特定非営利活動法人 タートル 情報誌
タートル 創刊号
「特定非営利活動法人 タートル」は、中途視覚障害者の復職を考える会(通称、タートルの会)から、平成19年12月3日付けで移行しました。
私は、図らずもこの法人の初代理事長を仰せつかることになり、これまでと違った身の引きしまるおもいにあります。
「特定非営利活動法人 タートル」は、視覚障害者が当たり前に働ける社会の出現を目指し、「一般就労促進」、「就労継続」、「定着」等について、さらに、広く社会連帯の理念にもとづく一般社会のご理解ご協力をいただける活動を行うこととしております。
つきましては、皆様方には、新生「特定非営利活動法人 タートル」に対しましても、タートルの会同様、変わらぬご協力ご支援を賜りますようによろしくお願い申し上げます。
さて、局面の大きな変化があったとき「潮目が変わった」というように表現することがありますが、平成19年は、中途視覚障害者の雇用継続の支援に関して、制度面で国内、あるいは国際的に「潮目の変化」を思わせる大きな動きがありました。
潮目を変えたまず1つは、人事院が平成19年1月29日付けで発出した「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて(通知)」であります。これによって、公務員については、治る見込みのない疾病も病気休暇が認められることになったこと、そして、生活訓練、職業訓練などいわゆる視覚障害リハビリテーションが、健常者の研修の根拠として定められていた規定を適用し、国、地方自治体の責務において、実施することが明確になったことです。
2つ目は、厚生労働省が平成19年4月17日付けで地方労働局職業安定部長あて発出した「視覚障害者に対する的確な雇用支援の実施について(通知)」であります。これによって、ハローワークが、雇用主や、障害当事者に対して行う雇用継続等の支援について、視覚障害者も事務系職種等においてIT機器を駆使し働ける具体的な支援方法が指示されたことです。
3つ目は、日本政府が平成19年9月28日付けで「障害者の権利に関する条約」に署名をしたことであります。これによって、批准や、それに並行して国内法制の整備等が図られてゆくだろうことが期待されていることです。
この条約は、国際的に1948年の世界人権宣言以来の懸案事項に決着をつけたものと言われており、大きな潮目の変化であります。
このように、昨年あたりまではまったく予測もつかなかった視覚障害者の雇用継続支援について、相次ぐ行政の積極的な対応策によって、潮目を変える追い風が吹き始めました。
「特定非営利活動法人 タートル」が、「潮目が変わった」丁度この時期に衣替えできたことについては、幸先のいい何かを感じる者です。
衣替えを果たした「特定非営利活動法人 タートル」は、これら新たに導入された制度の履行はもとより、周知徹底や促進、並びに広く一般社会への啓発活動等について、皆様方のご理解ご協力のもと、「変った潮目」にのっとり尽力してゆきたいと思うものです。
このたび、非営利活動法人 タートルの副理事長に就任致しました松坂治男でございます。
このような大役を仰せつかるには、まことに微力でございますが、先輩各位ならびに会員の皆様のご助言、ご協力をあおぎ、活動に邁進してゆく決意でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、役員就任にあたり、一言抱負を申し上げたいと思います。
タートルの会として、これまで歩んできた13年の実例・実績・経験を生かして、更なる飛躍を目標に、関連団体・施設等とのネットワークを充実して、視覚障害者が安心して働けるように、更に、視覚障害者が普通に生活できるよう努力していきます。
我々が乗り越えていかなければならない壁はあまりにも厚く、かつ高いのであります。
その意味からも、今後は再び初心に帰り、ともに理解し合い励まし合って、会の隆盛に向けて努力を重ねたいと考えております。皆様方のあたたかいご理解ご協力を心からお願い申し上げ、就任のごあいさつと致します。
今般、NPO法人「タートル」発足に伴い、理事に拝命されました安達文洋です。
任意団体「タートルの会」は、過去、13年間中途視覚障害者の就労、復職を中心に活動して大きく発展して来ました。これも皆様のご協力と先輩たちが築き上げられた実績の賜物と感謝しております。
その歴史と伝統を守り、視覚障害者が安心して生き生きと生活が出来るようにNPO「タートル」の理事の一人として微力ながら次の3点に力を注ぐ所存です。
これからも皆様のご支援のほど、宜しくお願いします。
簡単ではございますが、ご挨拶まで。
理事に就任しました新井愛一郎です。これまでのタートルの活動で大切にしてきたものは、出会いと、交流、連携ということでないかと、私は考えます。これは、私の中でも大きな意味を持っています。先日、新しい名刺を作った際に、何か一言入れようと思い、「視覚障害者が生き生きと生活できるためのネットワーク作りを目指します」という一文を入れました。
たくさんの出会いがあり、それにより、壁を乗り越えて進んでいく、そして今度は自分がまた、たくさんの人と出会い、共に壁を越えていくことを共有化していく。この連鎖こそ、何より大切にしたいと思います。
私達の活動は、たとえ眼が見えなくても、誰もが、生き生きと生活していけるようにしたいと言うことです。タートルの会に参加している一人一人が、自分の体験として、非常に貴重なものを身につけていると思います。それを、みんなが出し合い、繋がっていくことで、私は、素晴らしいものが出来てきていると確信しています。そして、この繋がりを、タートルの会内部だけで終わらせるのではなく、もっと大きな繋がりとして発展させていきたいと私は考えます。
日本中のどこに居ても、中途視覚障害の方が、この繋がりにもれなく参加していけるシステムを作るのが、私の夢です。私のささやかな活動がそのための一歩になればと思います。
理事の 石山朋史と申します。就任に当たり、一言。企業が障害者を雇用する理由として障害者法定雇用率というものがあります。現状、雇用率が未達成の企業が大半を占めており、その場合、企業はペナルティを受けています。
そのことから企業は障害者雇用を積極的に行い、結果、障害者本人の就職・転職活動は売り手市場となっています。しかし、その環境下、視覚障害者の就労については相変わらず厳しい状況が続き、売り手市場のはずなのに就労できないというギャップが生じているのが現状です。そのギャップを埋めることが「タートル」のミッションと考えます。
視覚障害の雇用が進まない大きな要因は、簡単にいうと「企業は目が見えなければ何も仕事はできないと思っている。」ということであり、その懸念される点を払拭するためにも「目が見えなくても仕事はできる。」ということを社会にアピールすることです。
そのためにも「タートル」では視覚障害者の具体的な就労事例を収集し、各作業レベルまで深堀した業務遂行手順などを企業に提案および視覚障害者本人にアドバイスすることで視覚障害者の就労環境は改善されると思います。
私は工藤正一と申します。理事就任に当たり、ご挨拶申し上げます。
私は、ベーチェット病で30代後半に失明しました。当時の私には、将来を想像だにできませんでした。幸いにも、私は家族や多くの人たちに支えられ、リハビリテーションを受けて、1991年に原職復帰をしました。それからも、いろいろな人に出会い、多くの仲間に励まされて、今もこうして働き続けられていることに深く感謝しています。そして今、自分自身の体験を少しでも社会に役立てていきたいと考えています。
タートル定款第3条には目的が書かれています。私はその趣旨を次のように要約しています。(1)ロービジョンケア:「目は見えなくなっても働けます」(眼科医=情報提供)(2)リハビリテーション:「中途視覚障害者の雇用継続支援の相談はまずハローワークへ」(ハローワーク=連携とチーム支援)(3)事業主の理解と協力:「君が頑張るなら応援します」(職場=労使の協力と支援)(4)当事者による相談支援:「頼りになる多くの仲間がいます」(タートル=連携と協力)(5)以て、中途視覚障害者の安定した就労を促進し、その経済的自立と福祉の増進に寄与します。
私は、この目的達成のために、微力ではありますが、多くの皆さんと連携、協力しながら頑張っていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
この度「NPOタートル」の理事になりました杉田ひとみと申します。
タートルの会にお世話になって8年になります。その間に多くの方に出会うことができました。私自身が視力が低下する中で皆様に元気付けられてきました。厳しい視覚障害者の就労について皆様と一緒にこれからも考えていきたいと思います。
NPOタートルに生まれ変わってもこの会に寄せる思いは変わることはありません。以前ご講演をいただいた日野原先生のお言葉をお借りして「ペイ・フォワード」の心で私にできる活動を続けていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。(註:日野原先生の講演録は「タートル」(33号)に掲載されています)
理事 に就任いたしました森崎正毅と申します。「特定非営利活動法人としての再出発」の思いを述べさせていただきます。
平成7年に発足し、以来視覚障害者の働くという基本的な問題に取り組んできました「中途視覚障害者の復職を考える会(タートルの会)」が、このたび特定非営利活動法人タートルとして新たな活動を展開することになりました。
わたくしは、日本障害者雇用促進協会(現高齢・障害者雇用支援機構)の障害者職業総合センターに勤務していた頃、タートルの会の存在を知り、どんな人が、どのような活動をしているのかに関心を持ち、交流会に参加しました。そこには、もちろんそれぞれいろいろな問題をかかえていたのでしょうが、わたくしの先入観からまったく異なった生き生きとした人たちがいました。たまたま四谷から間近な職場に移ったこともあって、会の活動のお手伝いをするようになりました。
特定非営利活動法人としての活動は、これまでの任意団体の活動を土台として社会に向けた活動を行っていくということになります。タートルの会としてのよさを残し、会員の意見が反映された新たな活動が展開されることが大切だと思います。
職業選択は自由となっていることは、だれでも知っていることですが、しかし、視覚障害者が公務員になりたい希望があっても、入口で排除される不平等な時代が長く続いていました。人事院が強い要望を受けて、「国家公務員試験の点字受験」を認めたのは、1991年でした。一方、中途で視覚障害を受傷した者に対する就労継続への対処法がなかったことに関連して、交渉の結果、人事院は2007年1月29日付けで、その対処法に関する「音声ソフトを用いたパソコンの操作訓練等のリハビリテーションに係る通達を発出しました。点字受験制度は視覚障害者に国家公務員への門戸を開いたものでしたが、今回のリハビリテーションに関する通達は中途視覚障害者の就労継続への道を開いた画期的なものであり、そして、私たちには必要不可欠な音声ソフト等に市民権が与えられた瞬間でもありました。
