目次

【巻頭言】 理事 藤田 善久
【平成29年度通常総会報告】
【総会議案】
  『第1号議案 平成28年度事業報告』
  『第2号議案 平成28年度収支決算報告』
  『第3号議案 平成28年度監査報告』
  『第4号議案 平成29年度事業計画(案)』
  『第5号議案 平成29年度収支予算(案)』
  『第6号議案 平成29年度役員選任』
【平成29年度総会記念講演】 公益財団法人 東京しごと財団 障害者就業支援課 委託訓練推進班 コーディネーター 杉本 薫 氏
【定年まで頑張りました】 会員 金子 光宏
【お知らせコーナー】
【編集後記】
奥付

【巻頭言】

『自力で立ち上がれる自分でいたい!』

理事  藤田 善久(ふじた よしひさ)

私は、平成4年3月に高校を卒業後、福岡市に本社を置く建設会社に入社して現場監督の業務に従事していました。 結婚後、平成9年の9月に長男が生まれましたが、祝福を祝う間もなく同月の月末に会社が倒産し、無職の時期を2ヵ月過ごすこととなりましたが、面識のある方から某建設会社に勤めてみないかと誘われました。 ちなみに、紹介された会社は現在勤めている会社となります。

次に、障害を負った時期と要因についてなのですが、平成16年5月、私が次席を担当していた工事現場で、地上約40㍍のところに置いてあった一本の鉄パイプが落下し、私の右頭部に当たり、頭蓋骨骨折・脳挫傷・両眼破裂を負い、一瞬にして視覚障害者となりました。

頭蓋骨骨折に伴い前頭葉などを損傷していたため、被災日の2週間前から約5ヵ月間の記憶を失っていたわけですが、緊急搬送された病院から転院したリハビリ病院での入院中に、記憶機能を戻すための方法をいろいろと思案した結果、小学・中学・高校で一緒に遊んだ友達の名前を思い浮かべることが簡単だなと思い、ベッドの上で、名前と思い出の記憶を日々探していました。

ただ、被災日の2週間前から約5ヵ月間の記憶は復元できませんでしたが、妻子・両親・兄弟などにおける記憶消失はありませんでしたので、毎晩安堵感が溢れ出て、ベッドの上で涙を流しながら寝ていたことを覚えています。

また、心身的に安定してきた頃、眼科の高橋先生、タートルの工藤様、国リハの山田様などから、視覚障害者であっても就労は可能であることを教えていただいたことにより、これまで暗黒のトンネルであった暗闇に、小さいけど煌々と放つ光が見えたのを今でも覚えています。

その光を見て以降、妻子を路頭に迷わせないようにするためにも、「復職・就労継続しなければならないんだ!」というような情熱が湧き出し、平成17年2月に退院後、福岡にある国リハの自立訓練校で約1年、大阪にある職業訓練校で約1年の訓練を経て、平成19年4月に復職しました。

現在に至るまで、多くの皆さんからの支援に感謝しておりますが、このリハビリテーション病院において、高橋先生、工藤様、山田先生との出会いがなければ、現在の生活・就労環境は得られなかったと断言できます。

最後に、各々の生活環境や、就労環境などにより異なるわけですが、これまでの経験を経て一番必要だと思うことは、「自力で立ち上がる力を持つこと!」に尽きると思います。 極端な言い方かもしれませんが、周囲の皆さんから自力で立ち上がれるような支援を受けても、いろんな情報支援を受けても、自力で立ち上がろうとする意欲が無ければスタート地点にも立つことはできませんし、周囲の人は見向くことを辞めてしまうと思うからです。

そのため、視覚障害を負った以降の私は、「① 勇気=習得しなければならないことや、新しいことに対して自ら一歩踏み出すこと。② 闘争心=スキル習得など、業務獲得への貪欲さを忘れないこと。③ 経験値=これまで培ったことを自信に変え、業務にゆとりが持てるようにすること」の三つを基本にして就労しています。 併せて、自分の能力にも限界があるわけですから、協力・支援が素直に依頼できるように、妙なプライドを持たないように心掛けています。

これから皆さんも、心無き言葉などを受けて悔しい気持ちとなる時があると思いますが、障害当事者が自分の視力や視野を認識していたとしても、周囲が変わるということはあり得ませんので、「開き直ること、割り切ること、現状の視力や視野を受け入れること」というような考えを持ってみてください。 自分が変わることによって、家族・友人・同僚・上司の皆さんの理解に繋がると思います。まずは、身近なところから変えていき、皆さんと一緒に上を向いて歩ける環境を創り上げていきましょう。

【平成29年度通常総会報告】

平成29年6月3日、日本盲人職能開発センターにおいて、平成29年度NPO法人タートル通常総会が開催された。市川 浩明議長のもと審議が行われ、第1号から第6号議案が滞りなく提案どおりに承認された。なお、議案については次ページ以降に掲載したのでご参照ください。 以下に当日の審議内容の抜粋を記し、報告とします。

第1号議案  平成28年度事業報告

松坂 治男理事長から一括での事業報告があった。会員より、「事業報告が長文で読みづらい。簡潔に結果だけを記述いただきたい」との要望があった。それに対して、次年度より簡潔な記述を心がけるとの回答があった。
また、会員より、昨年の障害者差別解消法、改正障害者雇用促進法の施行によって、タートルの活動に影響はあったかとの質問があり、工藤 正一副理事長より、「合理的配慮が企業側に義務化されたので、相談業務の中でそのことを積極的に伝えている。ただ、企業もまだ具体的な対応で、とまどっている部分もあるので、伝え方には工夫をしている。社会全体でも、休職者や大学生が就労移行支援事業を利用して訓練が受けられるなど、変化が生じている。タートルとしても、こうした変化は積極的に発信していく」との回答があった。

第2号議案  平成28年度収支決算報告

会計担当者からの報告に対し、会員より、予算と決算を併記してもらうことはできないかとの要望があったが、松坂理事長より、東京都へ提出する様式を使用したため、このような形式となったが、次年度からは併記するとの回答があった。

第3号議案  平成28年度監査報告

伊吾田 伸也監事より適正に会計処理されているとの報告があった。

下堂園 保監事より業務に関し以下のような指摘があった。
①地域交流会など、外部に向けた事業が行われていない。啓発という観点も含め、首都圏だけでなく、地域に向けての活動を行っていただきたい。
②諸団体への参加の際の経費について、理事会で承認がきちんとなされていないのではないか。今後、全理事が理解できるようにしていただきたい。

また、今期の事業で特に評価できる点として、相談事業のデータベース化、タートルサロンの運営、賛助会員の目標数達成、黒字会計への転換の4点があると報告された。

引き続き平成29年度事業計画(案)の審議が予定されていたが、事業計画・予算の内容を鑑み、「役員選任」の審議を先に行うこととなった。

第6号議案 平成 29年度役員選任

任期満了に伴う役員の改選について、松坂理事長より新任3名を含む、今期理事候補及び退任者の発表があり、提案通り承認された。

その後、総会の審議を一旦中断して理事長選任理事会が行われた。そして、理事長に松坂 治男氏、副理事長に工藤 正一、新井 愛一郎の両氏、事務局長に芹田 修代氏が選ばれたことが報告された。

