タートル No. 12

1998.12.15.
中途視覚障害者の復職を考える会
(タートルの会)

【巻頭言】

カメルーンのウサギ
タートルの会幹事 金子光宏

 雪の季節となった。寒い季節になると、ほとんど毎週のようにマラソンや駅伝の大会が行われる。私たちにとっては、あの長い距離を完走するのはかなり困難なことである。ある陸上選手の話だが、走るつらさを克服して完走するための秘訣がある。常に自分の視界に入る前方の何かを目標として、そこに向かって走るのだ。目標は、電柱でも看板でもいい。とにかくそこに辿り着くように頑張る。到達できたら、また次の目標を前方に求める。そして、最後の目標がゴールテープである。ひとつひとつの小さな目標達成が、マラソンの記録という大きな成果となって結実するのである。自分の手の届きそうなものを目指すことが、結局長い道のりを走破できることにつながる。
 人間は、それほど長く同じ緊張を持続することは難しい。そのゴールが遠いほど気力は続かない。視覚障害者の復職を求める活動も、遠く険しい道だと言える。しかし、そのまだ見えぬゴールに向かって走るタートルは、絶えず前方の目標を目指して走り続けている。会の名称の由来となったカメルーンのカメのように、その知恵と協力をもって、一人では勝つことが難しいウサギに戦いを挑んでいる。すべての視覚障害者が当然に復職できるというゴールは、まず一人の復職の実現という前方の目標達成から始まる。
 一方、絶えず自分の後ろに付くカメルーンのカメに目標物として追われたウサギは、そのカメを振り切るために全力で走らざるを得なくなった。何匹ものカメのバトンタッチによって追われたウサギは、昼寝をすることができなくなったのだ。全力で走ったウサギは、途中で疲れてしまい最後に何匹めかのカメに追い抜かれてしまう。息切れをするまでのウサギの走行タイムは、おそらく自己ベストだっただろう。タートルが戦っているウサギがこの社会であるとすれば、タートルの会はいつもそのウサギの背面に現れて、ウサギを駆り立てる役割を担っているのかもしれない。
 社会というウサギは、まだスタートラインでウロウロしている。私たちの役割は、ウサギが早く自分を追うカメに気づき、全力で走るように仕向けることにある。
 そのためには、私たち一人一人が自分の目標に向かって一歩でも前に進みたいものである。カメなのだから、歩みはのろくて構わない。しかし、私たちは、その一歩を歩むために、少なくとも己から自分を見捨ててはならない。まずは自分が、自身を無力だと思わないことである。そうすれば、誰一人この社会で無力な人などいなくなるのだから。
 まもなく新しい年を迎える。どんな年になるのか、楽しみだ。 来年は、兎年である。


【連続交流会】

その I (1998/9/26)

  話題提供:大脇俊隆
  会社でのパソコン通信の活用

はじめに

 平成4年にベーチェット病でクローズ。1年間は、病院の一時通院と手術。その後、東京都失明者更生館で歩行、点字、音声ワープロを訓練。そして、日本盲人職能開発センターでパソコンの訓練、平成7年6月1日に復職。
今、インターネットが叫ばれる世間の声の中で、私たち視覚障害者が、本当に気軽に使いやすく、難易度のない、情報をいきなり持ってきて、いきなりそれを発信できるという、パソコン通信。このことについてお話をします。インターネットでも取れるのですが、ソフトとかいろんな面で自由自在というわけにはいかない気がしています。そういった意味で、ニフティのクリッピングサービス等、それだけでも十分に活用できるのではないかということに気がつきました。
平成7年に復職以来、仕事は、社内勉強会のテープを起こし、印刷して関係者に渡す。もう一つは私のほうで「名刺管理」というソフトを使い、テープに吹き込んだ名刺をデータベースに打ち込んでいく。
 社内での存在をどうアピール?
 視力ゼロのため職場を自由自在に動き回れないので、自分の席に座り、朝からレシーバーつけてテープを聞いて、ずうっと打ち込みをしている。お昼になったらご飯を食べて、また、午後から打ち込みして、夕方時間になったら帰る。そういった流れの中で、どうしても会社の中で閉鎖的になる。
 復職当時はそれでよかったんですが、周りの人たちとのふだんの会話、コミュニケーション上のキャッチボールができない。周りの人たちが逆に気を使って、いま声をかけちゃいけないんだとか、そういう感じになって、やっぱりあの人は、机に向かって、「ただひたすらやっている人」、「そういう人」だと思われるんです。そういった中で、実際にプリントアウトしたものを、その部署の人の所へ持っていき、本人がいるかいないかわからなくても一応置いて、仕事として完成させる。あるいは電話をとって、伝言を頼まれれば、A4の1枚の用紙にわずか2〜3行のメモを書いて、プリントアウトして、その人の机の上まで持っていって置いてあげる。これでは何となく一方通行、ロスがすごく多い、ということに気がついたわけです。

