1.2 高まる会への期待
手記集『中途失明〜それでも朝はくる〜』の発刊後、1年6カ月が経過し、およそ4,000部が普及されました。これに先だってメーリングリストとホームページも開設され、それらは活発に運用されています。これらが相まって、会には様々な相談が寄せられるようになり、会員も増え、必然的に会報の発行部数も増えました。
ちなみに、『タートル第13号』(5月10日付け)発行時点で、会員の登録者数は340人で、内、当事者は240人となっています。会報の発行部数は500部となり、総会以降の発行回数は4号を数えました。
最近では、全国各地から数多くの相談が寄せられ、本人や家族はもとより、労働組合、医療機関などからの相談も増え、会への期待も高まっています。
1.3 個別相談への対応
相談のなかには、情報提供や他の機関へ繋げることで終わる場合も少なくありませんが、単にそれに留まらない、個別的継続的なものも少なくありません。
この1年間にうけた新規個別相談は、12都府県から39件を数えました。都府県別では、東京13、神奈川7、埼玉5、千葉5、以下、茨城、長野、福井、和歌山、大阪、広島、山口、福岡、熊本、それぞれ各1件となっています。相談者別では、本人33、家族3、同僚1、労働組合1、病院ソーシャルワーカー1となっています。当事者の性別では、男30、女8、不明1となっています。
相談に至る経緯をみると、会の存在を知ったのは、手記集、ホームページ、メーリングリスト、新聞、ラジオ、あるいは、医療機関や福祉施設などの紹介によるというものでした。電話による相談がほとんどですが、なかには、直接事務局を訪ねて来られたり、メーリングリストで行われる場合も少なくありません。
それらに対する対応については、会長、事務局、担当幹事を中心に、主に幹事会や交流会で、あるいは、メーリングリストなどでの機会を捉えて対応しました。機敏な対応を要する場合は、緊急に幹事会を開き、必要に応じ、拡大幹事会で対応しました。
相談内容については、在職中の相談(職場復帰、継続雇用)だけでなく、初めての就職や、再就職についての相談、あるいは、子どもの将来に対する相談などもありました。在職中の場合で、進行性の疾患などでは、深刻なケースが多く、現在20人弱の人が微妙な立場に立たされています。また、私たちとの出会いにより、新たな目標を目指して頑張っている人や、交流会に参加することで元気を取り戻す人も少なくありません。
個別相談ケースとして特筆すべきこととして、次の三つを挙げることができます。
一つには、郡悟さん(東京)が昨年10月、1年3カ月ぶりに元の職場に原職復帰を果たしたことがあります。復職を祝って、東京(両国)において祝賀会を開催しました。
二つには、大阪の「二見裁判」(中途視覚障害となった二見徳雄さんの関西電力不当解雇事件)があります。今年に入って、裁判長の提案を受け、新たな段階に入りました。現在、「試用」という形でテスト的に働いています。5月21日の「支援する会」の第3回総会に向け、会としてメッセージを送るとともに、山本浩幹事(和歌山県)が参加してくれました。名実ともに職場復帰が実現するまで、引き続き支援をしていきたいと思います。
三つには、福島県のある町役場職員Kさんの職場復帰についてです。まもなく職業訓練が実現するか否かという新たな段階にあります。労働組合が全面的な支援をしていますが、昨年夏、当会会長と松坂幹事が労働組合の学習会に講師として参加しました。引き続き会として支援をしていきたいと思います。
1.4 相談活動の成果と課題
この1年を振り返ると、私たちとの繋がりのなかで、10人の人が職場復帰や再就職などを果たしました(「復職者等一覧」参照)。このなかには、会発足直後の相談で、理学療法士への道に進み、見事に再就職を果たした人や、メーリングリストを通じて、多くの先輩たちに励まされながら、新社会人となられた人もいます。
また、継続雇用や再就職の可能性を求めながらも、最終的に「あはき」への道を選択し、この4月から盲学校専攻科に進学した人も3人います(東京、埼玉、千葉)。
さらに、休職期間満了とリストラの影響で、止むなく退職し、新たな気持ちで再就職を目指している人もいます。
ここでの課題の一つには、復職後の定着支援・定着指導があります。一旦復職すると、本人が支援を望んでも、なかなか受けられないという問題があります。一人の中途視覚障害者の職場復帰には多くの人たちの努力と、莫大なエネルギーを費やしています。それらを無駄にしないためにも、中途視覚障害者の職場復帰に対する定着指導は、今後の大きな課題と言えます。
今一つは、「あはき」を、視覚障害者の最後の砦として守っていかなければならないということです。
全体を通して、今後の課題と考えられることは、微妙な立場にあって悩んでいる人たちと、遠隔地にいて悩んでいる人たちに対する支援のあり方です。どうしても、首都圏を除けば、なかなか直接会う機会を持てず、十分な支援ができません。今後、北海道、宮城、和歌山、広島の地方幹事と連携した取り組みを考えたり、他の地域へも幹事を増やしていくことなども含めて検討していく必要があると思います。
2.1 会社でのパソコン通信の活用
これまで視覚障害者が職場の中で「情報の発信者」になるというのはなかなか考えにくいことであった。しかしパソコン通信の活用がそれを変えた。これには二つの意味がある。
一つは、職場でどうしても孤立しがちな働き方を強いられる中で、周囲の人との関係を双方向に変えるものとして「パソコン通信の活用」が提案された。職場の中における自分の存在を見つめ、それを変えていこうとする試みとして、重要な提起だと思う。
もう一つは、どんな情報が、どの人にとって重要かを理解できる、経験を持つ中途視覚障害者にとって、通信上で得た情報を、他の社員に提供するという作業が、新たな仕事として提案されたことである。当然インターネットによる情報の収集も考えると、この領域での、多様な形での仕事の創出を考える事ができるのではないか。