人事院が各府省庁(都道府県含む)人事課長あて発出したこの「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」通知)」(平成19年1月29日付け、職職−35号、人研調−115号)に関して、交渉に当たった立場から、新しくできた制度の内容や、関連する事項について考えてみたいと思います。
通知は「病気休暇」と「研修」の運用の2本立てで構成されています。
まず、病気休暇について「1. 病気休暇の運用について」において、社会復帰のためにリハビリテーションを受ける場合、「負傷又は疾病が治る見込みがない場合であっても、医療行為として行われる限り同様であること。」として、病気休暇の範囲を拡げました。これまでの行政の解釈は、病気休暇は、「負傷または疾病」を治すための療養に対して付与されるものであって、治る見込みがない疾病(例:網膜色素変性症等)は療養の範囲に該当しないと解釈され、病気休暇の対象にはならないとして運用されてきました。
通知書はこの不合理を修正し、医学の進歩に伴い、普及しはじめている「視覚障害リハビリテーション」という医療行為の実態に即して、治る見込みのない疾病であっても、「社会復帰のためのリハビリテーション」が医療行為として行われる限り病気休暇は認められる、とこれまでの解釈を見直したものです。
次に、研修に関して、「2. 研修の運用について」において、「病気休暇の期間の満了により再び勤務することとなった場合、又は病気休職から復職した場合、職員の能力、資質等を向上させることを目的として実施される点字訓練、音声ソフトを用いたパソコン操作の訓練その他これらに準ずるもの」を受講する場合は、健常者を対象として運用されている制度「職員の研修(人事院規則一〇ー三)」を適用する、と根拠規定を明確にしました。
なお、通知書では「病気休暇の期間の満了、又は病気休職から復職した場合」と、ケースが限定された表現になっていますが、「進行性の疾病を有する者は少しでも視力があるうちに研修を受けたいと希望するケースもあり得るので、このような時、病気休暇をとらず直接研修を受講できるか?」との質問に対し、人事院の担当課は「研修制度の目的に反するものではないので当然病気休暇の過程を経ず、直接受講できる」と回答しています。
ちなみに、研修の目的は、(1)当該職務と責任の遂行に必要な知識、技能等を修得させること。(2)職務の遂行に必要な当該職員の能力、資質等を向上させること、となっていることを付け加えておきます。
過去の例では、運悪く障害を受傷した者は、身分上の立場が不利になることを恐れ、障害の事実の報告を遅らせたり、病気休暇を取りたくても認めてもらえなかったりする事例が多発していました。その結果、ますます苦悩がかさみ心理的な疾病まで併発することになるなど悪循環の末、働き続けたい気持ちを抱きながらもやむなく退職していった現実があります。
今後は、この制度が絵に描いた餅にならないようにするために、われわれ障害者が積極的に活用を申し出ることや、眼科医に診断書を書いてもらい提出することなどがポイントになると考えます。
眼科医に書いてもらう診断書は、通知書にあるとおりずばり、「リハビリテーションのために、XXカ月の病気休暇を必要と認める」とか、「視覚リハビリテーションのために、XXカ月の期間の研修を必要と認める」などのようにしてもらえばいいのではないかと思います。
治る見込みのない疾病を有する人の相談を受ける場合、決まって問題になるのは職場が病気休暇を承認しやすい診断書の表現をどのようにすればいいかが課題でした。
この課題について、何かおかしい!、これは、もしかしたら制度上、あるいは運用上のしくみに欠陥があるためではなかろうか?との疑問を抱き続けていたため、思い切って人事院に対し率直に相談したことに始まります。
私が相談した事項は、
(1)病気休暇の目的は、もちろん病気を治すというのは理解できるが、世の中には医学の力をもってしても治らない目の疾病が現存します。そのような者が病気休暇を認められず不利益を受けている事実があるので、このような不利益の改善を図ってもらえる方法はないだろうか?
(2)病気休暇には病気を治すほか、健康な体で職務の能率を上げるようにするネライもあると思う。目が見えないだけという疾病者には、リハビリテーションを受講させ、一定の仕事を効率的に遂行させるというのが人材の有効活用になるのではなかろうか?ただ漫然と机の留守番をさせるのはもったいないと思う。
(3)現に、視覚障害者の中には、会社員、公務員などとして一般就労している現実があることを考慮すべきではないだろうか?というものでした。
☆2005年10月17日 人事院に対し、病気休暇とか療養について、まず口頭で質問。
11月2日 人事院担当課から電話で、「検討してみたい」との回答。
11月4日 、この情報を会の幹部に相談。その結果、全国視覚障害者雇用促進連絡会(雇用連)が交渉に手慣れているので表にたってもらったらという助言を得て、雇用連にお願いすることとなった。
11月6日 雇用連の幹部の了解の下、同定期総会において人事院交渉が決議された。これを受けて、人事院担当者に対し、こちらの@所属を表明、A要望を文書で正式に出したい、B回答も文書でほしい、と打ち合わせの結果、人事院側も文書処理するのが望ましいと賛同し、交渉は軌道にのった。
☆2005年12月12日 第1回交渉において、次の「要望書」を提出。
ーー 国家公務員である職員が在職中、疾病のために視覚障害を有するようになった場合、日常生活能力の向上及び労働能力向上のための視覚障害リハビリテーションを病気休暇により容易に受けられるようにしてください。
なお、万一できない場合、その根拠をお示しください。
☆2006年2月13日 第2回交渉。関係部局との調整中とのこと。
☆2006年12月14日 第3回交渉。リハビリテーションを研修制度の中で実施できないかということについて、関係部局と調整中とのこと。
☆2007年1月23日 人事院、研修を含んだ決裁が取れそうとの情報(内容メールで提供)。
1月29日 予告どおりの決裁が取れたので、各府省庁人事課長あて文書の発出を行った。
2月9日 第4回交渉において、公文書の写しを受領し、交渉は終結した。
人事院は、地方公務員に対しても、総務省公務員課を通じ、各府省庁人事課長あてに出した内容と同じ通知を各都道府県(政令指定都市含む)人事課長あて発出したので、国家公務員と同様の措置が講じられることになっております。ということで、地方公務員においても、視覚障害当事者から積極的にリハビリテーションの受講を申し出ることが肝要となります。
また、通知上ではなんらの言及はなされていませんが、公益法人関係においては、通常国の制度に準拠することが多いので、そのような団体に勤めておられる方々においても、同様に対処されることが肝要と思っています。
民間企業で働く視覚障害者にとっても、今回の公務員に対する措置と、同様の措置が講じられることは労働者として当然のことと考えられます。
そのためには、まず、主務官庁である厚生労働省が、労働基準法等関係法令の運用について、人事院と同様の考え方に基づき、企業においても一定のルールづくりについて指導する必要があると考えます。
各企業はHPで「わが社の研修制度は充実しています」などと、力説しているものを見かけることも多々あるので、民間企業で働く方々も、まずはかまわず眼科医に診断書を書いてもらって提出することも一つの方法ではなかろうかと思っています。
なお、2007年7月30日に、雇用連等が厚生労働大臣あて要望書を提出しております。
まず、メリットについてですが、この通知が円滑に実行されていけば、(1)障害を受傷した当事者が、早めに就労継続に向け対処できることが期待されること、(2)障害者をかかえることになった所属長は、根拠が明示されたことで対処しやすくなったこと、(3)研修の受講の結果、職務効率を何倍も高めることができるようになること、(4)仕事が効率的に行われるようになれば安定雇用につながることが期待できること、(5)雇用が安定すれば経済的自立が図られることになることなど、多くの効果が期待されます。
今後は、働く意欲のある視覚障害者は、当たり前に働ける環境が広がるようになることが期待されるものと確信しております。
次にデメリット(課題)については、研修の実施主体者が各府・省庁、各都道府県などであるため今後所定の予算措置とか内部規定の整備が伴うことが予測されるため実行が遅れると懸念されること、いつ視覚障害者が現れるかわからないため、周知徹底が図られるか懸念されること、対象者は公務員に限られているという限定的なものであること、通常、国の制度に準拠することが多い公益法人関係が抜けていること、民間企業への波及を図っていく必要があることなどが挙げられます。
イギリスでは「DDA=障害者差別禁止法」において、中途で障害になった場合復職に向けたリハビリテーションを在職のまま受講できる権利が規定されているといわれます。フランスでは、「障害のある人々の権利と機会の平等、参加及び市民権に関する法律」(2005年2月11日法)が制定され、リハビリテーション休暇制度が創設されたと言われます。
わが国の場合、イギリスやフランスに遅れをとっていますが、この通知書にはイギリス等の制度に劣らない大きな意義が含まれていると言えます。
私に与えられたテーマは、平成19年4月17日付けで厚生労働省障害者雇用対策課長から全国の労働局、ハローワークに出された「視覚障害者に対する的確な雇用支援の実施について」(以下、「視覚支援通知」という。)の解説です。そもそも、特定の障害に特化した通知は非常に希です。新しい法律ができた場合には、周知を図る必要から特にその障害についての通知を出すことはありますが、このように視覚障害者に特化したものはおそらく初めてです。私は、タートルの会では副会長を仰せつかっておりますが、実は、この通知には直接仕事として関わりました。だから言えることですが、この通知は中途視覚障害者の実状を踏まえたものとなっていると明言できます。
昨年、タートルの会は社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会の援助を受けて「視覚障害者の就労の手引書=レインボー」を発刊しました。今年もまた同協議会の援助により、「視覚障害者の雇用継続支援実用マニュアル」(以下、「実用マニュアル」という。)を発刊しました。この「実用マニュアル」はこの通知を実践的に推進するものとなりました。最後のところで、このマニュアルの内容にも少し触れたいと思います。
視覚障害者の雇用・就労の厳しい現状がある一方、近年のIT技術の発展と普及により、視覚障害者の事務職への広がりが見られるという状況があります。さらに、在職で中途視覚障害となった方が退職することなく働き続けられるよう、雇用継続が重要な課題となっています。