発信する事の意味は?

 ニフティに加入。いわゆる電子メールが送れるようになったことにより、自分の机にいながらいろんな「発信」をはじめ、行動範囲が広くなったような気がしています。今の会社ですと、各自のノートパソコンにその人宛にいろんな情報や伝言、あるいはお願いを発信できる。それは職場の人とのコミュニケーションにも役立つ。
 それから、勉強会のテープ起こしも、もっとたくさんの人に、その文書になったものを発信して、「東京ではこういう内容でやっていますよ」というように、仕事のほうにも生かせるってことになってきた。
 もう一つ、自分の部署で仕事をしていて、その部署の人たちには、私がどういう仕事をしているのかを理解してもらっていたけれど、会社には自分の部署以外にもっとたくさんいる。特に、東京の今私のいるビルにはあと百何名いる。その人たちと私とは全然関係ない。そこで、電子メールを使うことによって、業界誌っていいますか、うちの会社でいえば照明関係とか、住宅関連、今年の住宅着工100万戸、120万戸とか、そういった業界誌のニュースを、会社の営業や物流の人、それから総務でも監査の関係の人たちに、ニフティのグルーピングで、1回発信すれば同時に30名とか50名の方に一括送信できる。それをやりましたら、「大脇さん、いつもメールありがとう」っていうか、そういう声をかけられると、すごく張りが出て、やりがいがある。向こうからいろんな声かけられるということは、私も声かけられますから、そのときにまた、「どうですか」とか、いろんな出先の状況とか話ができて、いわゆるコミュニケーションがとれる。
 また、復職当初には、声をかけてくれるが、何年か経つ中で、そればかり期待していられない。そこで、職場の方にお願いしたいことがあるときなど、電子メールを使う。
 あとは、発信したときに「実は大脇さん、こういった情報入らないんですか」とか、「こういうこともちょっと調べてほしい」とか、逆に向こうから返信メールで依頼が入る。そんなとき、「一応、部長のほうに通してお願いして」ということで、上司も、私という視覚障害者がこういう仕事ができるということを確認できる。またルーチンワーク以外のことで貢献できているじゃないか、と。そういうこともあるわけです。
 それと、今までのワンウェイからツーウェイの仕事になっていくっていうことですね。これは非常に大きな意味があり、持続していくためのものじゃないかなと思うんです。健常者の中に独りぽつっと席を置いて、そこで淡々とやっている中では、長続きしないってわけじゃないですが、どうしても自己嫌悪に陥ってしまう場合がありますので、そういった意味でも、電子メールを仕事に生かせるんじゃないか。

新たな業務として!

 会社に何年かいますと、こういう情報は、この人の部署に送れば喜ぶんじゃないかなとか、情報の内容によって送信する相手を取捨選択できる。特にねらい目なのは営業の人たちです。通常の新聞でも全部は読めない。そこで、大事な情報を見やすい形にちょっと加工してあげて、それを発信してあげる。自分の業界の中で、キーワード、言葉をクリッピングサービスに入れておき、その関連の情報をどんどん営業に送ってあげると、営業は朝それを見て得意先に行って、「こういう関連の記事が出ていましたね」とか、得意先に対してのトーキング、ネタになるわけで、営業の方に大変喜ばれる。

具体的方法は?

