○北神 「職場のネットワークについて」私の現状の報告をします。
まず、自分がどんなところでどんな仕事をしているのかということをお話します。勤めている会社は池袋にある建築資料研究社といい、建築関係の教育出版、あとは衛星放送を出しています。私は印刷物のデザインやコンピュータグラフィックをつくる部門にいます。私がつくるわけではないんですが、そういう部門で主に事務的な仕事、それから職場内の事務合理化のためのシステムをつくる仕事をしています。
ネットワークの環境
会社全体のネットワークの環境ですが、一応全国に70支店ぐらいあり、その支店は別扱いなんで、本社だけのお話をします。
本社には現在約500台のパソコンがネットワークに接続されています。そして私のいる会社は池袋に1つのビルにまとまっていなくて、10カ所ぐらいに分かれてあるものですから、そのビルとビルの間を専用線で結び、本社の中は全部専用線で結ばれています。
私のいるデザインモールという職場では、10台のパソコンがあり、そのパソコンは富士通のマシン、これは私が使っているものです。富士通のMMX Pentium 266MHzというパソコンです。それからそれ以外に一番多いのが実はマッキントッシュのパソコン、これはデザイナー用なんですけど、これが6台、それからあとNECのWindowsパソコンが3台という構成になっております。もう1台、同じ富士通でWindowsNTが入っているパソコンが1台ありました。これも事務処理ではなくデザインで使っています。そして周辺機器ですが、先ほどお話の出たプリンタが2台あります。1台がネットワークという形で全部のパソコンにつながっています。もう1台はデザイン用のカラープリンタ、これは単独で使われています。
ネットワークの仕組み
それで会社のネットワークは、どんな仕組みになっているかといいますと、俗にイントラネットと呼ばれているもので、本社の中はインターネットの一種、それをもっとローカルな形にしたものです。
ですから全員がインターネットでおなじみの「何とか何とかアットマーク何がし、co.jp」みたいなアドレスを持っています。私の場合だと、「akira.kitagami@2to.kskenet.co.jp」という長ったらしい名前をもっています。
使っているソフトですが、情報を取りまとめる部署があり、何種類かサーバーがあります。その部署を中心に動いているグループウェアという、いろいろな横のつながりをとるためのソフトが入っています。私の部署にも入っていますし、私のパソコンにもそのグループウェアが入っています。グループウェアのクライアント側のソフトが入っています。その名前は富士通製のチームウエアというグループウェアです。
グループウェアで何ができるか
では、このグループウェアで何ができるかと言いますと、1つは電子メール、これはもう当然のことで、それ以外ですとスケジュール管理、カレンダーと呼んでいますけども、スケジュール管理。それからフォーラム、このフォーラムというのは一種の掲示板です。ですから、例えば総務で今度健康診断がありますよとか、営業で今度キャンペーンがありますよとか、そういったことが全部そのフォーラムというところに書き込まれます。
もう1つ、ライブラリという、これがデータベースです。例えば顧客データですとか、場合によっては経理の決算のデータも入っています。ですから、ライブラリに関してはすべての人が見れるわけではありません。「アクセス権」という難しい言葉はともかく、アクセスができる人を制限してその人には見せるというような仕組みをとっています。
グループウェアをどう使うか
日々の仕事の中で私自身がグループウェアをどう使っているかですけれども、使えない方からお話します。
カレンダーは?
一応いろいろ試してみたんですけど、どうもカレンダーは音は出ないことはないんですが、ちょっと使いものになるような状態じゃないんで、これは今のところ無理。どうも縦横のマトリックスになってるようで、これを音が仮に出たとしても、とても自分で書き込んだり、ほかの人のスケジュールをきちんと見ることはどうもできなさそうなので、これはとりあえず今のところ使えない。
ライブラリは?
ライブラリに関しても、一応私のところでアクセスが許可されているデータが実はないものですから、いろんなところのライブラリをのぞいてみたんですけど、「アクセス権がありません」とそんなメッセージばっかりなので、今のところはライブラリに関しては使えるのか使えないのか、それも確かめていない状態です。
フォーラムは?
