1998年10月9日第三種郵便物認可(毎月3回8の日発行)
2014年5月9日発行 SSKU 増刊通巻第4806号
『定年退職に思う』
副理事長 工藤 正一(くどう しょういち)
私は平成26年3月31日をもって、65歳の定年退職を迎えました。この場を借りてこれまでの皆さまのご厚情に心から感謝を申し上げます。
私は、1981年、国際障害者年の年、32歳でベーチェット病を発病しました。その後失明し、リハビリテーションを受け、1991年に当時の労働省に復職しました。復職できたのは、職場の理解と仲間の励ましがなければあり得ませんでした。それは、職業リハビリテーションを受けるに当たり、人事院と協議し、研修扱いで受けることができたからです。この経験は、後に「人事院通達」(注1)に反映され、いわゆる合理的配慮の先駆けとなりました。
思い返すと、私が頑張ろうと思ったのは、職場の理解もさることながら、二人の視覚障害者との出会いがあったからです。
ひとりは、発病前に出会った、日本盲人職能開発センターの創設者で、今は亡き松井新二郎先生です。私が契約の仕事をしていたときに、先生がテープ起こしの仕事の契約の更新に来られました。そのときに対応したのが私で、盲人の仕事についていろいろ教えていただきました。それが、まさか自分が失明するなんて‥‥‥。その後、事あるごとに、励ましの言葉をかけていただきました。
もう一人は、多くの苦難を仲間とともに闘い、横浜税関に職場復帰を果たした馬渡藤雄さんです(注2)。当時は、固有名詞を冠した視覚障害者の雇用運動が全国のあちこちであり、その人たちの努力のうえに、私たちの今があるといえます。
この二人に代表されるような、目標となる先輩がいたこともあり、私は何の抵抗もなく、進んで視覚障害者の世界に飛び込んでいき、同じ思いを抱いていた仲間とタートルを立ちあげました。タートルの相談のなかには、視覚障害があるために、できることができなくなり、自信を失い、自らを苦境に追いやっている事例が見られます。しかし、私たちと出会うことで、元気を取り戻し、困難を乗り越え、定年まで働き続ける人もいます。障害のない人には当たり前のことでも、視覚障害者にとって定年退職は特別な意味があるといえます。
改正障害者雇用促進法の施行により、平成28年4月1日から、事業主に対して、障害者に対する差別の禁止、合理的配慮の提供の義務が課せられるようになります。これにより視覚障害があっても安心して定年を迎えられるようになるでしょうか。昨今、非正規雇用が拡大され、雇い止めや解雇が容易になるなかで、障害者に対する差別禁止・合理的配慮も影響を受けるのではないかと心配な面もあります。そうならないためにも、差別禁止や合理的配慮義務については、障害を持つ人の人権としてとらえる必要があるのではないでしょうか。
これまでを振り返ると、いろいろな思いがありますが、何れまた話す機会もあることでしょう。これから第三の人生をいかに生きるか、新たな気持ちでタートルの活動にも頑張っていきたいと思っています。
<注1,2:参考資料>
○人事院通達「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」
http://www.turtle.gr.jp/kenshu.html
○「いま思う復職への道のり」(タートル交流会での馬渡講演)
http://www.turtle.gr.jp/paper/mawatari.html
○「職場に光をかかげて」(職場復帰までの闘いの記録)
http://www.turtle.gr.jp/paper/hikari.html
○第72回国会衆議院社会労働委員会議事録(馬渡さんの職場復帰について)
http://www.turtle.gr.jp/paper/giji.html
新緑の候、皆様におかれましてはご健勝のこととお慶び申し上げます。平素は当法人の活動にご支援ご協力をいただき、心より感謝申し上げます。
さて、平成26年度通常総会を下記のとおり開催します。万障お繰り合わせの上、ご出席くださるようお願いいたします。
会員の皆様には別途「総会案内」を送付いたしますので、お手数ですがご出席の可否を同封のハガキまたはメールにてご返信ください。総会の成立は会員総数の過半数出席(出席または委任状提出)が要件になっています。皆様の積極的な出席をお願い致します。本誌「タートル27号」掲載の総会議案をご参照ください。
なお、東京会場以外のスカイプ会場参加では議決権行使はできませんのでご注意ください。
NPO法人 タートル
理事長 松坂 治男
日時:平成26年6月21日(土) 10:30〜17:00(受付10:00〜)
場所:(社福)日本盲人職能開発センター 地下研修室
〒160-0003 東京都新宿区本塩町10-3
交通:四ツ谷駅(JR線、東京メトロ南北線・丸の内線)下車徒歩7分
駅からのガイド:9:30〜9:45の間、駅改札にガイドボランティアを配置します。
*ガイドを希望される方は6月16日までに事務局までご連絡をお願いいたします。
連絡先(以下は委任状のアドレスではありません。)
TEL 03-3351-3208
メール m#ail@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)
*参加費(午後の部)
会員及び介助者は無料 非会員は500円
《午前の部》 10:30〜12:00
1.平成26年度通常総会
議題
第1号議案 平成25年度事業報告について
第2号議案 平成25年度収支決算報告について
第3号議案 監査報告
第4号議案 平成26年度事業計画案について
第5号議案 平成26年度収支予算案について
◇昼食 12:00〜13:30
東京会場内は、食事が禁止されております。近くのお店にご案内いたしますので、希望者はまとまって行きましょう。
《午後の部》 13:30〜17:00
2.記念講演
演題 「改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会について」(仮題)
講師 厚生労働省職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課長 藤枝 茂(ふじえだ しげる)氏
3.参加者の交流
参加者近況報告・意見交換
[ご注意] 当日、東京会場以外のスカイプ会場では議決権の行使はできません。正会員の方は予め委任状の提出をお願いします。また、スカイプの通信状況により、聞き取りにくい場合があることを予めご了承ください。
■大阪会場案内 担当理事 湯川 仁康
日時:平成26年6月21日(土) 10:30〜17:00(受付午前10:00〜)
場所: (社福)日本ライトハウス情報文化センター 4階 会議室3
〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-2
*大阪市営地下鉄四つ橋線肥後橋駅北改札から2番出口を出てすぐ左
*日本ライトハウス情報文化センターまでのアクセス
