(以下本文)

1998年10月9日第三種郵便物認可(毎月3回8の日発行)2023年3月8日発行 SSKU 通巻第7553号

SSKU
特定非営利活動法人 タートル 情報誌

情報誌タートル 第62号

表紙の説明

カメのイラストがあります。

目次

巻頭言
『工夫をして自由になる~時間の喪失を解消』
理事 町田 真紀
認定NPO法人タートル2022年11月交流会
『タートルICTサポートプロジェクトの立ち上げの経緯とこれから』
理事 伊藤 裕美
認定NPO法人タートル2022年12月女子会
『初の「夜」の女子会華やかに☆~たくさん笑って、免疫力アップ!~』
理事 松尾・石原・芹田
職場で頑張っています!
『フリーの専門職という働き方に至るまで』
会員 高尾 朋子氏
お知らせコーナー
編集後記

巻頭言

『工夫をして自由になる~時間の喪失を解消』

理事 町田  真紀(まちだ まき)

新緑の香り漂い、季節を愛でる余裕が少しずつ出てきた今日この頃です。
皆様のご多幸を祈りながら、このメッセージを書いています。
タートルとの出会いは、8年前、仕事で悩み、相談会へ参加、教示や支援を受け、友人が増え、孤独ではないと実感をした年月でした。人とのご縁の大切さや、より一層のコミュニケーションを身につけることを意識しています。現在は、恩送りの思いで、事務局や相談会のお手伝いをしております。この情報誌の発送作業もしています。
さて、皆さんは、時間を有効に使っていらっしゃいますか? 時間の喪失を解消することにより、効率よく仕事が進み、プライベートの時間が増えると思います。
私は、いつもその場限り、後回しにすることが多く、また同じ事象を繰り返し、もったいない時間の使い方をしていました。いくら、努力をしても解決しないこともあります。簡単な工夫をすれば、時間の喪失が解消されることもあるので、今はいろいろな工夫を考えています。
白杖を持つか否かで悩んでいる方も多いと思いますが、白杖をついていると人通りのあるところでは、道が分からずウロウロしていると、たいてい声をかけてもらえます。そんな時は、親切心を受けましょう。急いでいるときなど、目的地まで早くいけます。是非、白杖を持つことをお勧めします。
トイレの案内もしてもらえるので、混んでいるときは、他の方のことも考え、サポートしてもらいましょう。
実践している工夫を紹介します。

1.白杖の先端にライトをつける。
杖に巻き付けて使用できるライトを百均で購入。夜道に目立ち、白線がよく見えます。全盲の方も周りが気づいてくれるので、危険回避にもなります。

2.白杖の持ち手にあるひもにクリップをつけ、衣服にとめる。
両手があくので、電車でイヤホンをさして携帯使用やつり革につかまれる。トイレで白杖を倒すことがない。男性は特に便利。

3.眼鏡と同様、白杖は汚れているので、帰宅したら拭きましょう。
いつも綺麗にしていれば、人にあたっても汚れることなく、自身も気持ちよく使用できます。

4.白杖をついてもカッコいい視覚障害者になりましょう。
立っているとき、背筋を伸ばして猫背にならないように、また寝る前に体を伸ばすことを繰り返すと体形が変わると、ヨガ講師に教わりました。

少しの工夫と思いがあれば、時間を有効に使えること、気持ちよく過ごせることを考えていただけたらと思います。
そして、仕事で悩んでいる方、考えても解決できないような事案は、是非ご相談ください。寝る前に考えつくしても、朝は、解決していないどころか、睡眠不足で一日が辛いでしょう。一人で悩むより、複数で知恵を出し合うことで、前進することもあり、悩む時間を少なくできます。
自分から孤独を選ばないでくださいね。一人ではないので、みんなで考えていきましょう。視覚障害があっても、できることを無理なくやっていくことが、今の私のスタンスです。
これからもタートルの仲間として、よろしくお願いいたします。