フォーラムに関しては使えるものと使えないものと両方があります。例えば先ほど言いました健康診断のお知らせですとか、キャンペーンの案内とか、そういったものはほとんどがワード形式で保存されてますので、これは読めます。ワード形式ないしはエクセル形式。一部やはりデータ的なものもありますので、そういったものはエクセル形式になっていますから、それは読むことができます。そのほかにフォーラムには結構大事な幾つかのものがありまして、例えば、残業をするとその報告書を出すんですけど、その報告書のフォーマットもフォーラムに入っています。フォーラムからそのフォーマットをもらってきて記入をして、また自分の所属長あてに送信をするという形をとっています。これは問題なく音声で出てきます。そのほかに例えば、会社の各部署の電話番号表、これもエクセル形式で入ってますから、これは交信される都度フォーラムからダウンロードをして、エクセルファイルですから自分の所に保存をしておけばいつでも見れますし、場合によってはプリントアウトすることもできます。一番問題なく使えるのがメールです。うちの会社のグループウェアの持ってるメールソフトがそんなに高機能じゃないものですから、読むのは一応会社のメールソフトで読みますけど、書くのは基本的には私が普通に使ってるWinbiffというシェアウェア(3,000円)ですが、そのソフトを使ってメールは書いています。仕事の中でネットワークはそんな形で利用しています。
日々の仕事は何を
では、日々の仕事を私は何をやっているかです。基本的には私の仕事はその部署の数字に関する仕事です。例えば、デザイナーがある印刷物をデザインしたら、このデザインの原価は幾らかと。それを客先に売るとしたら、見積書を発行して客先に提出するための仕事があります。そして見積もりがオーケーになって品物が出来上がったら納品書と請求書を発行して、それを客先に送る仕事があります。ただ、送るといっても私がプリントアウトして封筒に詰めて送るわけではない。
例えば私のパソコンで見積書をつくります。ここが非常に便利だなと思ってる1つの機能なんです。実は10台のパソコンで全部共通に使えるフォルダがあって、私の場合ですと「北神モール」というフォルダを持っています。そのフォルダに、「どこどこ宛の見積書」という名前をつけて、Windows95以降の場合は長い名前、8文字に制限はないですから、「どこどこ宛見積書」日付まで入れて、その名前で保存することができます。
北神モールという、共有フォルダと呼んでますけど、そこに置いておく。今度は見積書を発行して社判を押して封筒に入れ、宛名シールを張って送ってくれる人がいます。その人にパソコン上で渡すことができます。これは日ごろ使ってて非常に便利な機能だなと思っているところです。もちろん音声は全く問題なく対応しますし、ネットワーク上で何の支障もありません。
予算表の作成
もう一つ、来年度の私がいる部門の予算をつくる仕事がありました。これはどういう仕組みになっているかといいますと、企画部という予算を取り仕切る部署があって、そこから各部署にエクセル形式の添付ファイルで、来年度の予算をいついつまでに提出して企画部宛にエクセル形式の添付ファイルで送ってください、という通知がメールであります。所属長から私にその添付されたエクセルファイルが共有フォルダに置かれて、私はそれを受け取り、それと同時に経理から私の部署の実績がメールで送られてきます。エクセル形式のメールを読み取って、それを自分の来年度の予算表に書き込んだり、そこから記入作業ですが、記入をして最終的にまた共有フォルダに置いておく。プリントアウトは最終的に打ち合わせのときにします。所属長のオーケーが出て、これでいこうということになったら、最後はまた企画部宛にエクセルの添付ファイルでメールで送り返すわけです。
ペーパーレスへと進む
こういう形で、先ほどペーパーレスの話も出ましたけども、できるだけ紙を使わないでいこうという仕組みが、まだまだ不完全ですけど、少しずつ整ってきています。そのペーパーレスというのは私たち視覚障害者にとってはとにかく最も喜ばしいことで、データがコンピュータの中に入ってますから見る必要がない。形は私の会社の場合は、オフィシャルソフトがエクセルとワードと決められてますので、必ず添付されるファイルは表計算はエクセル、ワープロはワードにしてくださいということになってますので、エクセルもワードも幸い今読むことができますから、それでやりとりができます。
