タートルの会 1999年6月 総会資料を掲載します。総会の議事次第と 1998年度の活動報告です。

第4回定期総会

(議事次第)

議事進行:持田健史
 1.開会挨拶 :和泉森太
 2.事業報告:工藤正一、新井愛一郎、吉泉豊晴
 3.会計報告:山口 崇
 4.会計監査:田中 均
 5.役員選任:篠島永一
 6.活動方針(案):松坂治男
 7.予算(案):山口 崇
 8.閉会挨拶:下堂薗 保
(交流会) 司会:内山義美
(懇親会) 司会:北神あきら

1999年6月5日(土)
中途視覚障害者の復職を考える会
タートルの会

1998年度事業報告

1 相談活動

1.1 私たちを取り巻く情勢
 私たちを取り巻く労働環境は、今、大変厳しい状況です。視覚障害者の雇用の拡大と安定を考えるとき、新規雇用の拡大と、中途視覚障害者の雇用の継続という両面から考える必要があります。しかし、今日のような不況とリストラのなかでは、何れも、これまでになく大変厳しいものとなっています。
 視覚障害者の職域として実績のある電話交換手、コンピュータプログラマー、ヘルスキーパーにしても、新規雇用は伸び悩み、視覚障害者の伝統的な職業である「あはき」(あんま・マッサージ・はり・きゅう)業にしても、その厳しさは例外ではありません。
 私たちの会員のなかにも、退職を余儀なくされたり、労働条件を切り下げられたり、また、復職、再就職、あるいは、休職することなく働いてきた人も、「いつまで働けるだろうか」と、不安のなかで過ごしている人は少なくありません。

1.2 高まる会への期待
 手記集『中途失明〜それでも朝はくる〜』の発刊後、1年6カ月が経過し、およそ4,000部が普及されました。これに先だってメーリングリストとホームページも開設され、それらは活発に運用されています。これらが相まって、会には様々な相談が寄せられるようになり、会員も増え、必然的に会報の発行部数も増えました。
 ちなみに、『タートル第13号』(5月10日付け)発行時点で、会員の登録者数は340人で、内、当事者は240人となっています。会報の発行部数は500部となり、総会以降の発行回数は4号を数えました。
 最近では、全国各地から数多くの相談が寄せられ、本人や家族はもとより、労働組合、医療機関などからの相談も増え、会への期待も高まっています。

1.3 個別相談への対応
 相談のなかには、情報提供や他の機関へ繋げることで終わる場合も少なくありませんが、単にそれに留まらない、個別的継続的なものも少なくありません。
 この1年間にうけた新規個別相談は、12都府県から39件を数えました。都府県別では、東京13、神奈川7、埼玉5、千葉5、以下、茨城、長野、福井、和歌山、大阪、広島、山口、福岡、熊本、それぞれ各1件となっています。相談者別では、本人33、家族3、同僚1、労働組合1、病院ソーシャルワーカー1となっています。当事者の性別では、男30、女8、不明1となっています。
 相談に至る経緯をみると、会の存在を知ったのは、手記集、ホームページ、メーリングリスト、新聞、ラジオ、あるいは、医療機関や福祉施設などの紹介によるというものでした。電話による相談がほとんどですが、なかには、直接事務局を訪ねて来られたり、メーリングリストで行われる場合も少なくありません。
 それらに対する対応については、会長、事務局、担当幹事を中心に、主に幹事会や交流会で、あるいは、メーリングリストなどでの機会を捉えて対応しました。機敏な対応を要する場合は、緊急に幹事会を開き、必要に応じ、拡大幹事会で対応しました。
 相談内容については、在職中の相談(職場復帰、継続雇用)だけでなく、初めての就職や、再就職についての相談、あるいは、子どもの将来に対する相談などもありました。在職中の場合で、進行性の疾患などでは、深刻なケースが多く、現在20人弱の人が微妙な立場に立たされています。また、私たちとの出会いにより、新たな目標を目指して頑張っている人や、交流会に参加することで元気を取り戻す人も少なくありません。
 個別相談ケースとして特筆すべきこととして、次の三つを挙げることができます。
 一つには、郡悟さん(東京)が昨年10月、1年3カ月ぶりに元の職場に原職復帰を果たしたことがあります。復職を祝って、東京(両国)において祝賀会を開催しました。
 二つには、大阪の「二見裁判」(中途視覚障害となった二見徳雄さんの関西電力不当解雇事件)があります。今年に入って、裁判長の提案を受け、新たな段階に入りました。現在、「試用」という形でテスト的に働いています。5月21日の「支援する会」の第3回総会に向け、会としてメッセージを送るとともに、山本浩幹事(和歌山県)が参加してくれました。名実ともに職場復帰が実現するまで、引き続き支援をしていきたいと思います。
 三つには、福島県のある町役場職員Kさんの職場復帰についてです。まもなく職業訓練が実現するか否かという新たな段階にあります。労働組合が全面的な支援をしていますが、昨年夏、当会会長と松坂幹事が労働組合の学習会に講師として参加しました。引き続き会として支援をしていきたいと思います。