第4号議案 平成29年事業計画(案)

松坂理事長から今年度の課題のひとつとして東京以外の地域と会員へのアプローチについて言及があった。続いて各事業担当理事より提案内容の説明がなされた。

重田理事より、地方交流会の実施について言及があった。また新任の的場理事による、大阪でのタートルサロンの開催が提案された。

第5号議案 平成29年度予算について、芹田理事より説明があった。

これについては、第2号議案同様、前年度の決算と次年度の予算を併記していただきたいとの要望があり、次年度から対応するとの回答があった。

その後の一括審議において、会員より相談事業のデータベース化についてわかりやすく説明してほしいとの要望があり、松坂理事長より、「これまでのメールや電話での相談内容をデータベース化し、組織として一元的に管理・蓄積しようというものである。外部からの閲覧を目的としたものではない」との回答があった。
また、会員より、個人情報保護法の改正により、特定の個人名を出さなければ得られた情報を活用することができるようになったので、相談者の統計として使うことも考えられるのではないかとの意見があり、工藤副理事長より、「今回の作業でわかった傾向として、就労に関する相談で一番多かった障害の原因は網膜色素変性症、ついで緑内症。これは一般的な傾向とは違っており、こうした数字は、視覚障害と就労を考えるうえで重要である。データベース化で見えてきた統計結果を、今後はさまざまな場面で活用していきたい」との回答があった。
また、会員より、「地域へのアプローチとして具体的な方策があまり提案されていないように思う。医療従事者との連携や啓発も大切だが、より広くニーズをキャッチアップするためには、地域行政の窓口や支援部署に地道にパンフレットを持参する活動などが、より重要と考える。こうした活動を事業計画のなかに入れてほしい」との意見があった。
工藤副理事より活動に取り込んで行きたいとの回答があった。
また、会員より、「障害者差別解消法、改正障害者雇用促進法により、企業のなかにも合理的配慮の相談窓口設置が義務付けられている。こうした情報を会の内部で正しく共有し、企業側に働きかけていくのも良いのではないか」との意見があった。
松坂理事長より、本日挙がった意見は理事会で議論し、タートルの方針としてまとめていくとの回答があった。

【総会議案】

『第1号議案 平成28年度事業報告』

■活動総括     理事長 松坂 治男

「認定NPO法人」の2年目として、基盤の安定を図るために正会員から賛助会員への移行をお願いした結果、賛助会員数が100名以上となり、認定基準を満足する体制ができた。また7月にはNHK総合テレビの首都圏ニュースでもタートルの活動が紹介された。
基本的な事業である、1.相談、2.交流会、3.情報、4.セミナー・啓発の4事業はほぼ計画どおりに実施された。

1.相談事業は、ロービジョン就労相談会のメンバーに若手理事にも参加してもらった。本年度分より相談者の情報の一元管理を実施した。
2.交流会は、通年にわたり、タートルサロンを実施し、仲間の交流と情報交換、そして個別相談会も並行して行った。
3.情報事業は、認定NPO法人の認可を受け、寄付を受けやすいように情報提供の全面的な見直しを行った。また、大学のアンケートや調査報告への協力を行った。
4.セミナー・啓発事業は、出前講座の実施には至らなかったが、新たな試みとして「タートル勉強会」を立ち上げ、㈱ジェイリース様のご厚意で西新宿の会議室で実施することができた。
その他では、第17回日本ロービジョン学会学術総会で事例発表。第8回医療が関わる視覚障害者就労支援セミナーへの協力。また、当会の活動紹介を日本ライトハウスのオープンデーや東京都眼科医会セミナーでPRを行った。
課題である活動資金不足の改善に努めた結果、2期連続して単年度の収支が黒字となった。

■相談事業     副理事長 工藤 正一・理事 熊懐 敬

1.総論

今年度は、長年の課題であった相談内容の整理について、オンラインを活用した協同作業による効率化を図ることができ、今後の相談体制の確立に繋がる大きな一歩を踏み出したことを特筆しておきたい。その上で、相談内容は就労問題を中心に多岐にわたったが、相談の方法は昨年同様、第一義的に電話とメール相談を受け止め、地方の相談スタッフとも情報を共有し、地域障害者職業センターを始めとする職業リハビリテーション機関や、医療・福祉などの関係機関とも密接な連携を図った。特に、在職中の雇用継続相談については、緊急を要するものが多いため、早期にロービジョン就労相談やタートルサロン(交流会含む)に繋ぎながら、迅速かつ適切な支援を図った。転職や再就職相談についても、個々の状況に応じて同様に相談・支援を行った。その結果、新規就職を始め、複数の職場復帰・再就職事例があり、多くの職場定着が図られている。なお、相談に際しては、タートルの『GUIDE BOOK ~視覚障害者の「働く」を支える人々のために~』をはじめタートルの成果物や、高齢・障害・求職者雇用支援機構などの資料も積極的に活用した。

2.相談件数

平成28年4月から平成29年3月までの相談の総合計は、延べ件数751件(前年度379件)、実人数では、214人(前年度199人)であった。なお、実人数214人のうち、初めての人が135人であり、疾患別では、網膜色素変性症 49人、緑内障 17人、黄斑変性 7人、糖尿病網膜症 7人、先天性疾患 6人、網膜剥離 6人、レーベル病 4人、その他(円錐角膜など) 31人、不明 87人であった。
このうち、眼科医など専門家の同席の下に行われるロービジョン就労相談は、12回(前年度13回)、実人数31人(前年度35人)に対して実施できた。一人にかかる相談時間は平均1時間15分余であり、家族や職場の関係者の同席も歓迎し、相談の中では最も濃密な相談である。特に、職場復帰に際しては、産業医の意見や人事労務担当者の判断が重要となるため、眼科主治医から産業医等に情報提供するよう助言した。

3.関連学会への協力

相談の成果を関連学会等を通じて発表し、意見交換を図り、タートルの存在と役割をアピールした。具体的には、平成28年8月、新潟市において開催された第17回日本ロービジョン学会学術総会の一環として行われた第8回医療が関わる視覚障害者就労支援セミナー(テーマ:自立訓練(機能訓練)と職業訓練の有機的な連携による職場復帰支援)に協力した。参加者数は過去最高の74人(眼科医11人、歯科医師1人、視能訓練士11人、看護師・保健師7人、タートル関係者9人、福祉関係者16人、教育関係5人、当事者12人、その他2人)であった。開催地の努力により、新潟からの参加者は15人であった。

4.今年度の相談の特徴

1)28年度中に相談を受けた人の顛末・成果は以下の通りである。
継続就労している人 79名
復職した人 6名
再就職した人 19名
新規就職した人 1名
定年まで勤務した人 5名
訓練中もしくは修了した人 20名
特別支援学校に進学した人 1名
休職中の人 4名
離職した人 3名
就職活動中の人 4名
取材依頼 4件
その他 12名
不詳の人 16名