こういうふうにお話をすると、ではもうすべてが完璧かというふうに思われるかもしれません。チームウエアを使っている中で、すべてが音声に対応してるわけではない。。例えばメール1つ読むにしても、メールを選択するためにいろんなキー操作があります。上下矢印キーでメールを選択した。その時点では実は音は出ないんです。何か訳のわからない音で言っています。でも、多分一番最新のメールを読みたいんだから、ホームキーを押せば大体一番最新のメールがあるからそこを読もうと、そしてエンターキーを押すと最新のメールが出て読めるようになります。ファイルを選ぶところで音が出なくても、そこから先は音が出てくれますから。先ほどのフォーラムの場合でも経理部とか総務部とか、部ごとになってるんですが、その段階ではこれもまた音は出ません。ただ順番が決まっていますから、総務部の後に経理部があり、経理部の後に営業本部があってと、大体決まっていますから順番を覚えて、ここのフォーラムにこれがある、これを見たいということで探せば、そこから先は音を出してくれます。そういうちょっとした工夫は必要です。
ですから、「これは音声が出ますよ」なんてだれも当然教えてくれませんから、自分で「ここは音声が出るんだな、ここはだめなんだな」ということを確かめていくしかない。当然、私の会社に音声を使う視覚障害者は、社員2,300人いますけど私1人ですから、だれもその音声に関しては教えてくれません。
ネットワークを使うメリット
インターネットに非常にたくさんの情報がありますので、「エクセル」と検索させたら、山のような該当の頁が出てきます。その中で自分が知りたいデータを探すことは一応可能です。
1つこれはいいなと思うお話は、例えばエクセルのファイルを開いて仕事をしている、そしてメールが入った。最初これを聞いたとき私感激したんですけど、エクセルをやっていて、いきなり音声がおかしくなったなと思ったら「メール到着」と音声が教えてくれるんです。あるキーを操作すると、送信者がだれで表題が何でとか、「今すぐメールを開きますか」と聞いてくるので試しに「開く」を押すとメーラーが勝手に起動して開いてくれる。この機能にはさすがに、これにぶつかったときはちょっと感激した。「ああ、これがネットワークを使うメリットなんだな」と。確かに自宅でメールを扱っててもそういうことがあるかもしれないですけど、何かをやっててメールが到着したら「メール到着」と言ってくれるのは、やっぱりこれは感動するような世界です。
もう一つの使い方
もう1つネットワークの使い方。会社だけでは当然仕事をやりきれないことがありますので、自宅で仕事をしたいということがあります。このときも、会社からフロッピーでもMOでもいいんですけど、コピーして持って歩くようなことはしません。会社から私の自宅のメールアドレスに添付ファイルつきでメールを送ってしまえば、うちで仕事ができます。うちで仕事をしたら、また会社の自分のアドレスあてに添付ファイルで送れば、翌朝には、翌朝というか土・日が多いんですけど、月曜日の朝にはもう自分の会社で、手ぶらで行って会社で仕事をした後のファイルが手に入る。こういった、ほんとに身近ですけど1つ1つ体験していくと非常に驚くこと、ネットワークというのはやはりすごいなと思うことがたくさんあります。
晴眼社員より一歩リード
最後に蛇足ですけど、私が仕事をしていて、特に一番エクセルを使っているんですけど、普通の晴眼者の社員、エクセルを使いこなしてる人が案外少ないと。だから、私程度のエクセルの知識でも結構聞かれる。「ここはどうするんだろう」。私は「どこどこをクリック」という言い方はできないんで、例えば「ツールメニューの何とかを選べばできますよ」とか、「それはウィンドウの切りかえをすれば」とか、それをマウスだとどうやってやるか知らなくても、その言葉さえ言えば、向こうが画面にいっぱい出てますから「ああ、じゃあこれをクリックすればいくね」とか、そういうコミュニケーションがとれます。ですから例えば、エクセルならエクセル、1つのソフトをある程度まで使い込むことで、ある意味ではその分野については、社員のリーダーとは言えないまでも、少なくともリードすることが可能になっています。まだまだ勉強ももちろん不足で足りないところいっぱいありますけども、例えば、先ほどシステムをつくってると言いましたけど、これはエクセルのVBA(Visual Basic for Application)という言語を使ってプログラムを書いています。例えば、エクセル98では罫線は引けないことになっています、音声対応しないから。でもVBAを使えばほんの数行を書くだけで簡単に罫線は引けます。書式の設定も網掛けも簡単にできます。このメリットもあるんで、そうすると罫線を引くためにいちいち人を呼ぶ必要もないし、少なくともその面に関して自立度が高まっていきます。それだけのことを覚えるために、VBAを覚えようとするとエクセルのいろんな機能を覚えなきゃなんないですから、勢い勉強をします。勉強をするとほかの人に何かを伝えられるようになる。そうすると、信頼度が高まってるかどうかわかりませんけど、その面で自信が持てたことだけは確かなようです。
