第1回スクリーンリーダー・拡大機能利用のWindowsPC環境実態調査結果(その2)

スクリーンリーダーや拡大機能を使用する場合、通常より高いスペックのPCが必要と言われますが、実際にどのくらいのスペックのPCが使用されているのか、またその快適度について調査しました。回答対象のPCは、スクリーンリーダーや拡大機能をインストールしているもので、仕事用・プライベート用のいずれでも回答可としました。第1回PCスペック調査結果(その1)に続き、今回はスクリーンリーダー・拡大機能の使用状況と就労先との関係について公開します。

調査期間:2021年11月1日~2021年12月28日

実施方法:Webフォーム

総回答数:117件

1.アンケート結果(視覚支援機能の利用状況について)

  • スクリーンリーダーの利用の多さはPC-Talker、NVDA、ナレーター、JAWSの順になっていますが、他のスクリーンリーダーも併用するケースが多くなっています。ナレーターは、ほぼサブでの使用となっています。
  • オープンソースのNVDAは企業では使用しにくいと言われていますが、実際は公務員を含むさまざまな業種で利用されています。

以下、アンケート結果の内容です。

1-1.使用している視覚支援機能(複数選択)

使用している視覚支援機能を複数選択してもらいました 。総回答数117件のうちPC-Talkerが67.5%、NVDAが64.1%、ナレーターが37.6%、JAWSが22.2%と、PC-TalkerとNVDAの利用が高く、他で行われた調査と同様の傾向を示しています。

使用している視覚支援機能の横棒グラフ

1-2.視覚支援機能の用途別の割合

JAWSは仕事用が80.8%を占めています。一方、PC-Talker、NVDA、ナレーターはプライベートと仕事の両方で使用されていますが、PC-Talkerと比べ、NVDAとナレーターが若干仕事での利用割合が多くなっています。
Windows拡大鏡は仕事での利用率が61.5%と高く、ZoomTextは100%仕事での利用となっています。

視覚支援機能の用途別の割合のグラフ

1-3.使用している視覚支援機能の組み合わせ

今回の回答では、全体としてはスクリーンリーダーのみが74.4%、スクリーンリーダーと拡大鏡併用が22.2%、拡大機能のみが3.4%で、スクリーンリーダーのみの場合はプライベートと仕事がだいたい同数だったのに対し、拡大機能は仕事での使用に若干多く回答がありました。

使用している視覚支援機能の組み合わせの横棒積み上げグラフ

1-4.使用しているスクリーンリーダーの数

JAWSのみが3.5%、NVDAのみが8.8%、PC-Talkerのみが23.0%、ナレーターのみが0.9%、スクリーンリーダーを2種類使用が31.9%、3種類使用が29.2%、4種類使用が2.7%でした。 PC-Talkerのみ使用している場合は、プライベート用に多く、スクリーンリーダーを2種類使用しているのはプライベートと仕事用は同数で、3種類、4種類と使用しているのは仕事用が多くなっています。

使用しているスクリーンリーダーの数の横棒積み上げグラフ

1-5.NVDAと業種の組み合わせ

仕事用のPCの場合、就労先の業種を、「日本標準産業分類」について近いものを選択してもらったので、NVDAと業種をクロスして集計しました。
医療,福祉が25.6%、情報通信業が20.9%、製造業が14.0%、教育学習支援業が11.6%、学術研究,専門・技術サービス業が7.0%、公務(他に分類されるものを除く)が7.0%、サービス業(他に分類されないもの)が4.7%、分類不能の産業が4.7%、卸売業・小売業が2.3%、複合サービス事業(郵便局、協同組合)が2.3%でした。
NVDAはオープンソースのスクリーンリーダーのため、企業では導入しづらいという声がありますが、公務員を含む複数の業種で使用されています。

NVDAと業種の組み合わせの横棒グラフ

2.就労環境について

仕事用のPCの場合、就労に関する情報を尋ねました。

2-1.会社・組織の区分

民間が69.2%と一番多く、官公庁18.5%、自営業7.7%、その他4.6%の順でした。

会社・組織の円グラフ

2-2.主な業務内容

事務系が46.2%、技術系が18.5%、医療系が9.2%、教育・研究が6.2%、PC訓練・支援が4.6%、その他が12.3%、不明が3.1%でした。

主な業務内容の円グラフ

2-3.業種

医療,福祉が26.2%、情報通信業が20.0%、製造業が15.4%、教育学習支援業が9.2%、公務(他に分類されるものを除く)が9.2%、分類不能の産業が4.6%、学術研究,専門・技術サービス業が4.6%、卸売業・小売業が3.1%、サービス業(他に分類されないもの)が3.1%、複合サービス事業(郵便局、協同組合)が1.5%、電気・ガス・熱供給・水道業が1.5%、建設業が1.5%でした。

業種の横棒グラフ

3.まとめ

昨今では、さまざまなアプリケーションを使用する必要が出てきたため、それぞれのアプリケーションの読み上げに強いスクリーンリーダーを使い分けることが増えてきているようです。特に仕事では必要に迫られて、複数のスクリーンリーダーを使わざるを得なくなっていることも考えられます。
また、今回の調査は視覚支援機能を使用しているPCのスペックを調べることが主目的でしたが、このアンケート結果から、視覚障害があっても、さまざまな業種で働いていることがご理解いただけるかと思います。


次回は、アンケートに寄せられた意見を公開します。

第1回スクリーンリーダー・拡大機能利用のWindowsPC環境実態調査結果(その1)

第1回スクリーンリーダー・拡大機能利用のWindowsPC環境実態調査結果(その3)