 (注)上記は28年度期末現在における集計速報値である。不詳の人のフォロー等により数値は変わる場合がある。

2)民間企業で、在職者訓練やジョブコーチ支援等を活用して職場復帰する好事例が見られた。特に、二次的な精神障害(視覚障害が原因でうつ病となったような場合)、リワーク事業と在職者訓練を併用した事例もあった。その反面、障害者手帳未取得や、非該当であって、障害者雇用促進法上の障害者には該当する場合でも、それらの制度の利用を認めてもらえず、難儀した事例も複数あった。しかし、働きながら受けられる在職者訓練は、雇用主に義務化された合理的配慮の面からも、そのニーズはますます高まるものと思われる。
他方、福祉系の就労移行支援に基づく訓練について、休職中・在職者についても認める自治体が増えて来ているのは、在職者の訓練メニューの拡充という観点から望ましい傾向である。

3)地方公務員(教職員を含む)からの相談も目立つが、概ね、必要な助言、資料の提供、眼科医との連携などにより、継続就労を前提とした自立訓練に繋がっている。タートルのメーリングリストへの書き込みに対して、多くの助言が寄せられ、休暇を利用しての訓練にこぎつけたケースもあった。
地方公務員については、民間企業と同じく、改正障害者雇用促進法上の“合理的配慮の提供の義務化”が図られたところである。なお一層の周知徹底を望みたい。

4)介護福祉士、理学療法士、看護師、保育士などからの相談も目立った。視力の低下と共に、業務に危険をともなうなど対応は難しい。ポイントは、良好な人間関係とそれを前提にした周囲の理解・協力であり、それらをベースに継続就労できているケースが多い(危険でない業務のウエイトを高め事務的作業のウエイトを高める、経験を活かした後輩指導など)。

5)残念ながら、合理的配慮が不十分、または理解不足のため、苦労しながら継続就労しているケース、離職を余儀なくされるケースもあった。
・支援機器の装備や在職者訓練を受けさせてもらえない。
・PC作業で、長時間労働が改善されない。
・訓練を受けたが、なかなか復職させてもらえない。
・上司からパワハラ的な言動を受けたなど。
昨年4月から法律は施行されたとはいえ、理解が不十分な関係者はまだまだ多い。その周知・徹底が急がれる。

6)「おかげ様で、定年まで勤務できた」との報告が数件あった。誠に喜ばしいことである。その苦労話や工夫したことなどを、情報誌に執筆いただくなどして、後輩達の励み、参考に供して欲しいものである。

■交流会事業  担当理事: 重田 雅俊・湯川 仁康・藤田 善久・神田 真・市川 浩明

(1)タートル交流会

イ)実施日時・場所
実施日 : 9月・11月・3月の第3土曜日
実施時間: 13時30分~15時15分
実施場所:
平成28年 9月  東京会場 日本盲人職能開発センター
         大阪会場 日本ライトハウス情報文化センター
         福岡会場 福岡県立 ももち文化センター
平成28年11月  東京会場 日本盲人職能開発センター
         京都会場 オフィスゴコマチ
         福岡会場 ホテル福岡ガーデンパレス
         新潟会場 新潟ふれ愛プラザ
平成29年 3月  東京会場 日本盲人職能開発センター
         大阪会場 日本ライトハウス情報文化センター
         福岡会場 福岡県立 ももち文化センター

ロ)実施内容
講師を招いての1時間の講演と、30分の質疑応答
9月17日交流会 講師 関口宏聡氏
テーマ「認定NPO法人とは? 認定NPO法人のメリットを活用して活動を広げよう!」
参加者数 70名 (内訳 東京 51名、大阪 8名、福岡 11名)
11月13日交流会 講師 高橋広氏
  ※第2週の日曜日に開催
テーマ「ロービジョン就労相談から見えてくるもの」
参加者数 89名 (内訳 東京 67名、大阪 13名、福岡 9名)
3月18日交流会 講師 白浜一氏
テーマ「国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局の視覚障害者に対する訓練・支援について」
参加者数 83名 (内訳 東京 55名、大阪 17名、福岡 11名)

ハ)事業効果
a.認定NPO法人になった意味、ロービジョン就労相談の実際、自立支援訓練の実際などについて見識を広げることが出来た。
b.昨年度よりやや減ってはいるものの、多数の参加者がありタートルの看板としての役割を果たすことができた。
c.交流会の企画運営について、引き継げるスタッフを養成することができ、毎回責任者を 分担して開催することができた。
d.11月交流会は初めて第2週の日曜日の開催となったが、通常通りの人数を集めることが出来た。

ニ)課題等

a.専門家・当事者・タートル関係者を講演の柱にし、就労に関する内容でタートル独自の講師を準備する。
b.スカイプ対策を引き続き確実に実施する。
c.エコーキャンセラーマイクなどの購入を進め、新会場の開催を具体化する。
d.日曜日開催など会場確保について、日ごろから会場探しを心がける。

(2)タートルサロン

イ)実施日時・場所
実施日 :毎月第3土曜日 12回実施
実施時間:独自で実施する場合は14時00分~16時00分、総会や交流会の後に実施する場合は15時30分~16時30分(ジョイント会場も同様)。
実施場所:日本盲人職能開発センター 地下研修室
※ジョイント会場の実施場所は、【(1)の実施場所】を参照。

ロ)実施内容
相談活動と会員間の交流
参加者数 423名(東京会場 通年)
4月 32名、5月 40名、6月 18名、7月 29名、8月 34名、9月 51名、 10月 25名、11月 67名、12月 23名、1月 26名、2月 22名、3月 55名
a.定例化で毎回多数の参加があり、多様な話題が提供されていた。
今年度は、12回すべての月に実施できた。
b.相談窓口から紹介があり、毎回初めての相談者も参加していた。
c.班分けはできなかったが、初参加の参加者にはそれなりの配慮ができた。
d.女子会を実施し、女性同士の打ち解けた話ができた。

ハ)事業効果
a.毎月の定例化により参加者も多く、入会に繋がるケースもみられる。
b.重要な相談活動の場であり、タートルと相談者をつなぐ窓口となっている。
c.会員間の主体的な交流の場であり、情報入手の場ともなっている。
d.相談事業との連携で、参加者情報の伝達や毎回の記録がきちんとできるようになった。

ニ)課題等
a.参加者が多くなってきたので、簡単な自己紹介の後に分散化を試行する。
女子会の持ち方も色々と試してみる。
b.記録の形式を統一し、誰でも記録できるようにする。今年度はボランティアスタッフの応援により、記録がきちんとできた。
c.相談者の連絡先や状況などの個人情報の記録については、相談班に任せる。
d.相談対応スタッフのスキルアップを図るため、障害の理解・各種訓練・年金・休職などの基礎知識について毎回20分程度の学習会を試行する。