目的意識を持って使う
まとめになりますけど、私にとって、とにかくエクセルの知識、ネットワークの知識も含めまだまだ勉強途中ですが、最近はアウトスポークンなど新しいソフトも出てますから、どんどん可能性が広がっていくことだけは確かです。ただ、私も含めてですが、いいものがあると飛びついてしまう。それはそれでいい。しかし、じっくりとそれと取り組んで、何のためにこれを使うかという目的意識を持って使っていくことが大事かなと思っています。例えば、わからないことがあっても安易に聞かない。もうとことんまで自分で調べてみて、悪戦苦闘をしたあげくに聞くと、なぜか覚える。最初から聞いてしまうと不思議と忘れる。私の場合は。年のせいかもしれないけど。そんなことを何か感じてます。ですから、チャレンジの意識だけはこれからも持っていきたいと思います。
○田中 私が勤めてるのは、株式会社オービックといって、サーバー、クライアント、パソコン、ネットワークを企業向けに売る会社です。私がいる部署は業務管理部です。営業の事務と、コンピュータ屋はお客さんに商品を売った後に定期点検に行ったり、機械が壊れたら直しに行きますが、その技術者のいるその事務、それをかけ合わせたような事務、事務部門の部署にいます。
グループウェアはロータスノーツ
会社は、社内LAN、事業所同士のWAN、もちろんインターネット、一通りできています。使ってるグループウェアはロータスノーツです。機能的にはフォーラム、掲示板、スケジュール管理といったものを備えています。私はロータスノーツの機能は全く使えませんでした。どうしてかというと、95Readerまたは98Reader、Windowsのスクリーンリーダーは一切ロータスノーツはしゃべってくれません。
私が使ってるコンピュータは特別なものは何もないです。富士通のパソコンです。Windows98を積んで、ワードとかエクセルを使う。95Readerのバージョン3.5です。ネットワークに関してはメールとかブラウザはDOSを使っていました。Windowsはどうも納得がいかないんです、音声だけなんで。
音声よりは点字がいい
私は盲学校出身で点字が得意なので、どうも点字で読まないと納得がいかないところがありまして、音声だけだと何か大事なことを聞き逃しているんではないかという不安があるんです。エクセルとかワードはこの間まで点字は出ませんでしたからね。この間までというのは後で話します。
メールとかブラウザに関してはやっぱり点字がいい、点字で読み書きしたいということで、わざわざDOS環境をもちました。DOS窓という作戦もあったんですが、どうもDOS窓は不具合が多い話を聞くので、安全策をとろうということでPC−DOS、IBMが出しているDOS、7.0を積んでいました。
幹部会の資料作成
仕事の内容は一体どういうことをしているのかというと、毎週または毎月やる決められた仕事、いわゆるルーチンワークが4つほどあります。月曜日に会社に行って、まず何をするかといえば、幹部会議の資料をつくります。前の週に営業が幾らまた直し屋さんが点検に行って幾ら稼いだのか、、直し屋さんも営業をしてきます。
要するにオービックとしては例えば、Aという会社にネットワークの商品、サーバー1つ、クライアントとなるパソコンを50台ぐらい売るとします。そしてお客さんに「こうやって使うんですよ」と技術教育を行った後に、定期点検に行きます。「壊れた物はありませんか」とか、その中で「オービックさん、実はこういう新しい機能が欲しいんだよね」という話が来る。そうすると、直しに行ったはずのカスタマエンジニア(技術者)が営業成績を上げます。要するに技術者も営業マンなんです。だから営業の連中の一週間の成績と、技術者が持ってくる営業の成績、それを幹部会議の資料として提出するためにエクセルを使って表をつくるんです。社長やえらい人は、例えばエクセルシートが10枚も20枚ある表なんか見たくもないんです。1枚でいいから、一体幾らもうかったんや、と。そういうのが知りたい。しかも100万円単位なんかいらない。1,000万円単位でもいいから、100万円単位ぐらいまで出してくれればいい、と。いわゆるザックリの営業成績をつけるわけですね。
