会報「タートル」第21号

1998年10月9日 第三種郵便物認可(毎月3回8の日発行)
2001年9月9日発行 SSKU 増刊 通巻第532号

中途視覚障害者の復職を考える会  
(タートルの会)  


 【巻頭言】

継続的な事業としてのIT講習会を望む

杉田ひとみ  
タートルの会・幹事(春日部市在住・48歳)  

 私は大分県出身で、15歳で上京しました。20歳で結婚し、娘1人、孫は1人ですが、来年の3月には2人になる予定です。現在は夫と2人暮しです。
 視力は左0、右0.03。視野狭窄があります。職業は公立病院のリハビリテーション科技師(マッセル)です。勤続20年になりますが、視力の低下とともに業務内容に制限が出てきております。スタッフの協力を得ながら何とか働いていますが、現状のままでは自主退職若しくは勧告を受けることになるのではと思います。定年までの12年間をどうやって仕事を継続していくかが差し迫った課題です。

 昨年の秋、ある視覚障害者職業問題シンポジウムで、日本盲人職能開発センターの篠島永一先生にお会いしました。それがきっかけでタートルの会を知り、入会させて頂きました。
 当時の私は、職場における私のできる仕事が少なくなっていく現状に悩み、日々退職の事ばかり考えておりました。あと1年で勤続20年になるし、不本意ながらそろそろ退職するしかないのかなと、消極的な考え方をしていました。
 しかし、先生から「絶対に自分から辞めたりしてはいけませんよ」と言われ、目が覚めました。お話を聞いているうちに、せっかく公務員になれたのだし、定年まで頑張らなくてはと思えるようになりました。
 その後、タートルの会のホームページを読んだり、『中途失明〜それでも朝はくる〜』の本を送っていただいたりしました。OCRを使用して夢中で読みました。執筆された皆さんの職場環境や職業復帰までのご苦労が綴られていました。こんなに多くの中途失明をされた方々が、一般の職場で働いていらっしゃることに驚きました。事例を読みながら、私なりに自身の考え方の方向性を見い出したような気がしました。

 私の場合、現在の部署で働き続けることには限界がきつつあります。他部門への異動も否めません。そのような事態を考慮しながら自身の能力開発をする必要性に気付きました。できなくなった事を数えるよりも、可能性を模索するほうにメンタルエネルギーを傾けることにしました。
 「パソコンが好きならパソコンの先生になったら良いですよ。」と言う篠島先生のお言葉がそれまで足元ばかり見ていた私に前を向いて歩くことを思い出させて下さいました。
 折しも、森前首相がIT革命を提唱し、全国的にIT講習会が展開されています。埼玉県や春日部市でも視覚障害者向けのIT講習会が始まっています。私はその事業にボランティアとして参加しています。休日をほとんどそれに費やされながらも、自身が社会参加できることを幸せに感じています。以前の私には考えられないような毎日です。

 障害者である私たちこそが、職場でまた家庭でハイテク機器の発達の恩恵を受け、もっと便利な生活ができるようになったら良いと思います。そのためにも講習を受ける機会が必要です。このIT講習が今後地域において継続的な事業となるように、行政に働きかけていきたいと思います。今後は職場においても私に何ができるかを模索しつつ自身をアピールしていきたいと思っています。



【総会記念講演】

障害者の労働権と労働の場における人権の確立

講師:清水 建夫 [弁護士・働く障害者の弁護団 代表]   

 私は弁護士として30数年になります。これまで富山県の「イタイイタイ病」という公害事件、あるいはスモンという薬害事件などを扱ってきました。障害者関係の人権問題は、私の経験としてはまだ10年にもならないくらいです。「働く障害者の弁護団」は、昨年結成しました。

 さて、本日は「タートルの会」の皆さんにお会いできるのを楽しみにしておりました。「働く」ことについて、先進的に取り組んでいる、その当事者の会というのはあまりないように思うのです。特に日本の障害者団体は、働くという問題については、まだまだ積極性というか、そこまでいかないという部分もあるかと思うのです。しかし、「タートルの会」は、今の日本における障害を持って働くという厳しい環境の中で、復職を目指すとか、前向きに取り組み、いろんな形で努力されています。
 しかしながら、現実的には、法律制度に根本的な厳しい問題があるように思います。今、私たち日本弁護士連合会は、11月に奈良で障害者の人権シンポジウムを開催し、「障害者差別禁止法と権利法」の制定を求めることを目指しております。
 ただ、障害をもつ当事者が強く要求することが基本だと思うのです。「差別禁止法」というのは、世界では40数カ国で制定されておりますが、日本では、とてもそういう雰囲気ではありません。「障害者基本法」がありますが、これは決して権利を真正面から規定した法律ではないのです。ですから、例えば、企業とか官庁が差別をすれば、それなりの制裁がある、そういう法律をつくらなければ効果がないと思うのです。そのような法律を日本でつくっていく必要があると思うのです。
 皆さんご存じのように、「ハンセン病」の訴訟については、結局一審の判決で国も控訴を断念して一応の決着をみました。「ハンセン病」のように、被告というか相手がはっきりしているものについては、訴訟を一つのテコにして解決を図れる部分があるのですが、障害者全般の問題は、それこそ国の法律制度や行政全般のことですから、それを法律がおかしいから国を相手にということはなかなかできない根本的な問題になっているわけです。ですから、それを改正させるためには、やはり当事者として障害を持って働く皆さんが、「これはおかしい」と声を上げていただき、私たち法律家がサポートしていくようにすることにより、日本のおかしな法律制度を改正し、進歩させていく方向で考えていただきたいのです。
 「タートルの会」としても、これからのテーマとして、おかしな法律を改正または廃案にさせ、働く者の権利を確立する法律をつくることを、ひとつ重要な課題として取り組んでいただきたいと思います。