■情報提供事業  

Ⅰ IT事業     理事長 松坂 治男

1.Webの管理(外部委託)
・行事の案内:4回、「情報誌タートル」:4回、お知らせ等を掲載した。
・個人情報保護方針ページの更新
・ホームページに写真を追加した。

2.メーリングリストの管理(外部委託)
タートルML・会員専用ML・役員連絡用ML
視覚障害者本人からの悩み、本の発刊のお知らせ、他団体の行事へのお知らせ、各種講座の開催情報等、活発な意見交換が行われた。

3.交流会開催時、スカイプを利用した各会場間の通信の安定を図り、ほぼ順調に接続ができた。引き続き、スカイプを操作できる人材も複数名確保する必要がある。

4.大学・企業の視覚障害者対象のアンケート調査への協力
新潟大学工学部 福祉人間工学科 准教授 渡辺 哲也
テーマ:ICT機器利用状況調査2017
目標件数:300件、回答件数:307件

Ⅱ 情報誌作成事業     理事 市川 浩明

1.実施内容
・計画通り発行。第35号~38号(年4回)
・<職場で頑張っています>に、女性の寄稿を積極的に採用。本年度の特色として編集。
・スケジュール管理、担当業務の明確化などにより効率の良い業務を実施。

2.特記事項
・印刷会社の突然の廃業に伴い、業務の再構築を検討。

3.問題点
・交流会原稿の確認が講演者都合で遅くなりスケジュールがずれた。しかし予定通り発行。
・印刷会社の廃業が突然通知され、対応に苦慮した。

■セミナー・啓発事業     副理事長 新井 愛一郎

Ⅰ 出前セミナー

企業の問題意識に対応した「出前セミナー」の実施については、私たち企画する側の思いだけが先行して、対象となる企業の現状を受け止めることができずに、計画倒れに終わってしまった。
一方、いくつかの団体からタートルへの視覚障害者理解のための講演依頼があり、実施している。その講演内容は、他の団体ではなかなかできない、視覚障害者全体の問題をフォローする内容となっており、今後の展望を考える大きな経験であった。また、タートルに対して活動紹介についての講演等の要請が来て対応した。これは、タートルの活動への関心が強いことを意味している。

1 視覚障害者理解を目的としたもの
①2016年10月7日 武蔵野市立桜野小学校 4年生 4クラス 144名
②2017年1月27日 武蔵野市立第五小学校 4年生 2クラス 57名
☆①、②の総合学習では、ワークショッフを中心に展開し、「何でも質問コーナー」を最後に、15分ほど入れました。
③2016年12月7日 埼玉県吉川市教育委員会からの委託講演

2 タートルの活動紹介をテーマとしたもの
①2016年7月2日 (社福)日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター
②2016年11月2日  JICA障害者リーダー育成
③2017年2月18日 第38回視覚障害者リハビリテーション講習会
(日本眼科学会専門医認定事業:No28239 3単位)

Ⅱ 勉強会の開催

1 勉強会の目的   
専門職ではない、多くの仕事に共通する業務内容を一つ一つテーマにあげて議論していくことが必要ではないかと考え、人をメインにするのではなく、その「行為」をメインにして分析していく勉強会を実施した。
そして、普通の人が働いていける可能性を、基本的な事や基本的な業務を積み上げていくことから、きちんと企業側に提起していけるようになることを目的とした。

2 実施状況
人数:20から30人参加。
時間:いずれも午後2時から4時。
場所:㈱ジェイリース様の会議室を使用させていただいた。
10月から4月までの4回をワンクールとして、5月から9月まではそのまとめと発表の時期とした。

第1回:10月1日(土)
テーマ:インターネットで情報の入手をどのようにするか
第2回:12月3日(土)
テーマ:データや資料をどのように保存して、いつでも活用できるようにしていくか
第3回:2017年2月4日(土)
テーマ:素早くメモをどのように取るのか
第4回:2017年4月22日(土)
テーマ:メールの操作

3 特徴
・情報提供者の話と共に、参加者からの提起を大切にしていくために、情報交換の時間を長く取った。

■助成金申請     理事 湯川 仁康

助成金の情報収集に努め、タートルの事業に合致すると思われる1件の申請を行ったが不採択となった。
○ファイザー株式会社
助成事業名:ファイザープログラム~心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援~
申請事業:中途視覚障害者の就労相談・支援事業
申請額:220万円
結果:不採択(予備選考は通過)

■ボランティアの調整     理事 市川 浩明

1.ボランティアの現況(東京)

・交流会や総会等タートルの行事に協力して頂ける方→15名。
・その他、事務局のサポートなどを担う方が数名。
・誘導の配置は総会及び交流会(年4回)の開催時で、基本3~4名を1回の行事に配置。
・募集は情報誌の【お知らせコーナー】/WEB/知人などへの呼びかけ、ボランティア向け企画、大学へのアプローチなどで実施。

1-1 東京以外のボランティアの状況(地方会場)
 人数は東京より少ないが、良き協力者を得ている状況。

2.特記事項

・本年度は、新規メンバーとして5名が参加。
 (全員が登録メンバーとして活動中)
・交流会での誘導以外に、文書作成や校正、発送作業などボランティアの職域拡大を実施。
・同行援助接遇向上のため「研修会を実施」。
より安全安心、そしてより視覚障害者を理解していただくように努めた。
・ボランティアとの懇談及び意見交換会を実施。ご意見を賜り今後の活動への参考とするよう運営スタッフと情報共有した。

『第2号議案 平成28年度収支決算報告』

*PDFファイル「28年度活動計画書」を挿入

『第3号議案 平成28年度監査報告』

掲載省略

『第4号議案 平成29年度事業計画(案)』

■活動方針     理事長 松坂 治男

タートルへの期待がさらに増していることが明白になっています。このような中で役員だけでなく多くのみなさんの力を得ながら、頑張っていきたいと思います。
認定NPO法人の3年目を迎えて、更に組織の充実を図るため、新役員を増員し一丸となって活動を広げていきます。
例年行ってきた1.相談、2.交流会、3.情報、4.セミナー・啓発の4事業の更なる充実を目指します。

1.相談事業は、相談者の情報の一元管理を推進するためのデータベースの確立の推進。
首都圏以外の相談者にどのようにアプローチしていくかを考えていきたい。
2.交流会事業は、タートルサロンを継続し、出会いの場の提供と情報交換を行っていく
。その中で女子会も試行していく。 3.情報事業は、ホームページに活動風景の写真やビデオを追加して、さらにタートルの活動を視覚的にもアピールし、賛助会員及び寄付者の増加に務める。
一昨年から実施した大学や企業の視覚障害者関連調査・研究への協力を、さらに拡大を計りたい。
4.セミナー・啓発事業はタートル勉強会の内容を検討し推進する。
視覚障害者理解のための「出前講座」については、私たちの思いだけでなく企業の現状に即した、企業・団体を対象にした理解のための講演・セミナーの実施というかたちで、HP等でも呼びかけて実施していく。
以上の事業を進めていきます。