メールでエクセルデータを
オービックは全国に7つ支店があります。東京、大阪いろいろあるんですけど、それで支店の事業ショップ合計、それから営業部隊は何個かの課に分かれています。要するに大きな部隊に分かれています。その課の長の成績となる合計、それからもっと細かいグループ単位、4〜5人単位の営業マンのグループの合計。そういうのを出すための資料を各事業所からメールでエクセルデータでもらいます。それを私が集計する。いろんな事業所とかいろんな人からメールをもらって私が1つの表ににまとめたり、計算をしたりするという仕事が、ほかの3つのルーチンワークにもからんでくるんです。
要するに私が仕事をする上で一番使ってるのはメールで、他の事業所の人からエクセルのデータをもらって、それをもとに自分で表を1個つくる。今までは多分紙でやってたと思うんですね、コンピュータのない時代は。紙で営業成績表とかを出して、それはもちろん見えない、ただメールなら読める。エクセルデータならいじれる。ということで、エクセルデータをもらってまとめる。この仕事ばっかりです。
ランキング表の作成
営業成績の幹部会議資料をつくるのもそうです。月に1回月初めですけど営業1人1人のランキング表をつけます。これはものすごくシビアな仕事です。例えば、田中さんという営業マンが1カ月に幾ら数字を上げたか、いろんな数字があります。ネットワークという商品で売り上げたのか、ソフトの商品で売り上げたのか、プリンタを売って売り上げたのか、それによってまた数字が変わってくるし、その先は複雑になりますが、1人1人の営業マンについて、または部長、課長の人たちについて、各事業所からデータをエクセルでもらい、成績をまとめます。それをランキング表にして、1番何とかさん、2番何とかさんという表をつくって上司に渡します。上司はまたいろいろ表として見やすく整形して印刷する。、
営業成績とか、幹部会議の資料とか数字がからむものは1人がまとめるのは危険です。絶対に間違える。だから1人がつくったものを、上司が見て間違いはないか、この数字はおかしくないかをチェックする。そのためにも上司に渡します。さっき北神さんがおっしゃったように、表のレイアウトは晴眼者のほうがうまいので、私は、一切しません。
CEの行動表の作成
それからもう1つ、直し屋さんの部隊、カスタマエンジニア(CE)という機械を直す人たちの行動表をつくるんです。どういうことかというと、オービックには72人のカスタマエンジニアがいるのですが、月初に前月分の1人1人が何件の定期点検に行って、何件修理に行ったかという、それを全部ポイントにします。個々人のカスタマエンジニアがそれを自分で自分のポイントを記録しておくんです。自己申告制です。それを月が終わったら私の所にメールでエクセルのデータを流してもらうんです。それを表にするわけですね。どういう表かというと、事業所の合計です。
例えば東京本社のカスタマの皆さんは一体どのくらい仕事をしたのか、ポイント換算です。大阪はどのぐらいなのか、名古屋はどのぐらいなのか、それをつくってまた上司に渡す。
仕事の軸はデータの集計
あと細かい突発的な仕事、ルーチンワークでない仕事はあります。ただどれにも言えることは、私はメールでエクセルデータをもらって自分で集計するという作業は変わってないんですね。これが私の今の仕事の軸になります。
アウトスポークンでノーツの音声化
今、98Readerというスクリーンリーダーをずっと使ってきています。最近アウトスポークンというソフトが出ましたが、これからロータスノーツの音声化のぐあいを見てみたいと思っています。事務部門にいますから、お客さんに出す契約書ですとか経理に回す伝票、この商品に関しては幾ら幾ら売り上げますよっていう表ですとか、それをチェックする業務ができるはずだと思っています。
これもいわゆる伝票打ち込みです、会社で女子社員がやっている仕事です。ただ、女子社員が打ち込んだのをそのまま送るのは危険です。間違いは必ずあります。だから打ち込んだ表は別の人が見るのです。間違いないか、この数字はおかしくないか。そのチェックをうちの部署では2〜3回やっています。例えば1人の女子社員が打ち込んだものを別の女子社員が見て、次に課長が見て、さらに部長が見る。部長がオーケーなら、判こを押すという形になります。その判こも紙ではなくて、ネットワークの中のファイルでやるわけですね。
ペーパーレスへと淘汰