http://www.iccb.jp/access/
*定員:24名 非会員であっても午前の部(総会)からの参加も歓迎します。
*参加費(午後の部) 会員及び介助者は無料 非会員は500円
◎プログラム
《午前の部》10:30〜12:00
1.特定非営利活動法人タートル通常総会
スカイプにて東京会場より中継します。
《午後の部》13:30〜17:00
2.記念講演
スカイプにて東京会場より中継します。
3.交流
参加者近況報告・意見交換
◎申込方法
下記メールアドレスまでお申し込み下さい。
件名:「タートル大阪会場参加(お名前)」
本文:参加される方のお名前、会員・非会員の別、午前の部、午後の部、懇親会の出欠
締め切り:6月16日(月)までにお願いします。
タートル大阪会場連絡用メールアドレス(問い合わせ先)
e-mail:o#saka@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)
■福岡会場案内 担当理事 藤田 善久
日時:平成26年6月21日(土)10:30〜17:00(受付10:00〜)
場所:福岡県立ももち文化センター 2階 会議室4
〒814-0006 福岡市早良区百道2-3-15
福岡市営地下鉄空港線 藤崎駅2番地上出口より徒歩にて1分
*ガイドを希望される方は、6月16日までに福岡会場担当の藤田までご連絡ください。
*定員:18名 非会員であっても午前の部(総会)からの参加も歓迎します。
*参加費(午後の部) 会員及び介助者は無料 非会員は500円
◎プログラム
《午前の部》10:30〜12:00
1.特定非営利活動法人タートル通常総会
スカイプにて東京会場より中継します。
◇昼食 12:00〜13:30
昼食場所につきましては、館内の3階にあります食堂にご案内いたしますので、ご希望の方はご利用ください。
《午後の部》13:30〜17:00
2.記念講演
スカイプにて東京会場より中継します。
3.交流
参加者近況報告・意見交換
◎申込方法
下記メールアドレスまでお申し込み下さい。
件名:「タートル福岡会場参加(お名前)」
本文:参加される方のお名前、会員・非会員の別
締め切り:6月16日(月)まで。
※タートル福岡会場連絡用メールアドレス(問い合わせ先)
e-mail:y#osfujit@ku.kumagaigumi.co.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)
【第1号議案】平成25年度事業報告
<25年度活動総括>
活動は、1.相談、2.交流会、3.情報、4.セミナー・啓発の4事業が計画通り行われました。
1.相談事業は、電話、メール、ロービジョン相談会に振り分けられ、相手の置かれている立場や緊急度合いに応じて、適切に行われました。昨年からスカイプを使用した大阪との相談会は、希望者がなかったため、中止となりました。
相談の内容により、対応するメンバーを増やし、相談体制の充実を図りました。
2.交流会事業は、テーマに沿って、3回実施されました。ただし、雪の影響で2月度の交流会が3月に順延されて行われました。
昨年7月から、毎月第3土曜日を「タートルサロン」として、特にテーマを設けず、会員相互の悩みや質問を自由に話し合う場を設けました。これにより、会員の相互交流が図られました。新しい方も含め多くの参加者があり、大変期待されている活動であったことがあきらかとなりました。
3.情報事業は、「情報誌タートル」を4回発行しました。メールを利用した視覚障害者関連のアンケート調査に協力することを3件行いました。
4.セミナー・啓発事業は、前年度、年賀はがきの助成金の採択に基づき、「ガイドブック」をガイドブック委員会で作成し、眼科医、産業医、企業関連団体に送付しました。タートルのホームページにも掲載しました。
ガイドブックの発行は、今後のタートルのさらなる活動の広がりをつくる重要な武器になるものと確信しています。
きめの細かな相談対応やタートルサロンの効果で、会員数は17名増加となりました。それと、田辺三菱製薬と年賀はがきの助成金の獲得と、大学・会社の視覚障害者関連のアンケート調査の協力で、結果的には活動資金が増してタートルの活動の資金が安定しました。タートルの活動をより拡大するには各種助成金の獲得や障害者関連の調査協力を積極的に進めていくことが大切です。
それと、他団体同様に中心となっている理事の高年齢化への対応として、緩やかな世代交代を進めていく必要があります。
■ 相談事業報告 工藤 正一
本事業は「田辺三菱製薬手のひらパートナープログラム」の助成により実施した。
1.総論
1) 相談の方法等は昨年とほぼ同様であるが、特に本年度は、新たに開始したタートルサロン(平成25年4月開始)と連携を図ったことで、早期に支援ができるようになった。相談の多くは電話やホームページから入って来るが、専用電話からの相談は、第一義的には専任相談員が在宅でそれに応え、その結果を相談スタッフで共有した後、各スタッフが適宜その専門に応じて対応した。一方、ホームページからのメールによる相談も同様に対応した。何れのルートの相談も、首都圏の場合は、タートルサロンに導き、仲間との交流を図った。タートルサロンはピアサポートとして、障害の受容にも有効と思われた。
2) 地方絡みの相談については、各地区担当理事と連絡を取りながら対応した。なお、「Skype」を活用した遠隔地相談会(スカイプ相談会:平成23年度から大阪会場と年1回開催)は、希望者がなく、中止となった。
3) 相談者は様々であるが、視覚障害当事者や家族が多いことは当然のこととして、その場合、眼科医療施設を介した相談が年々増えている。また、眼科医や産業医などの相談も同様に増えており、今年度も産業医が少なからずあり、そのほとんどは大企業であった。その他就労支援機関、弁護士等からの問い合わせもあり、前年同様、相談の広がりがあった。
4) 相談内容は労働、年金、医療、福祉など多岐にわたり、総合相談的な様相を呈していることは、前年同様であり、必要に応じて、専門家によるロービジョン就労相談(平成21年度開始)を行った。相談に際しては、タートルの成果物や、(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構の各種資料を積極的に活用した。
5) 継続・再就職相談に対しては、個々の状況に応じて眼科医や産業医をはじめ、ハローワークや地域障害者職業センターなどの職業リハビリテーション機関との連携を図った。特に、継続・再就職のためには、能力開発が重要であるため、職業訓練をいかに行うかの支援に注力した。具体的には、職業能力開発校における職業訓練だけでなく、障害の態様に応じた多様な委託訓練や、就労移行支援事業を活用するとともに、ジョブコーチ制度、就労支援機器貸出し制度など、限られた社会資源を有効に活用できるように支援した。その結果、就労継続、職場復帰、再就職などの好事例を蓄積できた。
