中に入って、白杖を振りながら歩いていると後ろからどんどん入ってくる人たちが、走って私たちを追い抜いて行きます。みんな早く乗り物に乗ろうとして突っ走っていくのです。
この時点からすでに、スリルとサスペンスが待っていたのでした。
白杖は、たたんでシートベルトに挟みいよいよスタートです。正面のスクリーンには戦闘機の操縦席から見た景色が映っているそうなのですが、私には全く解らないので全然怖くないのです。イスだけがガタガタと揺れているだけでした。外に出てから、思わず全然怖くなかったねと、つい言ってしまったのがそもそもの間違いでした。
お父さんが乗り物が全くだめだからと言うからとりあえずこれにしたまでで、その言葉を聞いて心をきなくつきあってもらえるようねと、ニコニコしながらいいやがる、ではありませんか。
私は、遊園地の乗り物が全くだめで、メリーゴーランドで酔っぱらったのは、私ぐらいではないでしょうか?そもそもディズニーランドに来たのも来たくて来たわけではないのです。成り行きというヤツでして、まあその辺は書かずにおきます。
娘が突然次は、スターマウンテンに乗りましょうね、と言うのです。会社の人から事前に「マウンテン」と名の付く物は、乗らない方がいいと聞いていたので私はすぐに「パス」と言いましたが娘と妻が両脇から私の腕を押さえつけて歩き出しました。妻もさっきの一件でどうやら敵になったようです。
私もこうなったら妻の膝にゲロゲロしてやるぞと覚悟を決めました。すると今度は別の女の子が気分の悪い方は、居ませんか?と聞いてきました。私が「すいませんが」と話し出すと、妻がお尻をつねるのですが、妻に向かって大丈夫だからと言い、女の子に聞きました。
すいませんが酔わないためにはどうすればいいのでしょうか是非教えて下さいと聞いて見ました。すると女の子は、画期的な方法を教えてくれたのです。
以上を守って頂ければ大丈夫ですよ。といい「無事に帰還して下さい」と言いながら行ってしまいました。
私だって、かろやかにステップなんか踏んだりして、白杖で傘を振り回すみたいに回して、帰還したいですね、と心で言いながら・・・。
ですが何となく大丈夫のような気がしてきました。
いよいよ私たちの順番がやってきました。娘は、私の前に座り、私は妻と並んで座りました。オット、スワッチャァーいけねえゾー、いよいよ動き出してゆっくりですが急上昇していきました。心臓は、バクバクと音を立てています。奥歯かみしめながら大丈夫、大丈夫と声を出すと、隣の妻が「もしもし、まだ始まっていないんですけど」と冷たい言葉。私は、歯を噛みしめながら「だってもう動き出しているじゃあないの」と、妻を見ながら言いました妻は、おねがい「恥ずかしいからやめてちょうだい」と言うんです。私は、せっかく教わった極意をそう簡単にやめられますかと言って居るうちに、急にものすごいスピードで急降下を始めたのです。ウッァーー。
その時、「好きな歌を思いっきり歌って下さい」を思いだして、気がついたら三波春夫の「ちゃんちきおけさ」を大声で歌っていました。そして、何とか5.6分のスリルを全身で体験して、物の見事にクリアーしたのです。
ですが、コースターが最後に止まった瞬間にアーーコンチキショーー。と思わず叫んでしまいました。その声は、自分としてはそれ程、大きな声を出したつもりでは、なかったのですがシィーーンとした、一瞬をついた形で周りの人たちに聞かれてしまい、周りの人たちが一斉に笑うのです。
妻は、「猛威やだぁーー」と言ってさっさと降りていってしまいました。私は、コースターから出ようとしたのですが、ずうっと腰を浮かせて踏んばっていたので膝が笑ってしまい、思うように歩けません。その時、係のおねえちゃまが私に手を貸してくれたのですが、転びそうになって女の子の肩を抱いてしまいました。これは、神に誓って決してわざとではなくて、偶然なんです。それなのに、妻は、怒り心頭と来たもんだから、サァー大変。今度は、サスペンスを全身で味わうような、気がします。アーーコワイーー。
娘が、ベンチも空いていないし、頑張ってもう一つ乗っちゃ王よそしたらお昼にするからね、お願いと言われればしかたありません。私は、だけどマウンテンと名の付く物は、二度と乗らないからそれだけは、頼むからねと言い、娘に引かれながらジャングルクルーズと言う乗り物に乗る列に並ばされました。ここでは、1時間待ちでした。待っている間に妻が、リックから水筒を出してコーヒーを飲ませてくれました。やっぱり持つべき物は女房ですね。