オービックという会社はコンピュータの会社ですから、会社の中で紙の書類はどこで動いているかというと、お客さんに渡す契約書と請求書ぐらいです。少なくとも社内で回るものに関してはほとんど紙はなくなっています。会社の仕事のやり方の風習として紙が残ってしまっているところがあるのですが、今後は淘汰されていくはずです。
○平塚 「ライオン」という日用雑貨品をつくっているメーカーに勤務しております。まず最初にお話しさせていただく前に結論から先に申し上げてしまいますと、パソコンを使ったネットワークということは私にとってはあれば便利、なくてもどうにかなるということです。
職場は、今お客様相談室という部署にいます。ここは歯磨きとか洗剤を売っているメーカーで、お客様が買って、その製品についての問い合わせとか、苦情をいただいて、それを電話や手紙で対応するという部署です。私は最初は広報部だったんですが、95年に異動になりまして、95年からお客様相談室という部署で働いております。
仕事の内容
仕事の内容はもうそのままズバリお客様対応ということになります。ですので、お客様から電話があれば電話で応対して、場合によっては代替品を送ったりですとか、必要があれば営業の者に連絡をしてお客様の家を訪問する。あるいは手紙であればその手紙に対してお礼の返事をする。といったことが大まかな毎日の日々の仕事になります。それは、今お客様相談員が13名いるんですが、その13名のうちの1人として、ほかの同僚と同じ業務で日々悪戦苦闘をしております。
ネットワーク化への移行
最初に会社に入ったときにはネットワークなんてとんでもなくて、パソコンは使っていましたが、ネットワークにはつながっておりませんでした。ほかの社員の方もまだ1人に1台端末が入る、これから入れようという段階でして、まだ部署に対して数台のコンピュータが机の端にちらほら置いてあるというころでした。ちょうど92年、7年ほど前の話ですけれども。それから95年ごろです。94年から95年にかけて会社全体でそういうネットワークというのが敷かれるようになりまして、いや応なくそのネットワークにそれぞれの端末がつながって、先ほどのお二方が話されたようなことができるようになってきたわけです。
ピンポンシステム
それとあと、お客様相談室の中にはそれとは別にネットワークがありまして、日々のお客様からのお問い合わせの内容をデータベースに入力して、そのデータを共有するためにストックしておく。お客様相談室特有のデータベースネットワークというのが組んであります。通称ピンポンシステムと呼んでいます。ベースになっているのは、専門的なことはよくわからないので申し訳ないんですが、東芝で売られているパートナーというデータベースソフトがありまして、それをライオンのお客様相談室用にカスタマイズしているものが入っているそうです。それはお客様相談室の13名のお客様相談員しか入力はできないんですが、ほかの部署からそのお客様相談室の内容は見れるようになっています。日々そういった入力もするようなんですけれども。
バランスがとれていた非ネット
最初私の機械自体はスタンドアローンでネットワークにつながっていませんでした。95年そのネットワークが全員に敷かれたときも私のマシンはスタンドアローンのままでした。それが使えるようになったのは97年、今から2年ほど前の話です。ですから95年、96年お客様相談室で仕事をやっていたわけですが、どうして日々の生活をスタンドアローンでやっていたのか。それはそのときお客様相談対応もやっておりましたので、お客様から電話を受けて、それに対してお答えしてその内容をどうしていったかというと、周りの人間にデータベースに打ってもらっていました。お客様に対して手紙を出す方はスタンドアローンでもできますので、自分のパソコンで手紙を書いて粗品ですとか、そういったものをつけてお客様に発送ということはやれます。
ネットワークのデータ入力に関しては周りの同僚にやってもらっていたわけです。ただ今思えば、そのときのお客様に対する電話の応対の量は逆に私が多かったんです。ですから、私自身が電話をとればその分、電話をとる周りの人の仕事は軽減されるということで、妙なバランスがありまして、入力する人はその分入力する時間ができるということで、何か成り立っていたような雰囲気がありました。
ピンポンシステムを音声で使う