2.2 情報の収集と活用
復職してから意識的に行ってきた情報の蓄積が現在の相談業務に役立っている。テープに録音すること、点字でメモすること、データを自分でコツコツと入力すること。たくさんの人との関わりを大切にすること。これらは一朝一夕にはできないことだけあって、このような実践の積み重ねは、大きな力となっている。このように色々な方法を組み合わせ、情報を入手し、それを自分で使いやすいように加工することはかなり大変な労力を費やす。しかし、だからこそ、意味ある情報の蓄積ができるのである。確かに、「視覚障害者は情報障害」と言われる。しかし、この状況を突破し、反対にたくさんの情報を、自分の仕事に充分に生かせるのであれば、仕事でも色々な可能性が考えられるような気がする。
また、様々な手段で手に入れた情報は、やはりパソコンを活用し整理することが私たちにとってきわめて重要であることが再確認された。必要な情報を即座に、自分の使える形で取り出すことができることが大切である。
2.3 仕事に生かそうデータベース
データベースを活用した進捗管理・予算管理の仕事の実践から、データベースの活用について、幾つかのポイントが提起された。
まず、仕事の現状を良く知り、自分がその中で何ができ、どのようにやれば役立つのかという、仕事を見つめる「センス」のようなものを、身につけることが大切になる。もちろん、私たちのこのような姿勢を受け止める雇用側の基本的な理解は前提となるのだが。自分が何をしようとするのか、それをやりやすくするためにどんな方法をとればいいのか。このような考え方でデータベースも一つの道具として、仕事をやりやすくするための手段として使う事がポイント。
そしてデータベースの活用において、常に他の人との共用性−−他の人が見てすぐわかる、周り人とのデータのやりとりが自由にできること。これは社内での仕事ではとても大切。
そして、このように考えれば、さらにデータベースの仕事での活用の可能性は広がろう。具体的な事例をさらに集め、整理したい。
(注)一人で複数のメールアドレスを登録している人もいるので、メーリングリスト(以下MLと略記)参加者の実数は 105〜106名程度。
タートルの会のMLは、タートルの会の会員であるか否かに関わりなく、参加・退会手続きが自由に行えるようになっているため参加者数には多少変動がみられますが、長期的には増える傾向にあります。昨年の総会報告では、1998年5月24日現在で、参加者60名、通算書込数が約1千と報告されています。
3.1.2 MLの書き込みの内容等
MLで交換される情報は多岐にわたります。項目として上げるなら、会報第10号にある昨年のMLに関する報告と同じように、(a)会活動に関わる情報交換、(b)視覚障害に悩む本人やその周辺の人からの相談、(c)関連放送番組や行事等のお知らせ、(d)図書情報、(e)ソフトウェアの使用方法等パソコンをめぐる技術情報の交換、(f)ネットワーク上で得られた視覚障害関連等の情報、(g)便利グッズ、(h)視覚障害者の生活やリハビリに関わる話題、ということになりますが、ここ1年くらいにおける特徴としては次のような点が上げられます。
3.2 ホームページについて
3.2.1 基本的事項
URL http://www.asahi-net.or.jp/~ae3k-tkgc/turtle/
公開年月日 1997年11月22日
開設契約ネット 朝日ネット
開設費用 月額1700円
3.2.2 ホームページの構成・内容
ホームページの構成は、以下の10項からなっています。
(a)新着情報(ホームページの更新情報)、(b)おしゃべりサロン(MLで出た話題や会員のエッセイなど)、(c)タートルの会とは、(d)会報『タートル』(第1号〜13号まで)、(e)こんな職場で働いています、(f)手記集『中途失明』出版、(g)ご案内情報(イベント・図書情報)、(h)タートルMLへのお誘い、(i)玉手箱(資料集)、(j)関連リンク(他のホームページへの入り口)
このうち内容がコンスタントに更新されているのは、(b)おしゃべりサロン、(d)会報『タートル』、(g)ご案内情報、(i)玉手箱の4項です。
「玉手箱」のコーナーには、全国視覚障害者雇用促進連絡会の機関誌「雇用連情報」の第33号(1993年7月1日)〜第44号(1999年4月1日)を掲載しているほか、日本理療科教員連盟 進路対策部&ヘルスキーパーの制度化を求める連絡会が 1998年5月に取りまとめたヘルスキーパーに関する実態調査、国際視覚障害者支援技術セミナー 1998 予稿集、障害者の雇用に関わる助成措置、刊行物「職リハネットワーク(1998.10)」(中途視覚障害に関する特集号)等々の資料を昨年度追加掲載しました。
また、「おしゃべりサロン」ではMLで書き込まれたもののうち、プライバシーに関わりのない内容のものを掲載させてもらっており、かなり蓄積されてきています。
3.2.3 その他
ホームページの更新は、平均すると月あたり2回程度ですから、それほど頻繁ではありませんが、タートルの会の会報や雇用連情報等の着実な蓄積により、資料価値のある内容になってきています。中途視覚障害者やその周辺の人からタートルの会に電話等で相談があった場合も、ホームページを参考にしてもらうケースが出てきています。
また、「おしゃべりサロン」や「タートルMLへのお誘い」のコーナーをホームページ上に設けていることもあり、それらを見てMLに参加してくれる人も以前より増えてきています。MLとの連携が取られ、少しずつながら情報交換の輪が拡がっているといえます。
今後の課題としては、より読みやすいページ作成と構成設定、ほとんど更新されていないページの充実あるいは見直しが上げられます。