認定NPO法人タートル2022年11月交流会

『タートルICTサポートプロジェクトの立ち上げの経緯とこれから』

講師:伊藤 裕美(いとうひろみ)
タートル理事/タートルICTサポートプロジェクトリーダー

先ほどご紹介にあずかりました伊藤 裕美です。「タートルICTサポートプロジェクトの立ち上げの経緯とこれから」ということで、今から話をさせていただきます。これまで「タートルICTサポートプロジェクトとは何か」「これからどうしたいか」という話はよくさせてもらいました。しかし、「なぜこれを立ち上げたのか」という話はあまりしたことがなく、現在のスタッフに伝えたことがありません。そこで、この機会に経緯についての話をしたいと思います。
先ほど紹介いただきましたが、まずは「病歴」になります。私の病気は緑内障と錐体ジストロフィーで、今は身体障害者手帳を持っている状況です。病気が発症する前の小学校4年生くらいまでは、両目が1.5~2.0の非常に良い状態でした。
そして、小学校5年の視力検査時に右目は2.0でしたが、なぜか左目が0.2に下がっていて、「どうしたのだろう」ということでした。その時は「寝転がって本を読んでいたせいだよ」と言われ、「まぁ、そういうものかな」と自分でも思いました。(笑)
親も自営業で忙しかったですし、右目が見えていたので、あまり不自由を感じることなくそのまま過ごしていました。確か中学生頃になって眼科に行き、左目だけコンタクトを使い、右目は裸眼という生活をしばらく続けることになりました。
しかし、高校生になって高校近くの眼科に転院すると、緑内障が見つかりました。その時にはもうかなり進んでいる状態でした。最終的に「右目の眼圧がかなり高い」ということで、神奈川県の北里大学病院で手術をしました。その時には、右目は中心のごくわずかな部分の視野が残っていて、その周りが欠けていました。さらにその外側は残っているため、真ん中が抜けつつも、ど真ん中だけは視野が残っているのが右目の状態でした。
また、左目は小学校5年の時から視力が落ちていたので、弱視ということであまり視力が出ない状態でした。でも、視野障害の人は皆さんそうだと思いますが、ど真ん中が見えれば意外と生活ができてしまうため、普通に大学進学や就職をしました。ですから、6年前までは普通の方と同じように過ごしていました。
ただ、視野欠損があるため、どうしても見落としはありました。車がバックしていることに気づかず自転車でひっくり返ってしまったり、テーブルの物を倒してしまったりなどはありましたが、大事には至らずに過ごしていたので、このままの状態で行けるかなと思っていました。
しかし、6年ぐらい前になって、急に字が読みづらくなりました。もともと本を読むことが好きだったというか、本を読むことぐらいしか趣味がなかったのですが、縦書きの小説がどうも上手く読めなくなってきて、「何だかおかしい」と感じました。緑内障でずっと通院はしていたのですが、担当の先生にも原因がよくわかりませんでした。それで、大きな病院に転院して調べると、錐体ジストロフィーもあることがわかりました。その後は急激に視力が低下していき、手帳取得に至るということになりました。
病気の発症時期は皆さんいろいろだと思いますが、私の場合は高校生でしたので、まさにこれからの進学や将来を考えるという時期でした。実は、私の母方に全盲の叔母が一人いて、日本脳炎の高熱で全盲になったと聞いていたため、「もしかしたら、自分もいずれ見えなくなるかもしれない」という恐怖が高校生の時から常にありました。
そのため、就職もして結婚もしたのですが、普通の生活を送りつつも、結構屈折した気持ちというのでしょうか。何をしていても、「最後はダメになるかもしれない」という気持ちでずっと過ごすような状況でした。
ただ、実際には6年前に急に悪くなり人の顔もよくわからなくなると、逆に「いよいよか」というのでしょうか。病院の先生からは「全盲にはならないだろう」と言われていますが、やはり日常生活に支障が出る程度には悪化をしてきました。私は若い頃からずっと屈折した気持ちを抱えていましたが、逆に「まあ、仕方がないな」という感じでした。年齢的にも今は50代ですが、「ここまで来たら仕方ないかな」というあきらめの気持ちも交じりつつ、ただ「仕事が続けられなくなったらどうしよう」という悩みが結構大きくなりました。
ここからは「タートルにたどり着くまで」ということで、6年前から現在に至るまでの話になります。最初は手帳をまだ取得できない状態でした。文字は非常に読みづらいのですが、まだ手帳を取得する前の状態でしたので、なかなか情報を得られない時期がありました。
実際に大学病院にも行っていて、ロービジョン外来もあったので、「まだ手帳は取得していませんが、受診させてもらえませんか」とお願いをして受診したこともありました。そのロービジョン外来では、文字を何倍かにする「拡大レンズ」の紹介と、拡大読書器を紹介してもらいましたが、それで仕事ができるわけではありませんでした。もともとプログラマーとしてパソコンの仕事をしていましたが、それでパソコンの仕事ができるわけでもなく、解決にはならないために非常に困った状態でいました。
その後もネットでいろいろと検索をしましたし、仕事柄いろいろなものを検索するのは得意だと思っていたのですが、視覚障害についてはなかなか良い情報が得られなかったというのか、そもそも「ロービジョン」という言葉を何年間も知りませんでした。何年もの間、眼科にかかっていたにもかかわらず、本当に自分が視覚障害になるまで「ロービジョン」という言葉さえ知らなかったという状況でした。
視覚障害はありましたが、スクリーンリーダーなどは思いもよらないし、拡大機能ということにも全く気づかず、何をキーワードに調べたら良いかわからないので、情報にはたどりつけないような状態が何か月間か続きました。
それで、精神的にもかなり落ち込んでしまい、「2週間ぐらいお休みさせてください」と会社にお願いをしました。お休みをもらってずっと布団をひっかぶって寝ていたのですが、その時に偶然YouTubeで海外の全盲ユーザーを見つけました。もしかすると開発者だったのかもしれませんが、その人がVoiceOverでiPhoneを操作している動画に行きあたり、「えっ、こんなことができるの」と少し元気になりました。(笑)
その後、「ロービジョンの物書き」という人のブログを発見し、その人の「良く見えないながらも仕事をしている」という記事を読んで、「もしかして仕事ができるかな」と気づいたのです。その辺りが自分の中での転機となりました。そうしてスクリーンリーダーの存在を知ったという形になります。
そして、「スクリーンリーダーは、どこに行けば覚えられるのだろう」と引き続き調べていると、「情報ボランティア 障害者支援の会」というサイトを見つけました。どこかと思い調べると、実は自宅から結構近い隣の市にあったので訪問してみました。その時、私はまだ手帳を持っていなかったですし、その団体では毎年一回スクリーンリーダー(PC-Talker)の講習をされていたのですが、その講習はすでに終了していました。
それで、「NVDAをやってみたらどうですか」と勧められました。確かその場でもダウンロードしたと思いますが、NVDAのリンクを教えていただき、その日はそういう形で帰りました。そこからNVDAに出会ったという流れになります。その場所が日野市の「光の家」でした。そこでスクリーンリーダーのNVDAを知るというところまで来たのです。
ただ、スクリーンリーダーを知ってすぐに取りかかったかというと、やはりタイムラグがありました。気持ちの上で落ち込んでいることもあるし、よく見えなくなっていく状態の中、初めてのことを一人で行うのは結構つらいものがありました。