1.4 相談活動の成果と課題
 この1年を振り返ると、私たちとの繋がりのなかで、10人の人が職場復帰や再就職などを果たしました(「復職者等一覧」参照)。このなかには、会発足直後の相談で、理学療法士への道に進み、見事に再就職を果たした人や、メーリングリストを通じて、多くの先輩たちに励まされながら、新社会人となられた人もいます。
 また、継続雇用や再就職の可能性を求めながらも、最終的に「あはき」への道を選択し、この4月から盲学校専攻科に進学した人も3人います(東京、埼玉、千葉)。
 さらに、休職期間満了とリストラの影響で、止むなく退職し、新たな気持ちで再就職を目指している人もいます。
 ここでの課題の一つには、復職後の定着支援・定着指導があります。一旦復職すると、本人が支援を望んでも、なかなか受けられないという問題があります。一人の中途視覚障害者の職場復帰には多くの人たちの努力と、莫大なエネルギーを費やしています。それらを無駄にしないためにも、中途視覚障害者の職場復帰に対する定着指導は、今後の大きな課題と言えます。
 今一つは、「あはき」を、視覚障害者の最後の砦として守っていかなければならないということです。
 全体を通して、今後の課題と考えられることは、微妙な立場にあって悩んでいる人たちと、遠隔地にいて悩んでいる人たちに対する支援のあり方です。どうしても、首都圏を除けば、なかなか直接会う機会を持てず、十分な支援ができません。今後、北海道、宮城、和歌山、広島の地方幹事と連携した取り組みを考えたり、他の地域へも幹事を増やしていくことなども含めて検討していく必要があると思います。

【復職者等一覧】

 以下、復職・就職年月、氏名、性別、復職・就職時の年齢、障害等級、使用文字、所在地、職場、職種等の順に記します。
  1. 98年5月、K.Y.、男、28、1級、点字、東京、データ入力サービス会社、テープ起こし。
  2. 98年7月、H.T.、男、47、5級、普通文字、鹿児島、郵便局、事務職(外勤から内勤に)。
  3. 98年10月、S.U.、男、54、1級、点字、東京、都立高校、事務職。
  4. 98年10月、S.K.、男、38、1級、点字、東京、コンピュータ会社、事務職。
  5. 98年12月、N.I.、女、48、4級、点字・拡大文字、東京、保育所、調理士。
  6. 98年12月、Y.I.、男、43、1級、点字、群馬、電機メーカー、事務職。
  7. 99年1月、Y.A.、男、37、1級、点字、埼玉、養護学校、教諭。
  8. 99年1月、T.I.、男、31、1級、点字、東京、システム開発会社、事務職。
  9. 99年4月、A.I.、男、34、3級、拡大文字、東京、練馬区、理学療法士。
  10. 99年4月、N.I.、女、25、1級、点字、神奈川、大手スーパー、電話交換手。
(注)上記のうち(8)、(9)は再就職。(10)は新規就職。
(幹事:工藤正一)

2 連続交流会の報告

 98年度の連続交流会は、97年度の連続交流会「どんな仕事をどのようにしているのか」という中で出された多くの課題から、3つのポイントに絞って開催された。それは、
 (a)会社でのパソコン通信の活用
 (b)情報の収集と活用
 (c)仕事に生かそうデータベース
というものであった。
 毎回一人の方に報告をお願いしたので、具体的にどのようにやっているのかという点について詳細に知ることができた。((a)と(c)についてはパソコンの操作を交じえ仕事ぶりを再現していただいた。)また、3名の方の新たなチャレンジの意味・意図するところも知ることができ、今後に生かせる内容が提起された連続交流会であった。
それぞれの提案の内容は、「タートル」12号に掲載したので、それらをどう発展させるかと言う観点で、整理してみる。