 私の場合であれば照明ですから、ハウスメーカーの関係、あるいはわが社のライバルメーカーなどの関連記事が新聞紙面より一日早く、ニフティのクリッピングサービスのニュース速報がクリッピングしてくれます。それを加工して、その記事のタイトルとアブストラクトだけを関連部署の人たちに発信してあげる。
 パソコンに出てくる画面の文字を読み上げてくれるスクリーンリーダーは、「やまびこ」を使用し、通信ソフトは、「WTERM」です。オートパイロットで自動巡回しているわけですが、そのソフトについてオートパイロットのマクロプログラムはニフオートを使ってます。

そのII(1998/10/17)

  話題提供:工藤正一
  情報の収集と活用

 視覚障害者はやはり情報障害者だと思います。私自身、情報を自分のものとして取り入れ、それを活用するという点でいうと、本当に今でもまどろっこしくて、いらいらすることも随分あります。
 今から、実際どのようにしているかということを話すわけですが、自分なりに工夫したり、今までの人脈を活かして、人の支援を得たり、家族にも相当負担をかけたりしています。とにかく、そんなことをしてやっています。

1.情報の入手について

(1)仕事のなかでの情報の蓄積
 私は、現在49歳で、全盲です。失明してからもう10年になります。
 91年に労働省に職場復帰して、そこでの仕事は、雇用審議会や研究会などのテープ起こしや報告書の作成などでした。
 その後の障害者職業総合センターでも、研究会の会議録などを作成し、その他、仕事に役立ちそうな情報の蓄積・整理を自分なりにしてきました。ここには、障害者関連の情報がたくさん集まりましたから、特に視覚障害の情報を中心に、図書館からの資料など、さまざまな情報を電子データ化してきました。
 昨年、東京都庁に転勤し、半年間、会議録の作成などをしながら、通達や今後仕事で使いそうな資料を整理し、今年7月から、飯田橋公共職業安定所で障害者の職業相談の仕事をしています。
 このような形で、8年近くかけて集めてきた情報のすべてが、今、本当に役立っているという感じです。
(2)さまざまなメディアを通して
 毎朝の通勤時間が、情報を自分の中に取り入れる時間です。やはり耳からの情報が多いといえます。
 テープ図書や新聞を早送りで聞いています。両方の耳を使って、片一方ではラジオ、もう一方ではテープからという具合です。
 いくつかの点字や墨字の雑誌、いろいろな団体の情報誌などを購読しています。点字と墨字、あるいはテープでも出ているものは、両方購読したり、晴眼者に資料として提供するために、あえて墨字資料を購入することもあります。
(3)人脈を活かして
 今どういう情報が話題になっているのかを知るのに、いろいろな分野の人とつき合ってきたことが役だっています。
 今の仕事、職業紹介とか職業相談をするうえで、いろいろな分野の情報が役立ちます。専門知識を持つ人の人脈で、代わりに調べてもらったり、思わぬ人助けができたということもあります。
(4)OCR装置を用いて
 OCR装置もよく使います。解読の状況はあまりよくありませんが、内容が大体わかれば、それで十分ということも少なくありません。
(5)対面朗読サービスなどを利用して
 公共図書館などに出かけ、対面朗読をしてもらったこともあります。もっと身近なところで、このサービスが受けられるようになればと思います。
 また、「NTTリーディングサービス」を利用したこともあります。勤務中、長時間というわけにはいきませんが、その日の新聞記事で、どうしてもという場合には、便利なサービスです。
 このように、情報収集には、かなり貪欲なまでに取り組んできました。