でも、本当に見えなくなってきて、会社の上司から「メールでも結構誤字があります」と言われ、すごくショックを受けました。自分では気づきませんでしたが、全職員へのメールも誤字で送っていたようでした。そういうこともあって一度は退職届を出したのですが、「自分でできることを考えなさい」と言われました。そこで、改めて「スクリーンリーダーをやってみようか」と思ったわけです。
この辺の時間的な感覚については、自分でもはっきり覚えていない部分もあるのですが、多分そんな流れだったと思います。「スクリーンリーダーのNVDAをやってみようかな」と思い立ったのは、それを知ってから数か月後になりますし、徐々に始めたということです。ここまで、NVDAを独学で始めたという流れでした。
NVDAに関してはネットに情報があったり、ユーザーグループのメーリングリストがあったりもしたので、情報を調べながら少しずつ勉強をしていきました。さらに、視覚障害についても「何か情報はないか」と調べていきました。そして、「タートル」という会があることに、ようやく気づいたのです。「タートルはどこだろう」と調べると、何と職場のすぐそばにあって、「私は今まで一体何をやっていたのだろう」と思ったというか、愕然としたというのがそこまでの状況になります。
本当に「仕事が続けられるのだろうか」と悩んで、いろいろ情報を探していたのに、その時は全くタートルには行きつかず、本当に「灯台下暗し」というのでしょうか。足元というのか、すぐそばにそういう団体があったことを、最後の方になってようやく知ったわけです。そこからタートルに入会させていただき、今に至るという形になっています。
では、「現在の仕事の状況」ということですが、基本的にはスクリーンリーダーが6割、Windows拡大鏡が4割という感じです。仕事の内容によって割合は変わりますが、やはり文字を読むことが難しいため、文字部分はスクリーンリーダーで読みつつも、見える部分については拡大鏡で場所の確認等をしています。文字に関しては数文字というのでしょうか、すぐ横の文字が見えなかったりすることもありますが、想像がつく文章は何となく読めるので、そういう時には目も使いながら仕事をしている状況です。
今、画面にはパソコンとiPadと会社のスマホの写真が映っています。私が今使っているものはこれだけという感じでしょうか。パナソニック14インチのノートパソコンではWindows拡大鏡を使っています。写真の画面は白黒反転に見えますが、使っているアプリがダークモード対応で、黒地に白い文字が対応するタイプになっています。そのため、白黒反転に見えますが、普段は白黒反転をせずに普通の状態で使っています。
この辺は人によって違うといいますか、同じロービジョンでも色がまぶしく見える方もいるし、色が正しく見えないため別設定をされている方もいます。私の場合、色は比較的にわかるので、むしろ色情報を頼りに操作をしている部分があります。
また、このノートパソコンですが、アマゾンで買ったノートパソコン用スタンドに載せて使っています。これはノートパソコンに傾斜をつけることができ、後ろを少し高くすることによって、画面をより近くに見えるようにしています。
さらに、その下に台がありますが、これは単なるティッシュの箱です。ティッシュの箱を2つ並べて、その上にノートパソコンスタンドを載せ、さらにノートパソコンを載せる形にしています。かさ上げをすることで、画面がより近く見えるような感じで仕事をしています。
姿勢としては、本当に怒られてしまいそうなひどい姿勢になりますが、やはり近づいて、画面を見ながら作業したくなる時がどうしてもあります。自分でも、「そこは改善しなければ」と思いつつも、そのような形でディスプレイに近づくようにしています。台にしているティッシュの箱ですが、他のティッシュが空けば使いまわすようにして、お金がかからない形にしています。
次にiPadですが、これは会社支給のものでスタンドに載せて使っています。このiPadでは主にPDFを読んだりしています。またTeamsやzoomのウェブ会議がよくあるため、その時はiPadに会議を映し、パソコン側のクリーンリーダーを使ってチャットを聞く感じで使い分けています。
時には拡大して紙の文章を読んだりしますが、最近ではリモート中心で自宅作業が多いこともあって、基本的には紙の資料が無くなりました。会社自体も電子データというのか、ファイルでデータをくれるようになったので、紙を読む機会はほとんど無くなっています。
あとはスマホということですが、アンドロイドを使っています。このアンドロイドですが、私にとっては使いにくくて本当はiPhoneが欲しいところです。ただ、それほど電話も来ないので「いいかな」という感じです。こんな形で会社から支給されたものをそのまま使って仕事をしています。
次は、先ほどお話をした「ノートパソコンスタンド」ですが、これはアマゾンで2,000円ほどでした。例えば、アマゾンで「ノートパソコンスタンド肩こり防止」として調べると、一般品には結構いろいろな種類があります。ノートパソコンを使っていて「もう少し画面に近づいて見たい」という人がいれば、こういったものを使われると良いかもしれません。
次に「iPadスタンド」ですが、これは本当に普通のものです。特に移動用のコロコロが付いたものではなくて、単に「引っかけて置く」「斜めに置く」といった目的のスタンドになっています。一度コロコロを付けた台を作って、スタンドのようなものを自作したことがあります。このスタンドは開くとより平らな状態になるため、それをコロコロの付いた台に載せ、滑らせると紙を読む拡大鏡代わりになると思って、ちょっと試したりもしました。
ただ、紙の文字は拡大しても読むのがつらいためお蔵入りとなりましたが、そういう形で使うことも可能だと思います。ここまでは自分の話ばかりしていましたが、「タートルICTサポートプロジェクト」につながる点では、自分の経歴について一度は話してみたかったと思います。
ここからは「タートルICTサポートプロジェクト」の話に移ります。今日、初めて参加された方もいると思うので、まずは「タートルICTサポートプロジェクトとは」という話をしますが、こちらでは「就労の場におけるICTの課題を解決するためのプロジェクト」をうたっています。そして、「就労の場における」というところが、私の中でのポイントになっています。
実は、NVDAを教えてもらった情報ボランティア団体に以前参加させてもらい、お手伝いをしていた時期がありました。自分も視覚障害ではありますが、情報ボランティアとして「他の視覚障害者もサポートできたらいいな」と思って、その団体に入って少し活動をしてみました。
「最近の情報ボランティアの対象者には高齢者が多い」という話を聞きますが、私が参加した情報ボランティアも、やはり高齢の対象者が非常に多いような団体でした。そのため、目で見えないとサポートできないというのでしょうか。その方たちはPC-Talkerを使って、例えばCDを編集したり、趣味で何かをしたり、年賀状の印刷などを行いたいのです。
逆に私はと言うと、年賀状の印刷は自分でもしますが、スクリーンリーダーはPC-Talkerではありませんし、その方たちが必要とするアプリは全く使ったことがありませんでした。また、私自身は長く仕事をしていたこともあって、WordやExcel、PowerPoint等のネットやパソコン全般の知識はそれなりにあると思っていたのに、その時は「全然使えない人だな」と実感し、ちょっとショックを受けた状況でした。
しかし、一方でタートルに参加した時には「職場では結構ICTで困っている」いう話を聞いて、「それなら何かお手伝いできないかな」と思ったのが、タートルICTでそういった活動をしたいと思ったきっかけになります。