2.1 会社でのパソコン通信の活用
 これまで視覚障害者が職場の中で「情報の発信者」になるというのはなかなか考えにくいことであった。しかしパソコン通信の活用がそれを変えた。これには二つの意味がある。
 一つは、職場でどうしても孤立しがちな働き方を強いられる中で、周囲の人との関係を双方向に変えるものとして「パソコン通信の活用」が提案された。職場の中における自分の存在を見つめ、それを変えていこうとする試みとして、重要な提起だと思う。
 もう一つは、どんな情報が、どの人にとって重要かを理解できる、経験を持つ中途視覚障害者にとって、通信上で得た情報を、他の社員に提供するという作業が、新たな仕事として提案されたことである。当然インターネットによる情報の収集も考えると、この領域での、多様な形での仕事の創出を考える事ができるのではないか。

2.2 情報の収集と活用
 復職してから意識的に行ってきた情報の蓄積が現在の相談業務に役立っている。テープに録音すること、点字でメモすること、データを自分でコツコツと入力すること。たくさんの人との関わりを大切にすること。これらは一朝一夕にはできないことだけあって、このような実践の積み重ねは、大きな力となっている。このように色々な方法を組み合わせ、情報を入手し、それを自分で使いやすいように加工することはかなり大変な労力を費やす。しかし、だからこそ、意味ある情報の蓄積ができるのである。確かに、「視覚障害者は情報障害」と言われる。しかし、この状況を突破し、反対にたくさんの情報を、自分の仕事に充分に生かせるのであれば、仕事でも色々な可能性が考えられるような気がする。
 また、様々な手段で手に入れた情報は、やはりパソコンを活用し整理することが私たちにとってきわめて重要であることが再確認された。必要な情報を即座に、自分の使える形で取り出すことができることが大切である。

2.3 仕事に生かそうデータベース
データベースを活用した進捗管理・予算管理の仕事の実践から、データベースの活用について、幾つかのポイントが提起された。
 まず、仕事の現状を良く知り、自分がその中で何ができ、どのようにやれば役立つのかという、仕事を見つめる「センス」のようなものを、身につけることが大切になる。もちろん、私たちのこのような姿勢を受け止める雇用側の基本的な理解は前提となるのだが。自分が何をしようとするのか、それをやりやすくするためにどんな方法をとればいいのか。このような考え方でデータベースも一つの道具として、仕事をやりやすくするための手段として使う事がポイント。
そしてデータベースの活用において、常に他の人との共用性−−他の人が見てすぐわかる、周り人とのデータのやりとりが自由にできること。これは社内での仕事ではとても大切。
 そして、このように考えれば、さらにデータベースの仕事での活用の可能性は広がろう。具体的な事例をさらに集め、整理したい。

(幹事:新井愛一郎)

3 メーリングリスト及びホームページについて

3.1 メーリングリストについて
3.1.1 基本的事項
 管理者のemail owner-turtle@ml.asahi-net.or.jp
 開設年月日 1997年7月31日
 開設契約ネット 朝日ネット
 開設費用 月額1000円(基本料金 \500, 記録保存料金 \500)
 登録メールアドレス数 112 (注)
 通算書込数 2485(5月12日現在)

(注)一人で複数のメールアドレスを登録している人もいるので、メーリングリスト(以下MLと略記)参加者の実数は 105〜106名程度。
 タートルの会のMLは、タートルの会の会員であるか否かに関わりなく、参加・退会手続きが自由に行えるようになっているため参加者数には多少変動がみられますが、長期的には増える傾向にあります。昨年の総会報告では、1998年5月24日現在で、参加者60名、通算書込数が約1千と報告されています。

3.1.2 MLの書き込みの内容等
 MLで交換される情報は多岐にわたります。項目として上げるなら、会報第10号にある昨年のMLに関する報告と同じように、(a)会活動に関わる情報交換、(b)視覚障害に悩む本人やその周辺の人からの相談、(c)関連放送番組や行事等のお知らせ、(d)図書情報、(e)ソフトウェアの使用方法等パソコンをめぐる技術情報の交換、(f)ネットワーク上で得られた視覚障害関連等の情報、(g)便利グッズ、(h)視覚障害者の生活やリハビリに関わる話題、ということになりますが、ここ1年くらいにおける特徴としては次のような点が上げられます。