6) 職場復帰や雇用継続については、産業医の意見や人事労務担当者の判断が重要となることに鑑み、ロービジョン就労相談ではできるだけ眼科医から本人を通して彼らに情報提供をしてもらうよう助言した。産業医がロービジョンケアのできる眼科医と連携することで、保有視機能の状態や必要な配慮事項等の情報を共有し、産業保健上からも適切な支援・雇用管理を行うことができたと考える。
7) このような相談の成果を関連学会等を通じて社会に還元するとともに、タートルの存在をアピールした。併せて、眼科医療をはじめ関係機関との連携強化に努めた。具体的には、平成25年10月11,12日の両日開催された第14回日本ロービジョン学会学術総会(岡山県倉敷市)において、「産業医から相談があった事例の職場復帰」について、「その1地域で自立訓練した例」、「その2 緊急を要した例」(何れも眼科医、就労支援機関との共同演題)を発表した。
2.相談件数
平成25年4月から平成26年3月までの1年間に行った相談件数は、視覚障害当事者(家族等からの代理相談含む)に対する相談は、実人員で合計244人、医療、福祉、就労支援機関その他からの相談は実件数で72件、両方合わせた総数は316件であった。以下にそれぞれの内訳を記す。
○視覚障害当事者(244人)の内訳
[相談態様別内訳]
電話・メール等の相談 208人
ロービジョン就労相談 26人
面接による個別相談 10人
合計 244人
なお、二つのカテゴリーにまたがる場合は、重複しないように調整した。
[視覚障害当事者の地区別内訳]
函館:北海道 2人
仙台:東北 4人
東京:関東・甲 152人
新潟:信越・北陸 8人
名古屋:中部・東海 14人
和歌山(大阪):近畿 31人
広島:中国・四国 8人
福岡:九州・沖縄 25人
合計 244人
○医療、福祉、就労支援機関その他(実件数72件)の内訳
眼科医療関係者 31件
産業医 8件
就労支援機関 23件
弁護士 5件
その他(マスコミ等) 5件
合計 72件
3.成果・特徴
個々の事例の中には経年的に支援を行うことが少なくないが、そのような中で、様々な困難を乗り越え働き続けていること自体が成果であるともいえる。換言すれば、必要な訓練その他配慮を受けられるように支援できたことである。そのような中、この1年間に、職場復帰、再就職、新規就職、進学を果たしたものをあえて成果として示すと、職場復帰8人、再就職10人、進学6人、合計24人であった。それ以外に、自立訓練(機能訓練)・就労移行支援・職業訓練等、次のステップにつながったものが多数であった。
1) 職場復帰事例
職場復帰については8人を確認し、全員が何らかのロービジョンケアを受けており、その中で、保有視機能を効果的に活用することや、目的にかなった診断書の書き方について助言を受けている。また、自立訓練(機能訓練)または就労移行支援を受けた者5人、訓練を受けなかった者3人であったが、訓練を受けずに復職した者は、何れも今後在職者訓練等を検討することになっている。
2) 再就職事例 再就職については10人を確認し、このうち6人は何らかのロービジョンケアを受けていた。また、職業リハビリテーションセンターで訓練を受けた者1人(地方公務員に採用)、委託訓練を受けた者1人、就労移行支援を受けた者4人、特に訓練を受けなかった(PT等の資格ある者含む)4人であった。うち1人は、元の職場(公益法人)の無理解により職場復帰を断念し、再就職した。また1人は、一度職場復帰後、障害の悪化で退職し、療養後あらためて訓練を受け、別の会社に再就職した。
3) 進学した事例 進学については、6人を確認し、このうち4人が何らかのロービジョンケアを受けていた。進学先は、特別支援学校4人、大学(あはき、PT)2人であった。
4) 産業医が関わった事例
産業医が関わった11人は、何れも大企業で、その内容のいくつかを紹介する。
ア) 眼科医から産業医に情報提供書を発行し、それに基づき、職域の就労支援委員会で復職について検討中である。近い将来復職が見込まれているが、ここに到達する間に、眼科主治医から訓練の必要を働きかけるなど、紆余曲折を経ながら、自立訓練(機能訓練)、職業訓練を受けた。
イ) 社長が交代したことをきっかけに、リストラの話が浮上したため、視覚障害労働者にとって最も適した働き方について、本人を交えて、人事部、産業医、職業カウンセラー、職業訓練施設職員などが一堂に会して話し合った結果、安定した就労の場が確保された。
ウ) 職場復帰した患者の診察の際に、復職後の問題を把握した眼科主治医が、患者の所属する会社の産業医に情報提供し、適切な支援者につなぎ、職場定着のための就労環境の改善を図った。
エ) 進行性眼疾患の労働者について心配した産業医が、ロービジョンケアのできる医療施設とタートルにつないだことで、必要な情報を得た本人は、地域に訓練施設がない中でも可能性があることを自覚し、産業医や仲間に励まされ、遠隔地の訓練施設に独力で通い、目に頼らないパソコン操作技術を習得し、安心して、就労できている。
オ) 視力低下が進行し、音声パソコンや歩行訓練が必要となった視覚障害労働者のロービジョンリハビリテーションを行った眼科医が、在職者訓練等必要な支援を受けられるように記入した診断書と意見書を本人に持たせ、産業医経由で人事部に提出し検討してもらった結果、短期ではあるが在職者訓練とジョブコーチ支援を受けることができ、業務効率が向上した。このような訓練効果を確認できたことをきっかけに、さらなる向上訓練が受けられることを期待している。
カ) 中途で視覚障害が進行した労働者の支援について産業医から相談があり、ロービジョン就労相談の結果、いま自立訓練(機能訓練)を受講しているが、今後の復職後の配属先と仕事の内容についても引き続き情報交換をしていくことになっている。
5) 個別労働紛争解決制度等の活用
退職強要されているような相談や解雇に関する相談等については、個別労働紛争解決制度や労働審判制度を紹介しているが、それに相当する事案はあったものの、結果としては具体的な活用には至らなかった。弁護士を紹介した事例はあった。
4.合理的配慮事実等について
改正障害者雇用促進法の施行により、平成28年4月1日から、事業主に対して、障害者に対する差別の禁止、合理的配慮の提供の義務が課せられることから、関係者の間では大きな関心を呼んでいることに鑑み、参考まで、ここに合理的配慮に関連すると思われる相談にみられた事実を拾い上げ、以下に記す。
ア) 人事院通知「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」(注を参照)は、いわば合理的配慮を具現化したものといえる。リハビリテーションを受ける必要があっても、職場の人事担当者が視覚障害者のリハビリテーションを理解できず、なかなかそれを認めてくれないという相談は依然として多い。
・地方公務員のケースで、「治る見込みのない目の病気で休暇(手術などでの入院は除く)は認めない」と言われ、「もし、休むなら、目の病気でうつになったという理由で休め」と言われた。うつでは、療養中にリハビリテーションは受けることができなかった。