 その次に、日本の法律のどこがおかしいかということを、少し申し上げます。今から2年半前ですが、『福祉労働』という雑誌に「障害者雇用促進法の抜本的改正を〜この法律が抱える構造的問題について〜」と題し、今、障害者の雇用を進めるのは雇用促進法であると言われているが、これが構造的な問題を抱えていることを発表しました。
 この法律は、非常に長ったらしく、ある意味では技術的というか、技巧的につくられており、当初、雇用率のことなどを決めてある法律だという程度だったのですが、よくよく調べていくと「これはとんでもない法律だ」というのが、私をはじめとする関係者の結論です。 何が問題かといいますと、そもそも障害者雇用促進法の発足の経過を見ますと、1つは、国際労働機関(ILO)が1955年に「身体障害者の職業更生に関する勧告」を出しました。因みに、日本の国連加盟は1956年、世界で80番目です。勧告は障害者の範囲を「身体障害者ばかりでなく、精神に障害を持っている方も含め、その労働の機会を確保するように」というものだったのですが、日本政府はそれを身体障害者だけに限定して雇用の確保を図るということで、ごまかしているわけです。
 そこでどういう違いがあるかといいますと、当時は日本がどんどん経済成長する時代でしたから、障害者も働き手としてそれなりに働いてもらい、いわゆる人手不足を補うという発想が、基本的にあったと思います。そういう発想ですから、障害者の中でも、使いやすいということから身体障害者に限るという経過があります。
 この当初できた障害者雇用促進法は、身体障害者雇用促進法という題名でしたが、簡単な職業安定法の障害者版というような感じのものでした。職業安定法がつい最近改正されましたが、平成11年まではその目的は、「工業その他の産業に必要な労働力の充足を図り、そのことにより産業の興隆への寄与を目的とする」ということでしたから、要は産業振興政策の一環として、身体障害者雇用促進法もそのような精神でつくられているところが多分にあったわけです。その流れをくんでいるため、名前こそ身体障害者が取られ障害者雇用促進法になりましたが、精神はそのまま受け継がれていると言えると思います。

 現在の障害者雇用促進法が何が問題かといいますと、基本的に「障害者の雇用促進」という言葉からわかりますように、雇用する側を主体者としており、事業主が雇用を促進するものとされ、障害者は「措置の対象である」というところにあります。
 また、本来、国がやるべき障害者雇用の中心の部分を、日本障害者雇用促進協会(日障協)にほとんどゆだねているわけです。日障協で働いている皆さんは、もちろん、一生懸命、障害者雇用の前進のために働いておられるのですが、法律自体が根本的に事業主を中心とする法律ですから、日障協の組織は、「基本的に事業主団体を会員とする」となっていて、「本会の会員の資格を有する者は次の各号の団体とする」とされ、第1号が、都道府県を単位とし、主として事業主によって構成される、障害者の雇用の促進及び職業の安定に関する事業をおこなう団体。第2として、全国的な事業主団体、その他の事業主の団体で「本会の目的に賛同し本会の事業に協力する者」と定められており、日本商工会議所、全国銀行協会連合会、日本建設団体連合会、日本経営者団体連盟等が会員となり、このような団体が障害者雇用の事業主団体の組織をなし、中枢部分を握っていることになっているわけです。そして、厚生労働省の職員であった方が会長になったり、常務理事になったりしているのが現実であります。
 それから、雇用率制度(=雇用割当制度)ですが、雇用率について日本では最近一般の民間企業については1.6%から1.8%に変わりました。これは、雇用率制度を採用している外国のフランス、ドイツ、イタリアなど外国の雇用率と比べると半分以下なんです。その1.8%がとても達成できず、1.4〜1.5%という状況なわけです。
 この雇用率制度の根本的な問題は、雇用率制度が、事業主団体の間でお金のやりくりを前提にしているというところにあります。お金のやりくりというのは、その雇用率を達成していない企業が1人当たり月5万円で年間60万円という金を納めるのですが、この金が今度は、障害者が働く場合の施設のための助成金、多く雇用している企業に対する調整金、報奨金として渡されているシステムです。ということは、雇用率が100%達成されると、要は財源がなくなってしまうわけです。ですから、雇用率未達成企業が不可欠なシステムとも言えます。
 今回1.6から1.8%に上がりましたけれども、雇用率は増えていないのです。増えていない結果どうなるかといいますと、日障協にお金が現実にたまっているわけです。100億円(1年間)ぐらいたまったかと思います。 それまでは、いろんな協会の運営経費等があって、このままいくと3〜4年でもう底をついてしまうということがありましたが、今回雇用率をアップしたおかげで、企業でいう資金不足を回避することができたという、非常に変な結果が起きているわけです。
 そのような状況ですので、雇用率を達成してしまうと、資金的に枯渇してしまいますから、厚生労働省の障害者雇用対策課も、本気で未達成企業を達成させるという姿勢がない、というふうに私は思っています。そのように低い雇用率で、しかも雇用率を100%達成すると制度がだめになってしまうとか、また、これらを実際に運営している法律上の主体が、事業主の団体であるということから、基本的に障害者が主体となって働く機会をつくるというようなところがどこにもないわけです。ですからこの法律は根本がおかしいので、単に改正というより、廃案にすべきだと私は思っています。雇用率の達成は達成としてすすめる。では障害者の労働のいろんな助成金をどこから捻出するかという問題が出てくるわけですが、それは税金になるのか、企業に一定の賦課金といいますか、それをある割合で雇用率とは関係なしに課すとか、ということがあるかと思います。とにかく未達成企業の出すものを基本にやっていることが、この法律がそもそも根本的におかしいわけですので、今のように未達成企業による拠出金を財源にしているということは変えなければならないと思います。
 そんなことで厚生労働省の障害者雇用対策課や日障協から見ると、私は煙たい弁護士になっているかと思うのです。とはいっても、改革はしていかなければならないと思い、昨年、日障協の職業リハビリテーション研究発表会(毎年1回)に参加して「障害者の勤労権と労働の場における人権の確立」という題で、今言ったようなことも含めて報告しました。

 「働く障害者の弁護団」を結成してホームページを開設し、また、電話、ファクスあるいはメールでいろんなご相談を受け付けています。その主な目的は、私の周りに障害者の方がいるけれども、1人1人の方が「要求したらどうか」と言ってもなかなかその元気がないというのか、自分1人企業に要求するというのはとても大変です。それからそのことによる心理的ストレスとか、「おそらく声を上げたい障害者の方はいるけれど、上げ方がわからない方は全国にかなりいるだろう」という考えで開設しました。 全国から寄せられた相談への対応は、相手の企業にご本人だけで話をしてもらちがあかない場合、私どもで企業と対応し、この相談の中で訴訟まで至ったものはまだありませんが、折衝の中でそれなりに前進している部分はあります。
 その中で働く障害者に対する人権侵害として、「水戸事件」というのがありました。この事件は中小企業の社長が障害者をたくさん雇い、模範社長というように労働行政側や県などは、そのように持ち上げていたのですが、実際は障害者を食いものにし、いろんな助成金を詐取し、それから女子の障害者を何人もレイプしていたというような事件で、刑事事件としては詐取事件とか限られたものになりました。