ハローワークにおける障害者の職業紹介状況を見ると、平成18年度の就職状況は全体で43,987件と、過去最高を示しました。その内訳は、身体障害者25,490件、知的障害者11,441件、精神障害者6,739件、その他の障害者317件となっています。身体のなかでの視覚障害者は1,908件となっています。さらに、視覚障害者の過半数(重度視覚障害者では3分の2)が「三療業」(あんまマッサージ指圧、はり、きゅう)への就職であり、視覚障害者の雇用状況は、「三療業」への依存傾向にあります。加えて、「三療業」への晴眼者の進出がある一方で他の職域の開拓が進んでいないことから、視覚障害者の雇用・就業状況は厳しい状況にあります。一方、近年、視覚障害者の職域として期待されている音声パソコンを活用した事務的職業への就職割合は13.8%(重度視覚障害者は9.8%)です。身体障害者全体の28.9%には及びませんが、「見えないイコール仕事はできない」という偏見や誤解があるなかで、現にこれだけの視覚障害者が就職していることは、注目に値し、可能性のある職域ではないかと思います。
かつては、ハローワークは視覚障害に対する知識も乏しく、「雇用継続に関する相談にはほとんどのってもらえない」「頼りにならない」という不満の声がよく聞かれました。皆さんはハローワークにどんなイメージを持っているか分かりませんが、この「視覚支援通知」は、究極のところ、「ハローワークをもっと活用してください。ハローワークは、視覚障害者の雇用継続支援にも取り組んでいきます。」と、宣言したものといえます。しかし、ハローワークには障害者専門の相談窓口があるものの、人事異動もあり、初めて障害者を担当する職員も少なくありません。その一方で、より高い専門性を求められています。社会のニーズは身体障害者から知的、精神、発達障害、難病者の支援へと広がっています。そういうなかで、職員も相談力を高める努力をしておりますが、もとよりハローワークは万能ではありません。そこで、それぞれに対して的確な支援を行うためには、ハローワークのなかだけで問題を解決しようとするのではなく、関係機関との連携と協力、チーム支援により行うことが不可欠なのです。
視覚障害者に対する支援の在り方についても、「チーム支援」の考え方に立って、ハローワークだけで問題を抱え込むのではなく、当事者を含む支援団体などとも連携しながら支援を行うということを、全国の労働局、ハローワークに指示したものです。いわば、ハローワーク職員のための指針、手引書といえるものです。
「視覚支援通知」の内容を一言でいうと、ハローワークにおける視覚障害者の雇用支援には、「求職視覚障害者に対する支援」と「在職視覚障害者に対する継続雇用支援」の2本柱があって、それぞれに対して、的確な雇用支援を行うことが必要であるとして、具体的な支援のポイントを指示しています。特に、中途視覚障害者の継続雇用支援については、事業主の理解が重要であるとし、具体的には、事業主の理解と協力を求めながら、関係機関のチーム支援によって行うことを指示しています。必要に応じて、眼科医など医療関係者、当事者の支援団体などと連携・協力しながら行うことが重要であるとしています。また、この通知の周知についても、地域の支援団体、地域の事業主団体、地域の眼科医会、地方公共団体などに周知するよう具体的に指示しています。
次に、「視覚支援通知」の構成内容ですが、前書きと本文から成っております。
前書きでは、既に述べたような背景と趣旨を書いてあります。そして今、ハローワークにおける視覚障害者に対する一層的確な支援が求められているという現状があるということです。そのために必要な情報や社会資源を整理し、具体的な支援のポイントを示して、的確な雇用支援を行うよう指示しています。
本文は1から4までの4つの部分から構成されております。最初の1のところで、視覚障害者の就職の状況、視覚障害者の職域の状況、視覚障害者の職業能力開発の状況の現状などとともに、視覚障害者の見え方など、視覚障害者を理解するための基本的な情報を提供しています。
2はこの通知の核となる部分です。視覚障害者の雇用の促進と安定のための具体的な支援のポイントを書いていますが、ここでは、2つの柱を明確にしています。つまり、「求職視覚障害者の就職支援」と「在職視覚障害者の継続雇用支援」の2本柱です。なかでも後者は、いわゆる在職中に中途で視覚障害者となった人を失業させることなく働き続けられるようにすることを意味します。多くの方は、ハローワークはこれから就職をしようとする人の就職斡旋をするところだと思っています。それも大きな仕事ですが、それだけではなく、現在在職している人の雇用継続支援も仕事としていることを改めて明確にしたということです。
このように、視覚障害者の雇用の安定のためには、ハローワークは求職障害者の就職支援だけでなく、在職障害者の失業を防ぐための支援も行っていることを、視覚障害者本人、事業主、医療や福祉の関係者に周知したこと。また、受障等により雇用上の課題が生じた場合には、ハローワークの利用が有力な選択肢として位置づけられるようにすることが重要であるとし、ハローワークはその中核となってコーディネートを担うことを明確に指示したものです。
具体的には、まず、本人に対して、雇用継続の意思を確認するとともに、意欲を維持、喚起していくことだとしています。本人自身が「退職してもいいや。」という気持ちになった場合、もう支援の仕様がないわけです。そのときに障害の受容の状況についても、本人と接する中で把握しながらやっていくわけです。「あなたのような人でも、もっと障害が重い人でもこういうふうにして働いていますよ。」とか、そういうメッセージを伝えながら、生活訓練や職業能力開発、職業訓練の情報を提供し、また、「眼科の領域でロービジョンケアというものがありますよ。」ということなどの情報も併せて提供していく必要があるということです。やはり本人には、「本当に先々どうなっていくのだろうか。」という不安があります。その不安を解消するために、「あなたの雇用継続の支援をハローワークがやるんですよ。」ということを明確に伝えながら、「あなたの気持ちを尊重し、あなたの希望を会社の方にしっかり伝えてからやりますよ。」ということを本人に理解してもらって、「そういう形で頑張ろう。」と働きかけをしていくことです。
そして、企業の理解を求めるということです。やはり事業主の理解が一番大切です。「今、視覚障害者の雇用の状況はどうなっていて、中途で視覚障害となった方が再就職することはいかに困難で厳しい状況にあるのか。」とか、「IT環境が今こうなっていて、視覚障害者にもこのようなものが使えるようになっている。」という情報や、具体的に「こういう事例もある。」「経験や知識を生かせばこういう仕事も可能ではないか。」とか、そういう情報を事業主の方にしっかり伝えて、とにかく理解の促進を図ることです。おそらく、まだ多くの事業主の方には、視覚障害に対するいろいろな偏見があると思います。「中途視覚障害者を抱えて、後々いろいろと尾を引いて、困ることになるよりは、いっそのこと辞めてもらった方がいいのではないか。」と、内心で思っている会社も多いと思うのです。事業主が一番不安であり、負担に感じていることは何なのか。事業主にとって切実な問題は何なのかを把握し、それに応えて、不安感や負担感を軽減、解消するという働きかけを当然していく必要があります。そういう意味での、事業主に対する理解の促進が非常に大事だということです。
このように、具体的に関係機関とも連携して雇用継続の支援を開始することになります。この通知には、その辺りの具体的なポイントが書かれていますが、その際、重要なことは、繰り返しになりますが、ハローワークだけで問題を抱え込まないことです。つまり、チームによる支援を行うことです。チームを組む相手としては、これまでの経験から、地域の障害者職業センターがまずあります。言うまでもなく、日本盲人職能開発センター、日本ライトハウス、視覚障害者就労生涯学習支援センターなどの訓練施設、必要に応じて、眼科医などとも連携を取る必要があります。タートルの会のような支援団体とも連携しながらやっていくことです。とにかくハローワークで抱え込んでしまわないというところが、この通知の最も重要なところです。
また、在職中に受障等により雇用上の課題が生じた場合、できるだけ早くハローワークに相談し、雇用継続を図ることが重要になります。誰もが目に異常を感じたら眼科を受診します。そのときに、眼科医が、「目は見えなくても働けますよ。」というメッセージを出すかどうかで、人生を分けることがあります。少なくとも、眼科医から、「辞めてしまう前に、まずハローワークに相談しなさい。」というメッセージを出すことで、これまでは退職に追い込まれていたような場合でも、辞めることなく働き続けられることにもなります。このように、ハローワークにスムーズに繋がるためには、受診した眼科医からハローワークへ繋がるという流れと、事業主が社内に中途視覚障害者を抱えたとき、その対応に人事担当者だけで悩まずに、ハローワークにまず相談するという流れをつくることが大切です。つまり、私なりにこの通知を解釈し、特徴づけるとすれば、ハローワークは視覚障害者の雇用・就労に関するいわばワンストップ相談の窓口として機能しなければならないということです。「困ったことがあったら、まずハローワークへ。そこから相談が開始されます。」これがこの通知に対する私なりのキャッチフレーズです。
次に、3として、ハローワークのこのような支援をどのように関係機関などへ周知するかを具体的に指示しています。中央レベルでは、本省として、日盲連、日本眼科医会、日本眼科学会、日本経団連などに対して、この通知の内容を説明し、理解を得ております。日本眼科学会と日本眼科医会では、それぞれのホームページにこの通知全文を掲載しています。日本眼科医会では機関誌「日本の眼科」にも掲載し、15,000人の会員に周知を図っています。このような中央の動きに併せて、各労働局及びハローワークにおいても、本省からの指示を受けて、地方レベルでも同様の働きかけを開始しております。
特に、眼科医に対して労働サイドから働きかけを行うという発想は今までになかったと思います。視覚障害の発症からリハビリを受けて職場復帰をして、雇用継続というその過程には長い人だと2年ぐらいかかったりします。短くて半年かかったとして、その他にも入院や通院で休んだりすると、休暇、休職期間が切れて、退職になってしまう場合もあるわけです。そういったことを考えると、雇用継続のためには、できるだけ早く、眼科のところからハローワークに繋ぐことが大事になってきます。そういう意味で、眼科におけるロービジョンケアがとても重要になります。もちろん、眼科を経由せずに、事業主からハローワークへ相談に来るにこしたことはありません。そのためにも、労働局やハローワークが行う事業主向けのセミナーなど様々な機会を捉えて、「もし社内に中途視覚障害の人がいたらハローワークに相談に来てください。雇用継続ができるよう支援をします。」というメッセージを意識的に発するようにする。それだけでも、随分違うと思うのです。