さあ、やっと待ちに待った順番がやってきました。妻に手を貸してもらい船に乗り込むと私が一番最後だったので、船に乗る階段が今度は、イスに変身、イスが出来ましたので、座って下さいと言われました。すると、けたたましい声で、ジャングルクルーズへようこそおいで下さりました。とスピーカーが壊れてしまうのでは、無いかと言うくらいにガンガン声を出しているのです。私は、てっきり録音テープだと思いこんで居ました。そして滝の脇を通りますと言うので手を出すと、杖を持った方、手や足を出さないで下さいね。と言うので初めてテープではなく、ガイドがちゃんと居るんだと解りました。それにしても客の反応を完全に無視して、一人で、受けもしない駄洒落を、大声でしゃべり、まくって、むしろそっちの方が気の毒になってしまい、降りるときに、拍手をして、お疲れさま、頑張ってね、とその女のガイドさんに言ってやりました。時間を見ると11時45分でした。
さあ、これで休めるし食事もとれると思ったのですが、またまた人が増えていて、レストランなんて、はいれやしません、ベンチだって空いてない。オイオイ、ソリャーネェーベェヨ、仕方がないので、そこに座りましょうよと、妻が連れていったのは、植木の縁でした。娘にはつりをやっていたときの、折りたたみのイスをリックから出して座らせて、妻は大きめのハンカチをお尻の舌にしいて座りました、私の分はと聞くとお父さんは男だからダイジョウブよと、訳の分からないせりふが帰ってきました。ゲロゲロピーー、
すると娘が、私のイスに腰掛けてもいいよと立ち上がると妻があなたは、いいから座ってらっしゃいといい、お父さんだってハンカチを敷いて座りなさいよ、と叱られてしまいました。ですが何故かハンカチがポケットに入っていないゲロゲロピーー、無いなら仕方ないか?とそのまま座ったが後で解ったのですがさっきコーヒーを飲むときに、熱いからと言って自分のハンカチを出して、持ってその後私のハンカチを妻がポケットにしまいこみ、私のハンカチで座っていたのです。まさにオバタリアンそのものです。
ディズニーランドは、食べ物、飲み物は、いっさい持ち込み禁止なんです。持ち込んだ物を食べるときは、一反そとに出なければ成らないのですが、そこは、オバタリアンパワーで、さあ二人とも食べましょうのかけ声で、コンビニで、買ったサンドイッチとおにぎりを食べ始めました。妻が言うには、ディズニーランドの売店は、一種類しか売ってくれないのねと言うのです。飲み物を買うときは、飲み物を売っている店、ポップコーンを買うときは、ポップコーンの店、チキンを買うときは、チキンの店、と言う具合にいちいち並ばなければ成らないそうで。なんと不便な事でしょうね、全く若い日本人は、並ぶのが好きなのねェーー、と感心しきり。私は、好きで並んでいる訳ではネエベェーーと言いたかったのですが、ここは、黙って食べているのが賢明と思いパクパクとおにぎりを食べました。
娘は、次に何に乗ろうかとパンフレットにくぎずけで、私は娘が次になんてせりふを言い出すのかと、戦々恐々の思いでした。食事が終わると妻は、背中に背負っていたリックを私に渡すと、お父さんはここで荷物のばんをしていて下さい。私たちだけで乗り物にのってきますのでと言うのです。私は残念だけどお母様がそうおっしゃるなら、そのようにいたしましょうと言い、荷物のばんをする事になったのです「シメ、シメ」やっぱり、持つべき物は妻ですね。ですが、これが新たな災難の始まりだったのです。
すると、私の肩をポンと叩き、ラジオを聴いていたの?と二人の声、私はいくつ乗って、来たの?と聞くと待ち時間が1時間10分だったので一つだけですと言い、お父さんは、ラジオで何かおもしろいのやっているの?と聞かれ、「マラソンを聞いていたよ」と言うと好きなマラソンが聞けて良かったね、ソレジャァー二つ三つ、続けて乗ってくるからね、とポップコーンを私の膝に置き、さっさと行ってしまいました。 これじゃぁーまるで親鳥を巣の中で待つ雛鳥のようで、やっと来たと思ったら、直ぐに行ってしまい、ウェーー、チョット待てよ二つ三つ、乗ってくるからって、いったい今度は、何時間後に戻って来るんだよォーー。
ポップコーンを食べながらマラソンを聞いていると、隣に座った男性がカンを明ける「プシュッ」と言う音とともに、なんとビールの香りがしてきました。アッこんちきショウ、ウメェー事、ヤリャァーがったなァーー。ディズニーランドは、アルコールは一切持ち込み禁止なんです。なんだ、これじゃあ何でもありかよって感じでしたが、どっからともなく、係りの人が現れて来て、すいませんがアルコールは絶対に禁止なんですので、退園して下さい。と言われ、係りの人に連れられて行ってしまいました。「ザマァーミロ」やっぱり、規則は、守らニャァーーならんぞ。
