行について」

国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
視覚障害者生活訓練専門職員養成家庭主任教官
坂本 洋一

 今日は、視覚障害者の歩行の問題について、歴史的経緯、歩行指導の現状、バリアフリーの問題などについてお話をしたいと思います。
 最初に、歴史的なこととして、アメリカでは、傷痍軍人のためにつくられたフーバーケーンテクニックが1960年代に発展します。これは、タッチテクニックを基本とする歩行技術ですが、1970年代に入ると、ロービジョンの歩行の問題や、視覚障害児の歩行訓練といった領域にも関心が広がり、そのテクニックは発展と改良が加えられます。1980年代には、高齢の視覚障害者の歩行問題が取り上げられるようになります。
 日本でも同様の流れとなりますが、一番最初に歩行についてまとめたのは、神戸の市立盲学校の木下先生で、「盲目歩行について」という本の中に記されています。これは、フーバーケーンテクニックよりも前に発表されたものでしたが、実際全国的には普及しませんでした。後に、日本ライトハウスが、フーバーケーンテクニックを体系的に訓練の中で行い、普及をはかりました。
 現状の歩行指導の問題としては、指導する側が難しく教えすぎているのではないかという印象をもっています。中途視覚障害者の場合には、目的地に対して直線を結んで、ぶつかったら左か右に曲がっていくという移動の原理が一番合っているのだろうと思います。しかし、どうやって教えるかは、歩き方は一人一人違うわけですから、その人の歩行パターンを見極めた上で、持っている能力を発揮できるようにする必要があります。
 また、歩行技術に関して、指導する専門職の人と、視覚障害者の方が、一緒に「体験を共有する」ことができたらいいのではないかと提案をします。これは、訓練士もアイマスクをして歩いて、フィールドで視覚障害者と様々なテクニックを確認したり、その後カンファレンスを開いて合意形成していくという作業を経ます。やはり、当事者である視覚障害者に問いかけることによって、これまでのテクニックを検証していくことが必要であり、「タートルの会」はその場合、主要な戦力になると考えています。
 また、施設での訓練が、地域に密着せず訓練中心主義になっているといった問題があります。施設から地域への流れの中で、訓練後その人がどう社会の中で自立していくかを支援していくかが大切であり、その人のQOLがどう高まったかを評価できるようなケア・マネジメントをしていかなくてはなりません。
 地域リハビリテーションというと、最近物理的なバリアも問題になってきています。歩行に関していえば、確かに歩きにくいところはたくさんあるわけで、視覚障害者自身に責任がなくてもトラブルを起こしているという場合があります。障害のある人、ない人にかかわらず、一緒に使え、また共有できるユニバーサルデザインといった考え方が広まっていかなくてはなりません。

【質疑】
○質問 ガイドヘルパーの経路の説明は、視覚的に見た感じのものが多くて、わかりずらいこともあります。単なるガイドだけでなく、視覚障害者に理解しやすい情報提供の仕方を学ぶ講習会はできないのでしょうか。
○坂本 現在、私もかかわっていますが、厚生省の方で、ガイドヘルパーに関する指針づくりを行っています。その中で、視覚障害者に対する言葉の使い方の項目が含まれており、質的レベルアップに向けてのテキストづくりをしているところです。
○質問 地域の中でサポートを受けるには、歩行訓練士の数をもっと増やすことが必要ではないでしょうか。
○坂本 歩行訓練に限らず、生活訓練をする専門職の資格制度をやはりつくらなくてはいけないと思います。現在、厚生省の方で、施設の見直しをしようという動きがありまして、その中で、訓練士の定数を割り込ませるように働きかけていますが、現実的には難しいものであります。
○質問 バスやタクシーの列に並ぶ際、最後尾がわからなくて困るのですが。
○坂本 指導する際には、「一番前に」と言います。これは、列に並んでも同じバス停なのに違う路線という場合もあるからです。ですから、一番前に行って、「どこどこ行きのバスが来たら教えて下さい」と援助依頼するのが良いでしょう。しかしながら、最初は、声をかけるのに非常に勇気がいるということも一方で理解しなくてはいけないと思います。
○質問 電車に乗る際、どのような方法が一番安全なのでしょうか。
○坂本 基本的に、中途で全盲の方の場合、正面にドア(空間)があるのは、怖いと思われます。ですから、無理に列に並ばず、車体にぶつかってから回り込んでいく方が安全でしょう。

◇会合日誌◇


◆1997/12/9 『中途失明』〜それでも朝はくる〜出版
◎各紙に紹介記事掲載、反響を呼ぶ!!


◇お知らせ◇

◎『中途失明〜それでも朝はくる』のテープ版を「タートルの会」として作りました。ダビング等発送作業についてワークアイに任せて頒布します。
 ・問合せ先:ワークアイ船橋(TEL:0473-36-5112)
 ・価格:2,000円(90分テープ9本)


◇編集後記◇

 『中途失明〜それでも朝はくる』は、3,000冊を印刷したが、売れ行き好調で、在庫はほとんどなくなった。従って、増刷を決断。第2版印刷は3月下旬になる予定。
 中途視覚障害者の「働く」問題は、「生きる」権利として捉えてほしい、という訴えが社会に強いインパクトを与えている。
 メーリングリストは、現在49名と大変活況を呈している。
 (篠島永一)

『タートル』(第8号)
中途視覚障害者の復職を考える会
タートルの会
会 長   和 泉 森 太
〒160 東京都新宿区本塩町 10-3
社会福祉法人 日本盲人職能開発センター東京ワークショップ内
電話 03-3351-3188 Fax.03-3351-3189
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