・地方公務員のケースで、「人事院通知」を示して相談したが、「人事院通知なんて関係ない。病気休暇には当たらない」と人事課長から一蹴された。「もし訓練を受けるならば、仕事に支障をきたさないように、有給休暇を消化しろ」と言われた。ちなみに、眼科医の「これこれこういう理由で、しかじかの視覚リハビリテーションが必要」という診断書を事前に提出してお願いしていたもの。
・障害者手帳(視覚障害5級)を提示して、障害者枠で採用された者が、その後、障害程度3級以上に進行し、業務遂行に支障が出てきたので、視覚リハビリテーションを申し出たところ、「障害者枠で採用された者は、障害が進行したからといって、その障害を理由に訓練を受けることは認めることはできない」と言われた。ちなみに、訓練さえ受ければ、業務遂行は十分可能なケース。
イ)上記のような配慮のないケースがある反面、4人がこの通知に基づき訓練を受けた。何れも公務員で、うち2人は研修扱い(国家公務員、地方公務員各1人)。
ウ)私たちは様々な機会を捉えてこの通知の存在を周知してきた。相談の中で、この通知のコピーを提供し、職場での相談に活用するよう助言してきた。その結果、官民問わず、これが後押しとなって、訓練を受けることができたケースが複数あった。
エ)「目が見えなくなっても、仕事をしたいというなら、‘出社は認める’が、‘特別な配慮はしない’ので、‘それまでと同じ仕事をしてもらう’」ということを言われたという事例が複数あった。
オ)営業職や運転業務など、これまでの仕事ができなくなっても、事務部門に配置転換を図り、それまでの経験を活かせる業務に就かせた事例が複数あった。
カ)視覚障害労働者が、自身の障害の状態やそれゆえの困難、しかるべき方法で改善の可能性があること等について、上司や人事部等に本人の力だけではなかなか理解してもらう自信がないとき、外部専門家の同席を快く認めてもらったケースが複数あった。
<注:解説>
http://www.turtle.gr.jp/kenshu.html
人事院は平成19年1月29日付けで職員福祉課長と研修調整課長連名の通知「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」(職職−35、人研調−115)を、各省等人事担当課長あてに出している。そのポイントは、(1)けがや病気が治る見込みがなくても医療行為として行われるリハビリテーションは病気休暇の対象となり得ること、(2)点字訓練や音声ソフトを用いたパソコン操作など復職に必要な技術を修得する訓練は人事院規則に基づく研修に含まれること―を各府省庁人事担当課長あて通知したもの。総務省を通じて各都道府県市町村まで通知されている。
■交流会事業報告(東京) 重田 雅敏
本事業は「田辺三菱製薬手のひらパートナープログラム」の助成を受けて実施した。
1.交流会3回実施 参加者総数176名
@ 9月21日(土) 日本盲人職能開発センター
大阪・福岡とスカイプで中継した。
講演:稲垣吉彦氏「情報機器の最近の動向と職場での実態」
タブレット端末・ガラ系携帯(スマートフォン以前の携帯電話)・パソコン新OSなどの用途や特徴について、視覚障害者や職場での使用の可能性を念頭に分かりやすく解説していただきました。
A 11月16日(土) 日本盲人職能開発センター
大阪・福岡とスカイプで中継した。
講演:石川充英氏 「視覚障害者の歩行環境の変化と単独歩行」
鉄道ホームなど視覚障害者の歩行に伴う事故の事例を具体的に挙げて、歩きスマホや訴訟社会の到来など歩行環境の変化と危険性について話されました。
B 3月17日(土) 日本盲人職能開発センター
福岡とスカイプで中継した。
講演:指田忠司氏 「視覚障害者の雇用の現状と課題」
障害者権利条約や障害者雇用実態調査の結果を踏まえて、合理的配慮やキャリア権の考え方について解説し、今後の展望を示されました。
◎成果と課題
・スカイプの検証と準備を重ね、雑音があった程度で中断もなく講演を実施できた。
・スカイプの管理に引き続き留意し、担当できる人材の確保と育成が急務である。
・参加者の増加に備えて会場内の配置や休憩時間などを再検討する必要がある。
・ボランティアの確保、協力内容の整理と依頼方法について再検討の必要がある。
・新規会場参入における運用マニュアルを文章化し、必要機材を整備する必要がある。
・2月開催を予定していたが、降雪の影響により3月に延期して開催した。
2.タートルサロン8回実施 参加者総数約270名 うち初参加約50名
情報交換や悩みの相談、気軽に何でも話せる交流の場として相談班と協力して毎月第3土曜日に実施した。
◎成果・課題
・予想を超えた多くの参加があり、強いニーズを感じた。
・開催日も定着し、能動的で気軽な参加形態が良かった。
・サロンのみ開催の場合、毎回約20名の参加がありゆっくり話を聞くことができた。
・初参加の方が毎回5〜10名と多く、個別相談や入会にも繋げることができた。
・交流会後の実施の場合、50〜65名の多数が参加し、自己紹介と近況程度しか話せなかったが、同じ障害や年齢、同じ職業や悩みなど互いに存在を確認する機会となった。
・参加者数や概要も記録して今後の参考に役立てたい。
・交流会班スタッフの増員と育成が必要である。
□関西地区活動報告 湯川 仁康
1.通常総会・講演(スカイプ大阪会場)
6月8日(土) 参加者10名
場所:(社福)日本ライトハウス情報文化センター
2.交流会
本事業は「田辺三菱製薬手のひらパートナープログラム」の助成を受けて実施した。
@9月交流会(スカイプ大阪会場)
9月21日(土) 参加者17名
(社福)日本ライトハウス情報文化センター
A11月交流会(スカイプ大阪会場)
11月16日(土) 参加者15名
(社福)日本ライトハウス情報文化センター
B2月交流会
2月15日(土) 参加者16名
(社福)日本ライトハウス情報文化センター
※降雪の影響により東京会場が中止となり、大阪会場で単独開催した。
3.関西地区交流会
10月19日(土) 参加者31名
(社福)日本ライトハウス情報文化センター
第1部 学習会
演題:「働くために知っておきたい法律知識(視覚障害者編)」
講師:弁護士 本田 里美(ほんだ・さとみ)氏
第2部 懇談会「タートルサロン」
4.就労相談会(大阪)
3月1日を予定していたが、相談希望者がなかったので中止した。
□九州地区活動報告 藤田 善久
1.通常総会・講演(スカイプ福岡会場)
6月8日(土) 参加者8名
福岡県立ももち文化センター
2.交流会
本事業は「田辺三菱製薬手のひらパートナープログラム」の助成を受けて実施した。
@9月交流会(スカイプ福岡会場)
9月21日(土) 参加者13名
福岡県立ももち文化センター
A11月交流会(スカイプ福岡会場)
11月16日(土) 参加者12名
福岡県立ももち文化センター
B2月交流会 (単独開催)
2月15日(土) 参加者11名
天神ビル
C3月交流会(スカイプ福岡会場)
3月17日 参加者9名