最後に、4として、関係資料の添付をしております。現時点で把握している視覚障害者支援団体、拡大読書器などの就労支援機器、職業訓練、好事例等、視覚障害者支援のための社会資源を整理して添付しております。併せて地域毎に情報の充実・整備を図るよう指示しています。
ここで「実用マニュアル」について紹介します。正式名称は、「視覚障害者の雇用継続支援実用マニュアル〔関係機関ごとのチェックリスト付〕〜連携と協力、的確なコーディネートのために〜」です。
全体の内容は、本編(TからZ)が約65ページ、資料編([)が約80ページとなっています。
視覚障害者の雇用継続支援には、多くの関係者の連携と協力が不可欠です。その際、重要な役割を果たすべき、医療機関、ハローワーク等の就労支援機関、訓練施設、事業主が、個別・具体的な支援を実施する必要があります。そのため、チェックリストも、医療機関用、就労支援機関用、訓練施設用、事業主・職場用に分けて作成しています。このチェックリストを活用することにより、視覚障害者自身も自らの現状を再認識できるとともに、各関係者が支援のための連携のポイントを把握することができます。
また、このマニュアルの核とも言える「V コーディネート」のところでは、ハローワークがコーディネートの中心的な役割を担うべきという視点に立ち、@視覚障害当事者に対して、A事業主に対して、B産業医に対して、C眼科医等に対して、D訓練施設に対して、具体的なコーディネートのポイントや留意点について示しました。
ところで、相変わらず、タートルの会には中途視覚障害者からの深刻な相談が後を絶ちません。今も、「首になりそうだ。」「辞めろと言われている。」などの相談が寄せられています。早速本人をハローワークに繋いでみるわけですが、まだまだこれからという感じがします。経験がないということもさることながら、やはりこのままではいけないと思いました。ある意味では、我々のほうが専門家でもあるわけです。これからは、本人に相談にいってもらう前に、事前にハローワークに私たちの経験を伝えたり、場合によっては、一緒に相談に同行したりするということも必要になると思います。また、このようなときのためにも、「実用マニュアル」は役だってくれるものと思います。ちなみに、このマニュアルは全国の全てのハローワークをはじめ、職業リハビリテーション関係機関に配付することにしています。また、眼科医などへの普及を図っていきたいと考えています。
何れにしても、関係者みんなが「目が見えなくても仕事はできる」ということに確信をもつことが必要です。私たち自身もこの通知の意義を前向きに受け止めて、積極的に活用していくことが大切です。ハローワーク自身も、まだまだ皆さんから見ると、不十分な点があるかも知れませんが、私たちとしては、大いに今後に期待をして、ハローワークをはじめとする関係機関と連携、協力していきたいと思っています。
本日はタートルの会にお招き頂きまして光栄に思います。私どもの日本ライトハウスをご存知ない方もいらっしゃるかと思いますので、当センターについて最初に紹介させて頂きます。メインの事業は視覚障害者の生活訓練です。生活訓練とは、視覚障害者に対して、歩行訓練や点字訓練、ロービジョンサービス、さらには拡大読書器やルーペ、ICレコーダー、電子点字手帳など読み書きに便利な機器の紹介や使い方の訓練などを提供することです。お一人お一人の状況が違いますので、その方に合わせた訓練を組み立て、その他、日常身辺処理や調理の訓練などもしています。期間は3カ月で終わる方もいれば、1年以上受講される方もいらっしゃいます。通所または入所して、日常生活力を高める訓練をしているのです。
私は生活訓練ではなく職業訓練のほうを担当しています。日本盲人職能開発センターと同じように、障害者職業能力開発校から視覚障害者だけ委託を受けて、一般就労を目指すサービスを提供しています。当センターでは、他に盲導犬の育成や授産事業もやっています。また、同じ法人内には「盲人情報文化センター」という点字図書館もあります。さらに、盲学校等で使う点字図書を作成している「点字情報技術センター」もあります。すべて大阪の地で、視覚障害者専門にサービスを提供している社会福祉法人です。
当センターの生活訓練を利用している人の中には、人生途中で視覚障害になって社会生活力が低下し、やむなく休職に追い込まれて復職を目指しているという方もおられます。職業訓練の方には、パソコンを使った復職後の仕事を確立するお手伝いをし、生活訓練の方には安全な通勤歩行や社内移動などの訓練をしています。こうした方は、その多くが休職期間を眼科治療のために費やされており、生活訓練を受ける時には休職期間が十分に残っていないのです。そこで、事業所と復職に向けての折衝をしながら、生活訓練と職業訓練を同時に受けられる体制が望まれます。当センターはそういったサービスが受けられる数少ない施設であると自負しております。遠くから大阪までお越しになって入寮し、限られた期間で歩行訓練も受け、パソコンのスキルも身につけて復職に備えるわけです。その間、必要ならば事業所とも折衝して、復職後の配属先や仕事内容などについて話を詰めていきます。
こうしたサービスを提供できる施設は、全国的にみて数が少ないのです。東京や大阪にはそうした施設がありますが、地方では復職を支援してくれる機関がなくて困っていらっしゃる方が多いのが現実です。
さて、職業指導をする立場から見て、スクリーンリーダ、あるいは画面拡大ソフトに対して、事業所側はどのくらい理解してくれているだろうか、という点から話を始めようと思います。結論から申して、事業所側はほとんど知らないと思います。私どものような就労支援機関の担当者が、事業所に対してスクリーンリーダや画面拡大ソフトについて紹介しなければならないというのが現実です。就職あるいは復職に際して、本人の仕事のスキルを考慮しながら、事業所側が考えている仕事の内容を検討し、事業所が使っているシステムはどうなっているのか、どんなソフトウェアにアクセスしなければいけないのかを調べ、総合的な見地からスクリーンリーダ等について提案していかなければなりません。その際、これまでの実務経験を活かす方向で、復職後の仕事を確立するように働きかけることが大切です。
大阪市職員の方から依頼を受けて、職場に出向いて実際にExcelでの業務の指導をやらせていただいたことが何回かあります。ところがその職場のOSはWindows 2000 Professionalなのに、PC-Talker 2000(株式会社高知システム開発)というスクリーンリーダがインストールされていました。PC-TalkerのWindows 2000版というのは聞いたことありませんし、事実、そのスクリーンリーダではExcelなどの読み上げが十分ではありませんでした。その方はExcelでの作業などを中心にやって、十分に使いこなす能力をお持ちだったのですが、スクリーンリーダの選定が間違っていたので非常に仕事がしづらい状況に追い込まれていました。
それとは別の話なのですが、大阪市が庁内LANを導入する際に、視覚障害の職員を対象にOA講習会をやらせて頂いたことがあります。大阪市役所ではMicrosoftのExchange Serverを使って、Outlookをクライアントソフトウェアとしたグループウェアが構築されております。私は躊躇することなくJAWS for Windows日本語版(有限会社エクストラ)を講習会用のスクリーンリーダとして選び、JAWS上でWordやExcelの操作、Outlookでのメールの送受信等を講習しました。なぜなら、OutlookはJAWSしか対応していないからです。雇用者側を支援する際にも、このシステム等について十分に説明を受けた上で、適切なスクリーンリーダを選択できることが大切だと思います。
次に、私どもの職業訓練を修了して旅行会社に就職した方の話を取り上げます。この方は、顧客管理の仕事をAccessというデータベースソフトウェアを使ってやっていました。この場合もJAWSしか対応していないので、JAWSを入れてもらいました。ただ、その方は、Word、ExcelではJAWSより軽く動作するXP-Reader(株式会社システムソリューションセンターとちぎ)を使用していたので、入社に際しては助成金を使ってJAWSとXP-Readerの両方を入れてもらいました。事業所側からは、なぜ2つもスクリーンリーダがいるのかという疑問が出ましたが、「Word、Excelだったら、はるかにXP-Readerの方が軽くて使いやすい。しかし、Accessを使う場合はXP-Readerでは読み上げが不十分なのでJAWSが必要である」ということをきちんと説明して、了承してもらいました。繰り返しになりますが、事業所のシステムについて理解し得る専門知識も持っていること、それぞれの視覚障害者の作業環境について理解していること、そして本人の技量にも配慮して適切なソフトフェアの提案ができることが、就職や復職のコーディネートにあたる専門職にとって大切なことだと思います。
スクリーンリーダが必要だということはわかったけれども、そうしたソフトウェアを使ってどのように視覚障害者が仕事をしているのか、事業所側はなかなか理解できません。熱心な事業所でしたら、スクリーンリーダやZoomText for Windows(販売元日本電気株式会社)を動かしているところを当センターまで見に来てくれます。もし、事業所側が来てくれない場合には、私どもがノートパソコンを持って事業所に出向いて、視覚障害者はこのようにスクリーンリーダやZoomTextを使って仕事をしているのだというところを、実際に見せています。
復職が決まったり、あるいは新規の就職先が決まった場合には、そこのグループウェアに外部からアクセスできませんので、入社前に事業所を訪問して、了解を得て事業所のパソコンに一時的にスクリーンリーダをインストールして、グループウェアへのアクセスの練習をさせてもらっています。もっとも、すべてのケースでできるわけではなくて、就職や復職先が遠隔地の場合には行けないこともあります。ですが、たとえ遠隔地でも、グループウェアのアクセスというのはとても大切ですので、できるだけ出向いて行って現場で訓練をするように努めています。事業所側も、スクリーンリーダをインストールしても他のパソコンやサーバには影響がないし、また、訓練後アンインストールすれば元の状態に戻るということを説明しますと、通常は快く許可してくれます。ただし、中には非常にセキュリティの厳しい事業所もあり、ソフトウェアのインストールは一切駄目だと言われることもあります。そのような場合、上記の説明をシステムの担当者に繰り返し、視覚障害者が働く上でどうしても必要なソフトウェアであることを理解してもらうように努めています。しかし、例えば金融機関などでは、一切のソフトウェアのインストールが規則で禁止されており、例外は一切認められないと言われて、涙を飲んだこともあります。