認定NPO法人として活動していくために事務局の充実を計ります。また、活動資金の確保のため、寄付や助成金等の獲得に積極的にアプローチしていきます。

■相談事業     副理事長 工藤正一

1.相談は基本的に前年通り、従来の当事者による相談をベースにしながら、電話、メールの相談には随時対応し、必要に応じ、個別面接相談、ロービジョン就労相談(眼科医や福祉施設等の専門家の同席による相談)を行う。また、タートルサロンと連携して個別相談を行い、必要に応じて、ロービジョン就労相談に繋げる。

2.相談体制の充実のために、地方の相談については各地区担当理事等と連携し、スカイプ相談会、現地相談会にも可能な限り対応する。また、相談のノウハウを共有できるよう、相談に対応できる後継者の育成に努めるとともに、相談の整理のために、相談スタッフを増強する。

3.平成28年4月施行された改正障害者雇用促進法の趣旨を踏まえつつ、ハローワークや地域障害者職業センター、眼科医や産業医、関係支援施設等との連携を図るため、日本ロービジョン学会等の行事等に協力し、タートルの事業の啓発、情報交換、意見交換を行う。具体的には次の事業に協力する

①第18回日本ロービジョン学会学術総会(2017年5月20・21日、「じゅうろくプラザ=岐阜市文化産業交流センター」)の、21日開催の「第9回医療が関わる視覚障害者就労支援セミナー(テーマ『眼科における就労支援と職業リハビリテーション』)」に協力する。
②国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の就労に関する研究(視覚障害者の就労実態を反映した医療・産業・福祉連携による支援マニュアルの開発)に協力する。

■交流会事業     理事 重田 雅俊

1.タートル交流会
趣旨・目的:講演会を実施し、視覚障害者の就労に関する情報を提供する。
実施日・回数:9月・11月・3月の年3回実施する。
内容:専門家・当事者・タートル関係者を講師に招き、1時間の講演と30分の質疑応答を通して、視覚障害者の就労に関するタートル独自の情報を提供する。
実施場所:東京会場 日本盲人職能開発センター 地下研修室
※ジョイント会場の実施場所は、開催月により変更されます。

2.タートルサロン
趣旨・目的:相談活動と会員の主体的な交流の場を提供する。
実施日・回数:毎月1回 第3土曜日に実施する。
※別の会場や、日曜日の実施も検討する。
内容:会員が自由に参加できる相談・情報交換・交流の場を提供し、知識や経験のあるスタッフが対応する。
実施場所:日本盲人職能開発センター 地下研修室
※ジョイント会場の実施場所は、【1.の実施場所】に伴い未定。

■情報提供事業

Ⅰ IT事業     理事長 松坂 治男

1.Webの管理(外部委託)
お知らせや「情報誌タートル」を掲載する。
文章だけでなく、写真及び映像を入れて、視覚的にも活動を解りやすくする。

2.メーリングリストの管理(外部委託)
タートルML・会員専用ML・役員連絡用ML

3.スカイプを利用した交流会開催時の通信の安定を図る。
引き続き、スカイプを操作できる人材を複数名確保する。

4.大学・企業による視覚障害者対象のアンケート調査及び視覚障害者関連調査に積極的に協力する。

Ⅱ 情報誌作成事業     理事 市川 浩明

・会員/非会員を問わず、中途視覚障害で悩んでおられる方に役立つ情報誌の提供に努める。
・購読媒体として、墨字、メール配信、デイジーまたはカセットテープの中から1種類を会員の希望に応じて提供する。
・誌面の充実について
「職場で頑張っています」、「定年まで頑張りました」コーナーに加え<就労頑張っています!><頑張って就労しました!>コーナーを新設する。
現在、就労に向けて訓練などをしている方や、復職・転職など就労を果たした方の体験談も各号に適時掲載し、同様の悩みを持つ読者に更なる情報提供をしていく。
<協力セミナーの告知、年金情報、公表データ>など誌面の内容に合致したトピックの掲載も検討していく。
・年4回発行。6月、9月、12月、3月(予定)
・業務担当者を明確にして業務品質の維持向上に努める。
編集/窓口 市川、校正 川本、データ確認/校正 芹田、情報誌発送/データ配信 市川・山田・松尾、情報共有によるバックアップ体制 長谷川
・印刷会社の廃業に伴い新たな印刷会社との連携を模索していく。
・上記に伴う見直しによる業務精度の向上を更に勧める。

■セミナー・啓発事業     副理事長 新井 愛一郎

Ⅰ 講演・セミナー、活動紹介

昨年度の反省に立ち、自分たちの力量と、企業の現状を考えながら企画していく。
ただ、視覚障害への理解にむけた企業の関心は決して弱いものではないと考える。
私たちには、講演ができる「体験をした人の存在」という強みがある。
また、就労問題についてもガイドブックと、たくさんの働き続けた事例がある。
就労問題だけにこだわらず、この私たちの強みと、ガイドブックを活用した講演・セミナーは是非広げたいと考える。
また、活動紹介と言う講演依頼もいくつかあり、見えなくても働き続けることの事例発表などの講演は、今後も広げていきたい。
動ける体制と言う現実的な問題を考えながら、実施を考える。
ホームページに呼びかけを掲載して、実施していきたい。

Ⅱ 勉強会

1 第一期の4回のまとめと発表
成果をたくさんの人に知らせることを是非やっていきたい。(HPへの公開など)

2 第二期のテーマ
第一期の継続として具体的な業務スキルと共に以下のようなテーマも考えていきたい。
・白杖のデビューと、自分の見え方をどう伝えるか。
・安全な通勤と社内の移動のために求められること。
・職場のコミュニケーションをどのように取るのか。
その他、毎月のタートルサロンで出された問題をテーマに取り上げたいと思う。

3 各地からの参加
㈱ジェイリース様の会議システムの提供により、福岡、大阪と一体になった勉強会の実現を検討していきたい。

■助成金申請     理事 湯川 仁康

平成29年度各事業計画に合致する助成金の情報を入手し、各事業担当理事と協調しながら申請していく。

■ボランティアの調整     理事 市川 浩明

募集:
・大学への協力要請を継続して実施する。
・ボランティアセンターなどへの掲載などを計画する。
・現状のお知らせコーナーなどの募集文言の見直しを実施する。
・地方会場に赴き、交流会の現状、ボランティア環境について実地検証する。(地域特性の把握を含む)

業務内容:
・ボランティア業務内容の精査を継続し、より皆様に活躍していただける環境を整備する。
・ボランティア募集、登録、研修・見学といったプロセスを明確化して効率的に運営していく。
・誘導/接遇等の研修の実施の充実。
・ボランティア意見交換会の実施。