「タートルICTサポートプロジェクトを立ち上げたわけ」に関しては、今お話した内容になりますが、「就労の場でのICTのアクセシビリティについて、情報交換する場が欲しいと思った」ということが一点目にあります。いろいろ情報を見てくると、例えばWindowsであったり、Appleのアクセシビリティであったりということで、情報交換は非常に盛んにされています。
ただ、就労で使うようなアプリを情報交換する場は、「ちょっと少ないのかな」と当時の私は思っていました。そこで、特に就労をテーマにするタートルで「そういう場を始められたらいいな」ということが、頭に浮かんわけです。
加えて、普通なら視覚障害の人は支援される側で、例えば「訓練を受ける」という方向に行くのだと思いますが、私には訓練といった考えが全くありませんでした。そういう訓練に関する情報がほとんど入っていなかったこともあって、むしろアクセシビリティの開発者側のコミュニティに顔を出すようになったのです。
そして、先日は「日本視覚障害者ICTネットワーク」の中根さんや辻さんたちと一緒に登壇させていただきました。辻さんや中根さんたちと知り合いになったり、伊原さんというアクセシビリティのスペシャリストと知り合いになって、他の開発者のイベントにも参加させてもらうことになりました。
すると、そこで皆さんは非常に一生懸命に勉強をされているわけです。夜、仕事が終わったあとで、2時間も3時間もアクセシビリティについて語ったり勉強をしている姿を見るのです。それなのに、その一方で視覚障害当事者には、「これができない」「あれができない」という不満がどうしても生じてしまうのです。
私も同じ立場なのでよくわかりますが、そこが上手く繋がると良いというのでしょうか。せっかく彼らが大きな熱意を持って取り組んでいるのに、それが視覚障害当事者と上手く繋がっていないような部分があるのです。それで、橋渡しというと僭越かもしれませんが、上手くコミュニケーションが取れる場を作れないかと思ったわけです。
それでは、現在のICTスタッフの紹介です。今もほぼ当初のメンバーで、実際のところ私はリーダーをするような人間ではないのですが、発起人ということでリーダーをさせてもらっています。あとは、松坂前理事長、熊懐さんや大橋さん、吉泉さん、神田さん、山田さん、高原さんです。また、「タートルICTポータルサイト」として、川浪さん、間瀬さんにもお手伝いいただいています。これが今のスタッフ構成になります。
最初にお声掛けをした時には、「タートルICTサポートプロジェクト」とまでは銘打っていませんでしたが、「タートルの中で、ICTについて勉強するプロジェクトを始めてみたらどうですか」というメールを2020年に送信しました。1回目に送った時は、なしのつぶてにほぼ近かったというか、反応が返って来ませんでした。今思うと「面倒くさいヤツが何か言ってきたな」という感じに思われたのでしょうか(笑)。それも仕方がないと思います。私がどういう人間なのかわからないですし、様々なことを言ってくる人がいると思うので、その中の一人になったかと思います。
通常なら、私は割と腰の重い人間なので諦めてしまうのですが、その後で四谷の日本視覚障害者職能開発センター主催のロービジョンセミナーのイベントを見て、パネリストの方たちの「職場のICTで困っている」という話を聞いて、そういう取り組みを行った方が良いのではないかと思い、再度「始めてみませんか」というメールを送ったのです。
その時、やはりロービジョンセミナーをご覧になったと思いますが、「やってみましょう」ということで動き始めたのが、この「タートルICTサポートプロジェクト」になります。もし1回目で諦めていたら、それきりだったと思います。ただ、私自身がやってみたかったこともあって、このプロジェクトがスタートしたということです。
あとは、このメンバーです。ICTに関するプロジェクトを行うならば、通常は詳しい方をメンバーにすると思いますが、むしろ感じたのは「このICTの問題はかなり根深いな」ということで、これはその時から感じていました。個人に近い形で勉強会をしても、基本的なところは解決が難しいというのでしょうか。使い方自体を勉強するとか、サポートする方については見かけていましたが、「もっと根本的に取り組んでほしい」という働きかけをするには、自分たちの勉強会だけでは難しいと思ったのです。
私個人にはそういう力は全く無いのですが、タートルの理事や幹事の人たちを巻き込むことによって、何かが変わっていけば良いと思って、今のメンバーにお声掛けをしました。そして、初期メンバーとして今の人たちに入ってもらいました。
では、ここからは「これまでの活動の振り返り」として、サポートプロジェクトが行ってきたことを、少し振り返りたいと思います。まず、「タートルICTサポートプロジェクト」は、大きく分けて3つの活動をしているという話です。
1つ目が「タートルICTポータルサイト」です。これは当事者だけではなくて、企業や開発担当者にも情報提供をしたいと考えて、Webサイトを立ち上げました。皆さん忙しいこともあって記事の更新は難しいのですが、そうは言いつつも、少しずつ記事を増やしています。最近では読み物としてのインタビュー記事も上がっていますし、今までの知見ということでスクリーンリーダーの違いや、訓練施設の情報なども載せています。今後、こういうことに関わったり、訓練を受けてみたいという人には、このサイト情報を読んでもらえれば良いと思います。
2つ目には、「タートルICTグループメール」ということで、メーリングリストもやっています。こちらも、当初は「就労の場での話題の共有」と言っていましたが、考えてみれば就労には「非常に広い場での仕事がある」ということに気づきました。例えば「事務関係のアプリだけ」とか、「スクリーンリーダーだけ」と限定するのも変だと思うようになって、「仕事をしていく上で関係のありそうなことなら構いません」ということで、情報交換してもらっています。いろいろな形でご質問いただき、それに回答してもらっています。
これまでタートルICTグループメールで取り上げた内容ですが、「スクリーンリーダーの操作」や「Windowsのアクセシビリティ設定」、「スクリーンリーダーでのPDFファイルの読み方」「Excelの操作」になります。いろいろなことを質問していただき、積極的に情報提供をしてもらうような情報交換の場となっています。
このグループメールには、「内容が結構難しい」という声をいただくことが多いのです。確かに、実際に仕事をされている方の疑問・質問であるために、難しい面はあると思います。どちらかというと、スクリーンリーダーや拡大鏡等を使って実際に仕事をされている人や、今まで普通に仕事をしていたけれど次第に目が悪くなり「これからどうしよう」という人や、パソコンにはある程度の知識があるという人が対象になります。グループメールで内容を理解いただくには、この辺りの人になるでしょうか。パソコンが全く初めてで、そういった訓練を受けていない場合には、内容的に少し難しいところがあると思います。
ただ、一方では基本的というか、初心者の質問と思われるようなことでも、積極的に質問してもらうことで、改めて気づくこともありますし、私もかなり勉強させてもらうところがあります。ですから、「こんな質問をしたら恥ずかしい」とは思わず、臆せずにご投稿いただければありがたいと思います。
もし、ご自身で投稿を出すのが難しいようでしたら、「代理投稿」という形もあります。以前もお送りしたのですが、ICTグループメールではない方のメーリングリストを、後ほどお伝えしようと思います。こういった代理投稿用のメールアドレスもありますので、ご活用いただければと思います。
