音声PC訓練の種類と施設の選び方

PCとキーボードの写真

スクリーンリーダーを使いこなすには、それなりの訓練が必要になります。PCの画面を見ないでマウスを使わず、すべてを音声で聴きながらキーボードのみで操作することになります。それを効率よく行うには、キーボードを見ないで必要なキーを叩けるタッチタイピング技術の修得が必要になります。そして、従来マウスでやっていたすべての操作をキーボードのみで操作するには、どのキーと、どのキーを押せば良いのか(ショートカットキー)等のスキルをマスターしなければなりません。この操作はスクリーンリーダーによって多少異なります。本記事は、これらを修得するための訓練の種類・施設について説明しています。

【解説】音声PC:通常のPCにスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)をインストールする等により、音声での操作を可能としたPC。

訓練の2つの系統

音声PCの訓練には、主として2つの系統があります。

1つは、福祉系で、障害者総合支援法に基づく訓練です。
原則1割の自己負担(上限あり)が発生します。申し込み窓口はお住まいの市区町村の福祉課、または福祉事務所です。福祉系の訓練内容は、生活の自立をめざす機能訓練(自立訓練)と、就労をめざす就労移行支援訓練(職業訓練)の2つに大別されます。

もう1つは、労働系で、職業能力開発促進法に基づく訓練です。
訓練費用は無料です。コースによっては手当が支給される訓練もあります。申し込み窓口は、ハローワークが主で、障害者職業能力開発校から委託を受けた団体の場合もあります。労働系の訓練内容は、仕事で使えることをめざす職業訓練が主となります。

この2つの系統のほかに、都道府県等の自治体や団体が独自に行っている訓練もあります。
多くの場合、訓練内容は、自立訓練に近い基本的な内容で、費用は無料、申し込み窓口は、直接その訓練施設、または団体となっていることが多いようです。

働きながら受けられる訓練

1.労働系「在職者訓練」

現在就労中の人にお勧めしたいのが、労働系の「在職者訓練」です。
文字通り、働きながら現在の仕事を続けるために必要なスキルに応じて、オーダーメードのカリキュラムを編成して受講する職業訓練です。

訓練施設は、国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県)、国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(岡山県)、視覚障害者就労生涯学習支援センター(東京都)、NPO法人SPAN(東京都)、NPO法人トライアングル西千葉(千葉県)、名古屋盲人情報文化センター(愛知県)、日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター(大阪府)等があります。

2.福祉系「機能訓練(自立訓練)」

福祉系の「機能訓練(自立訓練)」も働きながら受けられますが、基本的には、歩行訓練や音声PCの基本操作等の生活訓練となります。音声PCを仕事で使えるようになるには、さらにどこかで職業訓練を受ける必要が出てきます。ただし、職業訓練施設が少ないこともあり、自立訓練施設でも、受講生の事情に応じて音声PCのスキル習得の訓練を高度なレベルで実施してくれるところもあるようです。

また、現状では雇用保険の被保険者ではない公務員は、
「1.」の在職者訓練は受けられないとされており、
「2.」の 機能訓練(自立訓練) を受けて、音声PC訓練のウェイトを高めてもらう方法が考えられます。

自立訓練の施設は、国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県)、その支局である函館、神戸、福岡の各視力障害センター、埼玉県総合リハビリテーションセンター(埼玉県)、東京視覚障害者生活支援センター(東京都)、日本点字図書館(東京都)、七沢自立支援ホーム(神奈川県)、名古屋市総合リハビリテーションセンター(愛知県)、日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター(大阪府)等があります。

休職者または就活中の人が受けられる訓練

上で述べた在職者訓練は、休職中の人でも受けられます。また、機能訓練(自立訓練)は、休職中や就活中の人でも受けられます。ここでは、休職中または就活中でないと受けられない訓練について取り上げます。

1.福祉系の就労移行支援訓練(職業訓練)

この訓練は、受給者証を発行する自治体によって多少の差はあるようですが、原則、現在離職しているか休職者が受講対象とされています。

訓練施設には、日本視覚障害者職能開発センター(東京都)、東京視覚障害者生活支援センター(東京都)、名古屋市総合リハビリテーションセンター(愛知県)、日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター(大阪府)等があります。訓練期間や開始時期等は本人の希望も勘案されますが、各訓練施設によって異なっていますので直接問い合わせてください。

2.労働系の3か月~1年以上の職業訓練

短期(3か月)の講座は、例えば関東近辺では、視覚障害者就労生涯学習支援センター(東京都)、トライアングル西千葉(千葉県)等が、管轄の障害者職業能力開発校の委託を受けて行っています。

1年以上の長期コースは、国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県)、国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(岡山県)、日本視覚障害者職能開発センター(東京都)、日本ライトハウス(大阪府)等をはじめ、障害者職業能力開発校でも行っているところがあります。(宮城県、神奈川県、大阪府、広島県、福岡県の職業能力開発校が視覚障害者に対応しています。)

長期のコースについては、訓練手当が支給されることが多く、定員より応募人員が多いこともあり、学力試験や面接試験に合格することが求められています。

※これまで述べた各訓練施設の詳細については、タートルホームページの関連リンクでご確認ください。
タートルホームページの関連リンク をみる

身近な訓練施設の活用

近年では、各都道府県あるいは市区町村独自、または、その地域の団体が、歩行訓練や音声PCの基本を教えてくれるケースも増えています。
お住まいの市区町村の福祉課、または福祉事務所、社会福祉協議会等に相談してみることをお勧めします。

自分に合った訓練施設を選ぶ

訓練施設の選定にあたっては、例えば、自分が受けたい訓練の内容は何か、休職をしたくないのか、しても良いのか、その場合の期間はどれくらいなのか、職場に合ったスクリーンリーダーは何か、というような視点から、ある程度の目安を付けて、自分に合いそうな施設をリストアップしてみましょう。
その上で、施設の相談員から説明を受けたり、訓練風景等を見学したりして、その訓練施設の雰囲気や特徴を自分の肌で感じてみて選ぶと良いでしょう。
もっとも、お住まいの地域によっては訓練施設がほとんどなく、近くの施設を選ばざるを得ないという事情もあります。その場合には、その訓練施設の相談員とよく相談し、自分の希望ができる限り叶えられるよう、訓練内容等を詰めると良いでしょう。