このように私どもは利用者の就職や復職に際して、コーディネータ的な役割を果たすよう努めておりますが、一方で就労支援機関のサポートなしに就職されている方、復職されている方もいらっしゃいます。私どものところにおいでになる方は、概して重度の視覚障害の方や、復職の見通しが立っていないという方が多いように思います。そのような場合、これまでの経験では、単独で就職や復職を目指すよりは、専門知識をもった者の支援を受けたほうが可能性は膨らむのではないかと思います。ここ10年間ほどの間でも、毎年、復職が難しいケースを1、2例、扱ってきました。そのうちの半分のケースでは、うまくいきませんでしたが、残り半分のケースでは何とか復職を遂げられました。私どもの支援も不十分な点があるとは思いますが、支援がないよりはましだと思います。
そんな厳しい現実の中で、今年は非常に大きな前進がありました。それは他でもない、タートルの会が中心になって人事院に働きかけをされ、中途視覚障害になった国家公務員が復職に必要なリハビリテーションを受けることを休職期間中に認めるという通知が出されたことです。また、続いて厚生労働省も各都道府県の職安ないしは就労に携わる部署に対して、一般の事業所に対しても中途視覚障害になった被雇用者の復職を推進するよう指導せよという通知を出しました。このような通知は今まで例がなく、非常に大きな前進だったと思います。改めて下堂薗会長はじめタートルの会の皆さんが、国に働きかけられて通知を引き出したご努力に対して敬意を表したいと思います。
ここで、就労するに当たって必要なスキルは何かということを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。復職、あるいは新規に採用が決まった場合に、事業所側がまず心配することは、「視覚障害の人は安全に事業所まで通勤できるのだろうか」、「通勤途上で交通事故にあって、労働災害が起きたら困る」ということではないでしょうか。そこで、単独でも安全に通勤できることを事業所に納得してもらうことが大切です。逆に言うと、視覚障害者が復職したり就職したりするためには、白杖歩行あるいは盲導犬歩行など、きちっとした歩行手段を確立することが必須条件です。たとえラッシュアワーでも、地下鉄、バス等を利用して安全に通えることを納得してもらうことは、就労するために大切なことです。
次に心配することは、その方がどうやって仕事をするのか、という点です。そうした心配を払拭するためには、パソコンのスキルも大切ですが、他にメモの手段をもっていることも大切です。もし点字使用の方ならば、できるだけ点字も使えることが望ましいと思います。もちろん中途視覚障害者にとっては、有効なメモの手段として使えるレベルまで習得するのは困難なのも存じています。しかし、ICレコーダとか点字電子手帳等、便利な機器も利用できるようになりました。できるだけ、そうした機器を活用してメモの手段を確立することが大切です。全くメモの手段がない、あるいは記録する術がないというのでは、実際上、仕事をするのは難しいかもしれません。パソコンを使ってメモをとるという方もおられるかもしれませんが、直ぐにノートパソコンを出してメモをとれない場合もあります。やはり、パソコン以外にメモをとる手段があったほうがよいと思います。
次に大切なこととして、人間関係の構築力というのを挙げさせて頂きます。これは非常に漠然とした言葉なのですが、いろいろな意味で使っています。復職がうまくいった事例、うまくいかなかった事例を振り返ってみますと、病気になる前も誠実に仕事されていた方には事業所側も応援してやりたいという気持ちを持たれるようです。逆に、事業所側に応援しようという気を起こさせない方の場合は、うまくいかないことが多いという印象を持っています。人間的な魅力とまでいかなくとも、「自分の障害のことを周りの人に説明できる」ということは人間関係の構築の第一歩です。「自分の見え方はこうで、こういう場合は手助けしてほしい、このことは自分でできる」とうまく説明できないと、仮に復職や就職はできても、その後、ずっと働き続けられるかと考えると、さてどうでしょう。このことは視覚障害に限らないと思いますが、自分のことがうまく伝えられる方はうまく定着できているのではないでしょうか。
それから、人間力に関してもう一つ、仕事を作っていく力というのも大切かもしれません。仕事を作っていくとはどういうことでしょう。せっかく復職や就職を遂げても、なかなか仕事が割り振られないという方がおられます。そうした場合には、周囲の状況を見ながら、誰がどんな仕事をしているのかを周りにアンテナを張って、注意深く観察することが必要なのではないかと思います。「この部署ではどんな仕事があるのか」、「どのように仕事が流れているのか」ということを理解して、今は全く仕事が与えられていないけれども、チャンスを捉えて、例えば「この仕事をやらせてもらえないだろうか」と上手に提案して、担当者の人、同僚、あるいは上司を巻き込んで仕事を勝ち取るということも、人間力に含まれるのではないかと思っています。私は訓練生にいつも言うのですが、10の仕事を晴眼者がしていて、それと同じように10の仕事をいきなりしようと思っても、それは難しいと思います。やはり、視覚障害ということだけでもハンディがあります。そして、まだ事務職では目を借りなくてはいけないところが残っているのが普通です。さらに、パソコンは音声で操作できるといっても、やはり、スピードには差があるでしょう。
しかし、たとえ1つでも2つでもいいから、「これは君に任せられる」という仕事を作ることができれば、定着への第一歩を踏み出したといえるのではないでしょうか。それをうまく自分から提案して、その仕事を勝ち取っていけたらしめたものです。もちろん請け負った仕事に関しては、確実にこなしていかなければなりません。そして、それをやりつつ、さらに1つまた1つと新しい仕事を見つけていって、自分の仕事を増やしていくのです。多くの事業所の担当者が、「視覚障害者に何をさせたらよいのかわからない」と述懐されます。もちろん、本来、仕事は命じられてするもので、創り出すものではないのですが、「何をさせたらよいかわからない」という職場では、やはり、自分から仕事をうまく提案し、創り出していく能力が必要だと思います。
最後にパソコンのスキルですが、これについては、業務に関してと、業務の基礎となるシステムへのアクセスとを分けて考えたいと思います。まず業務に関してですが、Excelを使って必要なデータ処理を行うところもあれば、会社独自のシステムにアクセスしなければいけないところもあり、職場や仕事内容によってさまざまだと思います。ただ、どんな仕事でもパソコンを使わない業務というのは少なくなっていますので、その業務を担当できるだけのパソコンのスキルはどうしても要求されるところです。その中で、会社独自のシステムというのはなかなか手強く、スクリーンリーダ上でどのように操作したらよいのかを独力で把握するのは難しいように思います。会社の同僚などから情報を得ながら、あるいは、私どもがお手伝いして現場で操作を試しながら、独自のシステムにアクセスする方法を探っていく必要があります。なかなか現場での支援を受けること自体が難しい場合も多く、たとえ、十分に支援が受けられても最終的に音声だけでは操作できないとわかる場合もあります。
Oさんという大手スーパーの子会社に復職された方がいます。この会社では、たまたま、Excelのファイルとして各店舗の売上情報がデータ化されており、その他関連するデータもほとんどExcelデータとしてサーバに共有されていました。データの共有はLotus Notesというグループウェア上で行われており、必要に応じて社員がサーバからダウンロードして使えるようになっています。Oさんは私どもの施設でExcelの訓練を受けられ、特にExcelを使ってデータを加工していくスキルを身に付けられました。そして、復職後の仕事も主にExcelを使ったデータ加工になりました。まさにパソコンの訓練がうまく活きた事例となりました。
次に業務を支えるシステムへのアクセスに話を進めます。業務を支えるシステムとはグループウェアのことです。これに関しては、この4月に復職されたFさんという福岡県の全盲の方を取り上げたいと思います。Fさんの勤め先はある大手ゼネコンなのですが、社内ではイントラネットといって、インターネットエクスプローラを使ったグループウェアを使っていました。メールの送受信から文書の回覧や文書データベースへのアクセスまで、全てイントラネットでやっているので、このイントラネットにアクセスできないと、自分の給料も確認できないとか、休みの届も出せないという状況だったのです。その会社の大阪支店がたまたま日本ライトハウスの近くにあったので、7回ぐらい出かけていき、訓練するチャンスを得ました。出張訓練に際しては、JAWSをインストールした本人のノートパソコンを持ち込んで、支店のネットワークに接続させてもらい、イントラネットへのアクセスを練習しました。JAWSはScriptというプログラム機能があり、それを使って読まない個所も音声で操作できるようになりますが、私どもも必要なScriptを書いて、何とかイントラネットを操作できるようにしました。
この例では、たまたま数々の僥倖に恵まれ、必要な実地訓練が実現できたと言えます。しかし、一般的には現場でサポートできる支援機関はほとんどありません。私どもも普段は訓練生を抱えているので、これがもし、遠方へ出かけてというのであれば無理だったと思います。しかし、視覚障害者の復職や就職を支援するためには、遠近に関わらず実地での訓練が実施できる支援体制が必要です。また、そのために、事業所独自のシステムやグループウェアなどに対して、スクリーンリーダ上でのアクセスを指導できる人材も養成する必要があります。いつでも、そうした技術をもった指導員に現場で必要な支援が受けられる、こうした支援体制が整備されなければ、本当の意味での視覚障害者の就労の問題は解決されないのではないかと考えています。
ご清聴ありがとうございました。
この度交流会で講演をさせていただくことになりました向田雅哉と申します。
私は、今年の4月16日付けで原職復帰させていただきました。私の職業は国家公務員で、国土交通省の外局団体の横浜地方海難審判庁に勤めています。私の職場は、審判廷という法廷がありまして、審判官3人、理事官1人、書記が立ち会って、事故の関係者が出廷のうえ、事故当時の状況を聴くなどして、海難原因を究明する行政機関で、私は書記の仕事をしていました。
平成12年11月に糖尿病網膜症で、左眼が硝子体出血、平成13年1月には右眼が硝子体出血し、視力が右0.1、左0.04まで低下しました。
手術のため入院したものの視力が回復せず、退院後も自宅療養のため、2年1ヶ月病気休暇及び休職を経て平成15年3月にいったん復職しました。
その頃は白杖も使わないで歩けましたしパソコンも画面を白黒反転させて拡大させれば操作することができ、また同僚や上司のサポートをいただいたこともあり、そこそこに仕事は出来ていました。