この代理投稿用メールにお送りいただく場合には、内容を少し確認させていただくかもしれませんが、代理ということでご本人の名前を出さずに質問を投げたいと思っています。これまであまり話が出ませんでしたが、「代理回答」の形もあって良いかと思います。
例えば、「グループメールにいきなり回答を出すにはちょっと恥ずかしい」と思う場合は、代理回答として私やグループメールに回答いただくと助かります。その場合は代理回答ということで、ご本人の名前を伏せた形で掲載させていただきます。
これは私自身の思いですが、グループメールの場に情報がストックされてほしいのです。例えば、質問に対して個人的に返信をすると、そこでとどまってしまうというか、他の方に情報が伝わらない形になってしまいます。その場で解決するのは良いのですが、情報を共有するという点では物足りないというか、皆さんの知識にならないのが残念だと思います。
ですから、グループメールに投稿されたものに対しては、どういう形でもグループメールに回答を出してもらえるとありがたいと考えています。ICTの方法はいろいろですし、複数の投稿によって「別のこういう方法もある」と気づくこともあります。その辺りについては、ご協力いただけると大変助かります。
また、このグループメールは支援者にも結構ご覧いただいています。支援する立場から「何が必要とされているのかよくわかる」というお声をいただくこともあります。本当に、こちらを皆さんの知識の場というか、いろいろな情報共有の場として活用いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
そして、3つ目が「タートルICTサロン」で、奇数月の第1日曜日に行うイベントです。これまでの内容を振り返ると、第1回目は「ロービジョンの工夫」をテーマに行いました。今まで「ロービジョンの人がどうしているのか」という話があまりなかったため、「最初にロービジョンをやってみようか」ということがスタッフの中で決まって、開催いたしました。特に、若い方を中心に話をしてもらったのですが、それぞれに独自の工夫があって、非常に興味深い会となりました。
第2回は「スクリーンリーダー徹底解説」ということで、JAWS、PC-Talker、NVDAの三大スクリーンリーダーについて、詳しい方から解説いただきました。スクリーンリーダーには、やはりそれぞれに特徴があります。「どれが良い」と言うよりも、それぞれに特徴があるため「用途によって使い分けるのが良い」ということに、改めて気づかされた会でした。この辺の記事も先ほどのポータルサイトに載っているので、ご覧いただければと思います。
そして、第3回は「トライアルサロン」と称し、できるだけ初心者の声を拾いたいと思い、「誰でもOK」という形で参加いただくサロンを行いました。そうは言いつつも、初心者の定義は難しいところがあります。スクリーンリーダー初心者の中には、スクリーンリーダーは初心者であってもパソコンを知っている場合と、スクリーンリーダーもパソコンも初心者という場合があって、なかなか難しいのです。
つまり、ある面については詳しいが、別の面については詳しくないケースもありますので、何をもって初心者と定義するかは、難しい部分があります。今後も「トライアルサロン」や「相談会」といった形で開催したいと思います。「グループメールのメーリングリストでは聞きづらい」とか、「何を聞いてよいか漠然としてわからない」という人に参加いただける会にしたいと思います。
第3回はそういう思いで開催したのですが、どちらかというと「詳しい方のご質問が少し多かったかな」という感じでした。なかなか難しいところはありましたが、そういう考えで運営しています。
そして、第4回は「新春サロン」でした。お正月に開催したので、無礼講といいますか、ICTに限らず気楽に交流しました。来年1月も「新春サロン」を企画しています。こちらは気楽な会ですので、是非ご参加いただければと思います。
また、第5回は「『ジョブコーチ』が語る就労現場での支援の実際と課題」ということで、ジョブコーチの先生方をお招きして、その制度と実態についての話をしてもらいました。私自身、ジョブコーチのことをあまり知らず、申し訳ないくらい無知でしたが、ジョブコーチ制度というものがあって、職場でスムーズな就労支援を受けられることを知りました。
ただ、一方では地域間格差もあって、東京は恵まれていると言いつつも、先生の数が非常に少ない危機的状況であることや、東京に集中しているために地方の人は利用が難しいという課題を知ることができました。
次の第6回では「『ジョブコーチ支援経験者』が語る就労現場での支援の実際」として、ジョブコーチを利用した体験者を招いてお話をいただきました。「ジョブコーチを呼んだが難しかった」というケースがこの時にもあって、職場の課題が解決できなかったという事例も報告いただき、いろいろと難しい課題を抱えていることが判明しました。また、一方では「ジョブコーチをお願いすることで得られる効果がある」ということが明確になった会でもありました。
そして、第7回は「ICTなんでも相談会」を開催しました。先ほどの「トライアルサロン」と同様の企画になりますが、むしろ初心者という枠を取り払い「なんでも相談会」という形にしたわけです。この時は「これからスクリーンリーダー等の情報を知りたい」という人に積極的に質問いただき、非常に充実した会となりました。また、このような会を実施したいと思っています。
前回の第8回では「ICTライトニングトーク」として、1人5分の時間枠の中、いろいろな形でご発表いただきました。このライトニングトークですが、IT業界では結構いろいろと行われています。今回は5分という短い時間枠を最大限に使い、自分の言いたい発表をする形になりました。今回は初回のため、まずはプレゼン練習に使ってもらうような試みでしたが、非常に内容の濃いもので、大変勉強になるものでした。出演いただいた人たちには、本当に感謝しています。また、次回も開催したいと思いますので、是非ご応募いただければと思います。
ただ、今回は申し訳ないことに迷惑メールに入ってしまって、応募されたのにお声がけのできなかった人もいらっしゃいました。次回は是非お声がけをしたいと思いますので、またご協力いただければと思います。これまでこういう形で、ICTサロンとして様々なイベントを行ってきました。これからの予定としては、1月には「新春サロン」を予定していますし、3月にも大きなイベントを企画しているので、順次お知らせしていきたいと思います。
では、ここからは「タートルICTサポートプロジェクトのこれから」について、お話をしたいと思います。今後に関して語る前に、まず「ICTのトラブルの要因」について、再度振り返りたいと思います。このトラブル要因には、大きく分けて3つがあると考えています。
1つ目は「PC操作やスクリーンリーダーのスキルの問題」です。これはある程度自分で勉強すれば何とかなる部分を指しています。もしかすると、もっと方法がわかれば、対応できる部分があるかもしれないと思います。それに対しては訓練を受けたり、ジョブコーチをお願いしたり、勉強会等で情報を得て方法を知ることで、解決する部分があるのではないかと思います。
そして、2つ目に「スクリーンリーダーの問題」があります。これはスクリーンリーダー自体が抱える問題で、そのスクリーンリーダーでは解決できない問題を指しています。この場合の解決方法としては「用途によって使い分ける」「カスタマイズをする」ということが上げられます。例えばJAWSスクリプトであるとか、NVDAにもアドオンを作ってもらうといった方法があるかと思います。ただ、カスタマイズをするには、人材が足りない問題を一方で抱えているために、それが簡単ではないことが判明しています。