 大企業では、たくさんの人が働いているし、比較的開かれているから、働く障害者に対する人権侵害はあまりなく、新聞やマスコミに取り上げられることもなかったのですが、このホームページに大企業の方がかなり寄せてこられます。中身は中小企業のように刑事事件になるようなことはないけれども、障害者差別といいますか「いじめ」というか、その実態は基本的に変わりがないということがわかりました。 それらは、やはりこれまで日本の企業が追い求めてきた、とにかく組織を第1にする、そして組織の中で効率と管理を絶対的なものにするという企業のあり方というか労働のあり方の中で、障害者は雇用率の関係で雇うことは雇うけれども、まあ「いやいやの雇用」といいますか、仕方がないから雇用する。いろいろな仕事の効率を考えると、できればいない方がいいし、いたとしてもあまり高いポストを与えるわけにはいかないという発想で、結局大企業においても、障害を持って働いている労働者は隅っこに追いやられているというのが、寄せられた相談の中から感じていることです。
 契約形態としても、障害者の方のかなりの割合が、正社員ではなく契約社員あるいは嘱託社員という形で雇用されているのです。ところが、雇用促進法では、雇用率にカウントできるのは常用労働者だけであって、常用労働者以外の者については、カウントしてはいけないというようになっているのです。にもかかわらず、労働省監修日障協発行の『障害者雇用ガイドブック』(毎年発行)によれば1年契約でもいい、極端に言えば1日でもいい、とにかく更新を前提としていればいいので、更新を前提として1年以上雇うつもりで1年契約するのであれば、それは構わない。あるいは3カ月契約でも、更新、更新で1年以上雇うつもりであればいいということを、わざわざガイドブックの中に書いているわけです。常用労働者(=正社員)というのは、日本の場合に基本的には、雇用期限がないのが普通です。これは、法律上期限の定めのない契約ということですが、その雇用期限がないということは、解雇するというかやめてくれと言うためには、それなりの根拠が必要だということなんですね。
 ところが契約社員というのは、1年たったら期限がきたからご苦労様と、法律ではそれが言える契約なんですね。これまで日本の正社員というか常用労働者は、基本的には期限の定めのない契約だったわけです。ですから、企業は、安心して契約社員として障害者を雇い、しかも常用労働者としてカウントしてもらっているわけです。
 これは、私、違法だと思います。職業リハビリテーション研究会でも、そのように発表しました。いずれにしても、現状ではかなりの方が契約社員、嘱託社員で雇用されており、本当に不安定な状況にあります。1年契約だから別に給料は上げなくてもいい、再雇用に際しては同じ条件で再契約する、退職金もつかない人もおり、昇進昇格もなく、非常に低いレベルの労働条件で我慢させられるなど、大変大きな差別的問題があります。

 それから、最低賃金法では都道府県労働局長の許可を得れば、最低賃金以下でも認められるという条項があるので、それの削除も求めております。最低賃金は、現在、東京で、20日以上働いて月11万ぐらいのものだと思いますが、そのような賃金でアパートを借りて、生活なんてとても出来ない。ですけれども、かなりの障害者の方は最低賃金イコール最高賃金、という形で働かされている方が多いのです。
  知的障害者については、使ってもらえるだけでいいのではないかという発想で、最低賃金以下の雇用がなされているケースが決して少なくないのです。職業安定所の職員も胸は痛めてはおられるのでしょうが、ここであれこれ言って結局雇用の機会を失うとかえってマイナスだと、見て見ぬふりをしているのだということも聞いたことがあります。そのように、いろんな所で差別がなされております。

 人権侵害というのも、かなり報告されております。例えば、聴覚障害の女性でかなり大手の銀行なんですが、呼んでもわからないという理由で、先輩たちは服を引っ張ったり、頭をたたいたり、消しゴムを投げつけたりするなどの暴言暴力がおこなわれているというのです。また、手話通訳をつけてくれと言ってもつけてくれないし、研修会も参加の機会をくれないなどで、人間不信になっているなど、結構心身症に陥っている方がご相談の中にかなりあります。
 それから、結構1人で裁判を起こしている方からの相談というのがありました。弁護士の側も、やはり1つ1つの事件は面倒くさい、というところが多分あると思われること、それに、重い腰の企業を相手に交渉しなければならないということから、なかなか前向きな回答はもらえないということ、それから弁護士費用がどれだけかかるかわからないという心配もあることなどのためでしょうか。
  行政の窓口について、厚生労働省の中で労働環境を統括してやってくれる組織は、障害者雇用対策課だろうかと思って尋ねたら、「いや、うちは雇用の促進の部分だけで、働いている障害者の労働環境の問題は、労働基準局になる」とのことだったのですが、その労働基準局には、特に障害者の労働環境についての部局は設置されておらず、一般の中で処理されているとのことです。また、労働基準監督署というところも、何か事件が起きたときとか事故が起きたときに調査をするというようにあと追いするだけで、事故が起きる前に、例えば、障害者の賃金がどうなってるかとか、あるいは、安全管理者を選任してるかとか、そういう観点で調査をするという組織になっていないと思います。

 国連総会で「国際障害者年行動計画」というのが、10年ほど前に採択されたと思いますが、その中でこういうことを言っているわけです。
 「社会は、一般的な物理的環境、社会保険事業、教育、労働の機会、それからスポーツを含む文化的・社会的生活全体が、障害者にとって利用しやすいように整える義務を負っているのである。これは単に障害者のみならず、社会全体にとっても利益となるものである。ある社会が、その構成員の幾らかの人々を締め出すような場合、それは弱くもろい社会なのである。障害者はその社会の他の者と異なったニーズを持つ特別な集団と考えるべきではなく、その通常の人間的なニーズを満たすのに特別の困難を持つ普通の市民、と考えられるべきなのである」
と言っているのですが、日本の場合は、職場において障害者は締め出され、採用されても隅っこに追いやられている状況が現にあるわけです。
 たとえば、大企業の中で障害者の管理を厳しくやっている人というのは、具体的には係長とか課長とか、あるいは支店長という方と障害を持って働いてる方とが対峙しているという状況です。これは、年齢的には恐らく30代、40代の一番人生の充実した時期、充実しなければならない時期に、片や効率と管理を優先させ、障害者につらくあたる役割を担わせられるという意味において、非常に不幸な構図が出来上がっていると思います。