2.情報の加工・整理について

 いろいろな情報をどのように自分で使えるようにしているかというと、職場ではアシスタントの協力もある程度得られますが、ほとんどは自分でコツコツと入力しています。テープ情報に至っては、とにかく自分で入力するしかないのが現状です。
 配布された墨字資料などには、直接点字で、日付とともに何の資料かを書き込みます。薄い表紙の本には、直接表紙に点字でタイトルを打ち込み、厚表紙の本には、点字のメモを挟み込み、ダイモテープを貼ったりします。
 会議などでは、録音をとるようにしています。必要なところは、すぐ文字化しておくとよいのですが、実際は、なかなか聞き返すことさえなく、自己満足に終わることも少なくありません。しかし、録音しておいて本当に助かったということもあります。
 家族の協力も欠かせないものとなっています。特に、妻にはかなりの負担をかけています。例えば、墨字資料のファイル管理などをしてもらっています。
 ボランティアは、あまり積極的に活用してきませんでしたが、今、どんどんたまる墨字資料を、ボランティアだけでなく、有償ででも何とかしなければと感じています。
 電子機器の活用では、「ユリーカ」(音声点字電子手帳のようなもの、32万円)を購入し、主に電話帳として、かなり使い込みました。今となってはかなり大型ですから、持ち運びにも不便で、今は使用していません。
 今なら、「ブレールライト」がもっと安ければ、「ユリーカ」に替えて使いたいものです。
 パソコンは、MS−DOS環境で使っていますが、1年半前から本格的に「DM」エディターを使い始めました。
 「DM」を使い始めて、その便利さに、今さらのように驚いています。なかでも、同時に複数のファィルを開いたり、切り貼りが簡単にできたり、タグジャンプ機能で指定のファイルに飛んでいったりと、いろいろと便利に使っています。
 文書を検索したり、整形したりするソフトとして、「YGREP」と「XTR」を使っています。
 点字の使用については、点字をメモ程度に使えるだけでも、随分便利です。とかく、中途視覚障害者は点字が苦手とはいえ、必要不可欠なものであると、あえて強調したいと思います。
 私は、電話番号など、必要な情報を点字でメモして、ポケットに入れて持ち歩くことをよくします。
 会議などの記録は、必ず点字でメモをとります。もちろん、録音もしますが、要約文を作成するときなどは、点字メモを墨訳したものに、テープを聞いて肉付けするようにしています。
 点字は、どうしても読み切れないことがありますが、必要な時に、人の手を借りずに読み返すことができます。

3.ヒュ−マンアシスタントについて

 私が一番ありがたいと思うのは、ヒューマンアシスタントの存在です。民間企業は助成金を使えますが、公務員にはそれがありません。職場対応ということだと思います。
 私は幸いに、労働省に戻ったときからつけていただいています。その間に5人の方にお世話になりましたが、やはり、それぞれの得手不得手があります。読むのが非常に得意な人、ワープロの入力が得意な人、点字ができる人など、それらに合わせて頼む仕事を工夫する必要があります。
 今は職業相談の仕事ですから、一緒にお客さんと面接したり、端末操作をしてもらうこともあります。アシスタントにも、業務の流れを覚えてもらうため、ある程度の研修が必要です。

<こんな時はどうしていますか?>

(1)個人、団体、施設等の電話番号の管理
 最初は、手書き(点字)で作って、ポケットサイズにして持ち歩いていました。しかし、せいぜい200か300件書くと、かなり分厚いものになり、それでは間に合わなくなりました。
 今、「DM」を使うようになってから、「ユリーカ」からデータを全部移しかえて、自由に何でも書き込んで、非常に単純に使っています。
 団体リストや、関連情報などは独立したファイルにして保存しておきながらも、「DM」でどんどん書き込んだ電話帳からも、タグジャンプ機能で飛んでいけるようにしています。
(2)スケジュール管理
 点字のカレンダーを活用しています。新しく予定が入ってきたら、点字で書いたメモを短冊みたいに張りつけ、ホチキスでどんどん留めていきます。
 ちなみに、弱視者用スケジュール管理帳が販売されているようです。
(3)名刺の管理
 名刺をもらったら、まず、直接点字で相手の名前と電話番号を書き入れて、捜し易いように並べています。
(4)回覧の文書
 職場の介助者に読んでもらっています。なるべくためないで早く処理するようにしています。タイトルだけ読んで、ごみ箱ゆきということもよくあります。必要なものは、もちろん保存しておきます。