また、「用途によって使い分ける」ということですが、新しく別のスクリーンリーダーを使うのは、人によっては難しいと言うのでしょうか。私はNVDAから入り、他のPC-TalkerやJAWSを使う気持ちも大いにあったのですが、結局は覚えるのが大変だったり、NVDAを使えば何となくできてしまうこともあって、そのままNVDAだけを使用しています。
他の人には「用途によって使い分ける」と言っていますが、実際に自分が使い分けているかというと、そんなことは全然なくて、これも難しい問題なのだと思います。勉強会などを行なって、少しずつ覚える場を作っていくことが、やはり必要だろうと感じています。
そして、3つ目には「アプリケーション側の問題」です。例えば、ボタンを「ボタン」としか読まないとか、そもそもボタンにフォーカスが当たらないなど、何をしてもどんな工夫を試みても、アプリケーション側の問題でどうにもならないことを指しています。
この場合、すぐに解決できるものではありませんが、声を上げなければ始まらないため、開発者に要望を出すとか、仕方ないので代替手段を考えるということです。また、人の手を借りることも止むを得ないですね。この3つ目の問題は、自分たちでは解決できないところでもあります。一番解決したい部分ではあるものの、「どうしたら良いか」というところが、ずっと問題として残っている感じです。
次に、「現状の課題」という項目が続きますが、先ほどICTのトラブルの要因と解決策を述べましたが、実際にその解決策ができるかを考えると、やはり現実的には課題があります。例えば、「ジョブコーチ・訓練施設の課題」というのは、数が少なかったり、地域間格差によって受講できない方もいるという話です。また、「スクリーンリーダーの課題」に関しては先ほども話しましたが、カスタマイズする人材や費用が不足している点があります。次の「アプリケーションのアクセシビリティ」は先ほどの3点目と対応し、視覚障害当事者の声が届きにくいということです。実際にはいろいろ要望を出しても、現場まで届かないのが問題になっています。実際、例えば業務アプリでは企業にとってのメリットが少ないのです。つまり、「アクセシビリティ対応をするメリットが少ない」と言われているのです。
やはり、視覚障害者は数が少ないということです。最近のアクセシビリティ対応ですが、一般で使うアプリケーションに関しては、少しずつ良くなっている印象があります。最初に話した「開発者が頑張って取り組んでいる」というのは、やはり一般消費者向けの製品には、アクセシビリティを考慮したものもあるということです。
ただ、業務アプリには、そもそも「視覚障害者が何に困っているのか」「どうして欲しいのか」が伝わっていないですし、それを改善するメリットが企業側に少ないのです。要は、数の問題ということで、障害者としての数が少なすぎるため、対応するメリットが少ないということです。これには日本企業の問題が大きいと思っています。
アメリカでは法整備がされており、いろいろなアプリケーションでアクセシビリティについて触れているものが多いのです。しかし、日本で開発されたものは、そこまでになっていません。特に企業アプリについては難しくて、むしろ海外製品というのか、皮肉なことにマイクロソフト製品といった海外製品の方が、我々に使いやすい現状がある感じなのです。
そこで「解決には」ということでまとめてみました。タートルICTとして考えるよりも、一般論としてお聞きいただければと思います。まずは「支援者の確保」になります。訓練であったり、ジョブコーチであったり、民間とかボランティアも同様だと思いますが、支援者を確保していく必要があるということです。
そして、2つ目が「開発者の確保」と「情報提供」になります。先ほども言いましたが、開発者がいないわけではありませんが、アクセシビリティだけでは仕事にならないという声があります。やはり、「アクセシビリティを行うことが会社にとってメリットになる」と伝えることができて、それにより開発者が増えていく循環を作らなければいけないのです。
開発者に「当事者の声が届かない」ということですが、クレームだけではなくて、感謝の気持ちもあまり届かない面があるようです。「これをするのは本当に意味があるのだろうか」と思う時もあるようです。ですから、それも含めて要望だけではなく、感謝の気持ちも伝えていくということです。お互いWin-Winの関係になっていくことが必要なのだと思います。
また、開発者の中にも、全盲やロービジョンの人が増えているという感じがします。企業の中には全盲の開発者がいて、当事者が一番理解している面があると思いますから、アプリの開発などに視覚障害当事者が加わっていく形を作ることが、大事ではないかと思います。
そして、3つ目としては「企業や行政への働きかけ」「法整備の働きかけ」になります。この辺りが必要だと思いますが、どこに働きかければ企業や行政に繋がるのか、それがよくわかりません。やはり、タートルICTのような小さなプロジェクトだけでは難しい部分もあると思います。この辺りをヨコ展開にして、「人脈を通じて拡げていくこと」によって、そういう人たちを動かせる何かが生じると思います。そういうものが必要だと思うのです。この辺は積極的にアイディアをいただき、繋がっていけるようなご紹介をいただければと思います。
最後になりますが、「タートルICTサポートプロジェクトのこれから」ということです。先ほどの課題や解決策を考えると、第一に他の組織との連携強化が大事になると思います。この「タートルICTサポートプロジェクト」というものですが、このプロジェクト自体が具体的にスクリーンリーダーの使い方を教えたり、何かを行うようなものではありません。そういうことが可能なメンバーではないのです。
むしろ、そういうことを行っている方と上手に連携し、皆さんが上手く勉強できるようにしていくことが大事だと思います。タートルICTサポートプロジェクトとは、あくまでも「その場を提供するところ」と考えてもらえると有難いです。それは、私自身が指導者とか支援者というよりも、裏方としてバッグアップしたいと思う面が強いからです。
幸いなことに、先ほど紹介したメンバーは、他団体との繋がりが非常に多い人たちなので、連携は少しずつ進んでいます。これからのイベントなども、ご期待いただければと思います。一方ではアクセシビリティというのでしょうか。ICTに強い方がメンバーに入っていないことや、若い方が入っていないこともあって、その辺りが現在の課題になっています。
そして、2つ目に「技術者・企業へのアプローチ」と、3つ目に「次世代への橋渡し」を、これからのICTサポートプロジェクトで考えています。話が前後して恐縮ですが、今まであまりできていない「技術者・企業へのアプローチ」について、これから少しずつ進めたいと考えています。また、「次世代への橋渡し」ということですが、就労の場に関しては働いている現役世代の当事者が一番切実に感じる部分だと思いますし、私の中には「若い人を、特に支援したい」という気持ちがあります。
自分にも10代と20代の子がいて、その子たちを見ていると、若い人たちの力には大変なものがあると思うのです。また、その人たちが生き生きと働ける環境を作っていくことは、上の世代の責任だと思うからです。そして、一定の役割を果たせたら次世代にバトンタッチしていくことが、当然の流れだと思います。人材確保というのでしょうか。「確保」というと言い方は悪いですが、協力いただける方を募りつつ、橋渡しをしていける体制を組みたいと考えています。