  7月に出される『月刊福祉』に載る「働く障害者の現状と課題」の原稿の中で、私は、日本人同士が今ラットレース(ラット=ハツカネズミ・アメリカ英語で「意味のない浅ましい競争」)をしているようだと書きました。効率と管理を優先させることによって、障害を持たない人間にどういうプラスが出ているのかということを考えてみますと、結局、障害を持って働く人にとって働きにくい職場環境は、障害を持たない人にとっても働きにくい非常に息苦しい職場なんです。それがわかっていない。みんな一生懸命効率と管理を優先させ、企業を大きくして、世界に優位する企業に成長した。結果、その企業は、日本で人を雇うよりアジアで工場をつくったほうがずっと安上がりだから、どんどん外国に出ている。そうすると、日本には働く機会がなくなっているのです。
 ですから、日本発の有名なソニーとかトヨタなどのような企業は随分育ちましたが、その企業、組織のためにみんな一生懸命働いて、その結果、日本人一人ひとりに何が残ったのかを考えてみる必要があるのではないかと思います。日本の国は、どんどん縮んでいる。国連の言葉で言うと「弱くもろい社会そのもの」になっていると思うのです。
 戦争で負け廃墟になって、それから経済に豊かさを求め、昭和30年前後から経済成長を優先させ、みんな1つの組織、企業あるいは官庁の中で、効率と管理を優先させ、一生懸命働き、安定した地位あるいは高い地位を占めるのが人間としての幸せだと思ってきたのですが、それはとんでもない錯覚だったわけです。
 だから、日本の自然とかあるいは組織とか技術という、日本人が持っているものはまだまだ決して捨てたものではないと思うのですが、それをラットレースの中でお互いに疲弊してしまっている。結果として、障害を持っていない中高年の男性に自殺が増えており、それから、若い次の世代に展望が見えないというように日本の国がこれまで追い求めてきたものが、こんな結果になってしまっているように思います。私はここで、日本の国、あるいは日本人の基本的な生き方そのものを変えていかなければならないと思います。
 日本人は戦争の廃墟ということを基準に、自分たちは社会的にも、文化的にも、経済的にもどんどん成長してきたと思っていたわけですが、今日の結果を見れば、日本が世界第2位の経済大国と言われても、日本人一人ひとりの生活は、決して世界で2番目の豊かで文化的なレベルの高い生活でも何でもありません。これまで日本人一人ひとりは、組織という中で物事を考えすぎたし、その結果、経済的なものを中心に考えすぎてしまったために、日本人は、政治的関心を持っていないのです。政治は三流の政治家に任せても大丈夫、日本の経済は回っていくのだという程度で、政治そのものをばかにして無関心になってしまった。その結果、生産力だけはついたというわけです。

 政治というと政治家になることだけを政治と、あるいは投票することが政治参加と思われるかもしれませんが、やはり、自分自身が今抱えている状況の中で、おかしいものはおかしいと言っていく。そのためには法律も改正しなければならない。これが、本来の政治への参加の仕方だと思うのです。
 ドイツは同じ敗戦国ですが、日本とドイツの違いは、ドイツは第2次世界大戦による自分たちの行ったことについて、洗いざらいオープンにし、それなりの態度をとったわけです。日本は、加害国であったのに、いつの間にか原爆で被害民族に変わってしまった。日本人がノーモアヒロシマということはあっても、ノーモア南京とは言いません。
 ですから、歴史そのものを真剣に見つめるということに欠けていた。当時のアメリカは、非常に懐の深い寛容な国であったために、ぬくぬくと経済成長だけを考えてきたということで、やはり私たち日本人は、歴史的なものも含めて、基本的にもっと関心をもって、自分たちはどうすべきかを考えていかなければならない時期だろうと思います。

 先ほど冒頭で障害者差別禁止法について、タートルの会でぜひ真剣に取り組んでいただきたいと言いましたが、やはり問題を自分自身の問題として、現実に抱えてる人こそ最も変える力がありますから、その中で法律のおかしいのは変えろというところを考えないと、いくらご自分の職場の中でいろいろと不満を持っておられても、同じことは後輩たちにも起こってくるし、根本的な解決にならないと思うのです。  今後、法律とか政治とかという問題を身近な問題として、皆さんに考えていただきたいと思うわけです。いろんな話が広範に飛んで恐縮ですが、この辺りで終わりにさせていただきます。


【総会報告】

第6回定期総会

 2001年6月9日(土)、飯田橋のセントラルプラザ多目的ホールにおいて「タートルの会」の第6回定期総会が開催された。出席者数は弁護団の3名を加え総勢70名となった。北は北海道から南は徳島と広範な地域へと広がりをみせている。
 午前は総会、午後は記念講演と交流会、そして親睦交流会を「生そばブラッスリー 安曇野庵」で行い、参加者は50名を超えた。
 総会は、内山幹事が司会進行を務め、和泉会長の挨拶、工藤幹事から相談活動の報告、吉泉幹事からメーリングリストとホームページについての報告、新井幹事から交流会事業の報告がなされた。  また、滝口幹事から会計報告があり、それを受けて田中監査から会計監査の報告があり、承認された。
 さらに森崎幹事から会則の一部改訂について提案があり、承認された。続いて篠島事務局長から幹事会提案として、和泉会長退任に伴う後任会長に下堂薗保副会長を、新たに2名の副会長に工藤正一幹事と松坂治男幹事を、そして女性幹事を増やそうと北村まゆみ氏と杉田ひとみ氏を推薦し、承認された。
 ここで、新役員を代表して、下堂薗保氏から新会長としての抱負が述べられ、新役員の紹介がなされた。
 吉永幹事から2001年度の活動方針案が提示され、つづいて予算案の提案が滝口幹事からあり、全員の賛同を得た。そして最後に工藤副会長から閉会の挨拶があり定期総会は無事終了した。
 午後の記念講演は「働く障害者の弁護団」代表の清水建夫弁護士にお願いし、下堂薗会長から紹介があり、「障害者の労働権と労働の場における人権の確立」と題して約1時間拝聴した。
 そして、休憩後、交流会は北神幹事が進行役を務め、順次自己紹介がなされ、最後に弁護団の田中弁護士と事務局の桑木しのぶさんから発言があり、「タートルの会」との今後の連携を約束してくれた。