福岡県立ももち文化センター
◎成果と課題
・東京・大阪の器具より、一回り小さいヤマハPJP-25URを使用した結果、スカイプ使用時における通信障害がほぼ解消された。しかし他会場では聞こえないという問題があったので、スカイプ機器の設定を見直すことも必要である。
・タートルサロンの際、参加者全員がテーマに加わるようになり、情報の共有と疑問を持ち続けている参加者が減少している。
・年に3度の交流会では、タートルサロンのテーマを処理できていないという状況と併せて、参加者の皆さんから期間を縮めて交流会をおこなってほしいという要望があり、九州でもタートルサロンをおこなえるような体制を整えていきたい。
■情報提供事業報告
1.IT事業 松坂 治男
@Webの管理(外部委託)
行事等のお知らせ:5回、「情報誌タートル」:4回を掲載した。
玉手箱にデータを追加した。『ガイドブック〜視覚障害者の「働く」を支える人々のために』 (テキスト版、PDF版、html版)
寄付金・助成金のページの新設(案)を作成し、平成26年5月に掲載予定。
AMLの管理(外部委託)
「おもしろ哲学」の連載、外部で開催される各種講座の案内情報等活発な意見交換が行われた。
Bスカイプを利用した交流会開催時の通信環境の改善
接続方法を検討した結果、改善がみられたので接続方法を変更した。また、福岡においては、会議システムを導入した。それにより、中継が安定した。
C大学・会社の視覚障害者対象アンケート調査への協力
メールを使用したアンケートを各種メーリングリストの協力を得て行った。
○新潟大学 工学部 福祉人間工学科 渡辺 哲也
視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・パソコン利用状況調査2013調査票
目標件数:500件、回答件数:304件
○筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 准教授 坂尻 正次
スマートフォン・タブレット端末・携帯電話の利用状況調査票
目標件数:200件、回答件数:186件
○株式会社ゴビ・株式会社フォネックス・コミュニケーションズ
歩行補助用に電子的な視覚障害者誘導用ブロック(通称点字ブロック)
目標件数:20件、回答件数:26件
2.情報誌作成 長岡 保
@計画通り「情報誌タートル第23号」から「第26号」まで、年4回発刊した。
A昨年に引き続き、【お知らせコーナー】で、タートルの年間の活動、今後の予定等を努めて早い時期に周知するよう配慮した。
また、相談活動や必要な事務連絡については、初めて情報誌を見る方にも漏れなくお知らせするため、毎回、ほぼ同じような内容を継続的に掲載している。
B重要なお知らせについては、【お知らせコーナー】の、トップに掲載した。
■セミナー開催事業 新井 愛一郎
平成25年度は就労啓発事業チームと協力して、就労の手引書を作成し、関係機関を訪問した。
■就労啓発事業 安達 文洋
「日本郵便株式会社平成25年度年賀寄附金配分」の助成事業に、タートルの啓発事業の一環としてガイドブック作成(80万円)の助成を受けた。
作成委員会を設置し、執筆、編集を行った。2月に1000冊が完成し、関連する職業訓練施設、障害者職業・生活支援センター、日本ロービジョン学会、日本眼科学会、連合、東京経営者協会そしてタートル正会員及び賛助会員に広く頒布した。
なお、アンケートに対して、「今回のガイドブックはコンパクトにまとめられていて非常にわかりやすく、支援者だけでなく当事者にも役に立つ情報である」といった高い評価を得た。
■助成金関係 湯川 仁康
助成金の情報収集に努め、タートルの事業に合致すると思われる1件の申請を行ったが、不採択であった。
申請先団体:日本財団
助成事業名:2014年度助成申請
申請事業:中途視覚障害者の就労継続相談・交流会事業
申請額:60万円
結果:不採択
■ボランティア関係 長岡 保
@平成25年度、本部のボランティアの登録は6名だったが、仕事の都合等で2名辞められた。その後1名協力を申し出てくれたので現在登録は5名である。ただし、そのうち2名は在宅での文書校正等のみということで、交流会等で活動できるのは3名である。
A交流会、総会等においては参加者の利用路線も3本あり、安全を期するためには、3名以上の駅からのガイドが必要である。
毎回の交流会で登録ボランティアが確保できず、さいたま市のボランティア団体に協力を依頼して補った。
B地方会場では、固定したボランティアの支援が得られず、その都度探して、地方理事の工夫と奮闘に頼っているのが現状である。
C機会あるごとにボランティア協力者の募集を呼びかけているが、成果はあまり上がっていない。
D当法人の活動には晴眼者の支援が不可欠である。
【第2・3号議案】 平成25年度収支決算報告及び監査報告
***エクセルの内容省略***
【第4号議案】 平成26年度事業計画(案)
<26年度活動方針>
来年はタートルが発足して20周年の節目となりますので、その準備をするとともに、例年行ってきた1.相談、2.交流会、3.情報、4.セミナー・啓発の4事業の更なる充実を目指します。
1.相談事業は、首都圏以外の相談者にどのようにアプローチしていくかを考えていきたい。
2.交流会は、タートルサロンを継続して交流の場の提供と情報交換を行っていきたい。
3.情報事業は、昨年から実施した大学や企業の視覚障害者関連の調査・研究への協力をさらに拡大したい。
4.セミナー・啓発事業は、ガイドブックを活用して、企業に対して視覚障害者理解のための「出前講座」の実施を実現したい。
以上の事業を進めていくとともに、会員に対して事業への積極的な参加を促し世代交代の基礎を固めていきます。他団体との連携を深めていきます。また、活動資金の確保のため、助成金、寄付等を積極的に獲得していきます。
以上のように、来年の発足20周年において一歩踏み出すための提案ができるように、今年度の活動を意識的に展開していきたいと考えております。
■相談事業計画
1.相談事業は基本的に前年通りであるが、電話、メール、個別面接相談、ロービジョン就労相談を継続する。
2.昨年度から取り組み定着しつつあるタートルサロン(交流会事業)の参加者に対する相談会を行う。
3. 前年度に引き続き、従来の当事者による相談会をベースにしながら、できるだけ専門家の協力を得て、就労継続のための相談の質的向上を図る。
4.地方における相談を支援するため、スカイプ相談会をはじめ、各地区担当理事の要請があれば、現地相談にも可能な限り対応する。
5.相談担当が、相談のノウハウを共有できるような、簡易なマニュアルの作成については、引き続き検討していく。
6.眼科医や産業医などとの連携を深めるために、次の行事に参加・協力する。
@第15回日本ロービジョン学会学術総会(11月1・2・3日 さいたま市大宮ソニックシティ)
A第6回視覚障害者就労支援推進医療機関会議(11月15日 神戸市)
■交流会事業計画
1.交流会