認定NPO法人タートル2022年12月女子会

『初の「夜」の女子会華やかに☆~たくさん笑って、免疫力アップ!~』

理事 松尾・石原・芹田(まつお・いしはら・せりた)

2022年ももう終わろうという12月17日、初の「夜の女子会」を開催しました!
今回は会員・非会員の方問わずお誘いをして、13名の素敵な方々が集まりました。半分近くが初めての参加の方たちでした。
まずは自己紹介から! 今回は自分を動物に例えると? そしてその理由は? というお題を混ぜて紹介いただきました。
「犬」と言われた方が多かったですね。なかなかこれを聞かせていただくのも楽しいです。(笑)
だいぶリラックスできたところで、そのあとは3グループに分かれてフリートーク! 話がはずまなかったらどうしよう…なんて心配はご無用。(笑)
やはりファッションやお化粧、お役立ち情報などはどんどん話が盛り上がります。
初対面の方たちの中で話すことにすごく緊張されていた初参加の方も、小さいグループでこぢんまりと話せたことがとてもよかったと感じてくださり、またその方の悩みによりそったメンバーからの励ましの言葉がとても素晴らしく、すっかり緊張もほぐれてたくさんお話をしてくださいました。
他には、今年は旅行に行こうとか、自立を目指そうと思うと、目標を声に出してくださった方もありました。
自己紹介と2回の小グループでのフリートークをして2時間30分…。まだまだ話はどんどん広がりそうでしたが、今回は22時にお開きとなりました。
皆さんが楽しく、つながりや広がりができてよかったと感じられる女子会であったならばいいなぁと思っています。
また、これは大きな大きな課題ですが、「LGBT」についても本来は取り入れて考えないといけないのだろうと頭の片隅にはいつもあります。
今は性別も必ず男女どちらか選ばなければいけないような選択肢はNGとなってますよね。そんな中でどうどうと「女子会」と名乗ってしまってます。(汗)
ただ、「女性」ならではの悩み、話しやすさといったものははずせない部分でもあると考えています。
そんな部分をご理解いただきながら、参加された皆さんの免疫力がアップするように、たくさん笑っていただけるように、今後も企画していきたいと思います☆

職場で頑張っています

『フリーの専門職という働き方に至るまで』

会員 高尾 朋子 (たかお ともこ)氏

タートルに出会って6年になります。当時の私は専門学校の専任教員をしていました。視力が低下し、努力だけでは結果が出せなくなり、仕事を継続する気力をなくしていました。2歳の頃からお世話になっている眼科の先生に久しぶりに会いに行き、仕事について悩んでいることを相談したところ、いろいろ調べてくださり、タートルと歩行訓練士さんと福祉機器取扱店の方を紹介してくださいました。白杖と遮光眼鏡、拡大読書器を手に入れて、何とか最後の1年を務めました。
視力がある間にやっておきたいことを考え、退職後は大学院で人生の夏休みを過ごそうと決めました。
その年の春に初めてタートル交流会に参加しました。福岡会場には全盲になっても同じ会社で働き続けている方、復職間近の方、家族のために退職しないことを決心された方がおられました。東京の眼科で看護師を続けておられる方のお話を聞きながら、私もこの先視力が低下しても専門職として働き続けられたらいいなと、淡い希望を持ちました。
タートル交流会後に女性だけでお茶を飲みに行ったのがきっかけで、福岡の女子会が始まりました。タートルで知り合った人たちが次々と復職や再就職にチャレンジしていくようになると、タートル交流会だけでは間が空きすぎるので、LINEグループで近況を伝え合ったり、交流会がない月にも集まる機会を設けました。昨年末のちょっと豪華なランチ会は至福のひとときでした。
さて、私のことに話を戻しますが、大学院2年の前期に印刷物が読めなくなったため、1年間休学して福岡市立あいあいセンターと福岡視力障害センターで自立訓練を受けました。白杖歩行や音声パソコン、ロービジョン訓練を受けて感じたことは「この先視力が低下しても何とかなる。私らしくいろんなことにチャレンジしていこう。」ということでした。
また、視覚障害の分野は病院に相談員が配置されていないせいか、リハビリや相談支援につながっていない人が多いこと、専門職であるか否かに関わらず多くの方がボランティアで視覚障害者を支えてくださっていることを当事者になって初めて知りました。私も社会福祉の知識と障害の経験を誰かのために活かしていきたいと思うようになりました。
現在、精神保健福祉士として電話相談2か所と通信制専門学校の非常勤講師の仕事をしています。そしてこの春から大学の非常勤講師の仕事をいただきました。この職に就いて以来ご縁のあった方々に助けていただきながら、仕事を続けていられることをとても有難く思っています。労働条件という面では決しておすすめできる働き方ではありませんが、充実感はあります。見え方が変化していく中での新しい仕事はチャレンジです。タートルの皆様から知恵と工夫を教えていただきながら、与えられた役割を果たしていきたいと思っています。

お知らせコーナー

ご参加をお待ちしております!!(今後の予定)

◎6月10日 定時総会

記念講演は石川准様

【プロフィール】
東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学/社会学博士。
静岡県立大学名誉教授 障害学会会長など

◎交流会

昨年はコロナ禍で開催できませんでしたが、今年度はまた、9月、11月、3月の第3土曜日、14:00~16:00までオンラインで行います。毎回、講演を聴いたあと、講師との質疑応答の時間も設けます。

◎タートルサロン

上記交流会実施月以外の毎月第3土曜日の14:00~16:00に行います。情報交換や気軽な相談の場としてご利用ください。
他にも、原則第1日曜日には、テーマ別サロン(偶数月)、ICTサロン(奇数月)も行います。

*新型コロナウイルス感染症の動向によっては、会場での会合が難しく、引き続き開催を差し控えさせていただきます。
※その場合にも、Zoomによるオンラインでのサロンは引き続き行います。奮ってご参加ください。(詳細は下記の事務局宛にお問い合わせください)

一人で悩まず、先ずは相談を!!

「見えなくても普通に生活したい」という願いはだれもが同じです。職業的に自立し、当たり前に働き続けたい願望がだれにもあります。一人で抱え込まず、仲間同士一緒に考え、気軽に相談し合うことで、見えてくるものもあります。迷わずご連絡ください! 同じ体験をしている視覚障害者が丁寧に対応します。(相談は無料です)

*新型コロナウイルス感染症の動向によっては、会場に参集しての相談会は引き続き差し控えさせていただきます。

*電話やメールによる相談はお受けしていますので、下記の事務局まで電話またはメールをお寄せください。

ICTに関する情報提供・情報共有を行っています。

タートルICTサポートプロジェクトでは、就労の場におけるICTの課題に取り組んでいます。ICTについては、専用のポータルサイトやグループメールをご活用ください。

タートルICTポータルサイト
https://www.turtle.gr.jp/hpmain/ict/

タートルICTグループメールへの登録は以下をご参照ください。
https://www.turtle.gr.jp/hpmain/ict/activity-2/ict-groupmail/