(事務局長・篠島永一)  


相談活動報告

工藤正一  

(1)私たちを取り巻く情勢
 長引く不況とリストラを背景に、失業の増大とその長期化の傾向が一層強まり、私たちを取り巻く情勢はますます厳しくなっています。
 総務省の2001年2月の労働力特別調査によると、求職活動はしていないが「適当な仕事があれば働きたい」人まで数えると、失業者は738万人、失業率にすると10.4%となり、同月の完全失業率4.7%を大幅に上回ります。さらに、民間のシンクタンクの試算によると、不良債権処理で新たに130万人の失業者が生まれる(ニッセイ基礎研究所)といわれるなど、今日はまさに大量失業と失業の長期化による不安社会そのものです。
 このような厳しい状況は、同じ視覚障害者でも、弱視者よりは全盲者、若年者よりは中高年齢者により大きな影響を与えています。特に、中途視覚障害者には働き盛りの人が多く、それが視覚障害のため一旦退職を余儀なくされると、再就職は極めて困難となってしまいます。
 また、1981年の「国際障害者年」から20年が経過した今、障害者に対する理解は進んだとはいえ、視覚障害者への理解不足や、平等の名の下で行われる差別は多くの職場に依然存在し、そのような環境にじっと耐えている人や、いたたまれず職場を離れてしまう人は今も少なくありません。
 さらにまた、視覚障害者の伝統的な職業である「あはき」(あんまマッサージ指圧・はり・きゅう)については、柔道整復師養成施設を始め、いわゆる晴眼者養成施設の新増設に伴う定員増が、ここ3年、多くの視覚障害者団体の反対をおして行われました。それに留まらず、今も引き続き新増設の計画が出されています。その一方で、無資格者の対策は進んでいません。このように、「あはき」については、これからその道へ進もうとする中途視覚障害者のみならず、視覚障害者全体にとっても厳しいものとなっています。
 一方、視覚障害者にとってパソコンの活用はますます重要で、特に一般就労には不可欠のものとなっています。日々変化発展するパソコン環境に積極的に対応していくことは新たな職域の開拓にも通じ、新しい変化を積極的に取り込むための技術支援、経験交流の場が切実に求められています。

(2)相談活動の概要
 タートルの会が結成されたのは1995年6月。7年目を迎えた今、会員登録者数も480人を超え、これも会に対する期待の現れと受けとめています。会としては、結成当初から初期相談を重視してきましたが、この1年間に寄せられた相談は昨年をやや下回ったものの、約60件を数えました。このうち、20件について個別相談に応ずることができました。
 相談は首都圏を中心に全国各地域から寄せられ、新聞やインターネットのホームページから会の存在を知ったり、眼科で紹介されるケースも年々増えてきています。障害原因は様々ですが、網膜色素変性症が多いのが目立ちました。初期相談が重要という点では、眼科などからの紹介が増えてきたことは喜ばしいことです。
 年齢的には中高年齢者が多いものの、若年者からの相談もありました。既に退職した人よりは、職場で厳しい環境に置かれながらも、何とか仕事を続けている人からの相談が多くありました。事務職や営業職の他、医師、歯科医師、教員、建築士、イラストレーターなどの専門・技術的な職種の人からの相談が目立ちました。また、大学院生や看護学生などの若年の未就職者や休職中で未だリハビリテーションに結びついていない人からの相談や、家族問題に関する相談もありました。

(3)相談活動の成果
 前回の総会以降、相談支援活動を通して職場復帰や雇用継続に結びついたケースは12件を数えます。その内訳は、休職期間中のリハビリを経て職場復帰をしたものが5件(徳島・小学校教諭、広島・地方公務員、東京・民間企業、大阪・国家公務員、神奈川・中学校教諭)、訓練もしくは支援機器などの導入によって雇用継続につながったのが4件(東京・民間企業3、広島・民間企業1)、訓練等を経て新しい職場に再就職できたのが3件(愛知・民間企業、東京・民間企業2)となっています。このうち、大阪の国家公務員のケースは所属する労働組合から相談があったもので、東京の民間企業へ職場復帰したケースと愛知の民間企業に新規就職したケースは眼科から紹介があったものです。また、東京の再就職の1例は「新潟県中途視覚障害者のリハビリテーションを推進する会」への相談が契機となったものです。
 なお、最近の傾向として、地域障害者職業センターや障害者職業総合センターの支援を得て復職や継続雇用に結び付く事例が増えています。このことは、同センターは国立職業リハビリテーションセンターや日本ライトハウス、日本盲人職能開発センターには及ばないまでも、今や私たちにとって、かけがえのない存在といえます。この1年間に、同センターに相談をし、何らかの具体的な支援が得られたところとして、徳島、東京、富山、愛媛、新潟、広島、北海道などがあります。
 また、現在、日本ライトハウスなどで職業訓練を受け、今後復職が予定されている複数の事例(広島、愛媛、東京)があることと、「働く障害者の弁護団」が働きかけを行ったことで、膠着状態から一気に前進した事例があることを付け加えておきます。

(4)問題点と課題
 この1年のみならずこれまでの経験から、中途視覚障害者の職業継続、職業的自立のために、以下の問題点と課題を提言することができます。

(a)障害を理由とする解雇を規制する法律の制定
 障害者の働く権利を保障するために、障害を理由とした解雇やリハビリテーション期間中の解雇を禁止し、公平な第三者機関(仮称、障害者継続雇用委員会)を設置し、障害者の継続雇用の実質化を図る必要があります。

(b)リハビリテーションの権利保障
 とりわけ中途視覚障害者には在職中のリハビリテーションが権利として保障されなければなりません。安心して訓練が受けられるよう、訓練期間中の身分と所得保障を図る必要があります。
 同時に、生活訓練や職業訓練施設の整備、専門職員の養成など、社会資源を充実する必要があります。

(c)職場定着支援体制の充実
 ようやく復職まで漕ぎ着けたとしても、復職後の定着支援体制がなければ安心して働き続けることはできません。復職者についても新規雇用と同様の定着指導や、日々変化発展するパソコン環境に対応していくために、向上訓練を保障する必要があります。
 そのためにも、職業リハビリテーション機関(職安等)の職業相談員の増員を図り、企業内の障害者職業生活相談員がその役割を真に発揮できるようにする必要があります。