そのIII(1998/11/21)

  話題提供:滝口賢一
  仕事に生かそうデータベース

 データベースって何?
 皆さんは名刺の管理をどのようにしていますか。名刺に記載されている会社名、部署名、名前、住所、電話といった項目で、名刺をバラバラにし、パソコンにデータベースとして記録すると、例えば名前で整理したり、会社名や業種で整理できるということがわかりました。ということで、データベースは情報をより整理しやすくするものと考えてもよいでしょう。名前で検索してどこの会社の人かを調べるとか、得意先の名刺の中から、同じ業種で東京所在の会社と、その担当者名と電話番号を一覧にして出すなどは、データ抽出というデータベースの特長とするところです。

仕事の中での活用−その1

 <進捗状況管理表の作成>
 市場情報部に所属しています。商品が店頭に出る前に社内で調査しテストをしたり、いろんな分野の調査があるのですが、全体の調査の管理表を作成します。
 管理表の内容は調査のタイトル名、部長にチェックしてもらう書類を出した日付、請求書の日付、調査委託先、金額となっている。日々企画担当者や部内の調査担当者は、部長にチェックしてもらい調査を始め、途中経過を部長に報告し、最後に終了の報告をします。その流れがわかるようにこのデータが作られています。これを依頼されたものがあれば日々入力し、部長にチェックしてもらい、お金を支払う予定のもの、支払う予定が変わった時、ここに入力する作業を毎日しているわけです。年間300件ぐらいの調査があるから、1日に1つか2つ新しい調査が入ってくる。また、毎日進行状況の変化があって、それを入力することになっています。
 これによって何がいいかというと、例えば今月調査に支払ったお金はいくらかを知りたいときにすぐ出すことができる。求められた分野ごとに出すこともすぐできる。担当ごとで出すこともできる。当然、予算がどのくらい残っているのかもすぐわかる。このように、データベースを活用しながら進捗管理・予算管理の仕事をしています。部内の他の方がパッと見てわかりやすいように、それなりに画面も工夫して作っています。一覧表でも、その調査のみについて、パッとわかるようにしている。なぜそうしているかというと、これは自分だけが使うものではなく、他の人にもすぐわかるように自分でこのよぅに作りました。誰でもが見やすい形、検索するのは私だとしても「これどうなっているの」と聞かれたときに、わかりやすいようにと、工夫しました。
 日々入力しているので、データはどんどん変わるが、毎週1回は全体を出して、誰でもが見るフォルダーに印刷したペーパーを入れています。
 これらはdBASE IV というMS-DOS上で動くデータベースソフトで、NECのマシンを使用しています。