しかし、平成15年の12月に緑内障を併発し、著しく視力が低下し、文字が読めなくなってしまいました。緑内障の手術を2回したものの、結局視力は回復することなく、その後も職場に通ったものの、実際職務にならない状態で、何とかせねばという思いの一方、情報など全く得られない状況で、悶々とする日々が1年以上続きました。
そして、平成17年の5月の末に、上司に別室に呼ばれました。3年間病気休職ということにするから、手に職をつけてはというような話でした。この話を聞いた時に、これは遠回しに肩を叩かれていると思ったと同時に、いつか来るべき時が来たという妙な思い、このままで仕事を終わらせるのは嫌だという気持ちから、暫く誰にも打ち明けることができず、独りで悩んでいました。
その後、再度上司から話があり、川崎市盲人図書館に相談に行ったところ、いろいろな施設を紹介していただき、タートルの会のことも教えていただきました。それから、視覚障害者訓練施設へ見学に行き、その際にパンフレットをいただいてきて、上司にパンフレットを提出しました。
その結果、国立身体障害者リハビリテーションセンターで訓練の後職場復帰することを希望し、その旨を上司に病気休暇及び休職願いを出したところ、人事担当から、病気休職終了後に、海難審判庁に復帰する意思があるのかを上司経由で確認されたので、私は、「病気休職終了後復職して、海難審判庁にお役に立ちたい。」と伝えました。
それに対しての人事担当の回答は、「そういう形での休職はだめだ。」というものでした。当時は、眼科リハビリテーションが認められていませんでした。また、その時人事担当から上司宛のメールをプリントアウトしたものを上司からいただいたのですが、その中には、「平成18年3月で円満退職となってくれればいいんだが……。」という記載もありました。
それから、再度タートルの会の方に相談したところ、生活訓練を早く開始する必要性があったことから、入所希望者が多い国立身体障害者リハビリテーションセンターから、国立函館視力障害センターに入所して生活訓練を受けることを希望することとし、私は糖尿病網膜症でしたので、眼科と内科の診断書とともに、函館視力障害センターのパンフレットを提出して、改めて病気休暇願いを提出しました。
内科の診断書の文言は「糖尿病の治療として運動療法と食事療法が必要であるが、糖尿病網膜症により視覚に障害を生じているため治療に支障をきたしている。そのため視覚障害者施設に入所して日常生活機能の回復訓練をすることが望ましい。」というものでした。
病気休暇願いを提出したところ、人事担当から話があり、私本人と父、上司、そして人事担当で面談することになりました。私が肩叩き的なものに首を振ったので、親を巻き込んで説得しようという思惑があったのかもしれませんが、このことについては分かりません。面談は平成17年11月下旬にありました。面談の際、まず上司から、私が職場のパソコンを使うことができず、メールも受信できない状況にあること、そして視覚障害の身体障害者手帳1級であることなど、私の当時の職務状況等を説明しました。
そして、人事担当から、「函館の視力障害センターに入所して訓練しても、簡単な文書とかメールが出来る程度で、仕事は出来ないのではないか。テープ起こしくらいしかない。」と同席した父に説明しました。しかし、同席した父は、その説明などに応じることなく、「訓練を始めていないのに、あたかも端から決め付けているような気がする。」とぼそっと言ってくれました。それに対して、上司は、「そうでしょうか。」と食ってかかる返答をしたのですが、それに対し、父は再度「訓練を始めていないのに、決めつけている気がする。」と今度は少し強めに言ってくれました。
それに対して、人事担当は慌てて、1年、2年病気休職を取るのは長くないから、函館で生活訓練の後も東京・四谷の日本盲人職能開発センターで訓練しても構わない。復職する時に仕事が出来るかどうか、こちらで判定すると言いました。それに対し、こちらからは「復職する時に判定するのではなく、何か仕事があるはず。」と言い、海難審判庁にお役に立ちたいということも伝え、面談は終了しました。
面談の結果、病気休暇、休職で函館視力障害センターでの生活訓練、日本盲人職能開発センターでの訓練の承認をいただいたものの、復職については先延ばしという形でした。何であれ、当初と違い、病気休暇、休職をいただけたのだから、おおきく一歩前進だったかと思います。
私としては、平成18年年明けから函館で生活訓練を希望し、生活訓練の申請書を函館視力障害センターに提出したのですが、センターの方から極寒の状況で訓練することと函館での生活訓練後の地元での歩行を心配していただくと同時に、国立身体障害者リハビリテーションセンター病院第3機能回復訓練部を紹介していただくという配慮もいただきました。
平成18年1月16日から2月10日までの4週間、国立身体障害者リハビリテーションセンター病院第3機能回復訓練部に入院して、歩行訓練をしていただきました。ここでは、白杖の使用方法、センター周辺での歩行の基礎などを訓練していただきました。
一方、入院している間、職場との連絡は、この段階では電話でしていたのですが、口頭のみだと、誤解が生じることがあったため、退院した以降はメールも併用して報告するようにしました。
平成18年4月17日から7月28日までの間、国立函館視力障害センターに入所して生活訓練を受けました。訓練科目は、歩行、点字、身辺、パソコン、感覚訓練などでした。函館で生活訓練中も、職場へは定期的に報告していました。Wordで手紙を書いて毎月郵送しましたし、訓練終了が決まった際は電話で上司に報告しました。函館での生活訓練後には、歩行訓練をしていただいた指導員が上京し、一緒に職場を訪問し、函館での生活訓練が終了した旨の報告をしました。その際、歩行訓練指導員の方から、職場の上司や人事担当に、視覚障害者とどのように接すればいいかなどの専門知識を和やかなムードで説明していただきました。
函館での生活訓練終了後、日本盲人職能開発センター事務処理科で音声ソフトの基本操作等の訓練をしていただくことに決まっていたのですが、その前の平成18年8月3日から翌平成19年4月12日までの間、週に1度センターへの経路や自宅及び自宅最寄り駅周辺、自宅と職場の通勤経路などの歩行訓練を川崎市盲人図書館にしていただきました。
その後、平成18年9月1日から翌平成19年4月13日まで、日本盲人職能開発センター事務処理科で音声パソコンの基本操作等を週に4日訓練していただきました。
その間の職場への定期報告は、毎月上司にメールで報告しましたし、別件で電話をしたりと、連絡は多く取っていました。
そして平成19年年明けから、原職復帰に向けて、自宅と職場との通勤経路の歩行訓練を開始しました。週に一度の歩行訓練で職場がある庁舎へ行った際は、必ず職場に顔を出し、上司に挨拶をし、訓練の状況などを報告しました。
また、小出しながら函館視力障害センターが発行しているセンター便り、日本盲人職能開発センターや川崎市盲人図書館のパンフレット、日本盲人職能開発センターが発行しているガイドブック「盲人に接する方のために」などを提出しました。
2月に入ってから、職場に挨拶に行った際、上司に「日本盲人職能開発センターへ見学に来ていただけないでしょうか?」とお願いしました。上司は人事担当に伝えてくれ、2月末に人事担当がセンターへ見学に来てくれました。
まず音声パソコンのデモンストレーションをした後、センター職員から音声パソコンのことや視覚に障害があっても就労可能であることをご説明いただき、また今年2月に出された人事院通達の写しを提出しました。人事担当は、音声パソコンについて、「案外できるんだなと思いました。」とお話しされ、センターを後にされました。
3月に入ってから、職場から自宅宛に審判手続が録音されたカセットテープ2本が郵便で届き、同封された書面には、テープ起こしをして調書を作成し、要した時間を報告するようにという旨の記載がありました。日本盲人職能開発センターから足踏み式カセットデッキをお借りし、調書を作成し、要した時間を報告しました。この報告も、歩行訓練の際、職場に顔を出し、プリントアウトしたものと、3.5インチフロッピーに登録したものを提出しました。
この後、病気休職期間が4月15日まででしたので、内科と眼科へ行き、就労可能である旨の診断書を書いてもらい、それを職場に提出しようとしていた矢先に、人事担当から私の自宅へ電話があり、「4月16日付けで復職ということで手続を勧めるから、診断書を取り寄せてほしい。」というお話をいただきました。私は人事担当に診断書を既に準備していた旨を伝え、ファクシミリで送信し、内容を確認していただいたところ、人事担当も「この内容でいい。」とのことでした。
診断書は、職場を訪問し、上司に提出しました。またその時、導入してほしい音声ソフトとOCRソフトをリストアップし、「導入のほど、ご検討願いたく存じます。」と記した書類も提出しました。
それから復職の際は、職場内を挨拶した時、上司が手引きをしてくれたり、私が休職期間中にレイアウトが変更されたスペースをオリエンテーションしてくれました。
また、音声パソコンも、JAWSとXPリーダーを取りそろえてくれ、OCRソフトと私専用のスキャナも使っていないものを探してくれ、取りそろえてくれました。復職当初は、JAWSやXPリーダーなどのソフトは2日目に職場に宅配便で届いたのですが、ライセンス登録の関係で、職場のパソコンが1、2週間使えなかったので、自分のノートパソコンを持ち込んで、関係法令をデータでもらい勉強したり、海難審判を傍聴していました。職場のパソコンに音声ソフトが入り使えるようになってからは、主に審判手続を録音したカセットテープを起こしての審判調書の供述部分を作成し、上司にチェックしてもらうという試行錯誤しながらしていました。
作業そのものはテープ起こしをして、メモ帳で文字入力した後、1字1字カーソルを移動させて、音声を聞いて誤字脱字のチェックをし、次にWord文書に変換し、質問部分と供述部分をインデント・タブを使って区分けし、他にも中央揃え、左揃えくらいのものなのですが、体裁を整えて、データを添付ファイルで上司にメール送信し、上司にチェックしてもらうというものです。当初は誤字脱字があり、書類の体裁も段落ミスがいくつかあったのですが、この半年間で、誤字脱字も少なくなり、耳で聞いてのインデント・タブのチェックもできるようになり始め、体裁は段落ミスがなくなりました。これは、職場の皆さんのサポートをいただいたことが大きかったと思います。
原職復帰してからあっという間に半年が経ちましたが、まだ半年。これからも、仕事に専念し、少しずつながらでも職場にお役に立てるようにスキルアップを図りたいと思います。
私は今年で入社4年目になります。本当に"ひよっこ"で、私のような者から皆さんに参考になるようなお話が、できるかどうか凄く不安ですが、私が4年間働いて来て感じたことなどを、率直にお話させていただければと思います。