(d)事例の蓄積と社会への還元
 ITを生かした職域開拓の必要性を社会にアピールするために、成功事例を収集・蓄積し、多くの人に還元していく必要があります。

(e)「あはき」による職業的自立の保障
 最後の砦としても、視覚障害者のための「あはき」を守り、ヘルスキーパーでの復職や再就職を推進する必要があります。

(f)「あはき」進学者に対する所得保障
 盲学校に進学した場合も更生訓練施設に進学した場合と同様に失業手当が受けられるようにし、盲学校、更生訓練施設を問わず、「あはき」技能修得までの間の所得保障を図る必要があります。


HP & ML 事業報告
会活動におけるインターネット、パソコンの活用について

吉泉豊晴  

(1)メーリングリストについて

(A) 基本的事項
* 管理者のe-mail owner-turtle@sl.sakura.ne.jp
* 開設年月日 1997年7月31日、朝日ネット上で開設。
  2000年3月1日、さくらインターネット上に移行。
* 開設契約ネット さくらインターネット
* 開設費用 年間 4,000円 + 消費税
* 登録メールアドレス数 2001年5月31日現在 256
  (2000年5月18日現在は178) (注)
* 通算書込数 2001年5月31日現在 5349, さくらインターネット移行後 1467
  (2000年5月18日現在 4141, さくらインターネット移行後 259)

(注)一人で複数のメールアドレスを登録している人もいるので、メーリングリスト(以下MLと略記)参加者の実数は250名弱と思われます。
 タートルの会のMLは、タートルの会の会員であるか否かに関わりなく参加・退会手続きが自由に行えるようになっているため参加者数には多少変動がみられますが、長期的には増える傾向にあり、これまで年あたり数十名増える形で推移しています。

(B) MLの書き込みの内容等
 MLで交換される情報は多岐にわたります。項目としてあげるなら、会活動に関わる情報交換、復職やリハビリにまつわる相談、関連放送番組や行事等のお知らせ、図書情報、パソコンをめぐる技術情報、便利グッズ、視覚障害者の生活やリハビリに関わる話題等ということになります。
 ここ1年ほどのMLの書き込みで印象的なのは、復職や職場環境の改善について非常に具体的な話題が出され、関連しての悩みや相談も率直に表明される傾向がみられる点です。職場の上司や会社側との交渉経過についての詳しいレポートも投稿されるようになってきました。
 しかも、そうした悩みや相談に関わる書き込みが他の人にとって参考となり励ましになるといったケースがみられます。つまり、相談する側とそれを受ける側という立場の分化・固定化がみられるのではなく、相談する人が一方において他の人に勇気を与える立場にもなるという、MLとしては望ましい形で情報や意見の交換が進められていると思います。
 時期的に書き込みが少なくなった時もありましたが、MLへの投稿がより一般化し意見や心情が率直に語られるようになって、有効にMLが活用されるようになってきたことを感じさせられる1年でした。

(2)ホームページについて

(A) 基本的事項
* URL http://www.asahi-net.or.jp/~ae3k-tkgc/turtle/
* 公開年月日  1997年11月22日
* 開設契約ネット  朝日ネット
* 開設費用  月額1,700円 + 消費税

(B) ホームページの構成・内容
 ホームページの構成は、以下の12項からなっています。
 昨年度からの変更はありません。
 ・新着情報(ホームページ更新情報)
 ・お知らせ&ご案内
 ・タートルの会とは…
 ・なんでも掲示板
 ・こんな職場で働いています
 ・話題あれこれ〜MLから..
 ・手記集『中途失明』出版
 ・おしゃべりサロン
 ・会報『タートル』
 ・玉手箱!(各種資料)
 ・タートルMLへのお誘い
 ・関連リンク

 「なんでも掲示板」は、ホームページにアクセスできる人なら誰でも書き込むことができ、MLよりも更にオープンな情報交換の場といえます。そこではパソコンをめぐる技術情報の交換が多いようですが、視覚の悪化や復職にまつわる相談が書き込まれることもあり、そこからタートルの会の相談活動につながるというケースも出てきました。
 会報の掲載は従来どおりコンスタントに継続し、また、内容の乏しかったリンク集を整備しましたが、その他のコーナーについては更新の頻度がかなり低下しています。今後のホームページの保守管理体制をどうするかが課題です。

(C) 今後の課題
 ホームページをめぐる技術的な動きが様々な形で進んできています。ホームページは、単に情報を掲示する場としてだけでなく、例えば、ある種のデータベースのようにして活用するといったことも比較的低コストで実現できるようになってきました。
 現在タートルの会が契約している朝日ネットは、機能面を制限することで安定したホームページ領域を提供するということに主眼を置いています。今後も朝日ネット上でホームページを開設していくのか、どのようなところに着目して会のホームページ領域を確保するのがいいか、コスト、メンテナンス、そして何より視覚障害者にとっての利用のしやすさといったことを考慮しながら、検討・実践していかなければと思っています。

(3)パソコン活用に関するサポート等について

 会員の円滑なパソコン活用を図るためサポート活動を行いました。まだまだ対象者は少ない状況ですが、メールの送受信とホームページ閲覧を中心に自宅訪問型のサポートを数回行ったほか、電話によるサポートも行いました。
 パソコンは、コミュニケーションのための道具としてますます普及する傾向にあります。今後も、関係団体等と連携しながら、サポートが必要との声があればできるだけ対応していけるよう図りたいと思います。


連続交流会報告

新井愛一郎  

2000年度の連続交流会は以下のようなポイントで開催されました。
1)仕事の可能性を具体的に検証するためにも、インターネットを具体的に仕事に生かしているケースを紹介し、可能性を明らかにする交流会の開催。
2)精神的なゆとりや、豊かな生き方、健康的な生活を考える上で、趣味やスポーツは大切なことである。特にスポーツに焦点を当て、体験を出し合って、スポーツの楽しさと、具体的な可能性を知る。
3)地域交流会は広島で開催し、交流の輪 を広げる。
それぞれの交流会は、今後に成果を残す意義深い交流会となった。

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それぞれの交流会 

■9月の交流会
 「スポーツに話の花を咲かせよう!!」というテーマで、 4名の話題提供者に、ゴルフ、スキー、ダイビング、マラソンについて、それぞれのスポーツの楽しさや,具体的なやり方、どのようにサポートを受けるのか、実際に始めるにあたっての情報などが話されました。とりわけ、それぞれのスポーツの楽しさを語る4名のすがすがしい話は、参加者を魅了しました。生きていく中でのすばらしい時間を持っていることの大切さを知ったような気がします。この交流会をきっかけに、スポーツを始めた方も多いのではないでしょうか。