『第5号議案 平成29年度収支予算(案)』

*PDFファイル「29年度 活動予算書(案)」を挿入

『第6号議案 平成29年度役員選任』

定款の規定により、役員全員が任期満了となるので、次の方々を推薦する。

理事 新井 愛一郎(アライ アイイチロウ) 重任
理事 和泉 森太(イズミ シンタ) 重任
理事 市川 浩明(イチカワ ヒロアキ) 重任
理事 神田 信(カンダ シン) 重任
理事 工藤 正一(クドウ ショウイチ) 重任
理事 熊懐 敬(クマダキ ケイ) 重任
理事 重田 雅俊(シゲタ マサトシ) 重任
理事 清水 晃(シミズ アキラ) 重任
理事 杉田 ひとみ(スギタ ヒトミ) 重任
理事 長谷川 晋(ハセガワ シン) 重任
理事 藤井 貢(フジイ ミツグ) 重任
理事 藤田 善久(フジタ ヨシヒサ) 重任
理事 星野 史充(ホシノ フミタカ) 重任
理事 松尾 牧子(マツオ マキコ) 重任
理事 松坂 治男(マツザカ ハルオ) 重任
理事 湯川 仁康(ユカワ キミヤス) 重任
理事 安達 文洋(アダチ フミヒロ) 退任
理事 石原 純子(イシハラ ジュンコ) 新任
理事 芹田 修代(セリタ ノブヨ) 新任
理事 的場 孝至(マトバ タカシ) 新任
監事 伊吾田 伸也(イゴタ シンヤ) 重任
監事 下堂薗 保(シモドウゾノ タモツ) 重任

【平成29年度総会記念講演】

『障害者委託訓練 在職者訓練の説明』

公益財団法人 東京しごと財団 障害者就業支援課
委託訓練推進班 コーディネーター
杉本 薫(すぎもと かおる) 氏

東京しごと財団の杉本でございます。 今日は私ども東京しごと財団の事業内容と、障害者委託訓練の在職者訓練につきまして、この場をお借りして説明をさせていただきます。 パワーポイントを開きまして、在職者訓練コースの対象になる方や、手続き、訓練内容について説明させていただきます。また、東京小平にある東京障害者職業能力開発校、こちらにも在職者向けの講習がございますので、最後に説明させていただきます。

まず、私ども東京しごと財団には、大きく分けて3つの事業がございます。1つはシルバー人材センターと申しますが、高年齢者が地域で働くことを通じ、社会参加を図る事業です。もう1つはハローワークと連携を取りながら、都民の若い方から老齢の方までに就業支援サービスを行っています。そして、3番目が私どもの担当している障害者の就業支援事業です。障害を持っていらっしゃる方の職業自立ということで、就職をメインにサポートする事業になります。

障害者委託訓練は、もとは厚生労働省が行っている訓練です。これは厚労省から各都道府県に委託ということで、実際には職業能力開発校が委託を受けています。東京では、東京障害者職業能力開発校が委託を受けて訓練を行っています。ただ、東京障害者職業能力開発校の場合は訓練期間が6か月以上ということで、長いものは2年ほどかかります。そのうち6か月以下の訓練については、私どもしごと財団が改めて委託を受ける形で行っています。こちらは仕事を探している方がメインですから、ハローワークとも連携を取って訓練を実施しています。

実際の訓練は、一般に私どもは訓練委託先様と呼んでいますが、企業や民間の教育機関、社会福祉法人、NPO法人等に担っていただいています。補足をしますと、訓練を受ける中には在職の方も仕事を探している方もいらっしゃいますが、書類上は先ほどの東京障害者職業能力開発校の短期課程の学生扱いとなっています。

また、この訓練は公共職業訓練という位置付けですので、仮に100時間の訓練の場合は、80時間(8割)以上出席いただくことで修了可能となります。一般の方の訓練ですと、通常は欠席を認めてくれませんが、障害者の方は通院等のご都合があるので、8割という枠で実施をしています。あとは公共職業訓練ですので、受講料やテキストについてはご負担がありませんが、交通費については自己負担をお願いしています。

この訓練に関しては、在職者も一般の求職者もそうですが、一度受講されて修了されると1年間は受けることができません。できる限り多くの方に受けていただくため、また予算の関係等もあって、こういう形での運用をしています。

それでは、委託訓練のコース種類に関する説明です。まず、仕事を探してハローワークに申し込みされている方(求職者)に対しては、4つのコースがございます。①知識・技能習得コース、②障害者向けの日本版デュアルシステムコース、③実践能力習得訓練コース、④e-ラーニングコースです。

今日のポイントである在職者向けのコースは、実際に仕事をされている方に向けての訓練コースです。仕事でのスキルアップを通じ、職域を拡大することで雇用の継続を目指すことが、この訓練の目的になります。現在、この訓練には2種類のコースとして、①知識・技能習得コースと②指導者派遣コースがございます。

知識・技能習得コースの場合は、ご本人に訓練場所に来ていただいて、訓練を受けていただきます。指導者派遣の場合は、通常は企業側に場所を設定していただき、指導される方がそちらに伺って、パソコンであればパソコンスキルの指導をします。当然ですが、仕事をされているためこの訓練はハローワークの領域外になりますから、私ども東京しごと財団に直接お申し込みいただくことで、訓練の受付等をしております。

次に申込み条件をお話いたします。現状では訓練対象となる方には4つの条件を設定しています。まず、1つ目は障害者手帳または医師の診断書や意見書で障害の有無が確認できる方。2つ目は都内にお住まいか都内の事業所(会社)にお勤めの方。3つ目は訓練を受けた後も継続して働くことが見込まれる方。また、仕事中の時間で訓練を受ける形をとりますので、4つ目としては勤務先の了承が得られる方になります。この4つの条件を満たしていただければ、私どもでの訓練の受講が可能になります。あとは、先ほども申し上げた雇用の継続ということで、訓練が終わられてから1か月後を目途に、私どもから直接企業に雇用継続の確認をさせていただいています。

手続き的には今の要件を満たされた上で、申し込み書類の受講希望シートを、私どもに送っていただく形になります。この書類は私どものホームページからダウンロードできます。受講希望シートは2枚構成となっています。必要事項を記入して、2ページ目に勤務先の承認印をいただいた上で、私ども東京しごと財団へご郵送いただきます。

書類が届きましたら、次は面談という手続きに入ります。実際に訓練をする場所で、受講されるご本人、勤務先の上司や人事の方などの責任者、実際に訓練をされる委託先の方、私どもコーディネーターの4者で面談をさせていただきます。具体的にはご本人様の障害の確認と、勤務先の受講承認の確認という事務的なことです。それに加えて、パソコンの例で申し上げるとご本人のスキルを確認させていただきます。ご本人様の現在のスキルと勤務先の要望を埋めるような形で、訓練を受けていただくことになります。

そして、どのぐらいの訓練時間が必要か、仕事をされているために週に何回行うのか等、部署によってはいろいろなご都合がありますから、その事情を説明いただいた上で、訓練委託先に訓練日程を作っていただきます。