私はと言うと、ラジオを聴きながらいつの間にかポップコーンを食べ尽くして、居ました。その為に、喉が乾いてきました。あーー喉が乾いたヨーー、と小声でつぶやくと、なんと隣に座っていた女の子が、水のボトルをくれたのです。さっき買ったのですが、寒くて、飲めないから、これで良ければどうぞ飲んで下さい。と譲ってくれました。有り難いことです。ですがそれを飲んだら今度は、トイレに行きたくなってしまい。一人でこの荷物を持ってトイレを探して、帰ってくるのは大変だし、サァーーどうしよう。我慢するしかないかなァーー、アァーー、早く帰って来い、来い、おふたりさん。なんて、言っている場合じゃぁーなくて、まじで、チビリソーー。なんです、
アーーアッ、バッカミタイ。とりあえずベンチに座ったのですが、この場所では、妻たちとはぐれてしまうさあどうしよう、どこをどうやって歩いて来たか解りません。まさか私が、さっき座っていた場所はどこでしょう?と聞くやつなんかいませんんし、そのときです、妻がどうしたのこんなところでと声をかけてきたのです。今思えば、よく遭えたなァーーと思います。どうやら、自分がトイレに行きたくなって、私の事が気になったようです。以心伝心というやつでしょうか?早速トイレに連れていってもらいました。「たすかったホッ」安堵、安堵。やっぱり、持つべき物は妻ですね。
ですが、子どもが心配だから行くからねと言って、それから2時間は帰って来ませんでした。アーア普段ならこたつに入ってビールや酒など飲みながら、福岡国際マラソンを聴いていられたのに、ついてないヨーー、
二人が戻ったのは4時頃でした。船に乗って滝から落ちる、スプラッシュマウンテンという乗り物に乗ったら服が濡れちゃったァーー、と二人して、はしゃぎながら楽しそうに、話すんです。しかも船の一番前に乗り滝から落ちる瞬間にガッツポーズをとって、写真に撮ってもらったんだそうで、税込みで千円チョットだったけど、記念になるからねとにこにこしながら、話しているのを聴いているとやっぱり来て良かったのかな?と感じました。
次は、シンデレラ城に行くことになりましたがものすごい人なんです。混雑も今がピークと言う感じです。
アァーー、城の中に入りたかったなァーー。会社の女の子がこんな事を言っていました。シンデレラ城は、ミステリーツアーと言う企画があって、城の中を見せてくれるのですがガイドの人が、まるでオペラかミュージカルのように振る舞い、みんなを連れて歩き、最後に悪いやつを退治してください。とツアーの人に頼むんだーそうですが、その時に、手を上げる人が居なければ、ガイドの人が誰かを指名するのですが、選ばれた人は、剣を渡されて、その剣を壁の穴に刺すだけなんです、が、ガイドの人は、大げさに、これで命が助かったと言いながら、その人にメダルを首に掛けてくれるんだそうです。
最近では、このメダルにブレミヤが付いているんだそうで、会社の女の子は、月に三回も行ってミステリーツアーに参加して14回も入ったのにメダルがもらえないと、悔しがっていました。ハイ、ハーイと手を上げても別の人に指名されだめだった。とか、年配の人は、自分で手を上げるのが気まずいので、わざとガイドにちかずいて指名されるのを待っているんだそうです。また自分の子供の手を取って無理やりに、子供に手を上げさせるんだそうです。私だったら白杖の両端を持ってばんざいしながらハイ、ハーイと大きな声で手を上げるつもりでいたのにナァーー。メダルの値段はいくらだか知りませんが、家族でまたディズニーランドに来れる位は値がつくそうです。
夜の7時30分頃には、花火があがるそうですが、私も娘ももお疲れてしまい午後の5時30分に、ディズニーランドを出ました。ですがその時間でも続々と入場券を持って入ってくるのです。全く何と言う所でしょう、ここは。それから今回初めて京葉線に乗ったのですが東京駅の山手線から京葉線のホームまで、なぜなぜあんなに長いのでしょうか?私の足で20分はかかります。東京駅は本当に広いなァーー、と感心しきり上野駅から始発の電車に乗り座ったところ。妻がホームでビールと暖かい酒を買ってきてくれました。やっぱり、持つべきものは妻ですね。ですが娘がおかあさんつまみが無いよ、と言うと、このくらいお父さんならイッキだからいいのよ。と言うんです。私は、ホローのつもりで、娘に大丈夫だよと言うと、妻はほっぺたでもつまみながら飲むのもいいよね。と言いやがる。ましてや娘もその話に納得してしまう。この母親にして、この子というやつでしょうね。結局、持つべきものは、「ない」。自分のことは自分でやるということですね。
おわり。
長々と書き綴ってしまいましたが、これで「ディズニーランド体験記」をおわります。