97年に画面を読むWindows用のソフトが出たことによって、ピンポンシステムのデータベースネットワークとか、電子メールのやりとりとかが使えるようになってきました。使えるようになったおかげで、幸か不幸か仕事がふえまして、自分で電話をとったものは自分で入力しなければいけないようになり、結果的に使えれば使えたほうがいいんでしょうし、実はピンポンシステムも現在はすべてのメニューを開いてキーボードで使えるようになっているんです。
最初に導入されたときは、実は使えなかった部分がありました。それはマウス操作が基準になってましたので、その中の操作がキーボードに対応してないんですね。キーボードでいくら操作しようと思ってもカーソルが全然動いてくれない。でも95Readerは、バージョンアップを何度か頻繁にやっていたようで、要望を出したらそれがすんなり通って、すべての面においてショートカットというんですか、キーボードからそのメニューに行ったり、アイコンに飛ぶような機能がついていますので、今は一応マウスなしで、キーボードでそのデータベースは操作できるようになりました。
ネットワークがつかえてよかったのか?
ということで、ネットワークが使えてよかったか悪かったか、確かにメールができて情報が入ったり、情報発信ができたりということはあるかもしれないんですが、どちらかというとやっぱり電話でやった方が何か安心だなっていうのがああります。それとあとは私がいる部署の関係で、間にお客様が入りますから、細かニュアンスっていうのを営業の人なりに伝える必要があるもんですから、活字上だとどうしてもそれがうまく伝わらないっていうのがありまして、電話でやりとりするというのが中心、それはほかの同僚もそうみたいです。
勉強になるパソボラ活動
職場の話とは違うかもしれないんですが、インターネット、電子メールをやりたいという方のお宅へ週末などに行って、セッティングすることもあります。とりあえず使い方は最低限はやってきます。そういう方々の上達ぶりは、めざましいものがあります。目的意識がすごく強いのです。たまたま小さいお子さんを持つ主婦の方なのですが、メールをやりたいと、どうしても最初の子供なんで情報交換がしたい。家を出るのがままならないので、子育て中の人たちと何か情報交換ができないかというとこで、たまたまあるグループを知ってたので紹介したのです。皆さん時間がそれぞれ限られていますから、電話ではなかなか難しいようで、メールで頻繁に情報交換されているようです。セッティングに行って、逆に勉強になっているという感じです。ネットワークを大変うまく使われているなあとすごく感心しているところです。
私は1999年の11月1日に長い復職活動を組合とタートルの方々、また支援してくださった方々のおかげで安達町役場総務課庶務係に復職する事ができました。
今仕事に戻って4カ月が過ぎようとしています。
これから私が仕事のことでやろうと思っていることは、まず自分の仕事を増やす努力です。特に職場では私がどのような仕事なら任せられるのか?という事がまだ見えていないと思います。
現段階ではテープに内容を録音してもらって、それをある書式に打ち直すことが中心で、会議録や議案の提出書類などを手がけています。しかし、このような仕事はまだまだ少ないです。そこで私が望むものはスキャナーです。
このスキャナーにOCRソフトをいれて書類などをテープに録音しなくても自分で読み取って、自分で加工できれば、もっとほかの仕事にも対応できるようになると思います。
また、職場でもホームページを作成する予定なので、そのホームページに出したメールなどの受け取りを一任してやりたいと思います。メールの内容はフロッピーにいれて各課に渡せば、各課でそのメールに対応した返答をしてもらえると思います。
これからは行政も情報公開の波に対応しなければなりません。今、私が議事録などをパソコンで作成したものが、そのうちホームページなどで閲覧できるようになると思います。
以上のことでもうすぐ実現できそうなのが、スキャナーです。今他の課で使わなくなっているスキャナーがあるそうです。そのスキャナーを取り付けてもらえばなんとかなるのかと思っています。
また、私が使っているパソコンはインターネットの接続ができていません。職場の中では仕事とインターネットは結びつかないという事で断られました。
私はこれから他の行政のホームページなどを参考にしたりすることが、私の町のために少しは役にたつのでは?と考えています。
仕事以外では、自宅のノートパソコンで2月にインターネットの接続ができました。これでタートルのメーリングリストに登録させていただいたので、視覚障害者の情報が逸早く入手することができるので大変役にたっています。
これからは、情報をどのように入手して、どのように自分にいかすか?