  1. 会の幹事のほとんどがMLに参加するようになり、会務にまつわる連絡がML上で更に行われるようになった。
  2. 参加者増により、話題の幅が更に拡がった。例えば、「ちょっと一息」などの連載エッセイが投稿されるようになったほか、視覚障害を持つ女性の問題に関する情報・意見交換、会の交流会に関しての更なる意見交換等が行われた。
  3. MLからオフラインミーティングが生まれた。ソフトクリームを食べる会が2月に、「みえない展覧会」の見学会(ラーメンを食べる会を兼ねる)が4月に持たれた。そのほか、JRPSの広島医療相談の参加者による情報交換、千葉中視連にまつわる情報交換も行われるなど、実際の活動と通信ネットとの連携がみられた。

3.2 ホームページについて
3.2.1 基本的事項
 URL http://www.asahi-net.or.jp/~ae3k-tkgc/turtle/
 公開年月日 1997年11月22日
 開設契約ネット 朝日ネット
 開設費用 月額1700円

3.2.2 ホームページの構成・内容
 ホームページの構成は、以下の10項からなっています。
 (a)新着情報(ホームページの更新情報)、(b)おしゃべりサロン(MLで出た話題や会員のエッセイなど)、(c)タートルの会とは、(d)会報『タートル』(第1号〜13号まで)、(e)こんな職場で働いています、(f)手記集『中途失明』出版、(g)ご案内情報(イベント・図書情報)、(h)タートルMLへのお誘い、(i)玉手箱(資料集)、(j)関連リンク(他のホームページへの入り口)
 このうち内容がコンスタントに更新されているのは、(b)おしゃべりサロン、(d)会報『タートル』、(g)ご案内情報、(i)玉手箱の4項です。
 「玉手箱」のコーナーには、全国視覚障害者雇用促進連絡会の機関誌「雇用連情報」の第33号(1993年7月1日)〜第44号(1999年4月1日)を掲載しているほか、日本理療科教員連盟 進路対策部&ヘルスキーパーの制度化を求める連絡会が 1998年5月に取りまとめたヘルスキーパーに関する実態調査、国際視覚障害者支援技術セミナー 1998 予稿集、障害者の雇用に関わる助成措置、刊行物「職リハネットワーク(1998.10)」(中途視覚障害に関する特集号)等々の資料を昨年度追加掲載しました。
 また、「おしゃべりサロン」ではMLで書き込まれたもののうち、プライバシーに関わりのない内容のものを掲載させてもらっており、かなり蓄積されてきています。

3.2.3 その他
 ホームページの更新は、平均すると月あたり2回程度ですから、それほど頻繁ではありませんが、タートルの会の会報や雇用連情報等の着実な蓄積により、資料価値のある内容になってきています。中途視覚障害者やその周辺の人からタートルの会に電話等で相談があった場合も、ホームページを参考にしてもらうケースが出てきています。
 また、「おしゃべりサロン」や「タートルMLへのお誘い」のコーナーをホームページ上に設けていることもあり、それらを見てMLに参加してくれる人も以前より増えてきています。MLとの連携が取られ、少しずつながら情報交換の輪が拡がっているといえます。
 今後の課題としては、より読みやすいページ作成と構成設定、ほとんど更新されていないページの充実あるいは見直しが上げられます。

(幹事:吉泉豊晴)

1999年度活動方針(案)

  1. 相談活動の充実
  2. 連続交流会の実施
  3. 交流会の充実(講演内容と相互交流)
  4. 復職・定着支援活動の充実
  5. メーリングリストやホームページの充実
  6. パソコンボランティア活動の充実と連携の強化
  7. 機関紙「タートル」の発行
  8. PRパンフレットの作成
  9. 啓蒙用ビデオの作成

1999年度役員(案)

(留任)

会長  和泉森太
副会長  下堂薗保
幹事  新井愛一郎
 内山好美
 小川 剛(北海道)
 金子光宏(宮城県)
 北神あきら
 工藤正一
 滝口賢一
 西村秀夫(広島県)
 松坂治男
 持田健史
 山口 崇
 山本 裕(和歌山県)
監査  田中 均

(新任)

幹事  大脇俊隆
 横田 弓(愛媛県)
 吉永俊一

中途視覚障害者の復職を考える会(タートルの会)