・訓練機関の利用と就職活動、会員の体験談、相談事例から見えてくるものなど、できるだけ会員や初参加の方が必要な情報や知識を提供する。
・スカイプを使用して各会場と中継する。
@9月交流会 9月20日(土)
講師 広川 正樹氏
テーマ(仮)「事務職に向けての職能訓練と進路先」
A11月交流会
講師 市川 浩明氏
テーマ(仮)体験談「私の就職活動と職場環境」
B3月交流会 3月21日(土)
講師 工藤 正一氏
テーマ(仮)「長年にわたる相談活動から見えてくるもの」
C地域交流会を開催する。
2.タートルサロン
・気軽に話せる場として毎月第3土曜日に実施する。
・個別相談のために参加人数の確認、初参加者の連絡先、話の概要を記録しておく。
・参加人数が多い場合、特に初参加者や悩みの相談に重点を置いて話を聞く。
・開催案内の伝達方法や、個別相談の周知と場所の確保を検討する。
・地方会場でも開催を検討する。
3.運営
・前年度を踏襲し、計画通り確実に実施する。
・各会場の案内と報告について、内容確認の手続きを簡素化する。
・運営を円滑に実施するために、会場の配置や時間配分等を見直し、スタッフの役割分担も確認する。
・スカイプの運用マュアルを作成し、機材を整備する。
・第2会議室と女子会を引き続き実施していく。
・スタッフやボランティアを増員する。
■情報提供事業計画
T IT事業
1.Webの管理(外部委託)
・お知らせ・「情報誌タートル」を掲載する。
・寄付金・助成金のページを新設する。
2.MLの管理(外部委託)
タートルML・会員専用ML・役員連絡用ML
3.スカイプを利用した交流会開催時の通信の安定を図る。
・スカイプを操作できる人材を複数人確保する。
4.大学・会社の視覚障害者対象のアンケート調査への協力
・依頼があれば、積極的に協力する。
U 情報誌
・年間4回発刊する。(5月、9月、12月、3月)
・会員はもとより、会員以外で中途視覚障害で悩んでいる方に役に立つ情報誌の作成・提供に努める。
・墨字版の送付を基準としながら、会員には希望によりメール配信、デイジー版・テープ版を送付する。
・関係機関や眼科医療機関に配布する。
・当法人HPに掲載して広く社会に情報提供する。
■セミナー開催事業計画
・今年度も就労啓発事業チームと協力して活動する。
・今年度も雇用継続セミナーは開催しない。
・活動のポイントを手引書の活用に絞り、各方面、特に企業側からの反応をきちんと整理する。
・出前セミナー開催に向けて、これまでのつながりの中からセミナー開催の条件を探っていく。
・ 出前セミナーの内容を確定する。
■就労啓発事業計画
・前年度に作成した『GUIDE BOOK〜視覚障害者の「働く」を支える人々のために〜』の評価をさらに考察し、今後の増刷あるいは改定を検討する。
・セミナー事業チームと協力して、要望に応じて出前セミナーを検討する。
■助成金申請
・平成26年度各事業計画に合致する助成金の情報を入手し、各事業担当理事と協調しながら申請していく。
■ボランティア関係
・事業運営を円滑に、また行事を安全に実施するためにも、晴眼者の協力・ボランティアを積極的に募る。
・ボランティア、協力者と役員等とで、懇談の場を持ち、相互の理解を図り、円滑な会運営に資する。
・ボランティア、協力者を募るため、各種団体等に調整を図る。
【第5号議案】 平成26年度収支予算(案)
***エクセルの内容省略***
ガイドブック編集委員会
先日、会員の皆様にお送りしました『ガイドブック〜視覚障害者の「働く」を支える人々のために〜』は、完成後、多くの企業、眼科医、産業医、支援機関に配布され、視覚障害者の雇用に活用していただいています。
そこで今回は、配布先から寄せられた意見や要望をご紹介します。まず眼科医、産業医の医療関係者、続いて支援機関関係者の意見と感想をまとめています。
1.眼科医・産業医
●早速拝読いたしましたところ、内容からして多くの眼科医およびロービジョンケアにかかわる人たちに読んでいただきたい、もしくはハンドブックとしてそばに置いておいていただきたいものだと感じました。 特に有用だと思ったところは、「視覚障害者への仕事を考えるポイント」を具体的にまとめられているところや、お役立ち情報として連絡先がまとまって掲載されているところです。今後は、ロービジョンケアに携わる多くの医療関係者に配布できればと思います。
●企業や就労者には具体的な事例もあり、とても使いやすいガイドであると思います。今後、産業医研修会や企業内セミナーにおいても活用させて頂きたいです。
内容に関しては可能であれば、今後の改訂版には、産業医や眼科医へ向けたページを追加して、具体的に配慮すべき点や産業医であれば企業側への指示の出し方のチャート、眼科医であれば産業医との連携での留意点や対象別(就労希望か日常生活の確立か等のニーズ別)の紹介すべき施設等のチャート等があると、より一層日々の業務に活用できるかと思います。
●見開きで一症例ずつ事例が載っていて、大変見やすいと思いました。
具体的な就労できたケースを知ることは当事者にとって励みになると思います。あと個人的にイラストがとても可愛くて気に入りました。
ご提案としては、タートルの活動内容やアプローチの仕方をもう少し前面に出してアピールされたほうがよろしいかと思いました。最初から事例集であったので、少し違和感を感じました。
●ガイドブックは私は非常によいと思っています。事例を最初にもってくることは、通常と多少異なりますが、我々、医療では印象を強くするために使う方法で、よくあることです。
しかし、ポイントがわかりにくいとの指摘もうなずけます。太字強調やまとめをつくってあげた方が良かったかもしれません。マンガチックの絵はとてもよいです。
総じて、素晴らしいので、私は大いに活用します。
今、産業医との連携強化を図っており、産業医の存在を皆さまに知らせるよい機会
となりました。
ケースバイケースで難しいですが、流れを示すフローチャートがあった方がよかったかな、とも思いました。
●わかりやすく書かれていて、就労について、いろいろ知ることができました。ロービジョンの患者さんや家族にとって、助けになると思いました。
私の勉強不足でジョブコーチ制度については、初めて知りました。眼科医にも非常に参考になると思いました。
また、産業医や企業に対する眼科医の役割の重要性を再認識しました。ただ、実際にそのような場合に私はきちんと対応できるだろうかという不安もあります。実例がいろいろありましたが、その時に眼科医、産業医、企業が実際にどのように、行動し、話し合いをしたのか、具体的に知りたいと思いました。
●本来お渡しする対象とされた以外の方々にも参考となるとてもよい内容だと思っているので、どんどんあげてしまうとすぐになくなってしまうなあ、と思っていました。ホームページを拝見し、PDFでデータが提供されていることを知りましたので、ここから印刷してお渡しすることといたします。
当事者や会社側の人たち双方への配慮が行き届き、いろんな要素を盛り込んでいて、しかもわかりやすいため、両方の立場の人に読んでもらい、有効に活用していただけるだろう、と思いました。