正会員入会のご案内

認定NPO法人タートルは、自らが視覚障害を体験した者たちが「働くことに特化」した活動をしている「当事者団体」です。疾病やけがなどで視力障害を患った際、だれでも途方にくれてしまいます。そのような時、仕事を継続するためにはどのようにしていけばいいかを、経験を通して助言や支援をします。そして見えなくても働ける事実を広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。当事者だけでなく、晴眼者の方の入会も歓迎いたします。
※入会金はありません。年会費は5,000円です。

賛助会員入会のご案内

☆賛助会員の会費は「認定NPO法人への寄付」として税制優遇が受けられます!
認定NPO法人タートルは、視覚障害当事者はもちろん、タートルの目的や活動に賛同し、ご理解ご協力いただける個人や団体の入会を心から歓迎します。
※年会費は1口5,000円です。(複数口大歓迎です)
眼科の先生方をはじめ、産業医の先生、医療に従事しておられる方々には、視覚障害者の心の支え、QOLの向上のためにも是非、賛助会員への入会を歓迎いたします。また、眼の疾患により就労の継続に不安をお持ちの患者さんがおられましたら、どうぞ、当認定NPO法人タートルをご紹介いただけますと幸いに存じます。
入会申し込みはタートルホームページの入会申し込みメールフォームからできます。また、申込書をダウンロードすることもできます。
URL:http://www.turtle.gr.jp/

ご寄付のお願い

☆税制優遇が受けられることをご存知ですか?!
認定NPO法人タートルの活動にご支援をお願いします!!
昨今、中途視覚障害者からの就労相談希望は、本当に数多くあります。また、視力の低下による不安から、ロービジョン相談会・各拠点を含む交流会やタートルサロンに初めて参加される人も増えています。それらに適確・迅速に対応する体制作りや、関連資料の作成など、私達の活動を、より充実させるために皆様からの資金的ご支援が必須となっています。
個人・団体を問わず、暖かいご寄付をお願い申し上げます。

★当法人は、寄付された方が税制優遇を受けられる認定NPO法人の認可を受けました。
また、「認定NPO法人」は、年間100名の寄付を受けることが認定条件となっています。皆様の積極的なご支援をお願いいたします。
寄付は一口3,000円です。いつでも、何口でもご協力いただけます。
寄付の申し込みは、タートルホームページの寄付申し込みメールフォームからできます。また、申込書をダウンロードすることもできます。
URL:http://www.turtle.gr.jp/

≪会費・寄付等振込先≫

●郵便局からの振込
ゆうちょ銀行
記号番号:00150-2-595127
加入者名:特定非営利活動法人タートル

●他銀行からの振込
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
支店名:〇一九店(ゼロイチキユウ店)
支店コード:019
預金種目:当座
口座番号:0595127
口座名義:トクヒ)タートル

ご支援に感謝申し上げます!

多くの皆様から本当に暖かいご寄付を頂戴しました。心より感謝申し上げます。これらのご支援は、当法人の活動に有効に使用させていただきます。
今後とも皆様のご支援をお願い申し上げます。

活動スタッフとボランティアを募集しています!!

あなたも活動に参加しませんか?
認定NPO法人タートルは、視覚障害者の就労継続・雇用啓発につなげる相談、交流会、情報提供、セミナー開催、就労啓発等の事業を行っております。これらの事業の企画や運営に一緒に活動するスタッフとボランティアを募集しています。会員でも非会員でもかまいません。「当事者」だけでなく、「晴眼者(目が不自由でない方)」の協力も求めています。首都圏以外にも、関西や九州など各拠点でもボランティアを募集しています。
具体的には事務作業の支援、情報誌の編集、HP作成の支援、交流会時の受付、視覚障害参加者の駅からの誘導や通信設定等さまざまです。詳細については事務局までお気軽にお問い合わせください。

タートル事務局連絡先

Tel:03-3351-3208
E-mail:m#ail@turtle.gr.jp(#を除いて送信してください。)

「情報誌タートル」は、年に4回発行している会報です。
この情報誌は年に3回行われる「交流会」での講演内容を収録し、編集したものや、毎年6月に行われる定期総会における記念講演を収録し、編集したものを中心として、会員の皆様に提供しております。
情報誌のその他の内容としては虹や相談役等タートルの運営に携わっているスタッフが様々な立場からコメントを寄せる巻頭言。就労でがんばっている方々のコメント「職場で頑張っています!」。
また定年まで活躍された方の手記「定年までがんばりました!」。これから就労目指す方の奮闘記「就労に向けて頑張っています!」など様々な情報を提供しております。
タートルのホームページでは、過去に発行した情報誌が掲載されていて、会員以外の皆様にもご覧いただけます。
<執筆者募集>
タートル情報誌に執筆していただける方は、お問い合わせフォームよりぜひお気軽にご連絡ください。

編集後記

全国のタートル会員の皆様、いかがお過ごしでしょうか?
いつも情報誌を愛読してくださり、ありがとうございます!
原稿を書いているのは3月。今月にはいり、気温が高くなってきたこのごろ。そろそろ春の兆しが感じられます。しかし、春がやってくるのと同時に、花粉に悩まされる方も少なくないのでは?! 実は、私はその一人…。毎年苦労しています。
対策として最近知ったのは、レンコンパワー。レンコンにはポリフェノールが豊富に含まれており、その一種であるタンニンが花粉症の症状を和らげる効果があるそうです。ただし、タンニンは水に流れやすいため、調理方法に注意が必要らしいです。
花粉の飛散状況は、地図に赤い色や黄色い色を示して伝える報道が一般的ですが、画面をみえない私としては、細かなことはわからないので、とりあえず全国的に飛散しているのだなということで理解しています。花粉対策に苦労している私ですが、皆様のお手元に情報誌をお届けするころには、涙や鼻水とおさらばしていることでしょう!?
さて、今回の情報誌はいかがでしたでしょうか? これからも、皆さんに楽しんでもらえる誌面をお届けしますので、情報誌タートルを、どうぞ宜しくお願いします!

(イチカワ ヒロ)

奥付

特定非営利活動法人 タートル 情報誌
『タートル第62号』
2023年3月8日発行 SSKU 通巻第7553号
■ 発行 特定非営利活動法人 タートル理事長 重田 雅敏
■ 事務局 〒160-0003 東京都新宿区四谷本塩町2-5
社会福祉法人 日本視覚障害者職能開発センター 東京ワークショップ内
電 話 03-3351-3208 ファックス 03-3351-3189
■ NPO法人タートルの連絡用メール m#ail@turtle.gr.jp(#を除いて送信してください。)
■ URL http://www.turtle.gr.jp/

発行所郵便番号一五七―〇〇七三東京都世田谷区砧六―二六―二一特定非営利活動法人障害者団体定期刊行物協会定価七五〇円(会費に含まれている)