仕事の中での活用−その2

 〜社内モニターの抽出・管理〜
 商品の試用テストをする場合、社内のモニターの方にサンプルを送って調査する時がありますが、そのモニターの対象者を抽出する仕事をやっている。これは1年に1度、全社員にモニターになってもらえるかどうか確認し、なってもらえる人を対象にしていますが、そこにはいろんなデータがあり、そのデータに基づき、そのデータの組み合わせを、今回はこのような人に調査を依頼するというように抽出していく。それをデータベースを使ってやっているわけです。対象者の住所のシールを出し、リストを出し、この人はこの調査をしているということがわかるようにしているわけです。
 次に、私はパソコン通信を使って、生活者情報をやりとりしています。ニフティのプライベートフォーラムを利用して一般の生活者の方とやりとりしながら、例えば、「こんなものは使ってますか」、「どんなことに困ってますか」ということに対しコメントをもらう。また、年齢や家族構成等のデータはあらかじめわかっている相手なので、これらのデータをやりとりの内容に付け加える。いちいちそのデータを手作業で付け加えるのは大変で、データベースで一括変換できるようにしている。そして、これをイントラネットのホームページに載せようと考えたのです。データベースにいったん落とし、さらにそれをホームページ用のファイルに変換しているということです。
パソコン通信からもらったデータをちょっと整理したテキストデータにして、さらにそこからhtmlファイルに変換するということをデータベースソフトを活用してやっているのです。
 データベースを有効活用するために
 それぞれ使いやすいデータベースソフト、データ活用ソフトを利用すればいい。その中でどんなことができるかを自分自身できちんと理解しておくことが大切。私の場合はたまたまdBASE IV というソフトを使っていますが、必ずしもこれが絶対に良いということではなく、自分に使いやすいソフトを自分なりにどんどん探し出せばいいと思うんです。
 データベースを考えたときには、自分が見つけたいデータがいくつあるかを数えられることが基本。自分が検索したいデータがどこにあるか、簡単にわかるようにしておくのがポイント。
 dBASE IV を使っていて便利だと感じるのは。テキストデータに変換したり、コンマ区切りのcsvファイルに変換したり、データのいろいろな加工ができ、これにより周りの方々とのデータのやりとりが自由にできることです。これは社内で仕事するには非常に重要なことと思います。データの互換性を考えて仕事をするのは大切なことです。
 データベースソフトはあくまでもツールであり、仕事をするための手段であって、使うこと、操ることが仕事ではないことを忘れないでください。
 自分の仕事は何なのかを自分の中で見つめ直して、その中でデータベースソフトを活用する。ソフトなりツールを活用することにより仕事をよりやりやすくする、大切なのはこのことです。
(連続交流会まとめ:新井愛一郎)


郡さんの復職を祝う会を終えて

 当会の会員である郡悟さんは、10月16日、元の会社である日本ユニシス株式会社に復職されました。
 これは、何よりも本人の並々ならぬ努力と、仲間の支援と、会社の理解があったからこそ実現したものです。
 そこで、10月21日、東京両国駅前の「ビアステーション両国」において、「郡さんの職場復帰を祝い、仲間を励ます集い」が行われました。平日夜の大雨の悪天候にも拘わらず、43人の参加がありました。
 当日は、内山幹事の司会進行のもと、和泉会長の開会の挨拶、篠島事務局長の乾杯の挨拶に続き、来賓として出席された日本盲人職能開発センターの光岡法之所長、東京東部法律事務所の大森浩一弁護士、江東区労働組合総連合の田村勲事務局長、日本労働者協同組合連合会の鍛谷宗孝専務理事の各氏から、それぞれお祝いの挨拶をいただきました。
 また、全国視覚障害者雇用促進連絡会の竹下義樹会長からの祝電、福島県安達町の久保賢さんからのメッセージが披露され、大阪からお祝いにかけつけた二見徳雄さんからは、「二見裁判」の近況報告がありました。
 そして、私が、相談を受けて以来の経過報告をした後、参加者一人ひとりから郡さんに対して、心のこもったユーモア溢れた励ましの言葉が送られました。
 しばらく歓談の後、郡さんから、これまでの経過を振り返りつつ、今後への決意と、これまで支援してくれた方々に対する感謝が述べられ、最後に、下堂薗副会長の閉会の言葉で締めくくられました。
 この時、私は2年前の郡さんの発言を思い出していました。
 「障害者として雇用されながら、こういう形で解雇されようとしていることが残念でならない。他の障害者のためにも何としても実績は残したい。そのためにも、復職して仕事を続けたい。今なら、訓練を受ければ、それなりの仕事はできると思う。今後のためにも、リハビリだけでも権利として保障させたい。会社は嫌いではないし、会社には多くの仲間もいる・・・」と。
 今、全国にはどれだけの中途視覚障害者が悩み、退職を余儀なくされているだろうか。
 そういう意味で、郡さんは今、多くの中途視覚障害者の頂点に立ち、全国の仲間を励まし、牽引車となって頑張っていかなければならない立場に立たされました。
 とはいえ、やっと復職できたばかりで、まさにこれからの職場定着が大きな課題だというのに・・・。これは郡さんだけの課題ではなく、実は私たちの多くが現実に抱えていることでもあるのです。また、今なお、「見えないと何もできないのでは?」という偏見が、私たちの復職を現実に阻んでいます。
 今後、タートルの会として何をすべきか、改めて考えさせられた次第です。
(工藤正一)