このことは仕事や復職に限らず大切なことだと思います。情報はできるだけ多く集め、その中で必要な情報を自分のものにする。そういう姿勢はこれからの情報化社会では大切なことだと思います。
また、これから復職を考える方などに私にできる事があれば、お役にたちたいと思っています。私もタートルに出会わなければ、元の職場に戻れなかったと思います。
今の不景気という情勢の中で障害者を雇用する企業、役所などは大変厳しくなっています。特に障害者だからという考え方で仕事に取り組むことより、一人の人間として仕事をこなすことが大切になってくると思います。確かに健常者と同じレベルには中々難しいとは思いますが、自分の努力でその差を少なくすることは可能だと思います。
私も自分にできる限りの事はしようと思っています。復職した今からが私の自分との戦いになりそうです。
久保さん(28歳、全盲)のご家族から最初に事務局(日本盲人職能開発センター東京ワークショップ内)に電話が寄せられたのが1998年1月。ちょうど『中途失明〜それでも朝はくる〜』の出版直後のことで、これが掲載された新聞記事をご家族が読んだのがきっかけでした。網膜剥離で失明し休職となり、三療(鍼灸マッサージ)しかないだろうと言われるなか、まさに途方にくれていたときのことでした。
以後、久保さんはタートルの会の交流会に参加しながら、労働組合の強い支援と多くの仲間に励まされて、復職まで漕ぎ着くことができました。
この間、私たちは労働組合の2度の訪問を受け、労働組合の主催する「第18回団結研修会〜視覚障害者の職場復帰への現状と課題〜」に講師として招かれ、和泉会長、松坂幹事が出席しました。一方、久保さん自身は、国立塩原視力障害センターでの生活訓練(6カ月)、障害者職業総合センター職業センターでの職業講習(3カ月)を受けました。
実に病休期間を合わせて2年1カ月ぶりの職場復帰でしたが、治療段階ではリハビリテーションに関する情報もなく、生活訓練を終えても職業訓練にスムーズに移行できなかったという問題がありました。そこには、当局の不安感と負担感を解消しなければならないという大きな問題がありました。ここは粘り強い労使交渉のなかで切り開いていただきました。
やはり、実際職場復帰が実現できたのは、何よりも本人の復職への強い意思があったからこそです。久保さんの今後の御活躍に心から期待したいと思います。
本年1月17日、久保さんの所属する労働組合(自治労安達町職員労働組合)執行委員長・尾形隆男氏からお礼状を頂戴しました。そこには、「今後も一つ一つの課題に対し丁寧に取り組んでいきたい」とあり、たいへん心強く思う次第です。
視覚障害者の雇用の場を拡大するためにも、久保さんに続く第2、第3の事例がたくさん出てきて欲しいものです。
第5回定期総会
○日時:2000年6月10日(土) 10:00〜17:00 (予定)
○場所:東京都福祉機器総合センター 多目的ホール
(飯田橋セントラルプラザ内 15階)
〒162-0823 東京都新宿区神楽河岸1ー1
Tel.03-3235-8575
○内容:午前・総会、午後・講演と交流会
本号は、前号で積み残した昨年10月に行った「ネットワークの現状と職場での活用状況」を特集しました。
3人の具体的な仕事内容の紹介は、今後の視覚障害者のパソコン利用の方向性を示してくれました。世の中は少しずつペーパーレスの方向に進んでいるのだと感じます。
視覚障害者にとって、パソコンはますます生活、もちろん職業生活のうえでなくてはならないものとなってきています。
3人の仕事振りは約6ヵ月前の報告ですから、今、この時点ではかなり変化しているでしょう。パソコンを取り巻く環境はめまぐるしく進展しています。変化に機敏に対応してきているからこそ、全盲の3人は実務をこなし得ていると思うのです。