資生堂は、創業は1872年(明治5年)。今年で創業135年を迎える大変古い会社です。事業領域が化粧品販売、それから食品・医薬品のような物も取り扱っております。売上高が大体6400億円、資本金が645億円になります。グループ従業員数は、全国で2万5千人です。そして関係会社も国内外で91社あります。
当社は昔から視覚障害者に対しても、いろいろな支援を行なっていました。
例えば点字の美容テキストも、これは美容講座をやった時にお配りしているものですが、メーキャップとスキンケアで2冊出しています。それからホームページ上ではリスナーズカフェというお客様の、見えない方向けのお洒落の美容情報などを、ホームページにアップしています。
それから盲学校、視覚障害者団体に行って美容部員が、美容講座を行なったりは、昔からずっとやっている活動です。このような資生堂の障害者の雇用がどういう状況なのかについてお話をしたいと思います。
当社グループ全体では約300名の障害者が就業しております。割合でいうと多いのは肢体不自由者、次いで聴覚障害者です。大体これで40%以上を占めます。そのほかは知的障害・精神障害・内部障害といった、ほとんど全ての障害の方がいます。
視覚障害者はこのうち約5%です。人数でいうとグループ全体で14名になります。実はうちの会社は重度のほうが多いです。重度が10名の非重度が4名という割合になっています。グループ全体で見ても、事務職で就業している人がほとんどです。
主に本社に就労している社員のことについて、少しお話をしたいと思います。本社に勤めている視覚障害者は6名いますが、全員重度の障害者になります。全盲の者は今はおりませんで、重度といっても2級の視覚障害者です。実際に採用をどう進めているのかですが、当社は都のハローワーク、あとは盲学校、聾学校といった教育機関、それから学生職業総合支援センターと連携をとりまして、合同面接会等を通じて採用を進めています。
最近では、割と応募される方も多くなっていますので、随時履歴書を受け取って採用ということもやっています。でも例えば、イフとか他の紹介会社さんは一切使うことはなく、ハローワークと連携を強化して進めております。
それでは視覚障害者が実際にどういう仕事をしているのかをお話したいと思います。本社にいる6名の視覚障害者は、次のような仕事をしています。1人は物流部門で在庫管理、もう1人は環境に関するデータの集計、また社会貢献に関するような社内のボランティアの安全管理、そういう仕事をしている者もおります。それからヘルスキーパーで入っている人もいます。私は、障害者採用とか定着化支援をやっています。研修の運営、その取り纏めの業務も行なっています。
採用を行なうときは、面接官の日程を調整しなければいけません。上司と、日程調整スケジュール管理みたいなところも、少し行なっていきます。
応募者の面接のときのシート作り、その告知のビラを作るにあたり、Word・Excelを使います。それから実際に履歴書など個人情報が山のように集まってきますので、個人情報の管理も大切な仕事になります。視覚障害があると紙ベースのものは見るのが億劫になって、大体こちらでいいとか、適当にファイリングしてしまったり、そんなことが結構多いです。
けれども、私も人事にいまして、そういう適当というのが命取りになるのだと感じることが多々あります。周りの人と協力しながら、私が見にくいものに関しては、この資料は必ずここに入れてくださいとお願いをして、混ざらないように周りの人に協力をお願いして、それを徹底している感じです。
その後、採用でいうと合格・不合格を、応募者に連絡するという業務があります。こちらもWordを使って文章を作ったり、電話をかけたりという業務になってきます。いろいろな仕事をしている視覚障害者がいますが、みんなスクリーンリーダーをパソコンに入れて仕事を進めています。Word・Excelは会社はJawsというソフトを入れています。全て読みあげますので、音声を使って業務を進めていけます。
社内でメールとか、電話帳検索などは全部イントラネット上にありますが、それもJawsを使って読ませて業務を進めています。
社内で障害者が増えてくる状況があり、人事部も、障害者にもっと能力を発揮してもらいたいと、「障害者能力発揮支援プロジェクト」を発足させて、支援の態勢を強めてきました。
このプロジェクトは、障害がある人たちに本気で期待する、必要な範囲で配慮はするが、特別扱いはしない、働きたいという気持ちを持っている人を積極的に応援していこうと、信念を持って活動してきました。実際にやってきた内容は、研修とか音声パソコンを整備するという、設備の面、それから周りの人たちへの啓発です。
まず研修でいうと、新入社員研修で徹底的にビジネスマナー、会社概要など、教育しておくべきことは行います。そして新入社員研修だけでは不十分ですので、1年目の半年たったときくらいに、フォロー研修というものも行います。そこでビジネススキルの向上とか、実際の自分の業務の振り返りで、課題発見みたいなところを行なっています。
視覚障害者に対しては、音声パソコンをいかに使いこなせるかが業務を効率的に進めるキーになってくるので、音声パソコンの研修を独自に行ないました。これはWord、Excel、Power Pointを使いこなすことを目標に進めましたが、約3日間のプログラムになっています。実際使いこなせる人が、いかに時間短縮して効率よく進めるかを、講師と一緒になって考えながら進めている感じです。
音声パソコンで、何か不具合が出たとか、やりにくいことがあったとき、会社の中にもパソコンのヘルプデスクがありますが、皆さんはマウスを中心に使うので「ちょっとキー操作では説明できないな。」と言われることが凄く多かったのです。それを外部の会社と連携して、視覚障害者用のパソコン・ヘルプデスクを設けて運用しています。
また、業務と直接的なものではないですが、会社の一員という意識を持つことは、会社で働く上で凄く大切だと思います。うちの会社にも社内報がありまして、紙ベース、冊子でしか配られていなくて、これまで視覚障害者は読めないという状況でした。今社内でボランティアを集めまして、社内報を音訳することを始めました。視覚障害のある方約10名にカセットテープで提供しています。今後、デジタル録音に切り替えて、皆が共有できる形にしていこうかなと思っています。
今後も障害者に能力を発揮してもらうという点で、人事で定期的に面談を行なったり、ホームページなどを利用して、障害の方たちにどういうサポートをしていったらいいかを社内でもっと大々的にPRしていこうという計画を進めています。
駆け足で会社の概要から、視覚障害者の就労の状況、それから会社の支援の取り組みについてご説明をして来ました。ここから自分自身の話に入りたいと思います。
私も入社して4年目になります。大学を卒業して、この会社に入りましたので、障害を持って働くということにプラスして、社会人が初めてという、いろんな戸惑いが凄くありました。その中で「こういうことが大切じゃなかったのかな」と自分で反省する事がたくさんありました。
この話は社会人になりたての方たちなら共感してもらえます。皆さんは多分ご経験豊富だと思うので、そんなことはわかっているよと思われるかもしれないですが、聞いていただけたらと思います。
私の障害は、網膜色素変性症です。同じ病気の方も、結構多くいらっしゃると思いますが、視野が非常に狭い病気です。私は視野が7〜8度位ですので、トイレット・ペーパーの芯から世界を見ているような感じです。暗い所が見えにくい、そして色の区別がつきにくいという症状を持っています。この病気だとわかったのは生まれて間もなくです。私は両親も網膜色素変性症で、なるべくしてなったかなという感じでしたので、あまりビックリすることはありませんでした。
小・中・高・大学と親の方針で、盲学校ではなくて、普通学級で学んできました。その中で、自分だけができなかったり、自分だけが見えなかったり、そういうことが多くあって傷つく面もありました。
例えば、私は吹奏楽部に所属していましたが、学内で楽器の持ち運びをして動いたりするときに、学校の中は、暗くて動けなくて友達に手を引っ張られたりということが多くありました。そんな様子を見て、周りの子たちが「○○ちゃんは、小笠原さんを手伝っていて偉いね。」と平気で言ったりします。それを聞くと、自分も別に面倒をみられたくて、みられているわけではない、自分は一生こうやって、面倒をみられるばかりの存在なのかなと思うと、凄く憤りを感じたりしたこともありました。
それから私は、白杖を大学時代までついていなかったんです。母はもうほぼ全盲だったので白い杖をついて、病院などに行っていました。私と母が一緒に病院に行ったりすると、看護婦さんは母が診察室に入るときに、「あなたもついて行かなければ駄目でしょう。お母さんではお話をしたってわからないでしょう。」と言いました。母は目が悪いだけで話せばわかりますし、看護婦さんのそういった対応が凄い子供扱いしているなと思って、それが凄く悔しくって、私も将来的に、馬鹿にされた言い方は嫌ですけど、何か子供扱いされるみたいなことがあるのかなと思ったら、視覚障害者になるのが嫌だなという気持ちが、学生時代に強くありました。
でも会社に入ってやはり健常な人の中で自分を試していきたいという気持ちもあって、この資生堂に入社することになりました。会社に入ってみると、学生時代より、もっと自分にできないこととか、他の人が当たり前にやっているのに、自分だけできないことが、凄くありました。そのなかで私は凄い悪循環というか、いろんな焦りを感じて、どんどん悪い方向にいった時期がありました。
自分で考えてみましたが、入社して、最初に、皆ができることが、自分だけできないというところで凄く焦りを感じました。実際に手伝ってもらわなければいけないこととか、視覚障害だから無理なことまで全部引き受けたりとか、できないと言えなかったりしました。自分ひとりでやろうとして、でもできなくて、どんどんルツボにはまって、周りの人から「あれはどうなっているの?」といろいろ言われて「どうしょう」と思いました。
早くもコミュニケーション不足が始まり、結局自分でふさぎこんでしまう状況でした。そんなことから納期に遅れたりとか、全然見当違いなものを提出してしまったりとか、その仕事をもうやらなくていいのにやっていたりとか、いろいろなことがありました。そういった多くの失敗経験が積み重なって、ますますその周りの人が自分のことを面倒臭い存在だと思っているんじゃないかという不安が大きくなりました。
そうするとまた、周りの人にコミュニケーションをとっていくことが、自分からできなくなってしまう、やはり自分に障害があるからいけないんだみたいな感じで、ふさぎこんでいってしまいました。本当に会社に行っても席まで行くのがやっとで、席にいるだけでどうしよう、周りの人に話しかけられたらどうしよう、そういった厳しい状況が続いていました。