■10月の交流会
「新しい仕事の可能性」
 インターネットを使って採用業務をこなしている方からのお話を聞きました。
現在、インターネットを活用した就職活動が一般化している。そんな背景の中、社内のネットワークをフルに活用して、採用業務の現場で,十分に力を発揮しているというものです。採用業務はどの企業でも大切な部門であり,ペーパレス化の進む中で、視覚障害者の働く具体的な可能性を指し示したものとして,大いに参考になる提起であった。
また、就職活動における具体的なポイントも提起された。
◎就職活動にあたって情報の大切さがまずあげられる。多くの中途視覚障害者にとって、情報のなさが大きな問題である。情報とのめぐり合いがスムーズにできれば、可能性は大きく広がるのである。話題提供者の場合、各種の指導員の方との出会いが、情報とともに可能性をもたらしたのである。タートルの会の任務を考えるとき、大切な提起であった。
◎企業の側が視覚障害者を理解していないことを嘆いていても仕方がない。一般論ではなく,具体的な事例を示して、理解に結びつけることが大切である。履歴書を書くときに、そのほかに説明資料やアピールする材料などを付けることが大切であることが明らかにされた。それも、自分で作ったものを必ず示すことがポイントになるようである。
 以上のように、具体的な職種の可能性とともに、就職活動にあたっての具体的な課題等も明らかにされ、内容のある交流会であった。

■11月の交流会 〜 「タートル地域交流会イン広島」
本年度の地域交流会は、元気じるしに満ちあふれる広島市で開催しました。
【第一日目】
平成12年11月11日(土曜)
◎10:30〜16:30
 広島県生涯学習センターにおいて、
◇講演&質疑   『パソコンと活用事例』松坂治男氏
◇個別相談(年金、仕事)
◇講演&質疑   『年金』和泉森太氏
◇講演&質疑   『復職相談事例』工藤正一氏
◇交流会
◎17:30〜 懇親会
【第2日目】
平成11月12日(日曜)は、
8:30 ホテル出発
 「宮島観光」の後 広島駅にて解散
交流会参加者は、72名以上におよびました。
個別相談者も4名あり、本部幹事が東京で行っている同じ形式で実施しました。
また、参加者は、北海道、福島、東京、千葉、埼玉、神奈川、和歌山、京都、徳島、愛媛、岡山、広島、山口、島根、福岡の一道一都一府12県におよび女性の参加者も多数ありました。
地域交流会のよさは、初対面の方々に面識をいただけることはもとよりですが、その地の特産物に舌つづみを打つことも見逃せません。
広島のお好み焼きや牡蠣、穴子どんぶりなどには、人気が集中しておりました。
そして、秋の宮島の厳島神社の絶景には、誘導ボラテイアさんの説明に聞き耳をたてながら、一同、しおさい・海の匂いにひたりました。
地元の人から、「タートルの会」との連携を持てることになってよかったとの声は、何よりも吉報でした。

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2001年度の連続交流会 

 以下のようなポイントのもと,今年度も9月,10月,11月を連続交流会としたい。

A)1997年9月から11月にかけて、第一回の連続交流会を開催した。
「一体みんなはどんな仕事を,どのようにしているのか」、まさにこれが素直な疑問であり、「こんな仕事をしています」というテーマで,9人の方に登場してもらい、細かく、仕事内容の紹介と、それらをどのようにこなしているのかを明らかにしていただいた。そして、それらの中で,本当にたくさんの事を知ったし、それ以降の「仕事」をテーマにした連続交流会の内容の問題意識の多くを含んだものであった。「すべてがそこから始まった」という感じであった。細かく内容を記録して、多くの成果を残した連続交流会であった。
 そして、いつも古くて新しい問題が、「見えない中でどんな仕事ができるのか」という問題提起があると思う。そのような意味で,このような交流会は何度も繰り返し開催する必要があるのではないか。また、この連続交流会から4年も経過しているなかで、いろいろな意味で仕事を巡る状況が変わっているのではないか。また、多くの人との出会いも会った。そんな意味で、さらに新しい事例を中心にしながら、たくさんの方に登場してもらい「こんな仕事をしています」の第二弾を開催したい。

B)新潟で交流会を開催しよう
 活動の全国的な広がりと、継続的な連携のために今年も地域交流会を開催したい。
今年度は、新潟で頑張っている仲間の奮闘に応え、新潟での交流会を開催したい。


2001年度 活動方針

松坂治男  
1. 相談活動の充実  随時及び幹事会、交流会の開催日2. 連続交流会の実施  @第2弾「こんな仕事をしています」    事例発表その1 9月22日(土)  A第2弾「こんな仕事をしています」    事例発表その2 10月20日(土)  B地方交流会 IN 新潟11月17日(土)3. 交流会の充実(講演内容と相互交流)  @講演and忘年会 12月8日(土)  A歩行について 1月19日(土)  Bテーマ未定 3月16日(土)4. 復職・定着支援活動の充実5. メーリングリストやホームページの充実6. パソコンボランティア活動の充実と連携の強化7. 機関紙「タートル」の発行  5月9日、8月、11月、2月の各号を発行予定

2001年度 役員名簿

 会  長 下堂薗 保  副 会 長  工藤 正一       松坂 治男  事務局長 篠島 永一  幹  事 新井愛一郎       和泉 森太       内山 義美       大脇 俊隆       小川 剛 (北海道)       金子 光宏(宮城県)       北神あきら       北村まゆみ(新任)       杉田ひとみ(新任)       西村 秀夫(広島県)       持田 健史       森崎 正毅       山本 浩 (和歌山県)       横田 弓 (愛媛県)       吉泉 豊晴       吉永 俊一  会  計 滝口 賢一  会計監査 田中 均

タートルの会 会則 

(目的)
第1条 本会は、視覚障害を持つ労働者が安心して働き続けられるように、お互いに交流し、広く情報を交換し、励まし合っていくことを目的とする。
 特に、中途で視覚障害となった者が、継続雇用、再雇用、または再就職を希望している場合、その者に対し、可能な限りの情報提供または励まし等の支援活動を行う。