先ほど短期課程の訓練というお話をいたしましたが、実はこの訓練には上限がございます。最高で3か月ということで、時間で言うと160時間が上限となっています。今までの例で申し上げると、視覚障害重度の方で、画面読み上げソフトのスクリーンリーダーから始めて、ワード、エクセル、パワーポイント等の操作の習得までは、長い方で100時間前後、短い方であれば40時間前後というのが実績です。

ただ、最高で160時間までの訓練は可能ですから、先ほど申しましたように、ご本人のスキルと、要求されるレベルとの間のスキル習得を目指していただく形になります。今までの状況ですと、時間と訓練内容については、何とか満足いただけているかと思います。

しかし、もっと長く訓練したいというケースや、訓練を受けて職場に戻ってから再度受講をされたいような場合には、先ほどもお話しましたように、1年間は待っていただいています。

ちょっとお話は戻りますが、日程を委託先様に作っていただき、日程のたたき台を勤務先とご本人にいったんご提示させていただきます。あとは日程等の最終確認をいただいた上で、私どもの訓練開始という形になります。ですから、面接から訓練の開始までには2週間強は見ていただいています。

こちらの表はちょっと小さいのですが、現在募集しているパソコン訓練の訓練項目と細かい内容になります。訓練内容としては全部で9項目ございます。①画面読み上げソフト・画面拡大ソフトの操作、②ワード基礎、③ワード応用、④パワーポイント、⑤エクセル基礎、⑥エクセル応用、⑦インターネットでの検索やメールの利用。そして、ちょっと例は少ないのですがアクセスということで、パソコンの中でかなりデータベースを使われるケースがありますが、⑧アクセスの基礎です。あとは⑨OCR/PDFデータ活用になります。最近の文書は、会社の中ではPDFで配付されるケースが多いのですが、なかなかPDFを読み上げるのは難しく、何種類かのソフトでも100%読み上げるものは無いそうです。それをどうやって読み上げ、内容を確認するかという項目も入っています。

ただ、先ほど申し上げましたように、この訓練内容をすべて行うわけではありません。ご希望の中から取捨選択をします。例えば基礎はわかっているためワードの応用と、エクセルに関しては基礎と応用両方をやりたいというのであれば、この中から3つの項目を選んで訓練を受けていただく形になります。

これは本当に事務的なお話になりますが、お問い合わせに関しては、東京しごと財団の先ほどご紹介いただいた障害者就業支援課 委託訓練推進班に、お電話・メールをいただければご対応ができますので、よろしくお願いします。以上が私どもの在職者訓練になります。

次に、これは参考としてご紹介させていただきますが、東京・小平にある東京障害者職業能力開発校、こちらでも在職者向けの講習を昨年度から始めています。事務局に問い合わせますと、視覚障害の方については、画面が見られる方に限るということです。申し訳ないのですが、そこまでしか対応がとれていないようです。

やはり手帳を持っていても勤務時間中には訓練を受けにくい場合には、この訓練を受けに来られる方もいると聞いています。手帳をお持ちの方で、パソコンのキーボード操作ができ、基本的には土曜日に設定するすべての講習日に出席できる方となります。こちらは東京障害者校に直接お申し込みいただく形になるかと思います。

今年度、すでに一部の訓練コースは始まっていますが、4つの訓練コースを設定しています。1つ目はエクセルの活用、2つ目はパワーポイントによるプレゼンテーション、3つ目がエクセルの活用(応用)、4つ目はエクセル(VBA)ということです。 仕事をされている方向けの講習として、参考までにご報告しておきます。選択肢としてご検討いただければと思います。

以上が在職者訓練についての、本日の私の説明になります。

# 「講演紙上再録」 ここまで。

<お断り>
本稿の内容は講演者の個人的見解であり、所属団体・企業及び当会と関係するものではありません。

【定年まで頑張りました】

『「人生、おいしくなってきた」・・・かな?!』

会員 金子 光宏(かねこ みつひろ)

平成29年3月をもって、定年退職しました。視覚障害のある職員として働いた23年を含めた約37年間、仙台市役所でお世話になりました。

見えなくなった当初、私は左眼だけがぼんやり文字がわかる程度で、資料を読むことも独りで歩くこともできなくなりました。もはや仕事は続けられないと観念しました。 その頃の私は視覚障害のことをほとんど知りませんでしたので、ともかく情報収集に奔走し、いろいろ試してみました。点字は市内の点字図書館で習いました。白杖歩行は(いま考えれば危険な行為でしたが)指導者用教本を取り寄せて独学しました。

そんな半年間を過ごしたのち、職場の上司や同僚、友人など、多くの方々に応援していただいたおかげで、職場に戻ることができました。仙台市が障害者の就労支援施策に取り組もうとしていた頃のことです。新しい事業だったため、誰も担当者がいなかったことから、職場に戻っても何もすることがない私の担当になりました。この時から長年にわたる私と障害者就労支援との関わりが始まりました。

職場では拡大読書器とPC画面拡大装置を備えてもらいました。私が休んでいる間に臨時雇用されていた職員も、半年間雇用延長されて、私の仕事を手伝ってくれました。Windows95が導入されてからは、95リーダーとPC画面拡大ソフトを使うことで、少し効率的に仕事を進めることができるようになりました。それでも必要な資料を業務時間内に読み終えることができず、自宅に持ち帰って読んでいました。休日のほとんどの時間が資料を読むためだけに費やされたような気がします。

そんな毎日を繰り返しながらも何とか定年まで仕事を続けることができたのは、タートルの皆さんとの出会いがあったからだと思っています。見えなくなって、文字通り暗中模索の状態からタートルの仲間の一人として活動できるようになるまで、私はいつもタートルと共にありました。

私が初めてタートルの会合に参加したのは、平成8年のタートルの会(中途視覚障害者の復職を考える会)第1回定期総会でした。その時から現在に至るまで、私はずっとタートルの皆さんのお世話になってきました。平成9年発刊の『中途失明~それでも朝はくる~』への寄稿、最初の地方交流会となる「仙台フォーラム99」の運営、そして会の運営にも東北地区代表・運営委員、理事として少しだけ関わらせていただきました。

そんな折に起こった東日本大震災。平成23年3月11日。それ以後の活動にはまったく参加できず、そのまま理事も辞し、時間だけが経過してしまいました。

いま改めて振り返ってみると、本当にいろいろなことがあったような気がします。見えなくなったことで、何もなければけっして経験することのなかったであろう人生の味わいを知ることができたのかもしれません。定年を迎えた今、私はしみじみ実感しています。ある酒造メーカーのテレビCMで流れていたキャッチコピー・・・「人生、おいしくなってきた」と。まだまだこれからです。

皆さん、本当にありがとうございました。

【お知らせコーナー】

ご参加をお待ちしております!!(今後の予定)

◎タートルサロン

毎月第3土曜日  14:00~16:00
*交流会開催月は講演会の後に開催します。
会場:日本盲人職能開発センター(東京四ツ谷)
情報交換や気軽な相談の場としてご利用ください。

◎交流会(予定)

11月18日(土)
講師:外谷 渉氏 (株式会社ラック勤務)
同社でシステム開発等に従事されておられます。
テーマ:「視覚障害者のシステム開発分野での可能性」
自らの体験をふまえた工夫や苦労話をご披露いただきます。

3月17日(土)
講師:石原 純子氏 (井上眼科病院 人事総務課)
テーマ:「自身の就労経験から考える眼科専門医療施設で働く視覚障害者の役割と思い」
※詳細は決定次第お知らせいたします。

◎忘年会 12月2日(土) 

会場:両国ビューホテル(毎年恒例の会場です)
交通:JR総武線「両国駅西口」徒歩1分
会費:6,000円(予定)

一人で悩まず、先ずは相談を!!