でも、周りの人が、励ましてくれたりということがあったり、ちょっとした成功体験があったりとか、うちの会社は視覚障害の先輩もいっぱいいらっしゃいますので、その中で、頑張ってイキイキ働いている先輩たちがいっぱいいる姿を見て、できることから少しずつでもいいから、やって行かなければ駄目だと、思い直すようになりました。
そのときに、自分で何であんなふうになったんだろうと思ったことは、やはり自分の事しか考えていなかったんだなって思いました。できないと言えないのは自分ができないと見られたくないとか、障害者だから馬鹿にされたくないとか、そういう気持ちが凄く強かったのです。本当なら自分にできることで、周りの人と協力し合って、会社のために何ができるかを、もっと考えていかなければいけなかったはずです。自分のプライドとか、自分の変な見栄みたいなところで、それができなかったのが一番の大きな原因だと思います。
これから働いていく上で、心がけていこうと思ったことは、自分ではなく、チーム全体とか、周りの人と一緒に何を目指して仕事をしていくかを、もっと一生懸命に考えようと思いました。できないことを認めて、はっきりと周りの人たちに伝えて、むしろ周りの人に上手に協力してもらうようにしていこうと思いました。それから、ちょっとした進歩を楽しめるように働いて行こうと思いました。
当社は障害者に対する支援は割りと充実したものになっていると思います。でも、障害者に対して配慮しているわけではなくて、働きたい会社に貢献したいという意欲のある人が、たまたま障害を持っているためにやりにくいことがあるから、その点に対して配慮しているだけで、障害者に対して何をしてくれるのというような意識の人たちには、支援をしたいとは思っていません。
当社では、やはり一番大切なのは人だと考えています。魅力ある人で組織を埋め尽くしたいということが社長方針でも示されています。その魅力のある人にどうしたらなれるかを、もちろん健常の方も凄く一生懸命に考えていますし、その中で、障害のある人たちも、自分にできることが何かを、本当にちょっとしたことでもいいから見つけていくことが大切だと思っています。
会社が自分に仕事を与えてくれないとか、自分のことを理解してくれないとかいう方もいらっしゃるかもしれませんけれども、会社が何かしてくれるわけではなくて、自分が会社に何かしたいと思った時に、会社が自分にサポートしてくれると思います。
私は入社した時に、その点を履き違えていたんだなと凄く思いました。私も人事で障害者の雇用定着のお仕事をしていて、いろんな障害のある方たちと、触れ合っています。定着する人材は、やはり周囲と上手くコミュニケーションをとっていける人です。それから仕事に対する姿勢が非常に真面目であること、謙虚に自分も課題を発見して、周りの人からいろんなことを吸収して、向上して行こうという向上心の強い人、多分この三点を持っている人が、本当に定着する人材ではないかなと思っています。
障害があってもなくても、会社に貢献したい気持ちは同じだと思います。そういう気持ちでがんばっていくことによって、会社も視覚障害があっても十分働けるということを、認めてくれると思いますし、それが今後の視覚障害者の就労拡大につながっていくと思います。私もそういう意識を持って、これからも一生懸命働いていきたいと思っています。
ご清聴ありがとうございました。
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)の助成により、平成19年8月20日に1000冊を印刷しました。また1500冊を会として増刷し、会の自由に活用できる分と、眼科医会やロービジョン学会等に一任し、配布先は、全国すべてのハローワークと就労支援関係機関、日本経団連、連合等労働関係者、学識経験者等、眼科医等ロービジョンケア等の医療関係者、日盲社協リハビリテーション施設関係者等です。この本は広く活用してもらうことを目的とし、贈呈することを基本としました。
本実用マニュアルの目次を以下に記しておきます。
平成19年6月16日に行われた第12回定期総会において、特定非営利活動法人に移行することが決議され、東京都に設立認証申請を7月20日に提出し、11月12日に正式に認証されました。そして、東京法務局新宿出張所に特定非営利活動法人タートルの設立登記申請をし、12月3日に登記完了し、東京都に完了報告書を提出したわけです。
特定非営利活動法人タートルは、正式に平成19年12月3日に設立されました。
平成19年度事業計画の「タートルの会」については、11月21日にて締め、決算報告書を作成し、その結果に基づき財産目録を作成し、これを特定非営利活動法人タートルに委譲しました。
決算報告書(平成19年4月1日〜11月20日)及び財産目録、登記事項を下に掲載しておきます。
科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|
前期繰越金 | 2,085,483 | |
一般会費 | 925,000 | 185人 |
賛助会費 | 35,000 | 3人 |
寄付金 | 408,290 | |
売上 | 64,000 | |
交流会参加費 | 8,500 | |
雑収入 | 2,683 | 預金利息 |
計 | 1,443,473 | |
合 計 | 3,528,956 |
科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|
講演者謝金 | 25,000 | 総会、交流会 |
交流会録作成費 | 40,000 | |
機関誌発行費 | 315,401 | 印刷費・編集費 |
通信費 | 89,748 | |
資料印刷発行費 | 11,300 | |
総会運営費 | 107,300 | |
交流会運営費 | 65,110 | |
相談事業費 | 177,500 | 室借料他 |
メーリングリスト運営維持費 | 7,560 | |
ホームページ運営維持費 | 2,730 | |
備品消耗品費 | 117,955 | |
ボランティア保険料 | 0/td> | |
幹事出張費 | 0 | |
手数料 | 735 | |
予備費 | 0 | |
計 | 960,339 | |
次期繰越金 | 2,568,617 | |
合 計 | 3,528,956 |
科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|
助成金(日盲社協経由) | 1,500,000 | 実用マニュアル作成 |
合 計 | 1,500,000 |
科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|
編集会議費 | 360,000 | |
印刷製本費 | 750,000 | |
送料 | 260,000 | |
事務経費 | 130,000 | |
合 計 | 1,500,000 |
科目 | 金額 |
---|---|
資産残高 平成19年11月21日現在 …… | \2,568,617 |
郵便貯金残高 | \2,319,061 |
銀行預金残高 | \249,556 |
事務局所持金 | \0 |
平成19年11月26日
財産目録
(特定非営利活動法人 タートル)
平成19年11月21日現在
東京都新宿区本塩町10番3号
社会福祉法人日本盲人職能開発センター東京ワークショップ内
「名称」特定非営利活動法人タートル
「主たる事務所」東京都新宿区本塩町10番3号 社会福祉法人日本盲人職能開発センター東京ワークショップ内
「目的及び事業」
この法人は、国、地方自治体、社会福祉協議会、職業リハビリテーション関係機関、医療機関、社会福祉団体、経営者団体、労働団体等と協力し、中途視覚障害者に対して、就労に必要な情報の提供、相談・支援、働きやすい就労環境の整備等に関する事業を行い、中途視覚障害者の安定した就労を促進し、その経済的自立と福祉の増進に寄与することを目的とする。
この法人は、上記の目的を達成するため、次の種類の特定非営利活動を行う。
日時:平成20年2月11日 午前11時〜午後1時半
場所:アルカディア市谷
内容:労働行政、日本経団連、連合、医療関係等の方々のご出席とお話をいただく予定。
日時:平成20年1月19日(土) 午後2時〜
場所:日本盲人職能開発センター
内容:テーマ 「職務に必要なスキルの向上」
本号は「特定非営利活動法人タートル」の最初の情報誌となります。任意団体の会報として49号まで発行されていますから、そのまま継続するとなれば、「タートル」(50号)となるはずでした。NPOタートルの初めての情報誌ですから、創刊号として発行することとしました。写真もなく、文字ばかりで読みにくいとは思いますが、視覚障害者の読書媒体として図表等の音声化しにくいものは避けているので、晴眼者にとっては、なじみにくく、読みやすさに欠けると思います。
NPOタートルは、広く不特定多数の方々に視覚障害者の就労問題に関心を持っていただき、共に啓発活動に参画してほしいと願っています。そのためには、写真や図表などふんだんに取り入れ読みやすくする必要があります。この情報誌「タートル」の広範な読者と編集協力者が現れ出てくれることを期待しています。
私自身は、中途の弱視です。拡大読書器を使えば読むことはできます。普段、「書くこと」、「読むこと」はパソコンを使用しています。画面の文字を拡大するのではなく、画面読み上げソフトを活用しているのです。私が視覚障害となった頃は、東京オリンピック開催さなかでしたから、とてもではないですが、復職とか、継続雇用など思いも及びませんでした。
科学技術の進展によって、世の中は様変わりしました。視覚障害者にとって、文字処理問題が解決されたことは、仕事の継続や新たな仕事の創出に大きな可能性を生みました。もちろん、パソコンは道具に過ぎません。素晴らしい能力を持つ視覚障害者は数多くいます。しかし、雇用の現実は厳しいのです。仕事のできる視覚障害者に雇用の機会を与えてほしいのです。
「心のバリア」という厚い壁、社会の理解をどのように進めていくかです。啓発活動は継続的に進めていく必要があります。視覚障害者の無限の可能性を引き出すために、私どもも不断の努力を続けるつもりです。皆様のご協力、ご支援を切に望むところです。
(理事 篠島永一)
特定非営利活動法人 タートル 情報誌
『タートル創刊号』
2007年12月21日発行 SSKU 通巻2654号
■発行 特定非営利活動法人 タートル 理事長 下堂薗 保
■事務局 〒160-0003 東京都新宿区本塩町10-3
社会福祉法人 日本盲人職能開発センター 東京ワークショップ内
電話 03-3351-3208 ファックス 03-3351-3189
■NPOタートルの連絡用メール m#ail@turtle.gr.jp (SPAM対策のためアドレス中に # を入れて記載しています。お手数ですが、 @ の前の文字を mail に置き換えてご送信ください。)
■URL=http://www.turtle.gr.jp/