(名称及び所在地)
第2条 本会の名称及び所在地は下記のとおりとする。
1.名称 中途視覚障害者の復職を考える会(通称=タートルの会)
2.所在地 社会福祉法人日本盲人職能開発センター「東京ワークショップ」内
        〒160−0003 東京都新宿区本塩町 10-3
        Te..03-3351-3208 Fax.03-3351-3189

(会員)
第3条 本会の目的に賛同する者は、役員会の承認をもって会員となることができる。

(活動)
第4条 本会は、会の目的に沿って次の活動を行う。
 (1).交流会 定例交流会(2カ月に1回程度)
 (2).相談会 初期相談を中心に(随時)
 (3).機関紙「タートル」の発行 (年4回程度)
 (4).ホームページとメーリングリストの運営管理
 (5).調査・研究
 (6).その他

(組織及び役員)
第5条 本会には次の組織及び役員を置く。
1.組織
 (1).総会(年1回)
 (2).役員会(随時)
2.役員
 (1).会長 1名
 (2).副会長 2名置くことができる
 (3).事務局長 1名
 (4).幹事 若干名
 (5).会計 1名
 (6).会計監査 1名

(役員の任期と選出)
第6条 役員の任期は1年とし、再任を妨げない。
2.役員は総会において選出する

(会費)
第7条 会費は年会費とし、年額5千円とする。ただし、入会時については、入会金として5千円を徴し、これを入会年度の会費に充当する。
 会費に不足を来した場合は、会費を臨時に徴収することがある。

(会計年度)
第8条 本会の1会計年度は、4月1日より翌年3月31日までとする。

(会則の改廃)
第9条 会則の改正または廃止は、総会出席者の3分の2以上の賛成を得て行う。
(附則)本会則は、本会の正式発足の1995年6月3日から適用する。
(附則)この一部改正(役員・事務局長)は、2000年6月10日より適用する。
(附則)この一部改正(会員、活動、組織、役員・副会長)は、2001年6月9日から適用する。

【ちょっとひといき】

四十の手習い

株式会社アーク情報システム  
総務部 高橋伊久夫  

 皆さんの中には、学校などでまとまった勉強をしてみたいが弱視だから、拡大読書器が持ち運べないからできない、と思っている方も多く、大多数の方があきらめていませんか?
 私も、3年前まではそう思っていました。そんなある日、会社あてに送られてきたDMの中に、「筑波大学社会人修士(夜間の修士課程)」「リハビリテーション」「身体に障害のある方で受験の際に特別な配慮を必要・・・」という文字を発見。これなら弱視で拡大読書器を使っている私にも勉強できる、と確信しました。さっそく、大学教務課に連絡し、弱視者の入学の可能性を確認した上で、入学試験を受験しました。結果は合格です。研究とは無縁で、民間企業の総務部に所属し、採用や教育関連の仕事をしている私にとって、研究という未知の世界への挑戦がはじまりました。まさに、四十の手習いのはじまりです。
 入学早々、研究(修士論文)テーマを決めることを迫られた私は、「自分と同じ、企業で就労している弱視者が、どのように働いているのだろうか?」という素朴な疑問から、「企業に就労する弱視者の実態と課題に関する研究」としました。研究とは無縁の私には、このテーマしかありませんでした。

研究をすすめるため、弱視の方々に対する調査が必要となり、調査を実施しました。結果は多くの弱視者が、(1).現在、勤めている会社に概ね満足し、その理由として職場の雰囲気や人間関係をあげている、(2).「話(はなし)」をすることを中心とした、専門性を活かせる仕事が自分たちに適していると考えている、(3).専門職をめざし、障害のない人と対等に評価されることを望んでいる、(4).仕事を遂行する上でパソコンが重要な道具と考え、パソコン関連技術の修得を希望しているなどが明らかになり、弱視である私自身もまったく同感です。
 一見すれば無謀とも思えた社会人修士への挑戦(「四十の手習い」)も今年3月には無事終了しました。この間の家族の励ましや協力、クラスメートの支援、そして調査にご協力いただいた皆さんの協力なくして、今回の卒業はなかったと思います。本当にありがとうございました。今後とも、今回の研究を活かし、弱視者の雇用の機会拡大と職域の拡大を考えていきたいと思います。
 最後に、弱視の皆さん、視力が弱いからといってあきらめることなく、より多くの機会を見つけ、より多くのことにチャレンジしようではありませんか。
ご意見・感想をお寄せください。
連絡先メールアドレス takaha@ark-info-sys.co.jp


【お知らせ】
■連続交流会 会場:日本盲人職能開発センター  ●9月交流会   [こんな仕事をしています=第2弾=]    日時:9月22日(土)14時〜17時    テーマ:パソコンを活用して新しい仕事にチャレンジ  ●10月交流会   [こんな仕事をしています=第2弾=]    日時:10月20日(土)14時〜17時   テーマ:職場の人間関係を考える ■地方交流会「2001 in 新潟」   日時:2001年11月17日(土)、18日(日)   会場:新潟市総合福祉会館   内容:検討中


◇ 編集後記 ◇
本号では「ちょっとひといき」という欄を新たに設けました。これは従来の「職場で頑張っています」に投稿をお願いした原稿ですが、「社会人修士課程」に挑戦した内容でしたので、少し雰囲気を変えた欄をつくりたいという思いから設けたわけです。
 今回は「生涯教育」や「自己啓発」の範疇になるのでしょうが、もっと広げて自由に自分の趣味やレジャー、嗜好などについて、気軽に投稿してもらえる欄「ちょっとひといき」に育てていただきたいと、会員の皆様の協力を期待しています。
 趣味の音楽演奏会を開催できると楽しいと思いますね。トークを交えて交流 する会、「リュートを楽しむ午後のひととき」などというのはいかがでしょう?
 なお、本紙についてテープ版を作製しています。ご希望の方は事務局まで連絡してください。
(事務局長:篠島 永一)  

『タートル』(第21号) 2001年 9月 9日発行
中途視覚障害者の復職を考える会
タートルの会
会 長   下 堂 薗 保
〒160-0003 東京都新宿区本塩町10-3
社会福祉法人 日本盲人職能開発センター 東京ワークショップ内
電話 03-3351-3208 ファックス 03-3351-3189
郵便振替口座:00130−7−671967
タートルの会連絡用 E-mail:turtle.mail@anet.ne.jp
URL:http://www.asahi-net.or.jp/~ae3k-tkgc/turtle/index.html

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