●事例などが掲載されており非常に良いのではと感じました。
要望点として1点ございます。産業医が読むモノとしましては、視覚障害者の方が出た場合に、まず、どこに相談すべきか分かりづらいと感じました。「タートル」or「ロービジョン対応医療機関リスト」をより前面に出されたほうが良かったのでは? と感じた次第です。
●私達医療職も、視覚障害者の復職のお話を伺った際、どのような復帰が適切かわからず途方に暮れてしまいます。会社側に具体的な復帰のイメージや知識がなければ十分な対応がなされず、ご退職されてしまう方は少なくないと思います。
そういった不幸な結果にならないよう、このガイドブックを社会に広め、「前例がない」という理由や「危険であるから」というような理由で視覚障害者が働けなくなってしまうことがないような社会になってほしいと考えます。
いただいたガイドブックは、具体例もありイメージがわきやすく、多くの人に理解いただけるものかと思います。
特に、会社側にとっては「視覚障害者への仕事を考えるポイント」の項目が非常に重要な部分であり、ここから復帰に当たり本人に振り分ける仕事を考えることになるかと思います。
また、読み上げソフトを導入し耳から情報を得るということも知っておきたい部分かと思います。
日本にはまだ社員のことを大切に思う会社がたくさん残っておりますため、そのような会社に積極的にこのガイドブックを導入していただけたらと思います。
●当事者にとっても、支援者の眼科医や産業医にとっても、わかりやすく役に立つ冊子だと思いました。事例は当事者の方たちへの応援メッセージになるでしょうし、ロービジョンケアに疎い眼科医にも手だての糸口となると思います。急性期病院の外科系眼科医の先生方にも読んでいただきたいなあと思いました。
「受容・情報収集・連携」から自立訓練、職業訓練の項は、企業のトップや人事、産業保健スタッフに読んでいただきたいです。
後半部分は当事者の方、雇用者側の方の両方に良い内容と思います。職場内での環境整備のページは、それこそ「明日から使える」と、産業医が飛びつきそうです。
眼科医の立場でロービジョンケアをしていると、生活訓練や職業訓練、就労先に関しては、地域差が大きく地方ではリソースを見つけること自体に苦労されている先生方が多く、この地域間格差をどう考えるか、埋めて行くかが課題と考えます。
かなり大きな重たい課題ですので、難しいかもしれませんが、改訂版の際には、生活環境や就労環境の地域差について触れていただければと思いました。
●ガイドブックの内容ですが、自立訓練や職業訓練などの紹介やジョブコーチのことも記載されていて、視覚障害の事例の経験がない方にも情報として知っていただくという意味では、良いのではないかと思いました。強いて言えば、ロービジョンケアで使われるツールについて、私たち産業医はあまり知識がないので、ビジュアルの情報(タイポスコープといってもどんなものか思い浮かばない方が多いのではないでしょうか)が少しでもあると良いように思いました。
●残念ながら、弊社での視覚障害者の就労は相変わらず厳しく、就労継続に至っていないのが現状です。しかし、ガイドブックの情報を本人、人事担当者や職場の上司に繰り返しお伝えすることで、本人は新たな道を模索し、人事担当者や上司は会社でできることを検討するという動きが出てきています。
また、企業の障害者の法定雇用率の変更に伴い、弊社でも視覚障害者の応募が増えてきています。採用担当者が私たち産業医にアドバイスを求めてくるケースもでてきました。
少なくとも、頭ごなしに見えなければ仕事ができない、という状況ではありません。少しずつ変わってきています。
2.支援機関関係者
●視覚障害の方を雇用している事業主にお渡しするのにちょうどよい冊子と思います。
最近老眼がすすんでいるので、字は小さく感じました。情報量をとるか、字の大きさをとるか難しいところですね。サイズや厚さは事業所の方の机上に置かれる上ではジャストサイズと思います。
●事例を中心に編集されたようですが、地域センターでは、現在、視覚障害のある利用者が殆どいらっしゃらない状況なので、いざ、そのようなご利用者が相談に来られた際にどのように対応してよいか、戸惑うカウンセラーも少なくないものと思われます。
そのため、支援の流れ・ストーリーを理解する上で、こうした事例はたいへん参考になるものと思います。
●事例が多数紹介されていて、とてもわかりやすく使いやすいと思います。
現在ジョブコーチ支援で関わっている事業所では、業務の切り出しに悩まれていて、他社での事例を知りたいと言われているので、早速活用させていただきます。
全国で東京だけが突出している状況かと思うのですが、事務職での視覚障害者の就職事例についてご紹介できる事例が1例でも増えると大変助かります。
●まず考えたことが、どのようにすればせっかくのこのガイドブックが活用できるだろうか、ということでした。「事例」から入っているだけに、視覚障害の方の就労支援について何らかの経験や関わりがあった人、もしくは経験がなくとも関心がある人、のような方が入手して初めて生きるガイドブックとの印象を持ちました。
せっかくのガイドブックですが、眼科学会の理事、眼科医会の理事などに何の説明もなく渡すだけでは、所詮彼らのタンスの肥やしにしかならないように思います。彼らに渡すときには、視覚障害者の方たちへの就労支援がなぜ必要なのか、そこに眼科医がなぜ存在する必要があるか、どのような役割を眼科医が求められているのか、ということを説明しないと理解できないと思いますし、ガイドブックが生きないように思います。
また、このガイドブックは表題にありますように、視覚障害者の「働く」を支える人々のために、ということで必ずしも眼科医を対象とされているわけではないので、これらのことに何も関心のない眼科医はせいぜい事例1、2を見てもらうことしか期待できないような気がします。
もとより事例1、2を読んだ眼科医が、この事例に触発されて視覚障害者の方への就労支援に関心を示すとか、何かの動きを期待するというのは大変難しいように思います。
多分一般の眼科医では、他の事例にあるようなジョブコーチとかICTとかヘルスキーパーなどはほとんどわからないのではないでしょうか。
結論的なことを申し上げますと、6つの事例は比較的規模の大きい企業、いわゆる一つの企業に産業医がいるようなところでの就労支援を事例として取り上げていらっしゃるように思いますので、このガイドブックの対象は眼科医よりもむしろ産業医ではないかと思いました。
産業医に対して、視覚障害のある方への就労支援についてレクチャーする機会があれば、このガイドブックはより生きるように思います。
●ガイドブックには、ケアとサポートと事例が、わかりやすく示されており、職業安定所職員をはじめ、就労支援に関わる人の研修に最適な資料だと思います。視覚障害者の継続雇用や職域拡大につながると確信します。