 去る12月6日の日曜日、東京都港区立芝公園福祉会館にて、「パソコンの公的助成を求める視覚障害者学習交流集会」が開催されました。この催しの呼びかけ人の一人に当会会長が名を連ねております。以下に案内文の趣旨全文を転載しておきます。

「パソコンの公的助成を求める視覚障害者学習交流集会」

 パソコンの登場で、視覚障害者が普通の文字を読み・書くことが可能になり、パソコン通信やインターネットの活用で、欲しい情報を取り入れ活用できるという夢の時代の入口にさしかかっています。
 パソコンを利用することで、学校の先生と子供の連絡帳のやりとりができるようになったり、盲学生の勉学の道が広がったり、あるいは失意のどん底から中途視覚障害者が職場復帰を果たしたというようにあちこちから喜びの声が聞かれるようになりました。
 文字が読めない、あるいはそのままでは読みにくい視覚障害者に、文字を音と点字に、あるいは拡大文字に変えるパソコンと機器とソフトがもっと安く誰でも手に入れられるようになったら、社会参加の道はもっともっと広がりをみせることでしょう。しかし、これらが数十万円もするために、所得の低い視覚障害者には誰でも利用できるというものではありません。これらの購入費の一部でも公費で助成する制度があればと誰もが願っています。しかし現実には国の助成制度はなく、いくつかの自治体がこれらを補う形で独自に助成を行なっている現状です。
 つきましては、視覚障害者が文字の読み書きができるように、パソコンと機器・ソフトの購入に公的助成を実現するため、視覚障害者のパソコン利用の現状と環境を学習し、独自助成事業を実現した各地の運動を交流するため表記集会を開催します。多くの方のご参加を心よりお待ちしております。

 今後、課題はいろいろありますが、署名運動を展開し、公的助成の実現をめざすとのことです。会員の皆様のご協力をお願いします。

◇会合日誌◇


◇お知らせ◇

◎98年度タートル忘年会

◆1998/12/19(土)13:00〜19:00
講演:村上琢磨氏
「中途視覚障害者の歩行について」
  〜交通アクセスを中心に〜
  13:00〜15:00
  於:日本盲人職能開発センター
 忘年交流会(17:00〜19:00)
  於:ビアステーション両国
%<HR>

◎交流会

◆1999/1/23(土)14:00〜17:00
 講演:馬渡藤雄氏
  「今、思う。復職への道のり」
 於:日本盲人職能開発センター

◇編集後記◇

 当会は発足3年半、創刊号は1995年12月15日発行です。機関紙「タートル」も12号を数えました。昨年は、12月9日、「障害者の日」に『中途失明〜それでも朝はくる〜』を出版しました。5千部を刷り、残りは1,000部を切りました。
 経済環境の厳しいなか、リストラの対象にされ退職勧奨を受けている人、一旦解雇そして再雇用の契約社員を余儀なくされる人、果敢なチャレンジ精神と将来の可能性が認められて復職を果たした人、悲喜こもごもの1年も終わろうとしています。理解を求めて一歩ずつ、前へ、前へ、と。(篠島永一)

『タートル』(第12号)1998年12月15日発行
中途視覚障害者の復職を考える会
タートルの会
会 長   和 泉 森 太
〒160-0003 東京都新宿区本塩町 10-3
社会福祉法人 日本盲人職能開発センター 東京ワークショップ内
電話 03-3351-3208 ファックス 03-3351-3189
郵便振替口座:00130ー7ー671967
|URL=http://www.asahi-net.or.jp/~ae3k-tkgc/turtle/index.html

会報 | トップページ