「見えなくても普通に生活したい」という願いはだれもが同じです。職業的に自立し、当り前に働き続けたい願望がだれにもあります。一人で抱え込まず、仲間同士一緒に考え、気軽に相談し合うことで、見えてくるものもあります。迷わずご連絡ください!同じ体験をしている視覚障害者が丁寧に対応します。(相談は無料です)

正会員入会のご案内

認定NPO法人タートルは、自らが視覚障害を体験した者たちが「働くことに特化」した活動をしている団体です。疾病やけがなどで視力障害を患った際、だれでも途方にくれてしまいます。そんな時、仕事を継続するためにはどのようにしていけばいいかを、経験を通して助言や支援をします。そして見えなくても働ける事実を広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。当事者だけでなく、晴眼者の方の入会も歓迎いたします。
入会金はありません。年会費は5,000円です。

賛助会員入会のご案内

☆賛助会員の会費は、「認定NPO法人への寄付」として税制優遇が受けられます!
認定NPO法人タートルは、視覚障害当事者ばかりでなく、タートルの目的や活動に賛同し、ご理解ご協力いただける個人や団体の入会を心から歓迎します。
年会費は1口5,000円です。(何口でも結構です)
眼科の先生方はじめ、産業医の先生、医療従事者の方々には、視覚障害者の心の支え、QOLの向上のためにも賛助会員への入会を歓迎いたします。また、眼の疾患により就労の継続に不安をお持ちの患者さんがおられましたら、どうぞ、当認定NPO法人タートルをご紹介いただけると幸いに存じます。
入会申し込みはタートルホームページの入会申し込みメールフォームからできます。また、申込書をダウンロードすることもできます。
URL:https://www.turtle.gr.jp/hpmain/

ご寄付のお願い

☆税制優遇が受けられます!
認定NPO法人タートルにあなたのお力を!!
昨今、中途視覚障害者からの就労相談希望は急増の一途です。また、視力の低下による不安から、交流会やタートルサロンに初めて参加して来る人も増えています。それらに適確・迅速に対応する体制作りや、関連資料の作成など、私達の活動を充実させるために皆様からの資金的支援が必須となっています。
個人・団体を問わず、暖かいご寄付をお願い申し上げます。

★当法人は、寄付された方が税制優遇を受けられる認定NPO法人の認可を受けました。
また、「認定NPO法人」は、年間100名の寄付を受けることが条件となっています。皆様の積極的なご支援をお願いいたします。
寄付は一口3,000円です。いつでも、何口でもご協力いただけます。
寄付の申し込みは、タートルホームページの寄付申し込みメールフォームからできます。また、申込書の書式をダウンロードすることもできます。
URL:https://www.turtle.gr.jp/hpmain/

≪会費・寄付等振込先≫

●郵便局からの振込
ゆうちょ銀行
記号番号:00150-2-595127
加入者名:特定非営利活動法人タートル

●他銀行からの振込
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
支店名:〇一九店(ゼロイチキユウ店)
支店コード:019
預金種目:当座
口座番号:0595127
口座名義:トクヒ)タートル

ご支援に感謝申し上げます!

昨年度も多くの皆様から暖かいご寄付を頂戴しました。心より感謝申し上げます。また、賛助会費も確定申告で寄付控除の対象となります。これらのご支援は、当法人の活動に有効に使用させていただきます。
今後とも皆様のご支援をお願いいたします。

活動スタッフとボランティアを募集しています!!

あなたも活動に参加しませんか?
認定NPO法人タートルは、視覚障害者の就労継続・雇用啓発につなげる相談、交流会、情報提供、セミナー開催、就労啓発等の事業を行っております。これらの事業の企画運営に一緒に活動するスタッフとボランティアを募集しています。会員でも非会員でもかまいません。当事者だけでなく、晴眼者(目が不自由でない方)のご支援も求めています。首都圏だけでなく、関西や九州でもボランティアを募集しています。
具体的には事務作業の支援、情報誌の編集、HP作成の支援、交流会時の受付、視覚障害参加者の駅からの誘導やスカイプの操作等いろいろとあります。詳細については事務局までお気軽にお問い合わせください。

タートル事務局連絡先

Tel:03-3351-3208
E-mail:m#ail@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

【編集後記】

全国のタートル会員の皆様、お元気でお過ごしでしょうか? 編集後記を書いている今は、猛暑真っ只中です!今年の夏もとても暑いですね!また、いろいろな場所で災害があり天候不順も気になります。災害にあわれた方々には謹んでお見舞いを申し上げます。

ところで、某企業が1000人を対象に実施した調査では、2017年は日取りが良く、盆休みを「6日以上」とする回答が35%で、2013年以来もっとも多いとのことでした。皆様は、どのような夏をお過ごしになられましたか?夏の風物詩のひとつに「甲子園」もありますよね?私は、地元の学校が甲子園で戦うときは、昼間から営業している居酒屋のようなところで応援をします。少し酔いもしながら一喜一憂するのは楽しいものです。知らない人の集まりではありますが、そのときはみんな友達!?仲良くウダウダするのです(笑)。最初は、全盲の人が扉にぶつかりながらも入ってくるので驚くみんなも、地元愛(?)からというものでもないでしょうが、みんなとても親切にしてくれます。トイレも、帰りも付き添ってくれます。本当にありがたいものです!でも今年は残念ながら参加できず…。

情報誌は、この号で丁度40号になりました。1年4回発行を基本としていますので、10年経過してきた事になります。10年前、私は丁度視覚障害者になった時期でした。皆様も10年前を振り返ると感慨深いものがあるのではないでしょうか?情報誌は、この号からレイアウトなどリニューアル致しました。特に墨字、PDF版をごらんの方は実感していただけるのではないかと思います。是非、ご感想をいただければと思います。

さて、今回の「情報誌」はいかがでしたでしょうか?これからも、会員の皆様に楽しんで頂けるような誌面にしていきたいと思っております。どうぞ宜しくお願い致します!!

(市川 浩明)

奥付

特定非営利活動法人 タートル 情報誌
『タートル第40号』
2017年9月1日発行 SSKU 増刊通巻第5867号
発行 特定非営利活動法人 タートル 理事長 松坂 治男