ガイドブックは、携帯しやすい大きさで、便利ではありますが、逆になくなりやすい大きさではないかと思います。ガイドブックは、「働く」を支援する人の職場に常備されて、活用されるのが望ましいと考えますので、今後とも事例を増やす等されて、A4版を目指されてはいかがでしょうか。
職業安定所職員は、2〜3年で異動するため、障害者の職業紹介業務の専門性が高まらず、最近は、障害者自立支援法に基づき設置された障害者自立支援センター(職員が異動せずに経験が長い)に頼る傾向が強いように思います。障害者自立支援法に基づく就労支援の施設、職員にガイドブックが届くと、効果的ではないかと考えます。
●冒頭の事例については、これはうちの会社には関係ないと思われてしまうことのないように、そうではないのだということを意識づける工夫があればよかったと思いました。また本文中に出てくる文言の中でも、キーワードになる文字を強調文字にするとか、インパクトのある見出しがあるとよかったのではと感じました。
晴眼者は小さな紙を挟めておくと、それは必ず目を通すので、そのような挟み込みをあえて行うという方法もあるのではないか。
3.まとめ
以上、これまでに寄せられた意見・感想の一部を紹介しましたが、お読みいただいた方からは高い評価をいただいており、すでに現場での活用も始まっているようです。また改訂に向けての貴重な意見や要望も多く寄せられました。
今後、さらなる内容の充実を図り、継続的に配布していくために、もっと多くの意見、特に企業の感想を収集し、蓄積していくことが大切です。会員全員で、様々な意見に一人でも多くの声に耳を傾け、共有していきたいと思います。
また会員の皆様ご自身の意見もぜひ、お聞かせください。
今回のガイドブックの完成はゴールではなく、次の目標に向けたスタートととらえ、今後もタートルとして継続的に取り組んでいけたらと思います。
◆『GUIDE BOOK 〜視覚障害者の「働く」を支える人々のために〜』完成のお知らせ
昨年より取り組んできました「日本郵便株式会社 平成25年度年賀寄附金助成事業」による「働く」をテーマにした小冊子が、2月に無事完成いたしました。タートルが蓄積してきた経験をもとに、視覚障害者の復職・就職の事例と、そのために必要なロービジョンケアなどをコンパクトにまとめました。職場でサポートしてくださる方々や、眼科医の先生に、ぜひ読んでいただきたい内容となっています。
また、その内容はタートルのホームページ(http://turtle.gr.jp/)に掲載しました。PDF版とテキスト版をダウンロードできますのでご活用ください。
◆ ご参加をお待ちしております!!(今後の予定)
《平成26年度通常総会&記念講演》
6月21日(土)
午前(総会) 午後(講演会+交流会)
詳細は本誌に掲載しています。
《タートルサロン》
毎月第3土曜日
於:日本盲人職能開発センター
14:00〜16:00 交流会開催月は講演会終了後
《交流会》
9月20日・11月15日・3月21日
13:30〜16:30
◆一人で悩まず、先ずは相談を!!
見えなくても普通に生活したい、という願いはだれもが同じです。職業的に自立し、当り前に働き続けたい願望がだれにもあります。一人で抱え込まず、仲間同志一緒に考え、フランクに相談し合うことで、見えてくるものもあります。気軽にご連絡いただけましたら、同じ視覚障害者が丁寧に対応します。(相談は無料です)
◆正会員入会のご案内
NPO法人タートルは、自らが視覚障害を体験した者たちが「働くことに特化」した活動をしている団体です。疾病やけがなどで視力障害を患った際、だれでも途方にくれてしまいます。そんな時、仕事を継続するためにはどのようにしていけばいいかを、経験を通して助言や支援をします。そして見えなくても働ける事実を広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。当事者だけでなく、晴眼者の方の入会も歓迎いたします。
◆賛助会員入会のご案内
NPO法人タートルは、視覚障害当事者ばかりでなく、タートルの目的や活動に賛同しご理解ご協力いただける晴眼者の入会を心から歓迎します。ぜひお力をお貸しください。また、眼科の先生方はじめ、産業医の先生、医療従事者の方々には、視覚障害者の心の支え、QOLの向上のためにも積極的な入会あるいは係わりを大歓迎します。また、眼の疾患により就労の継続に不安をお持ちの患者さんがおられましたら、どうぞ、当NPO法人タートルを紹介いただきたくお願いいたします。
◆会費納入ならびにご寄付のお願い!!
日頃は法人の運営にご理解ご協力を賜り心から御礼申し上げます。
平成26年度もスタートしました。つきましては、まもなく会員の皆様には事務局より会費の振込用紙を送付させていただきます。法人の円滑な運営のためにも、お手数ですが早めの納金手続きをお願いいたします。
また、ご案内のとおり、当法人の運営は資金的に逼迫している状況です。皆様方からの温かいご寄付を歓迎いたします。併せてよろしくお願い申し上げます。
≪会費・寄付等振込先≫
ゆうちょ銀行
記号番号:00150-2-595127
加入者名:特定非営利活動法人タートル
◆活動スタッフとボランティアを募集しています!!
あなたも活動に参加しませんか?
NPO法人タートルは、視覚障害者の就労継続・雇用啓発につなげる相談、交流会、情報提供(IT・情報誌)、セミナー開催、就労啓発等の事業を行っております。これらの事業の企画運営等、一緒に活動するスタッフとボランティアを募集しています。会員でも非会員でもかまいません。具体的には交流会の運営、事務局のお手伝い、在宅での情報誌の編集作業等です。できる範囲で結構です。詳細についてはお気軽に事務局までお問い合わせください。
☆会員募集のページ
http://www.turtle.gr.jp/join.html
☆タートル事務局連絡先
Tel:03-3351-3208
E-mail:m#ail@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)
「春は必ずやって来る」ほんとうですね!
関東地方は、2月に、2度にわたり、観測史上初めてという大雪に見舞われました。雪国にお住まいの会員の方に、叱られるかもしれませんが・・・。
18歳まで、雪国で生まれ育った自分ですが、40年以上も、雪とはほとんど縁のない生活になっていました。視覚障害になっても、雪というものをあまり意識していなかったのですが、今年の冬は、普段でも行動が難しい視覚障害者にとって、改めて、雪が何倍も行動を阻むのだなと教えられました。
100メートル離れたバス停、50メートル先のコンビニへ、病院には、・・どのようにして?
雪国にお住まいの会員の方、どのような工夫をされているのでしょうか???投稿などいただけたら、ありがたいですね。
さて、情報誌第27号は、雪のため2月の交流会(講演)が1ヶ月遅れたこと及び紙面の関係で、いつもの、講演関係の記事および、「職場で頑張っています」「定年まで頑張りました」の記事はなしで、総会関係の内容と、「ガイドブックに対する意見の紹介」にさせて頂いております。
(長岡 保)